なにが正解かは与えられずにただそれだけは間違いだという事は唯一確かで与えられない正解とただ真実である不正解とが歯がゆくわたしを責めたてる苦悩ははれずにとても天気の良い朝に肚のなかにたまる感情は怒りに似ていてけどもその正体は怒りではなく悔しさを噛みしめたいわけじゃないただたどり着きたいという道導(みちしるべ)もまた肚のなか暗がりを包み込んでいるこんなにも明るい空のした本当は答えを知っているんだよと笑 . . . 本文を読む
ないと思っていたことも見方を変えたらすぐそこにあった歩いていても立ち止まっていても見える景色は異なっていて時には翼を生やし空から地上を眺むればちょっとした生け垣の向こう側わたしの隣にそれは見つかった青い鳥の眼差しに立ちて羽根のないわたしにも飛べる空からもぐらの如く地に沈みそれでも突き進んだ土のなかから否応なく持って産まれたわたしのかたちにあるはずのなかったそれを見つけた物語ははじまり夜は続いていく . . . 本文を読む
明るく賑わう広野の真ん中でここは夜だと夜の王は言ったこれの一体どこが夜かとのたまえば夜以外のなにものでもなかろうと夜の王は一笑した明るい夜もあることを夜の空に吹く優しい風を全てを包みこむ柔らかな夜をお前はなにも知らぬのだなとにやける夜の王の顔を憎らしく思いその顔面に拳(こぶし)を叩き込めば夜の王は割れてお月様は天へと昇る天に昇るな降りてこいと叫べどもお月様は素知らぬ顔して夜空を巡る叩きたかったわけ . . . 本文を読む
もうないと思っていたこの胸の高鳴りをあなたと出会って再び芽吹いた次第です幸か不幸かで言えばどうでしょうわたしには少し不幸よりかもしれませんそれなのに顔のにやけはおさまらずあなたの生きている今に感謝などという平素は思いもよらぬ戯言も増えやっぱりわたしは少し不幸になったのだと再認識して気を引き締めんとするあなたを見ればゆるむ頬 . . . 本文を読む
ひとつは芽吹き、ひとつは枯れた二つからなる理(ことわり)の火は地に落ちて水は空と重なり雲となる巡る約束を違えた炎は大地にとらわれ水を乞う雲は引き裂かれて雷(いかずち)落ちた雨音の向こう側にて君を待つあなたは水の滴(したた)りに紛れてその身を隠した花水木空舞う雲の在り方は誰が知ることもなく彷徨(さまよ)いて誰もが縛られあなたに焦がれた行方も知れぬ藤の花枯れてなお生い茂る大地に立ちて花咲ける君の行方を . . . 本文を読む
傾きが平行になった身体から落とし穴に落ちたわたしの手のひらが欲しかったものは蜘蛛の糸蜘蛛の巣は全て焼き払われてこの世は清浄に満ちていると偉いひとは云った栖(すみか)を無くした蜘蛛の行方は誰ひとり知らずともそら澄みわたる雲の行方など見向きもせずに快晴の青空に雲の成分は漂流し蜘蛛の糸持たずして流れて消えたどこにつなぎ止められることなかれと蜘蛛の糸望むわたしの弱さに空の青さは突き刺さる清浄であれと云うひ . . . 本文を読む
ハーモニーに近づくおそるおそると一歩ずつ足を踏み外せば調和は乱れるぞと踏み外すことで整う調べからは遠ざけられた正道とおぼしき道の真ん中に立ち耳をすませば声は聴こえる前から上から下から後ろからパン!と鳴り響いた手の平の音目を見開いた世界に音の言の葉は乱舞してわたしは息の仕方さえ上手く出来ずにそれでもメロディーは紡がれてひとは物語り継ぐこの先にある景色をいつか見たあなたへ初めましての再会を言祝ぐとわた . . . 本文を読む
