よみびとしらず。

あいどんのう。

待テ

2020-07-28 00:26:51 | 散文
いまは待てと目の前(さき)に現れた手のひらは誰かが与えたもうたたなごころ目の前は近くにありて遠ざかり重ならぬ時間軸は途方に暮れて風立ちぬ生きて生き抜きてなお手は届かぬゴオルはわたしの背中に貼りついていた待てと指し示された手のひらはわたしのゴオルと同じ向きに立ちわたしの目前はゴオルとは正反対のそれでもいつかは辿り着くはずの目指すべき場所へとそっちじゃないよと広げられた手のひらを抜けて誰も何も与えては . . . 本文を読む

うーとぐー

2020-07-27 00:35:47 | 散文
うーっと耐えてぐーっも耐えたその悲しみのたまり場はうーの涙満ちて泉となりぐーはふつふつと火山をなしたぐらりぐらりといつかは来たりて限界の時ぐらりぐらりと地面は揺れるやり場なき思いは居場所を求めて泣きついたひとの胸のうちにて悲しみはたまるうーっと耐えてぐーっと耐えた誰ひとり知らぬあなたの胸のうちにあるのは清らかな泉とふつふつと燃える火山口どんなかたちの火山なれども灯火(ともしび)の絶えることなき赤々 . . . 本文を読む

Rabbit

2020-07-26 10:44:59 | 散文
耳をふさいでうたた寝をするがらがらと壊れた現実を隠すため大きな声で歌われる世界に負けないように深く深くにこうべを垂れた耳をふさいでがらがらと崩れた現実を再構築してわたしはわたし自身の唄を口ずさむ眠りから醒めて月は昇った在りし日の記憶と重なる空は月明かりあらわなままに雨は落ちふさがれた耳の向こう側しずしずと雨音はこだまする . . . 本文を読む

In fact

2020-07-24 11:29:46 | 散文
玉手箱開きて年老いて養老の滝にて若返るどちらが幸とも不幸とも唱えるわけにはいかなかったそのひとは口閉ざし事実を隠した様々な憶測は紡がれて歌となり風に乗り時代を超えた今はもうその事実の欠片なく誰もが作り物語として疑わずかれはその現実に救われた太陽と月は尽きることなくこの星を巡りて事実を隠す目を背けるが如く眠りにつきてまやかしの音楽に耳を傾ける在りし日の思い出は捏造されて捏造である建前を律儀に守り通す . . . 本文を読む

炭酸

2020-07-23 15:31:49 | 散文
ぱちぱちとはじけたもう元の姿には戻らずに痛みの伴わぬ痛みの在処は主張した確かにそこにあるわたしの心根を明るく照らす太陽の下吹く風はあまりに穏やかではじけたわたしのこえはさやさやとあなたの夢のなかにこそ訪れる 一度に呑み干すにはやや苦しくてそれでもあなたは受け入れてくれたぱちぱちとはじけたわたしの月明かり . . . 本文を読む

まー

2020-07-22 00:18:00 | 詩(イラスト付)
まーと声を合わせてまままままー美しき調べは風に乗りひとりではない現実を突きつける輪に入らねども円をなすこの星のかたちに音は愛おしみ生きとし生ける者喉を震わせ暗く沈んだ海の底から明るく凍えた大気圏まで愛しているぜと感情を発露する . . . 本文を読む

YOU

2020-07-20 01:55:04 | 散文
もう出会うことのないあなたの影といつかまた出会うであろうあなた自身とを重ね合わせた光と陰にかたち作られてわたしは産まれた色の無い世界にあなたはおりてきてわたしは今ここにいる意味を知るさりとてあなたとは出会わずに言葉を重ねた口の無い太陽と月は幾重にも交差する月日を吐き出したいつかあなたと出会うため空かかる虹は七色に染まりわたしはあなたの名前を呼べないままで光は日向(ひなた)と交じり合い陰は日陰に居場 . . . 本文を読む

RAIN

2020-07-18 11:12:49 | 散文
空っぽの空に降る雨は雨上がりの空の青さを知っていて空っぽの空に降る雨は降り止まぬ灰色の雲に覆われるどしゃ降りに閉ざされた室内に空っぽなわたしは虚(うつろ)な瞳でどんなに水を飲んでも喉の渇きは癒えぬまま窓の外はこんなにもどしゃ降りで水の溢れる渇きからは遠くかけ離れた世界の内側で濡れることもないこの身は不自然なまでに凝り固まった指先ひとつ動かす勇気も持てなくて勇気知らずの空は灰色の雲に覆われたまま全て . . . 本文を読む

colors

2020-07-16 00:39:20 | 散文
見えて小さく淡くなり眼(まなこ)くもれば大きく深まる密度は浅く大きな円に囲まれた白紙に色の重なりて理解するには遠く及ばぬよく分からない感情に現世(うつしよ)は満たされた欠けた感情のその一方で色彩は強まりあなたの深みは増していく深淵の先にある色の在処に惹きつけられたわたしたちは何処までも潜った色の無い世界に明かりは灯されてその夢の前(さき)は開いた瞳に閉ざされる重ならぬ景色を重ね合わせて胸のうちに広 . . . 本文を読む

2020-07-15 10:43:18 | 散文
選ばなかった道の前に立ち尽くすほんとうにこれで良かったのかといくら思っても詮ないことをいつまでもわたしの思いはからみとられて目の前にすでに道はなくただそれでも呆然と選ぶのが怖くて選ばれることを選んだそれでも選択は続く道のうえこの道が正しいかどうかよりあなたが幸せかどうかただそれだけが気になったへたくそでおそらくは不正解なわたしの思いにへびはからみつき歩みはとまるそれでもあなたに会えたから調べて分か . . . 本文を読む

SKY

2020-07-14 04:04:51 | 散文
夢に溺れて現実に流れて逆さまに落ちたら空は下にあった覚束ない足元に生(お)ふる久木の軒下の末は上側に栖(すみか)を移した逆さまに慣れて流されてまた反転し元の色も忘れて目を瞑(つむ)るまぶたの内側から覗いた空は幾重にも重なり夢まぼろしとの区分なく懐かしき音楽の流れる夕暮れにわたしは帰りたい場所を思い出しさりとて届かぬ赤紅は夜に沈んでわたしは再び空へと落ちていく . . . 本文を読む

ぼくとばく

2020-07-13 16:08:30 | 散文
夢はみたけどばくは空腹あるいは空白のすみかにて夢を食べられずにばくは泣いている夢をもたないぼくは空白あるいは自分の空腹にも気づかずになんにも無いのだとぼくはさまようこぼした涙にも気づかないまま乾かない涙の足跡をばくは追いかけた空腹を満たしてくれる悪夢よいまいづこぼくはぼくの空白を満たす誰かを求めてはそんなもの手に入るわけがないと眠りについたかすかに聴こえる誰かの足音はひたひたとかつて遥か彼方で見た . . . 本文を読む

鳩と童女

2020-07-11 07:52:44 | 散文
ぱたぱたと鳩は池のふちにて水を浴び道を歩きて見知らぬひとの後を追ういっせいに飛び立ったのは理由なく然(しか)れども空にその身の白さは世に映える姿はなくなりまた舞い降りてじっとして動かぬは鳩と童女(わらわめ)動かば負けよと誰が言わずとも引き合わされた運命(さだめ)の時に鳩はなにも考えずに空を飛び後に残された童女は三歩歩いて鳩を忘れた . . . 本文を読む