よみびとしらず。

あいどんのう。

白い足跡

2022-04-24 13:22:17 | 散文
前後左右のどちらへも向かわずにかたく閉ざしたままで俯いた自らもしなければ自ずからも無しそうやって明日を目指していた道のない道のうえを蛍は通る誰も知らない夜の行方を白い足跡は懸命に追いかけた . . . 本文を読む

ハート

2022-04-20 11:30:53 | 散文
音楽と重なる心音は和らぎを覚えてわたしはまたひとつほんのひと匙の優しさを享受するまるで優しくないわたしからこの受取手のない音楽をどうか耳をふさいでと願うのはひねくれているからじゃないと呟く天邪鬼心の本(もと)の音を辿れば天照らす月は夜に隠れた儚く消えゆくかつてのあなたに教わったのは偽りからなる本当の名前その名にあなたは重ならず記憶から距離をおきわたしは見つめたなんて悲しくなるその理由(わけ)を生ま . . . 本文を読む

合図

2022-04-18 11:05:30 | 散文
恐怖に濡れたあなたに傘を届ける夢でもあたわないさいかいのゆうべに片目は痛んだ鏡にうつったもう片方の瞳は臆することなくわたしを睨んで思い出を運ぶ鏡のなかの片目のいうは黙して語らぬあなたの在処決して伝え聞こえぬは再会を誓った今宵の月の場所湯に浸かり感覚はくらむ白々しくも元の在処まで両目を閉じて息を吐き出した水に濡れたわたしは傘も持たずに月を追いかける . . . 本文を読む

2022-04-17 10:54:24 | 散文
動くはずのないものは彼方の場所から此方のわたしまでハローと呼ぶ声の懐かしさに耳をふさいだあなたの笑顔に涙あふるる痛みから苛立ちから憎しみからの解放に明日の光はすべてを受け入れる悲しいくらいの空の青さから雨を乞うわたしの渇いた喉に息を吐く食らいつくのは満月の夜狼にも似た兎の影をどこまでも隠してあなたは嘘を吐くどうか吸い込まれる前にここを離れてわたしは空を睨んで咆哮した吐き出されるのはただ祈りのみわた . . . 本文を読む

A bird

2022-04-16 10:52:29 | 散文
苦しさの蓋を外せば開く凾(はこ)は九面体そのなかに飛び込んでわたしは探した希望ではないわたしの姿を明らかな光に照らされて後ろを向いたままの影は抱かれる鳥は鳥の姿を忘れて鳴き方を放棄したこのなかにあるここではない場所は今日も健在し健やかなる毎日を謳歌するわたしを閉じこめて扉は開かれた鳥の姿を思い出せども歯牙にも掛けないわたしの背中に風は吹き焦りも苛立ちもこの空に流されるあなたの願いは果たされてわたし . . . 本文を読む

動乱

2022-04-15 10:43:57 | 散文
気持ちの急いて急いて急いて背いた後ろの正面に立つあなたの表情は感情を置き去りにしたまま泣いて笑って過去に引きずり込まれている夜の淵(ふち)崖の際(きわ)に立ちその顔は笑って泣いていたままならぬものをままならぬままけれど諦めないでとささやいたのはなんて無責任な夜の月この瞳は炎に揺れたその熱を内包した夜は眠れずに朝を待つ朝なんか来ないでほしいという願いはいつも破棄されて唾棄すべき言葉に置き換えられたも . . . 本文を読む

2022-04-14 12:29:13 | 散文
希望を抱く願いは叶わずにそれで微笑む日常をみんな当たり前に受け入れて涙は枯渇するそれに気がつかないふりをした本当に下手くそな演技にあなたが笑えば太陽に照らされて思いは加速する心臓の音の鳴る煩わしさとその音に乗るあるがままそこに在る幸せを嘆いて罵倒しそれでも折れないで立っていたそんな当たり前の毎日に雨は降る希望を抱くのは枯れない大木(たいぼく)月夜の晩にわたしの願いは叶わずにいた . . . 本文を読む

