よみびとしらず。

あいどんのう。

音を拾いに

2021-01-31 12:51:03 | 散文
不器用な音を拾いに行った音のないよく喋るひとりの男誰よりも真摯な心根でとるに足らないことばかりを口にして空っぽな内側は渇きを覚えからからと空虚な痛みに耐えていた傷のない傷口はどんどんと広がり何もない大きな暗闇にのまれかけているだから男は音を求めてなんの救いにもならない不恰好な音に耳をすませば聴こえる声の柔らかなぬくもりに満ちているのは翻(ひるがえ)って鳴り響く海の子守唄 拾った音は涙の足音ともうた . . . 本文を読む

かぜ

2021-01-28 11:23:45 | 散文
眠れぬ夜にしあわせひとつ落とされてあなたを知った柔らかなぬくもり風の音と共に熱は加速する産声をあげた純白な音は冷たい風にさらされてかなしい思いの何もかもをばいつも忘れて私たちはかぜを患(わずら)う呆れ果てたともれるため息は春めく彩りを知っている季節は巡り吹く風のその色も知らずあなたに触れた臆病なこころはさらわれて震える手のひらは伸ばされた風に乗り届いたあなたの声に微笑みは溢れて誰もあなたを知らない . . . 本文を読む

OTO

2021-01-27 14:10:32 | 散文
アマ音の金音に  布に触れた水の音はトタンと絶えた頭のうちに響く何も無い音は震えて崩壊を希(こいねが)う水の音のズレたるを    自らのせいにして蔑ろにすらば音は割れたり八つ音に夜の静寂は音を知り首は熱を持ち酒を求めた音に触れて蟒蛇(うわばみ)居残る全てを受け入れて首を差し出したその色の白さに目を奪われて鐘は鳴り響いた鐘の無い場所に泣き濡れて姿を失ったあなたの影を太陽は照らしてそして影さえもいつだ . . . 本文を読む

酔ひ

2021-01-26 09:36:18 | 散文
音に酔い自分に酔うて夜は更ける人に酔い嫌悪を増した世の果てに此方彼方に明かりは灯る何処(いづこ)にもあるひとり寝の泣き濡れた頬に月明かり月の灯らぬ夜の静寂(しじま)にとくんとくんと身体は震えて熱をもつ酒に酔いへらへらと笑うて過ぎ去る時にいつか見た知らない誰かの声は鳴り響き酔い醒めて後には変わらぬ景色冷たくなった枕の元にも明かりは煌々と灯されるのらりくらりと思惑かわした酔いどれ共の染まる思いと染まら . . . 本文を読む

メロディ

2021-01-24 17:26:40 | 散文
美しいメロディをわたしは知らない美しいメロディはわたしは要らないただそこにあるという戯言に美しいものの在処を問うたとて物言わぬ堅物の惑う涙はとめどなく溢れて間違った言葉だけが放たれた我が言の葉にいのちをそそげばただの戯言にこそ美は宿るそこにある筈のメロディを底に流し入れて水すみわたる我が哀しみに似た空(から)の彩りは美しいメロディに弾かれた指の爪(つま)から我が身を寄せた寄る辺ない夜に染まる音楽を . . . 本文を読む

2021-01-23 11:02:22 | 散文
濁りのありて滲む景色は透明な膜のうちに隠されたはやく帰れと幼な子は小さな鼓膜に音を響かせる今はもう見えない光のありて暗闇は暗闇のまま保たれる幼き手のひらは今もこの掌(たなごころ)掴むには渇きすぎて水を求めるただの水にあらねば罪を重ねて酒精は酒を酒たらしめた呑むに易くない静謐(せいひつ)さを呑み込んで透明はこの身に浸透し世界は歪む笑うお前の後ろ姿をいつまでも追いかけた月の無い夜 . . . 本文を読む

白昼夢

2021-01-21 18:37:33 | 散文
渡り身 わたりみ還り身 かえりみ変わり身 かわりみ なれば一年(ひととせ)背に乗り月夜を越えた一日(ひとひ)火に当たり居場所をくべて昇る煙の白さは白日の夢空にある一面の灰色の雲はわたしの胸のうちにあってこそそこに降る雨も無く底なし沼は逆さまにつながりわたしは眼前に青空を見た空白は見当たらずいつも此処にある手のひらは乾いて冷たい水を希(こいねが)う泥濘(ぬかるみ)に触れて澱みを慈しみ真っさらな雪の子 . . . 本文を読む

