よみびとしらず。

あいどんのう。

song

2020-12-31 16:44:46 | 散文
さめてかわいた外側の内にある熱はあつく潤いて豊かなる祈りに包まれているみのりの歌の呼ぶ声に蛙(かわず)大きく鳴きさけび其は蛇にその居場所告げた満月の夜視界は揺らぎてこの身震える音のないあなたのその音沙汰もなき訪れにわたしの指先は歓びに触れたぱちんとはじけた泡沫の外側に目の玉を丸く大きく見開きて夜は新しい朝を知る . . . 本文を読む

澱(おど)み

2020-12-30 11:29:02 | 散文
肚のうちから出ずるもの出てこんぬ顕(あらわ)にならないツキの障りにラックは欠けて運ばれる月の欠片ははらはらとかなしい楽しみを呼びかけた 帰りたいわたしの居場所まで夜の悲しみに穴は塞がれて澱のたまった大きなかたまりは気怠い毎日から明日を見つめた昇る太陽に晒(さら)されたまま晒されることのない肚の内側の澱(おど)みは重なりわたしは手を当てるわずかな温もりを糧として日の当たる場所から逃げ出した者たちは瞳 . . . 本文を読む

Letter

2020-12-27 11:21:39 | 散文
行き交うひとが遅れています待ち合わせ場所はこの通りですわたしは車窓から外を眺めて雨に濡れる景色はおぼろげのいつの景色を今日にうつすは此処にはいないあなたの面影は面(おも)の真白くその美しさにわたしはほうと息を吐きました そんなひと時からはじかれてばかりのベルの音にわたしは慌てて歩みをはやめ あなたの向かい側から昨日へと進みます互いに立ち止まることなく季節は巡り何回目かの夜明けのあとにまた夜は更けて . . . 本文を読む

おおきなかたまり

2020-12-26 12:49:54 | 散文
おおきなかたまりを飲み込んだかたちのないおおきなかたまりを理不尽さとも悲しみともすこし異なるわたしだけに与えられた良薬は口に苦し苦しくて小さく咳き込んだ外を降る雨は勢いを増して雪となる冷たい空気のあいだにもいと恋しやと誰かの吐息は赤色の頬とおなじ色してみな消えていくおなじ場所にいるべつべつの時に眼差しだけはいつまでもそこに残されていた昨日に置いてきたおおきなかたまりと      明日まで投げ飛ばし . . . 本文を読む

白い雲

2020-12-25 15:50:36 | 散文
青空に目のかたちした雲はうかんでこっちを見ている場合かとばかりに開いた証もないこころは眇(すが)めたまた別のかたちした雲を探して目のかたちした雲はすでに見失い見ているのはお前ばかりだと思うなと青空は広がり雲は何処かへと流れていく目のかたちした雲を探してその眼差しのぬくもりは太陽と重なり光を放つますます得難き雲のかたちにこころを重ねたよく晴れた日の冷たい空に雲のかたちなくわたしはあの奔放な流れる白に . . . 本文を読む

コドウ

2020-12-22 00:45:55 | 散文
形にはできない確かな在処にそんなものたちに形づくられてきたから曖昧なものでしかないこの感情はそれでも確かにいまここにある産声も鼓動も猛る魂もなんにも聞こえない世界にあって身体は冷たくなってなおわたしはそれでも揺さぶられあなたを追いかけた名前のない一日特別なことのない世界を蹴り飛ばして与えられた名前を謳歌したその名の通りとはいかない毎日にコントロール不能な思いを仮面に隠した笑って泣いて憤りながらそん . . . 本文を読む

2020-12-21 19:15:27 | 散文
みななくもおとのたよりにいましかばあとにはむおんのひびきありさりとてむけいにてをとりあいてこゆるおもいのこもりなかればかはたれときのにぎにぎしさにおとのないよるをもとめたり . . . 本文を読む

サン

2020-12-20 06:25:03 | 散文
血が上(のぼ)った明日から   空回(からまわ)りしている太陽は昇る空を巡りてカラカラと内におさめたその熱を冷たき風に晒(さら)された冷えた頭で明日を見つめた会いに行きますの一言は閉ざされた口の中でひとりから廻る殻のなか孵化を待つ感情は名前を持たぬまま卵は割れたもどかしい思いに右往左往してこの身は動かず途方に暮れる正体不明の明日から熱は光を放ち夜は明後日に明けた  行方も知らぬあなたの影を飲みこん . . . 本文を読む

