よみびとしらず。

あいどんのう。

めなしどち

2019-02-28 23:09:01 | 散文
かこにもんどりうった亀の背はさかさま 飛ぶように泳いだ海に別れを告げて さかさまな視界はさかさまなまま ときの海を渡りつちに棲む あやふやな眼差しがとらえたものは 赤色とあお色の格子して ふた色の明かりがともされようとも わたしはここから離れない 雨のなかで照らされた あの鏡はわたしをうつすことなく 水はしずんだ 猫はあまやどりして君を待つ そらにのぼったお月さま 全てをみすえた 見向きもせ . . . 本文を読む

水の光

2019-02-26 21:01:40 | 詩(イラスト付)
水からあふれた光は踊る とまどいながらも ひかりを目指して 行方もしれず 居場所もしらず それでもとどまるためしなく おそれず進め 美しき調べはすでに知っていた 理(ことわり)を越えた先で思いは爆ぜる explosion それすら内包した揺らめきのなかで 水はあふれて光は踊る . . . 本文を読む

はるこい

2019-02-25 12:04:47 | 散文
右にかたむく痛みあり かけおちたしずく尾根に届くまで 夜をかけるもたどり着けずに朝日はのぼる 冷たい水の恋しくて すみわたる空にその色をうつすも この手に水の音沙汰なし 童女(わらわめ)の瞳はじっと見つめて やわらかくほほえみ母に手をのばす のばされた先のぬくもりに 太陽は熱をおびさらに輝きて さくら色の季節を大地に照らす 風の音(ね)に どこまでものぼりゆく龍の咆哮はかきけされ おだやかな木洩 . . . 本文を読む

INSIDE

2019-02-21 18:58:31 | 散文
閉じた瞳に隠されたのは 太陽のかげ 水のめぐみにはりめぐらされて 身動きもとれず 暗闇と瞳は同化され 逆さまのわたしを誰も知らない うつしだされる世界の手前で おいてけぼりにされたわたしの姿は どこまでもあなたの世界にはうつらずに 閉じこめられた 瞳を閉じてもわたしのかたちはどこにもない せめてこのいのちが嘘であったなら 怯えることもなくすんだのに 傷つくこともなくすんだのに たとえそれをどん . . . 本文を読む

あかつき

2019-02-20 16:13:39 | 散文
あつくかけたたいように ぼくは月のかげ 熱をさまして荻を縒(よ)る 猫は立ちて眼差しともり 寝子もまた発ちて真名(まな)指しもどる 根断ちたマナは刺さりて悖(もと)り あかりはなくとも そこに現るひかりとかげ ひとは歌いかぜに舞い草木はねむる 分かたれたふたつがひとつに出会うまで ぼくは日のひかり おなじいのちにともされた あかりなくとも 暁はのぼる 世界の果てにあろう . . . 本文を読む

夜の涙

2019-02-19 16:56:12 | 詩(イラスト付)
ヘビにかまれて夜は泣く 雲は夜の涙うけとめ雨をなし 親子はあまみず汲み取り糧(かて)とする ひと助(たす)くタヌキをキツネは見守る草のうえ 夜の涙は大地にしみいり 世界は感情と水に包まれる 誰も気づかぬ誰かの涙は 夜にかつての痛みを知らしめて 暗闇はむかしみた涙に音もなく寄り添い 誰に気づかれることもなく ひとり泣く 水めぐる世界に降る雨の かなしみの泉はそらの果て はじまりの場所も忘れてしま . . . 本文を読む

月の降る夜に

2019-02-18 11:17:11 | 散文
月の降る夜に さやさやと 黒色のみどりは風にゆれ 舞い散る月のかけらに少しおびえた 月の降る夜に ゆらゆらと 沼のそこ眠る魚は光につつまれ夢をみる 月の降る夜に かなしくて 降る月の姿に気づくこともなく 暗闇にひたりひとり かのじょは泣いていた 月の降る夜は きらきらと こぼれ落ちた光に思いは触れて わたしは光のかげに引き寄せられた 美しきことのはかなさを かげは色ふかく落としこみ 夜は静 . . . 本文を読む

子守唄

2019-02-17 23:00:21 | 詩(イラスト付)
ねむるなまずにいたずらするよ カメはあわててにげだした ねた子おきるなおころりよ ひびくうさぎの子守唄 おだやかな歌声になまずはねむる ゆらゆらゆらめく水のそこ うさぎはなまずにらくがきを ねんねこころりよおころりを なまずや良い子だねんねしな ゆめのなかいっしょにあそびましょ . . . 本文を読む

トンネル

2019-02-16 11:48:46 | 散文
長い長いトンネルは地下へともぐった 本当の姿はだれにも伝わらず 曲がりくねったトンネルの先に光を求めて 活発化するトンネルに 褐色の大地はうねりをあげる 前日のご褒美なんかいらないから 欲しいものはただこの先にあると トンネルは足とめず立ち止まることなくただ過ぎ去った へたななぐさめなんかはいらないよ トンネルはつづく 闇にいり光めざして 太陽も月も届かない孤独な夜に 愛のある場所を探し . . . 本文を読む

少年

2019-02-14 12:15:42 | 散文
男の子は追いかけた 西も東も分からずに お化け煙突は見るたびにその数を変えていく 三本 二本 一本 四本 両目は痛みをひきついで 痛みも色もなくしてなお笑う 一本 三本 四本 二本 お化け煙突はゆらゆらゆれる 水のなかもぐり 世界はゆらめく 不機嫌な狸は男の子の裾(すそ)つかむ 離れまいとて 真昼の太陽は目眩くも かれの瞳には応答なし ハローハロー お化け煙突 本当のすがたはなんで . . . 本文を読む

鬼の涙

2019-02-13 20:24:06 | 詩(イラスト付)
逃げまどうことも忘れた迷い子の 指先から垂れたる赤い糸 鬼は迷い子のみこんで 迷い子は赤い鬼の一部となった ひとりの若者赤い糸たどり たどり着いた先は鬼の口先 若者は泣きながら刃をむけた 迷い子は鬼の腹のなか泣き濡れて 鬼もまたその瞳から涙をこぼす 涙のわけは鬼にも分からず 鬼の目に涙のそのわけを 鬼は分からず涙はやまず . . . 本文を読む

水の色彩

2019-02-12 22:42:07 | 散文
水にゆられて 夢にはおちずに 空は青色 雲間からさしこむ光を傘で遮断した その傘の柄つかんだ手のひらは色彩を育み にじんだカンバスに月明かりひとつ ゆらゆらと道はゆがむ 真昼の月に夜のぼる太陽 双子はそれぞれ西と東へ どこまでも行っても再会はあたわず 道はゆがんだ 水にゆられて 糸ゆらめいて 重ならぬ手のひらは光を遮った 目眩くことなきよう 大切なあなたをまもるため 傘はかさならぬ くるくると廻 . . . 本文を読む

リバース

2019-02-10 23:23:53 | 散文
逆さまの傘に雨たまる ぽたぽたしたたり雲晴れるまで したに落ちた空のすきまからみえた青色に 天までとどけと龍のぼる きえた姿は白き煙におおわれて ひらいた玉手箱は時さかのぼり 貴方はふたたび始まりの場所で泣きわめく 逆さまの空にのぼる月 ひっくり返された昼夜の果てに いつかみた鳥は目的も忘れて海を目指した 夜のとけた海のそこでみる夢に 目隠しされた光の向かうべき行く末よ 皆目見当もつかず有耶無耶( . . . 本文を読む