くじら雲

2021-01-19 10:49:35 | 散文
くらくらとくらりくらりと視界は歪んだのらりくらりとかわした答えは問いかけとなり水に浮かんだわたしの姿を見ずに離れたあなたの背中ばかりが記憶にあふれてひとりぼっちに入りびたるひとりになんかなりようのない世界であなたを追いかけて月日は廻(めぐ)るくるくるとくるりくるりと踊りを舞えばスカートはまくれ上がり冷たい夜は現れるはらはらとはらりはらりと舞い散る雪のその熱に孕んだわたしの感情は凍てつくこともなくか . . . 本文を読む

みずうみ

2021-01-18 20:13:26 | 散文
湖に霧のかかりて幻想は顕(あらわ)となり 大切な誰かは姿を隠した飲むには冷たい水をさらって口をすすいだ口元から滴るその水はこの胸の痛みの正体を知っている穏やかな水辺は印(しるし)を失いそれでも変わらず透明な膜の内から伸ばされた手のひらは満月を仰ぐ満たされたばかりの光を受け入れて青い炎は夜に染まってあなたの元へあなたの眼差しもそのぬくもりも湖に沈んでたおやかに揺れる重力を忘れてひとりになった昏(くら . . . 本文を読む

レイン

2021-01-17 16:55:52 | 散文
いつも降る雨異なる雨の雨音はすれども誰にも聞こえない聞こえてくるのはもう語り尽くされた思い出話雨は重なる悲しみと歓びの記憶はあなたに舞い降りて傘にふさがれた足元に広がる水たまりにうつるはわたしの知らないわたしの姿憂いを知らずに水たまり蹴飛ばすあの頃のわたしには長靴さえもが憧れだった彩りはくすんで青色の空は雲の向こう側空の青さを知る雨はただ真っ直ぐに地上を目指したたどり着く頃にはぱちんと弾けて透明な . . . 本文を読む

月の花

2021-01-16 09:23:19 | 散文
愛しているにも満たない思いしかわたしは知らないと嘲(あざけ)るわたしにかたちなきものを不自然な型にはめる必要はないとそれでも頑張ったあなたにご褒美をあたたかな膜におおわれた柔らかな心にわたしの冷たい雨は降り与えられた軒下にはあなたの影と月明かり愛しか知らない幼子をただ見守るしかできない理不尽な世界は無理のない笑顔を要求されたあなたのぬくもりしか夜は知らずに日の当たらない場所に正解を求めた悲しい世界 . . . 本文を読む

MOON

2021-01-14 13:09:34 | 散文
あなたの眠りを妨げた見せないことで守りきるのだと身勝手な正義感はこの身を滅ぼした全てを恨むには欠けている世界で愛らしいあなたはひとり歩かねばならないその歯痒さを歯を食いしばりながら受け入れるしかない卑小なわたしをただ月だけが眺めてた可愛いあなたは眠りに落ちて今日も不確かで不条理な思いを糧とする歯を食いしばり耐え生きるこの世界をどうか愛してと私の知らない誰かはそっとささやき息を吐く . . . 本文を読む

2021-01-13 00:26:30 | 散文
見るに良し歩むに難し雪の道頑なな姿は儚くもはらはらと舞い降りて握れば硬く或いは埋もれて音も無し日の光受けてなお梔子(くちなし)色には染まらずにただ真っ白に世界を隠したあなたを愛したその声色は手のひらに解けてぬくもりを知るわたしのぬくもりのその在処にもやがて大雪は降り積もり夜と共に焦がれた静寂は訪れる雪は音を色をもあまさず吸い込みわたしだけがその場に取り残されたしんしんと訪れた音のない夜に柔らかな月 . . . 本文を読む

狼少年

2021-01-11 14:43:38 | 散文
わたしの目にうつる真実を口に出して伝えども誰も信じずただ敵だけが増えていった憎しみの眼差しはわたしを突き刺し覚えていやがれと恨みだけがそこに残ったどんなに大声を発しても誰の耳にも届かないわたしの言葉本当のことしか言わない姿を狼少年と名付けてつま弾きにした本当のことなど知ろうともせずにそれを追い求めて笑うふつうの人々悪い人たちはさらに笑って天に唾吐き人生を謳歌する本当のことなどまるで意味のない世界か . . . 本文を読む

SUN

2021-01-09 11:53:13 | 散文
出られない内側に端を発した太陽のぬくもりはそこから溢れだし優しさとなるぬくもりに怯えて遠ざかり或いは否定して己を守ったその内側にこそある太陽を傷つけたくなくて自分の身体に刃をむけた外側に出たいという欲望は赤色に染まって叶えどもそうじゃない答えを導きたいわたしは外の世界に輝く太陽を見たそこに答えはあったとてたどり着くことのない回答に衝動は焦りや怒りに成り代わりそうじゃないという導(しるべ)の声は今な . . . 本文を読む