本当はずっと震えていることを悟られぬようにと鈴の音外して捨てたもうしかし鈴音は途切れることなくやがてあなたと再会を果たす鈴の音響いた夕焼け小焼け帰っておいでと鳴いた烏は帷(とばり)に落ちた耳をすませば音は違えずそこに有り勇ましき者どももみんな静かに震えてる闇夜に幽(かそ)けきあなたの声の振動は伝播(でんぱ)し交点の音叉(おんさ)は共に鳴る暗き道のりに月は寄り添いて夜明け前重なる鈴の音は静寂を知りあ . . . 本文を読む
水のなかにて炎は揺れる情熱は子守唄を忘れて夜も眠れず加速した思いに身を焦さぬよう水は炎に届かぬ子守唄うたうぬかるみに足をとられて飛べない鳥の鳴き声は空を貫き雨は降る飛べない鳥は濡れてさらなる重みを増したこんな翼など誰がいるものかと空を睨みて全てを憎む水のなかにて炎は揺れるその憎しみも悲しみも水の慈しみに全ては覆われ然(しか)れどもそこにある優しさには触れること能わず水はただ冷たさのみをその身に残し . . . 本文を読む
雨雲は重ね合わされて彩り豊かにその奥に秘められたのはあなたの瞳夜を受け入れて黒色に染まったひかりの発信源灰色の空は感情豊かなあなたと重なりわたしは傘も持たずに光を浴びた雨音は波紋を描きて◯(えん)をなし音のない世界に静かな雨音は鳴り響くこっちへおいでと降り立ちてそっちじゃないよと空はささやく雨落ちる賑わいにかき消された吐息は灰色かなしみもよろこびも雨落ちる恵みの発生源にて空の彼方より光を放ちあなた . . . 本文を読む
もしゃもしゃとしている肚のなかをもしゃもしゃとXは掬(すく)いあげてその腹を満たす腹の満ちたXは腹がくちいと泣き喚(わめ)き涙雨染み入る肚のなか悲しみは留まりてほんの少しだけ私も泣いた軽い痛みなど堪え忍ぶべきだと主張する肚のなかは鈍感になった自分には気づかないままで痛みに敏感なXはこの痛みのどこが軽いものかとひどく嘶(いなな)いた肚のなかピカリと輝く一番星みたいにXの咆哮はそれでも俯いたままの私に . . . 本文を読む
空洞の向こう側にはなにがあるのかと少しだけ歪んだ景色の向こう側春を思うて夏となり秋風吹けば雪も積もらん同じ景色にとけ込む穴のその向こう側にあるのはいつの景色ぞあなたと並んだ景色にならぶあなたのいない景色は穴の向こう側あなのある世の穴は見えずに少しだけ手を伸ばせば重なり転ずる誰も気づかないままころころと落ちた先にあるのは見知りたる世界おむすびころりん転がった鬼さんこちら手の鳴るほうへ彼方此方(あちら . . . 本文を読む
呑気に鳴いて呑気なものかともそもそと草を喰み木陰に座る生きる歓びを知らずとも頓着もせずに無垢な瞳は映りこむヒトの姿の知ったことかとただ鹿せんべいのみを価値判断としてそれを持たぬ珍妙な生き物をじっと見つめる日和良き日ののどかさを知るその美しき瞳に映りこむわたしでありたい . . . 本文を読む
真心のみであなたは輝きを放ちわたしは羨(うらや)み蝕まれ本当の姿も分からないままわたしはわたしを放棄したなによりも輝いていたかったその心根の純粋はあなたと同じ輝きであったはずなのに手放したわたしに光は留まるいつか帰っておいでわたしの元まで放棄した弱さに残るともしびは何よりも強く輝くあなたの光 . . . 本文を読む
炎のなかを駆け抜けた熱さも感じずただ傷ついてそして大笑いしたのち空を仰げば突き抜けるほどの空の青さにあなたの姿は重なった燃え上がる炎は空には届かずこの身流れる血潮と同じ香りしてどこまでも天には届かない悔しさに猛(たけ)て荒れる火もやがては雨に鎮火され濡れた大地を蹴り上げわたしは大声を放ついつの日かあなたを抱きて夜を越えてたどり着きたい約束の場所炎は消えてもともしび消えずそれでも諦めはしなかった小さ . . . 本文を読む