シェタニは蛇に化けて女蛇をたぶらかそうとした
女蛇は見向きもしない
女蛇は云った
「私、シェタニみたいなつかみどころのない方が好みなの。単なる蛇の貴方に興味はないわ」
あわててシェタニは変化を解いて女蛇に近寄った
女蛇は見向きもしない
女蛇は云った
「私、嘘つきは嫌いなの。貴方はいま、蛇に化けてらしたでしょう。私を騙すつもりでいらしたのね。もう、がっかり」
シェタニも過去は変えられない
女蛇の言葉にシェタニは泣いた
シェタニの目から涙がこぼれると
女蛇は舌舐めずりをしてそれをなめた
女蛇は笑いながら云った
「うふふ。おいしい。私、シェタニの涙が大好物なの。私の前で、きっとまた泣いてちょうだいね。それじゃあ、さようなら」
女蛇が立ち去ろうとしたのでシェタニは
女蛇を組み敷き彼女の舌をかんだ
女蛇はシェタニをキッとにらんだ
彼女と目が合い
シェタニは石になってしまった
女蛇はふんと鼻をならすとその場を立ち去った
石になったシェタニのなかから、新たにシェタニがあらわれた。
石となったかつてのシェタニに腰かけて
シェタニはため息をひとつつきひとりごちた
「はあ。なんであんなのに惚れちゃったんだろう。でもだめだ。まだ好きだ。なんで、ぼくはこうなっちゃったんだろうなあ。彼女のほうがよっぽどシェタニだ。ああだめだ、やっぱりどうしても惚れている」
シェタニは空をあおぎ
その瞳は涙に濡れている
その様子を目を光らせて女蛇は
草葉の陰から眺めている
うふふ。なんてかわいいのかしら。
わたしのシェタニ。
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