あらし

2022-04-13 12:21:55 | 散文
感情を抑えて流れる涙は海の静けさと同化してどうかしていた私の影は消えていこうとするそんなあなたをわたしは追いかけた月夜の晩に忙しなく動乱の時を思い出しては静寂にまぎれて音だけが飛び跳ねた音楽は駆けめぐる歯を食いしばり堪(こら)えていたのは抑えきれない震える葉先に怒りも悲しみも分け隔てなくこの内側に嵐を迎える夜凪(よなぎ)に泣いていたのは誰の姿かわたしはかたちにもならない影を抱きしめている . . . 本文を読む

なみだ

2022-04-12 10:50:47 | 散文
涙を与えてとあなたは泣いた泣くことのない夜のあいだに泣くことも忘れて乾いた笑いをせめてこの喉の渇きに涙を与えてわたしは息を止めて目を凝らす水の底から何もない暗闇にゆらゆらとわたしはあなたの涙を待っていた . . . 本文を読む

チャイム

2022-04-11 12:51:13 | 散文
地団駄踏んだ子の糸をひくあかあお黄色の細糸を引く細道の行方ににっこり笑えば泣いた青鬼から赤鬼怒れり私のほうまでいらっしゃいねんね子起こさずゆりかご揺れる地団駄鳴らさず鐘は鳴るあの鐘の音が怖いと泣いたあなたは誰よりもそれを求めていた夜と朝とを交差して何かが欠け落ちた月は昇る静かに響くは鐘の声私はことわりもない御月様に憧れた . . . 本文を読む

イチナナ

2022-04-10 10:56:01 | 散文
17万年も昔のことなんて誰も覚えていないでしょうとあなたは云ったいまここにある光のなかで産まれた意味も知らずにただ立ち尽くしていた17万年間の迷いの末に真っ直ぐに飛び出した光をこの目に焼き付けるすべもなくわたしは目を閉じて見つめるなんのわけもないはずもなく煮詰まって狂い咲く混沌とした世界の真ん中にある小さな光はパンドラの筐のなかで泣いていた . . . 本文を読む

イチマルハチ

2022-04-09 09:25:25 | 散文
八つ目を凝らして見つからず割りきれず堪えきれずに我を見失う鐘の音を道しるべとした夜に鳴く掌は熱をもち水の合わぬ場所に置いてきたのは108つ目から更に離れて最後の地点は枯渇し割れた掌から離れた水の調べをもう一度追いかけてこの胸に抱く良い風に乗り何処までもそして風の届かぬ夜にこもった海の底に炎は熱(いき)り立つ . . . 本文を読む

星と水

2022-04-08 10:47:28 | 散文
巡りて渇き痛みに起因した水の怒りは憤る術(すべ)を知らずにわたしは泣いた泣いて生まれて乾いて笑い言葉は本当の意味を放棄してわたしたちは愛を知る星となる知ることもなくやがて忘れた毎夜見る影の儚さよせめて夢であれと願いを超えてあなたは祈る水の渇きに流れた声は海を目指して日は沈むどうかあなたに幸いあれと水が託した星は発ちさらさらと溢れた誰かの涙に感情の波は内側に宿る魚は星も水も手放し渇きを覚えたわたした . . . 本文を読む

2022-04-07 11:16:35 | 散文
踏みにじられてなお笑ったそんな筈はないと憤るあなたは本当に優しいひとだった怒れないあなたと笑えないわたしと怒ることも笑うこともない花束ともう果たされることのない約束を携えて風は絡まり言葉を超えて月は見て見ないふりを繰り返す花の香りに月の明かりは届かずにいる眠りから醒めないまま続く物語にここには居場所がないと赤子は泣いた花を握りしめて産まれたあなたは花の知らない感情に翻弄されて海が見たいと呟いた . . . 本文を読む

文字化け

2022-04-06 08:53:35 | 散文
文字に化けた思いを偽りそうやってあなたを守っているつもりになっていた文字に化けた名前を偽り本音を隠して刃を立てたのは本当は抱きしめてほしかったから文字に化けた言葉を偽りわたしは安心して言葉を並べてこれは嘘だよと嘘を吐くどうかもう何も語らないでとあなたは言った文字は化けずに心をといた荒野に咲いた彼岸花 . . . 本文を読む