よみびとしらず。

あいどんのう。

鳴き声ソング

2022-07-31 11:10:19 | 散文
たまには産まれてくる前の声色で鳴いてみたっていいじゃないあんなにも醜い容姿をしていたあんなにも綺麗な鳴き方で私は誰よりも麗しく誰よりも汚い声をしていたあの頃をもう全部どこかに置いてきたからわたしは泣き方以外ぜんぶ知らないそれでもたまには吠えたならわたし以外の私のように言葉を捨てて思いの限りに空と海とを切り離すこともなく愛していたそのなかで本音は変わらずに眠るそれは魔法でもなく奇跡なんかじゃない産ま . . . 本文を読む

バイブル

2022-07-30 13:44:09 | 散文
ほんとうのことをその通りに記してそこから様々に枝分かれ全てはそれぞれの思いのままにことばをうらまずうらやむひとびとの重なりに乗せて時代を駆ければ過ちと懺悔の反復よなにひとつ学ばなかったの?と首を傾げても本音は変わらず偽りは流れて元の姿を取繕(とりつくろ)うみんな悪夢と名付けて蓋をしたやがてそこから溢れる日まで太陽は希望を託されてまた昇り言葉は本日もお日柄も良く連なりてつるされるいまもよくある明日の . . . 本文を読む

そら物語

2022-07-28 15:10:13 | 散文
とりのこされてきこゆるは川と虫とわたしたちの呼吸 その姿は遠ざかり風の吹くこの行き先には雲もなくわたしは太陽をとらえたいのちは燃える炎を忘れてだから償いの痛みを受け入れたあの空に届くすべもなくその遠くからあなたはわたしに手を伸ばす歓びの種は風に乗り名も知らぬ花は白色に咲くあの雲の感情と同じ色をしたなんてとりとめもないわたしの笑顔にこのそらは開かれてあお色に染まったただ一心に憧れている「ありがとう」 . . . 本文を読む

リバーシ

2022-07-27 16:20:56 | 散文
ムカシ、カクシた昔話をいまにして思えばコンニチハ今日はお日柄も良く此方彼岸の花を見遣れば鼻を刺す蜜蜂にハチミツ色のクローバーを差せば彼方此岸の天気は曇り空蜘蛛の巣の美しさを全てなぎ払いこれで綺麗になったとあなたは微笑む何もないことを良しとして空っぽになることのない空を仰げば吹く風は置いてけぼりにされた昨日の名残り四つ目は落とされてそれを拾いにわたしは向かう西や東や星や月やと流されていざなわれたのは . . . 本文を読む

ミミ

2022-07-26 14:07:24 | 散文
ありがとうございますのその声も聴こえなくなったのはいつの頃からか大好きな音楽に耳をかたむければ誰も彼もの声遠くわたしは耳を外して風の音に触れるあなたの柔らかな本音の届くまで . . . 本文を読む

まよいご

2022-07-25 10:58:16 | 散文
抜けて脱いで飛び出した先にある迷い道明確なまでの晴天は足元を照らしてわたしは汗をかく労(いたわ)りを感謝し労(ねぎら)いをいとうこのわたしからすべてを受け入れて泣いてほしいとあなたは云ったわたしは微笑みあなたに背を向ける開放的な空のしたそれは明るい旅立ちだった . . . 本文を読む

流れ星

2022-07-24 09:52:40 | 散文
ぐわんぐわんと移動しゆさぶる景色は混雑し元の在処まで気色に聡いあなたは健在なまま顕在したのはいつの頃からかそれは当たり前に見えなくなった誰かのおもかげ与えられたのはわたしの涙ひとつふたつと何をか数えん救いの手のひらは救いようもなく水平線にあなたを見ればあれは重なりあいを放棄したわたしに連なるほうき星 . . . 本文を読む

アーク

2022-07-23 12:55:00 | 散文
立つ瀬に七踏みかげろうの曇り空この目にうつらぬ七色は待つと約束した真っ赤な嘘を灯した夕焼け小焼けに鳥鳴いてあなたの行く先来た道と末に広がる茜空からとばり降ろされた夜の頃寄るすべもなく涙も枯れたあの約束のむつみごとを七つ目の夜明けにもとむればなくこともない鳥の唄 . . . 本文を読む

