水のなか花は棲むことをゆるされずみなもへとみなもとしらずのひのひかり陸のうみかつて夢みた偉大な王ははかなく散りゆくさだめを知るもはなさく時を待っている . . . 本文を読む
水浴びがしたくなった月が人里離れた湖にぼちゃんと沈んだ。そこの湖の水はやわらかく、とても心地よくて、月はついうとうとと眠りこけてしまった。 ふと目をさました時にはすでに遅く、月の月成分は湖にとけこみ、月はただの岩と化した。月成分のとけこんだ湖はきらきらと輝きをまし、こんな薄汚い地上は自分には相応しくない、あのすみわたる天上こそが自分の居場所だと思うようになった。「ああ、かえりたい」湖がつぶやくと、 . . . 本文を読む
ため息ひとつついたらそこから雲の神様があらわれて、「一緒にあそぼう」と声をかけてきた。「いまはそんな気分じゃない」と眉間にしわをよせながら答えると、雲の神様はたいへん怒って雲行きがあやしくなり、ゴロゴロ雷が鳴り響きジャージャー雨が降ってきた。「まったく、いつだって泣けばすむと思って」とわたしは悪態をつくが、わたしには雷鳴をとどろかせるまでに怒る覇気も無ければ相手の心情に訴えかけるほどの涙を流す気力 . . . 本文を読む
−−−亡き人の「きいさいきいさい」という声のする亡き人は「生きいさい生きいさい」言うなれども残された人に生(い)の音は届かず「きいさいきいさい」と耳に聞く−−−すると人の耳に届かぬいの音は怒りに怒りいがぐりとなって残された人の頭に落ちてきた「いたいいたい」と声をあげると落ちたいがぐりは鯛になった驚いた人は鯛を手にとり、煮付けて . . . 本文を読む