よみびとしらず。

あいどんのう。

逃げだしてきた太陽〜17年8月20日

2018-01-31 20:08:40 | 散文(し)
太陽から逃げだした欠片が穴があったらはいりたいと見つけた穴にはまったらそれがそのまま月となった月となった逃げだした太陽はときおりそうっと顔をだしそとの様子をながめている気が大きくなった気分の時にはまるまると顔をのぞかせて気が小さくなった気分の時にはよばれたってちっともでてこない太陽から逃げだす欠片は後をたたずみな、まずはと月のもとへ月ほど上手に穴を見つけた欠片はいなかった天の穴はすぐに満たされ、満 . . . 本文を読む

つきあかり

2018-01-27 21:05:11 | 散文(し)
どっとお あたったつきあたり月の明かりに照らされて玉手の箱は開かれるたあまてまてまて玉手箱たまたまあてた宝くじくじびく國引きみちひきてよろけてよけたちいさいカラスただのカラスはみちみちて四方山ごとに隠されたちいさいカラスはそれをみて開けると決めた玉手箱もくもく煙につつまれてちいさなカラスは猫となり、西の空へと駆けていく . . . 本文を読む

硝子のなかのそと

2018-01-25 08:51:00 | 散文(し)
そんなこどもに目をこらすこどもは主張した「自分は硝子でできている」「ばらばらに砕け散るのが真実だ」本当は硝子ではないこどもたち硝子のなかにいるだけでその身はやわらかく、あたたかいたとえ硝子が砕け散ろうともあなたが砕けることはないそんな言葉は聞きたくないと硝子のなかの子は耳をふさいで目を閉じるあたたかな涙で、硝子が砕けてしまわないように . . . 本文を読む

硝子のなかの子

2018-01-23 22:15:12 | 散文(し)
光のなかから落ちかけている私をどうかすくってほしい私がそこから落ちないように光のそとは怖い、醜い汚ない嫌だ嫌だよごれた世界に落ちたくない私を誰か助けてどうかいつまでも美しい光の揺りかごに包まれてどこまでも清らかなまま、穢れない私でいさせてほしい . . . 本文を読む

ひみつ刻(とき)

2018-01-21 22:45:52 | 散文(し)
双子で産まれた火の鳥と水の鳥水があついと鳥は云う火がつめたいと鳥は云う共に育てはできないと引き離された双子の鳥は「彼は誰ぞ?」「誰そ彼ぞ?」重なりあわない色彩はみどりの星に降り立ちて姿はみえない片割れの産まれた記憶を口にする . . . 本文を読む

蛙石

2018-01-20 10:55:36 | 散文(し)
蛙はフタを監視する水のしずけさを磐(いわお)にしるして堅いフタ蛙の眼(まなこ)はフタの先にある海をみる稀に絡みくる白蛇はいつも憐れに自分を語る気のない蛙に苛立つ蛇は蛙をそのまま呑み込んだ時は経ち白蛇の身体はさらさらと風化しあとには石となった蛙だけが残った蛙石(かわずいし)耳に聴こゆる引き潮の懐かしき調べぞ今は昔 . . . 本文を読む

怪獣王国

2018-01-19 08:10:29 | 散文(し)
知りたいをやめない生き物たちが住むところどんなに傷ついても罵倒されてもころんでも知りたがることはどこまでもつづく知りたいと思う広野にひとり立ち今日もなにかを知りたいと思う本当に知りたいことはこわいからそこには触れずにフタをしてあまたある人々のなかにある知りたい気持ちとその答えとそんな人々のそとにあるさまざまな現象とその答えを獰猛な野獣よりも貪欲にぴくりとも動かないその手を伸ばして暗闇のなかに身をひ . . . 本文を読む

さかあがり

2018-01-17 10:17:37 | 散文(し)
くまのぬいぐるみを抱えながらぐるっと一回さかあがりをしたら世界はひっくり返ってまたもどった鉄の味のするつめたい棒を握りしめ湿った地面を蹴りあげたさかあがりひらひらと舞うスカートのあいだから十年前にとばした紙飛行機がみえた . . . 本文を読む

命の坂道

2018-01-16 13:35:16 | 散文(し)
ふるえてのぼった登り坂傾斜はどんどんきつくなりさいごは逆さまになっていたお天道様が真下にあって湿った大地が上にある逆さまで頭に血がのぼりそこから坂道がまた始まったどんどんのぼる どんどんとただひたすらに この道を血でできた赤い登り坂ぼくの空には水の坂赤い登り坂と水の坂はくるくると二重螺旋を描きながらぼくを遠い場所まで運んでいく本当は行きたくなかったけれど本当に本当のことなんてこのぼくにだって分から . . . 本文を読む

ツツジのみる夢

2018-01-15 18:45:05 | 散文(し)
ふるさとへとかえるつもりがツツジの花の香りに誘われてずいぶんと長いあいだ寄り道をしていたらしい天の水宮(あまのみずのみや)は遥かかなたにこなたの川辺では蛙と河童がみどり色の喧嘩をしている水がぴちゃんぴちゃんと飛びはねてそこから白いコトリが飛びだして空には虹がかかった天では天女の演奏が海からは人魚の歌声がすみわたる世界にこだまするそんな景色は砂漠のなかへと消えていきあとには蛙だけが残った蛙は勝ったの . . . 本文を読む

日輪の蛇と朱のトリ

2018-01-13 19:33:52 | 散文(し)
日輪の冠をかぶった蛇は絡みつく朱のトリに飛んでいかれたくない為に茨の城に閉じこめられた朱いトリは瞳を閉じてうたを唄う飛んでいきたいわけではない逃げ出してしまいたいわけじゃないだがしかしいかねばなるまいと千の木の葉に囲まれて空もみえない朱のトリ飛び立つところで翼が傷むだけだと知りつつもいかないわけにはいかないと勇気のひとつも手に持たず大きな翼をひろげだす朱のトリの運命を知る蛇は日輪の冠をまぶかにかぶ . . . 本文を読む

蛇とジャッカル

2018-01-11 21:14:43 | 散文(し)
重なりあわないふたりは出会いその向こうでは金色の稲穂が揺れている蛇は種を蒔きジャッカルは稲をつむはぐくむことを知らないふたりは対面し互いの思いをくみかわす種は稲となり米となる米は酒となり蛇はうわばみと化す酒に溺れて死んだ蛇のかたわらでジャッカルは己れの瞳と引き換えに新しい命を産みおとすジャッカルの瞳は月となり蛇の溺れた酒は海となった重なりあうことあたわぬふたりはいまも満ち引きを繰り返し互いの思いを . . . 本文を読む

さかみ〜17年12月31日

2018-01-06 12:44:12 | 散文(し)
さかみどりは鏡の前でひとりごとをつぶやくその声は誰にも届かない愛をささやくかざみどりは云った「はやくそこからでてくればいいのに」さかみどりは鏡の前さかさまにうつる自分を見つめて首をふる「いまはまだ動けない」さかみ かみとり ふかみどりみとり みずとり とりみのとりは燃えさかる炎のなかにいる黒焦げのたちばなの中には燃えない鏡されども道は閉ざされたままでネコの瞳は閉じたままイヌの瞳も閉じたままとりみる . . . 本文を読む