かこう

2022-07-21 11:50:55 | 散文
かこうへ行こう熱い炎の入口へかこうへ行こうようやく辿り着いた海はおおいに泣いていたかこうして正体不明になったわたしの気持ちに笑えや笑え苔の生すまでかこうして地面に触れればその向こう側から月明かりさすあかるくつめたい夜の匂いはあなたが落とした姿見のわたしは過去へ行こうとして捕まった囲うて檻のなか澱(おど)みに一陣の風は吹くかこうへ行こうどちらともなくあかるくつめたいわたしはふりかえりひるがえり明日を . . . 本文を読む

ハク

2022-07-20 07:01:46 | 散文
過ちばかりの急がば回れ廻れ廻りてそうやって気がつく元の帰り道おかえりなさいとあなたが云うまでわたしは潜る海のある日に立ち別れ砂場の足あとを隠して波に戯れば白日の影はあなたを誘(いざな)う風に流れたのは誰の声かとその正体は山で笑うもの音の便りにかすむ声色は夜を求めた白い月 . . . 本文を読む

OTO

2022-07-19 14:12:28 | 散文
音の波に乗りゆらゆら揺れる子守唄とは正反対の明るい日差しそれは夢のなか煙に巻かれて開け放たれることのない窓のした音鳴りやまずに居眠るなかれと隣人は助け舟を漕ぎわたしは訪れる動かずにじっとあなたの触れるその温もりをシグナルとして . . . 本文を読む

カクシオニ

2022-07-18 11:19:28 | 散文
みんなどこかでおいてけぼりにされたおいてけぼりにして鬼は交互に駆けめぐるそれがどこなのかもよくわからないいまここにある場所は水も渇きもよく知っていたひとりぼっちは淋しくてほっとするひとりきりじゃないからいつの世もみんなわたしの真ん中に隠されて此処は出ていく道かそれとも入(い)る道か尋ねる声に耳をすませばさらに遠のきて明日は光る目を閉じてただひたすらに隠し通したのは誰の涙とわたしは呼びかけられて否が . . . 本文を読む

紙風

2022-07-16 07:18:13 | 散文
風にカサカサと紙は震えてその音にあなたは心許(こころもと)なくわたしは手のひらを添えてなにも祈らず紙はしずまる風は止まずともあなたの表情は和らいでその心音に身を任せればすうと眠りに誘われた今夜わたしは揺らぐことのない紙を見つめるわたしでもあなたでもないひとが稔(みの)りある年に思いを重ねたたくさんの子どもたちにあなたは守られて穏やかな風は吹くその風にすら怯えるあなたはわたしと共に心ひとつある故郷( . . . 本文を読む

ことだま

2022-07-14 12:23:22 | 散文
かけ違いはきちがえききのがし幾星霜かこだまは音を伝えるすべもなしいつも微笑む草葉の陰よごせごせおせおせ前にならいて笛吹けば風は鳴りせいじゃのこうしんその行き先か前か後かとくるくる廻りて目はまわるぐるぐるぐると喉を鳴らしたおおかみたちの見る夢はあいも変わらず否応もなしこのてのひらに影は重なりあなたの好きな夜は来たりてわたしは音のない音楽に耳すましすべりおちてきたのは夜半(よわ)の鐘いつみても同じよう . . . 本文を読む

こう

2022-07-13 02:49:25 | 散文
静心無(しずこころな)く花開くとき空の行方を知る風のゆだねて揺れた誰かの影をおそれて飲み込んだわたしに波打つ明日の記憶あなたが見せたくないものを目の前に提示され瞳は開く帰りたくないあの場所にみんな憧れて夜を仰げばその光さす日を思い出してわたしはあなたを逃して昨日を睨む見開いた瞳のその理由を履き違えてばかりの夜明け前夜から逃げ出して追いかけたものは風にさらされて時を待つわたしがあなたに会うまでに裸の . . . 本文を読む