よみびとしらず。

あいどんのう。

鶏冠(とさか)

2020-11-29 15:44:25 | 散文
噴火をおさめた鳥は髪いららがせ怒髪はたなびくこの世の間に間に不機嫌な思いの育ちやすさにねんねこ眠れと祈る子守唄のかそけき光を十坂のさか道は更に遠ざかり逢瀬に能(あた)う手段は月の舟鶏眠る夜のとばりに唐紅の紅(べに)をさすあなたの口元を指でなぞった夜は深まり全てを忘れた太陽の子赤色の怒りをあらわにされてほんとうの気持ちは置いていかれたあなたの声色は耳を劈(つんざ)き穏やかなこの心根に綺麗な水を与え給 . . . 本文を読む

HAPPY

2020-11-28 16:43:12 | 散文
ウーパールーパーの口から太陽は昇る役目を終えた月はようやく放たれてわたしは淡色の光に頬を染めたきっと二人きりである幸せを全く理解していないウーパールーパーの透けるような柔肌に愛を重ねたあなたから三角色の夜は昇ったよく分からない世界はくるくると廻るそうしてバターになったあなたとわたしはこんがりと焼かれたトーストに溶けて食べられた声帯を持たぬウーパールーパーは太陽を吐き出してワンと鳴くつぶらな瞳は夜の . . . 本文を読む

太陽

2020-11-27 10:46:49 | 散文
痛みのためにあるわけじゃない世界で身体は傷つき痛みばかりでその傷口に触れる手のひらは太陽あまりに眩しすぎる光を僕は嫌った雲に覆われた空を心地良く思い人々は灰色の空を批判するみんなとは異なる理(ことわり)の当然は受け入れられずにそこにある音楽は不協和音そのなかでただひとつある輝きに手を伸ばすことは負けな気がした僕は負けず嫌いの頑固者嫌われる要素しかないこの塊はそれなのに愛されている愛のなんたるかを知 . . . 本文を読む

ブレス

2020-11-25 12:50:26 | 散文
吐き出した息の大きさに太陽は隠されて夜となる吸い込んだ息の勢いに夜は伴いて光は飛び出した逆さまに産まれ落ちた不条理に月はかそけきため息を吐きそれをみた海は大いに息巻き大嵐惚れた弱みに飲み込まれたのは幾重にも織り込まれた偽りと嘘本音は居場所なく夜に抱かれて静かなる呼吸音は夢を導くたいしたことのない本当の話に耳を傾ければ揺り籠ゆれるゆられて子となり親となり後ろへと引きずり下ろされて元の場所まで送り届け . . . 本文を読む

ソラ

2020-11-24 11:48:15 | 散文
双方、目についた双眸(そうぼう)ふたつは同じ色してそのなかの一つだけが空に昇った時に月となり太陽となり孤独に抱(いだ)かれたのは残された方の三人ぼっちあまりにひとりが淋しくて水に流されるまま残りの三つも産まれ出たそれぞれ海となり光となりて夜となるはじめのひとつは空そのものとなり空は追い出されて空虚な気持ちが空に残された呼気と吸気は繰り返されて腹にたまらぬ思いは募るはじめに目にしたあなたの瞳はわたし . . . 本文を読む

GREEN

2020-11-22 11:51:22 | 散文
みどりの離れたるこの地より舞い降りたのは今はもう昔雨の降る出で立ちを涙雨とは思うなかれと水は柔らかに滴りおつる雨は思い出のなかやがてふりやみ乾いたわたしと濡れたままのあなたは内在して微笑んだ紫の欠けたるあいだからオレンジ色した陽は昇りどうにもならなくなった山は土留(どどめ)色可笑しな世界に咲くヒワマリの思い出を啄(ついば)む青色の鳥未熟な世界は未完成なままイロトリドリの雨は降る . . . 本文を読む

mirror

2020-11-20 17:18:13 | 散文
ものすごく眠りにつきにくい土地でミイラとりはミイラになったのどの渇きは癒されず新しい朝は苦しみに沈みゆくそこにある小さなともしびに一陣の風は吹き炎は消えることなく勢いを増した癒されぬのならなお傷つくのみと傷口に塩をぬりこんだ憐れなミイラ元の姿はそのどちらであったかもう思い出せない昔ばなしを今は昔と語り継ぐ者もなくのどの渇きにただ水を求めた夜の夢夜は眠れず心はさまよう今日もどこかで風は吹き明けて開け . . . 本文を読む

