よみびとしらず。

あいどんのう。

花火

2022-11-28 12:45:12 | 散文
花を掴んで夜空に咲いたあなたの名を呼びわたしは燃える遠い記憶の過ちも水面に揺らいでその影もなく真っ赤に咲いた幸せをぱっと散らしてお家へ帰ろうかあなたを忘れた夜もすがら巡る来た道かえり道わたしはなにを思うかや暗い夜道に音はどんと鳴りいつの日か季節は冬となる見上げた空には大輪の何にも映らぬ瞳の奥にいつか在りし日の思い出もなく誰かをかすめた花は咲く . . . 本文を読む

うみ

2022-11-27 12:25:12 | 散文
海をつないで珠の連なり透明な青色は海を渡った空に吼えていた頃の思い出はいま夜のなか遠い遠いと云いながらそっと手を伸ばせばすうとすれちがうわたしとあなたは沖に出て波のない心に風を求めたみどりに染まればなんて高やかなるあなたの歌声に白浪は踊るいつか月の昇る日の朝を待ちわびてあなたはいつもわたしの後ろの前にいる . . . 本文を読む

享受

2022-11-26 12:21:30 | 散文
あなたが教えてくれたこと淡く小さな哀しみをたたえてこの世は慈しむためにあるのだとあなたは崖から飛び降りた美しくなんかないこの星でわたしは知らねばならぬこと吹く風に巡る優しさをそれさえも息苦しさと共にあることを奇跡なんかないという歓びにあなたは目を瞑り光を享受するそんなわけないと知りながら冷たくなったのは夜に昇る月わたしは煌煌(こうこう)として飲み干した乾いた涙のそのわけを誰に尋ねて夜は明ける海につ . . . 本文を読む

ゆんでめて

2022-11-25 13:42:11 | 散文
左手でとらえろと誰かが言った右手は優しくそえられるよんでみてから夢から醒めたわたしは両手で抱きかかえられてはなんてつかみどころのない透明な水つめたくもなく全てをすすくなすすべのないゆんでめて . . . 本文を読む

新月

2022-11-24 12:40:30 | 散文
500年振りもなんのそのわたしはどこまでも永らえたそんな瞬きを星に叶えてようやく出会えた昨日のわたしに光は欠けて遠く離れた海の底わたしの言葉は眠りについたおやすみなさいのその前に空に輝く月の姿なし獏は穏やかに目を瞑りつむいだ台詞はかくも震えた絡みつくのは蜘蛛の糸加速する時間はなぎ払われてわたしはひとつ涙の枯渇した月はひとりきり誰も届かない場所から手を伸ばすそんな白い輝きを夜に、見た。 . . . 本文を読む

2022-11-23 12:45:45 | 散文
いとまのうちに出合いは分かれあまつちに帰れとあなたは云った雨の音にも月の流れもよるべなくなんてこころもとない雑踏に立つ泣きたくなるほどの漣(さざなみ)はだれの耳にも届かずにいる暇に飽かして手の鳴る方へしるべの先にて塞がれたのはわたしの瞳かそれともあなたの陽だまりかなんにも無いよとささやくあなたはお日様と同じ匂いがした . . . 本文を読む

山奥

2022-11-22 13:27:13 | 散文
山奥と云う都会にいりて視界は開けず心は迷う味方も仲間もみんなつちの上それぞれに枯れ果てた落ち葉を踏み鳴らす芽吹く命の真新しさは新緑を目指して深緑となり花の祈りはかくも短くわたしはひとり木洩れ日に歌いどこに立ってもみどりはかすめず風は吹く朽ちたわたしはこの山の糧となりまた新たにつらなるいつか見た日の山奥にいつかあなたと出逢うまで . . . 本文を読む

ヨル

2022-11-21 12:01:17 | 散文
その黒色の瞳から色をのぞいて夜は産まれたあなたの心に見えているのは明るい夜のした白い波の音は寄る辺なくここじゃない場所へおかえりなさい涙はあふれた夜を見つめてわたしは染まるこの色の名に意味を与えたわたしはのぞく丸い月の穴 . . . 本文を読む

EN

2022-11-10 11:35:01 | 散文
かき乱されて朝は足掻いて光を放つ苦し紛れに影を産みほんとうのことは何も記されないまま赤く照らされた君を想うとき西の空日は沈み廻るこのエンの中追いかけっこはどこまでも続く否応もなく発露(ほつろ)されたのはむき出しになった感情と新月の昇った暗い暗い夜空何も見えない真ん中でわたしは手を握り居場所を求めるお仕舞いまでには辿り着けずにいるただあなたの温もりだけが欲しかった . . . 本文を読む

メイ

2022-11-09 11:33:45 | 散文
メイを焦がした頑ななこころでメイにはあらず廻(まわ)り廻(めぐ)らず運ばれるもの罪を重ねてなお清らかに水は流れて背後から道はつらなる曲がりくねっても澱(おり)を重ねた明けの花 . . . 本文を読む

たま

2022-11-08 11:28:34 | 散文
たまゆらにもゆら風の鳴る水の音は絶えてわたしはゆれるひととなり明かりの灯るゆらり火の元にゆらぎ月はその姿隠した夜の幸(さいわ)ふいつか見た君わたしの口に触れた順番を違えぬようにといつも違えるわたしの涙にたまもゆる . . . 本文を読む

スター

2022-11-07 11:26:27 | 散文
目に見える星と見えない星と目に映る星と映らぬ星を全て撒き散らした宇宙(そら)から眺めるこの星に流れるような悲しみも焼き尽くす程の執着も全部持て余したまま輝きに変えたなんて無頓着な眼差しでわたしたちは空を仰ぎ星を乞う流れる星に願いなど無いと歯を食いしばりながら互いを見つめた星の見えないこの空にあなたの光は溢れている . . . 本文を読む

はな

2022-11-06 11:27:27 | 散文
姿を見捨てた花のあるというただその香りだけが此処に残されたどこまでも昇りつめたなら今宵あなたの元まで花を忘れてわたしは枯れた枯れることのない花のあるというこの思いを束ねて時は過ぎ夜を待つどうか月に取り残されたわたしに触れてと此の世は暮れの藍名前を持たない花の云う . . . 本文を読む

◯と◇

2022-11-05 10:57:17 | 散文
かたちあるなかに名前無くかたちなきものに名前を与えたこの有り様を何という激昂も沈黙も月の光も明るい日向(ひなた)の歓声もふたりの声の交わりに私は揺さぶられ漣(さざなみ)揺れるどうかなるなら思いのままに思惑外れた窓のそと区切られたかたちにねじれた疑念生ずる自ずからなる森の道私の居場所はなんのその . . . 本文を読む

2022-11-04 10:55:49 | 詩(イラスト付)
その本体に影と名付けて夜と同じ匂いがしたとあなたはその面影を懐かしむもう触れることのない手のひらに柔らかな温もりを重ね合わせた影に触れわたしは夜と同じ眼差しで光あるなかに影を知る . . . 本文を読む