雨雲

2020-12-19 11:04:30 | 散文
黄色い月も赤色に染まり君を待つ身に雨雲はかかる泣き濡れてあたたかきその頬に添える掌(たなごころ)は空をつかんで透明な涙の行く末は知らずとも知っていた音の無い夜雨音の行方は耳の彼方へあなたのふさいだ両耳に心臓の音は重なった目も耳も口も閉ざしてあなたを待った幸せに頬染めるわたしの笑みは雨雲のかかる夜の夢目が醒めたその時、目の前にあなたは現れて見開いた瞳は夜の雨に触れた涙を湛(たた)えた雨雲は流れて朝の . . . 本文を読む

北風と太陽

2020-12-17 12:13:50 | 散文
太陽は部屋にこもってぶるぶると震えている此処にいれば安全な筈に違いないと不安な気持ちを抱えたままで窓のない部屋のなか孵化を待つ北風は外でびゅうびゅうと冷たい風は熱をさらって灯火(ともしび)揺れる揺れても消えない火のぬくもりを北風は存外好ましく思い精一杯の愛情を風ははらみて大空を駆ける窓のない部屋のなか窓の外の景色を知る太陽は外の明るさにぎゅっと瞳を閉じた誰にも負けない光は殻のなか遠くではびょおびょ . . . 本文を読む

新月

2020-12-15 12:56:04 | 散文
暗い穴に似た明るい明日その向こう側にある新しい一日を夜に咲かせて夜は錯綜し夜の色に染まるはじまりは繰り返されて元には戻らぬ後にあったものの全てを飲み込んで逆さまに落とした前後は反対の鏡にうつされたこの瞳にうつらぬ月の姿はあなたと重なるはじまりの逢瀬は幾重にも呼応してあなたを失った夜は何度でもよみがえる暗闇の夜に新しいあなたは始まった . . . 本文を読む

双(ふた)つの子

2020-12-14 18:53:55 | 散文
はじまりの双子は首をかしげたそれぞれに欠けたる部分のあることをその片割れを一方は求めてもう一方は無視をした欠けたる部分のないわたしこそが本当のわたしであると主張してひとつは光を夜からも集めて欠片を塞いで丸くなりより高い空へとのぼり太陽になったもう片方は欠けたる部分のある姿こそが真実のわたしであると主張して地球に寄り添い青色の海と恋をした潮の満ち引きを引き連れて月は夜毎に姿を変えて愛しい海と戯れるそ . . . 本文を読む

メイロ

2020-12-13 11:42:47 | 散文
異なる温度の間柄から私たちは同じ生き物だとさとされた同じ呼吸のありかたで同じものを見ているわたしとあなたはてんでばらばらな明日を目指したわたしは目を閉じて見つめずに あなたは目を見開いて対峙して異なる明日のお天気の空から雨降る景色をあなたは笑いわたしは晴天の眩しさに眉をひそめたわたしとあなたはアイも変わらず黒色の瞳は過去も未来も等しくうつしいまはてんでばらばら此処にありこっちへおいでと全方位から冷 . . . 本文を読む

ハミング

2020-12-11 10:15:20 | 散文
耳から離れた小鳥の歌声ささやいていた言葉は曖昧模糊としてその意味は意味を成さぬまま語り継がれたわたしとあなたはつながらず音の響きすら元の姿から離れていった手を伸ばされた夕暮れに日の落ちる影から妖しい微笑みは胸に広がった夜が怖かったのは誰のせいかと眠れない子供らに母の子守唄小鳥の歌声からは遠ざかり音はその本質を剥ぎ取られてむき出しにされる夢に至るまでそうして出会えたあなたの口元に青い鳥の囀(さえず) . . . 本文を読む

NOーMARU WORLD

2020-12-09 14:21:17 | 散文
守るべきものがある切なさと孤独を抱えた寂しがり屋は奔放に焦がれてそれを嫌悪したムカつく奴だと口をとがらせればその口めがけてキスを試みたお前は本当に嫌なやつだと殴りたい気持ちをうちに押しこめてそっぽを向いた明後日の方角に昇る夜 ひとり寝を噛みしめたとても幸せな一日と あなたと別れた悔し涙止まらぬ一日は全く異なる同じくひとりのなかにあるひとりぼっち能わぬ難儀なセカイ目に見えぬ全てが恋しくて目に見える姿 . . . 本文を読む