BLUE

2020-11-19 21:27:11 | 散文
青色の入口に立ちてこれから起こりゆく不安と不満と不条理に満ちた世界に微笑みを交わした怖いことばかりの世の中で怖いこと以外もそれ以上過分に巻き起こりわたしの身体は渦(うず)となる渦潮は下に流れて全てを壊した海底に残骸は溜まりゆき蓄積された澱(おど)みは殻となりわたしを包むどんな水にも流されまいとし刃は通過して傷口を増やした始まりの微笑みはやがて泣き顔に変化した逆さまに降り立ちて世界は青色苦しみは当然 . . . 本文を読む

WATER

2020-11-18 12:55:09 | 散文
澄んだ水を求めてすみわたる空は地上に降りた舞い降りた世界は厭離穢土(おんりえど)にて欣求浄土(ごんぐじょうど)ともてはやされた祭囃子(まつりばやし)は俯いて自虐の詩はどこまでも継がれて身に染みるけどもそこにある澄んだ水を求めて穢土に流るる清らかな水をあなたの目にうかぶは透明な涙汚れも厭う気持ちも全てを抱いてこの身から溢れ出たのはついぞ果てなき空の記憶とたったひとりぼっちで産まれ落ちてきた逞(たくま . . . 本文を読む

honey B

2020-11-16 18:43:05 | 散文
はちみつ買うたと喜ぶ熊とはちみつ取られたと泣く蜂と泣きっ面に刺された痛みははちみつの甘さに頬を弛(ゆる)めた買うたはちみつの蓋が開けられなくて熊は困った困ったと泣きわめき取られた蜜のことは忘れることにした蜂は求愛のダンスを重ねて笑う食べられる喜びと悲しみに甘いはちみつをかけられて空は黄金色熊の気持ちも蜂の思いも甘い思い出に浸(ひた)りゆく現実には甘美なし忘れえぬあのはちみつの味を求めてあなたが苦手 . . . 本文を読む

ひとにやさしく

2020-11-14 08:04:43 | 散文
拷問のような苦しみのような時に後悔もしたほんのわずかの歓びうまく出来ても出来なくてもいまそこにある自分を褒めたたえようひとにやさしく自分もまたただ一つのひとであることを時に忘れて思い返して思い直してやさしさひとつ正体不明やさしさを見失ない挙動不審のやさしさ自体はちっともやさしくないというやさしさ易くなくいつも顔を顰めてばかりだからひとにやさしくひとりひとのいる場所にやさしさを拷問のような苦しみのよ . . . 本文を読む

暗夜航路

2020-11-12 08:25:24 | 散文
暗い朝(あした)に光は届かずさりとてそこにある木漏れ日に口元はゆるむなにも分からないまま降り立ちて私たちはただそれだけで良かったのだと教わった綺麗な夜が残された昼の間いの間に光は照らされて暗闇はひとつに落とされた何の希望も持たずに産まれ出であなた自身が光となった町に星は満ちて暗夜行路は行方も知らぬ舟の旅舵とる者の姿もみえずに月は満ち欠け時間はすすむただ一方に見せかけてめぐりぐるりと目眩(めくるめ) . . . 本文を読む

停電の夜

2020-11-10 02:00:19 | 散文
停電の夜に水は満ち干上がった朝日は水を求めたかなしい程に透明な空は乾いた風と瑞々しい雲に覆われて翠雲(すいうん)は太陽を拒み夜を迎えた月の明かりに哀しみはとけこみとろんとした液体に渇きは癒えず太陽はカラカラとどこまでも燃える癒しに拒まれてひとり昇った夜に臥せ朝に起立するより糸の織りなした光は白く目映(まばゆ)く目を閉じたわたしはなにも気が付かず光は交差して入れ替えられた停電の夜に水は満ちふたつの暗 . . . 本文を読む

無音

2020-11-09 10:03:27 | 散文
夜のふちに置いてきた片割れを彼は誰時に差し伸べたそれを黄昏と勘違いしたあなたは消えてない消失に滂沱(ぼうだ)した雨の流れに海へ至りてなにが孤独だと海は波打つ誰もいない浜辺に夜は降りたちいつまでも廻る不条理に抱(いだ)かれた朝と夜と朝の境にたくさんの片割れは残されてみんなひとりぼっちで海を眺めたいつか帰る場所に憧れて錯綜(さくそう)する世界は産声をあげる消えていなくなるところから結ばれた逆さまの成り . . . 本文を読む

夜と逆立ち

2020-11-08 12:18:16 | 散文
消えてなくなることに憧れていつかは否応なく訪れるものをいまかいまかと本当は怖くて受け入れられない消失にだから憧れを抱いて夜に眠った怖いものばかりの現実に立ち向かうために鈍感になった弱い心は守られたまま強くはならずに硬くなる頑(かたく)ななその眼差しに惹かれて目を瞑った世界にわたしは暗闇に呑まれて硬化した夜とは異なる暗闇になにが違うのかは分からないまま消えていくことに抱いた憧れは暗闇ではなく光であっ . . . 本文を読む