よみびとしらず。

あいどんのう。

Key

2020-04-29 13:07:09 | 散文
空の青さを睨みつけながら堅牢(けんろう)な檻も錠前もなく握りしめた鍵の使い方は誰も教えてくれなかったなんの役に立つのか分からぬ鍵をそれでも握りしめていた誰も助けにこない草原に立ちわたしは何かにとらわれている溺れるような苦しさも縛りつけられた悲しみもいつしか糧となり絡みついた言葉はわたしを導く握りしめられたままの鍵はやがて朽ちていったなんの役にも立たないままでその鉄錆を求めるあなたの元まで鍵は鍵の役 . . . 本文を読む

BLUE

2020-04-27 15:24:42 | 散文
空は海であった日のことを思い出しては懐かしむ思い出の海はいたく穏やかであの喧騒もあの荒波も覚えてはいるのにまるでうかんではこなかった穏やかなだけではない海の穏やかな部分のみを空に持ち帰り空は流れる雲間に海を希(こいねが)うもう一度あの場所へ戻りたいと熱さも忘れた喉元に激しい雨はいざふたたびあの大海へと いま帰りこむ海の嘆きは空へとあがるどうして忘れようかあの苦しみを希望なき夜をそんな苦悩 . . . 本文を読む

隠蓑

2020-04-26 09:17:08 | 散文
そこにあるのはただ優しさだけだったはずなのにわたしはあなたを傷つけた目の前にある水たまりに落ちてわたしはわたしへと潜りこむ少し優柔不断な優しきひとよ刃なき優しさはいかにして相手を傷つけたのか優しさを隠蓑(かくれみの)にした正体を追うその優しさで傷つけたわけじゃないならば一体何が原因であろうかとわたしはわたしの中をどこまでも潜り根底にあったさみしさに触れて涙は落ちた壊れかけていた心根に触れて優しきひ . . . 本文を読む

圏外

2020-04-25 00:09:36 | 散文
光ありて水ありてそれ以上なにを望むというのかもうそれ以外の全てが欲しいと夜は欲望を飲みこんだ満たされることなき夜の底鯨は魚喰(は)み、泳ぐ魚の夢をみる . . . 本文を読む

No Name

2020-04-22 10:06:11 | 散文
色と形を追いかけてあいまいな感情につけられたその名前を放棄したわたしの思いはそんなもんじゃないとその名を放棄した結果正体はより不明瞭になりながらほんのちょっとだけ真実に近づけた気がしたそんなものが本当にあるのか誰も知らない辿り着いた者の無い真実に色と形を追いかけ続けて言葉は産まれてまた廃れていくこんなものじゃないそうじゃないとがむしゃらに振り回した拳のなかに真実ひとつ本当の名前を教えてくださいと名 . . . 本文を読む

A hungry ghost

2020-04-19 00:02:37 | 散文
腹のなかで震えた怒りは消化しきれず大雨と重なったせめて寒さでこの身震えろとやり場なき憤りは寒さを忘れて思いやりすらもかけ違えられて届きはせんかった月のない夜に月の姿あれど雲隠れした夜にもう何度目の失敗なのかも分からないくらいに繰り返されてたまった澱(おり)のなかにわたしは棲んだ怒りにも寒さにも無頓着になったままただ嫌気ばかりを重ねて過ごしたそうやって守り通した真心ひとつ月のない夜に昇っていったいよ . . . 本文を読む

ひだまり

2020-04-18 11:47:05 | 詩(イラスト付)
夜のふちから眺めたひだまりは思っていたほどのものではなかったその明るさはにじんでいるからよく見えなくていま雨は降っていないのだけどもそのひだまりは雨のなかにあるみたいだったひだまりのしたにある青空はなんでも受け止めてくれるように見えたひだまりの向こう側にある青空は僕のような夜のなかにいる奴でさえもだけどそこに飛び込む勇気はなくて青空の手前にはあのひだまりもあり僕はただ夜のふちから光を眺めるにじんで . . . 本文を読む

悔し涙

2020-04-17 00:12:47 | 散文
こんなものが強さであるはずがないと否定したわたしの言葉をあなたは笑顔で否定したわたしはこんなにも弱いのだという涙目で訴えたわたしをあなたは真っ直ぐな瞳で否定するわたしの本音は間違いだらけなのかそれすらもそうじゃないと否定するあなたの言葉は嘘つきででたらめばかりだとそうであったなら救われたのに真逆を指し示すあなたの言葉は救われたいと願うわたしの思いとは裏腹に救いなき道を指し示すわたしが行きたい道はそ . . . 本文を読む

ミ、ミ、ミ

2020-04-15 00:18:45 | 散文
ヘビに水かかりヘビは自らの姿に嫌悪したその涙は水と交わり虹を成しかかる橋を越えた先に昇るは朝(あした)の調べと声をなくした人魚の哀歌ミ、ミ、ミ流れ星落ちたあとに残る静けさはかつてそこにあった「わたし」を語る相聞歌愛しきあなたへ贈る言葉よりもただ触れたいと願った小さな掌(たなごころ)手のひらのひとつも持たないヘビは空を睨んだ流れ星なくした空はどこまでも途切れず落ちた星の行方は誰も知らずに眠ってるわた . . . 本文を読む

十人十色

2020-04-13 00:20:48 | 散文
許されるものかどうかを悩むわたしにそんなことは問題ではないとあなたはいったあくびをするわたしの隣であなたは鳥の行いに激怒するわたしはごはんを作りあなたは食べて誰かが育んだ野菜をまた違う誰かが運んでいるわたしが息を吸い込むときにあなたは吐いてまた別の場所ではわたしもあなたも同じタイミングで息を吐いていた呼吸は合わさりそれでもわたしとあなたは交わらず重ね合わさることのない身体にはさまざまなあなたが住み . . . 本文を読む

ノアール

2020-04-11 09:24:35 | 散文
夜の不安がそこら一帯に現れてその暗やみをぎゅっと抱きしめて昼に向かえばその夜は一匹の猫となり黒猫は青い空のしたにゃあと鳴く光ある世界に影に似た黒猫は駆けまわる慕情に焦がれたその正体すらも分からずに黒猫を追いかけてたどり着いた先にある場所は昼と夜とが混じり合い光にも闇にもなれなかった者たちは大声で泣いた泣いてわめいて産まれおちてきた世界に昼と夜とは分けられてその理不尽さに夜の隙間から不安はこぼれるそ . . . 本文を読む

ブレス

2020-04-10 10:13:15 | 散文
どこにおったらええんやろかもういっそどこにもおらんようになったらええのやろかそんなこと思う自分はホンマろくでもない奴やなと首に手をかけるその前にまずは息を吸って吐いたらええんよその小さなからだのぜんぶを使こて思いっきりなめいいっぱいのせいいっぱいで息を吸うて吐いて吐いてさらに吐いたら自然とからだは上を向いてな空仰ぎよるんよけったいなからだやからねほんで見上げた空の色をいつかわたしに教えてな誰も見た . . . 本文を読む