よみびとしらず。

あいどんのう。

月明かり

2022-09-30 10:47:50 | 散文
なんにも変わらない夜のこといつもと同じく夜は明けて光明開けるそれは不条理ばかりの月だったその寂しさに照らされて夜はわたしと世界とを重ね合わせたなんて薄暗いこの目の奥に棲みついたのは誰かの希望その涙から海は産まれたなんて小さなこの世の果てにひとり立つわたしは真昼の空のした新しい時の音の静けさは遣る瀬無く鐘の音響けとわたしは吼える言葉を忘れて月日は廻りいつかを忘れて日は暮れた夜も命も短くて花の香りはど . . . 本文を読む

空海

2022-09-29 13:34:28 | 散文
海を見てとざされたまま涙を捨てて瞳に差したのは明るいあなたの呼ぶ声と柔らかな記憶を偽装したわたしは目を閉じてみつめるその先にある泥濘(でいねい)から光は開けてわたしに花をあなたに空を共にかけ離れた場所を選んだ海のない場所から海を見つめるのは誰の影かと柔らかな記憶の偽りは雲散霧消し視界はにじむわたしの姿はあいも変わらず花のようには笑えずにいてあなたは慈しみの雨を呼ぶ海の底から流れてわたしは空を見た . . . 本文を読む

ソング

2022-09-28 11:12:01 | 散文
歌を見捨てた子守唄は人魚姫の抱いた夢物語海は荒れて泡沫(うたかた)踊る音の便りはかき消されて月のない夜にその残骸はわたしの放ちたかったもの閉塞に約束された静けさを待つあなたは抱いて離れずにいた声を忘れて泡となるとも何度でも繰り返しわたしは歌うなんの祈りも抱かずにいた言葉はなくとも光を糧にそれは月のある夜のことわたしはあなたの面影を追いかけて泳ぐ魚となりていつかこの願いの名のもとへ涙は最後まで海と繋 . . . 本文を読む

シンカイ

2022-09-27 16:32:00 | 散文
ここに寿(ことほ)ぐ深海のこと暗闇には勝るものなしこの鼓動から泡は弾けて渦を巻きいとめでたきに我踊る明るいわたしの光ありてただ唯一の灯火こそは新しき海の灯台下暗しランプをかかげるひとの影からようやく夜は開けて鐘は鳴る真っ直ぐに落ちてそのまま昇った踊り方を忘れて透明な魚は舞い踊るその場所はまるで違う景色のいつもの日常わたしは海の匂いを嗅ぎながら泳ぎ方を忘れて青色の海を抱きしめた . . . 本文を読む

2022-09-26 18:56:42 | 散文
星を抱き暗闇をなすあなたの輝きはなお増してわたしはわたしの暗闇を誇るそれは苦し紛れの偽りの元の音になにもきこえずあなたの光はわたしを打ち砕きて夜空に昇る願いの叶わぬ一番星はとてもよく似た誰かの願いを託された抱いたものは赤青黄色あなたは迷い子風に乗り夜空を見上げてわたしを探すわたしが誰かも知らずして真昼の空は同じ位置にあるこの星はまたたきてあなたの瞳はそれをとらえたわたしはどうしようもなく狼狽(うろ . . . 本文を読む

よびごえ

2022-09-25 16:14:43 | 散文
空を仰ぎて明かりは消えた私が息を吐き出せば真っ直ぐな光は夜に咲く空を仰げば吹く風に乗り流れる水はあなたの背中と同じ匂いがした真っ白に立つ迷いながらの道中にかんながらうろたえて視界は泳ぎあなたに溺れたわたしはわたしの思いとは裏腹に雷(いかづち)鳴りて全ての明かりは落とされるおおいと泣いて大いに鳴いた仰がれた空は憂いを帯びて雲は流れるどこに置いてきたのか風と虹の在処わたしはよんであなたによばれたこの世 . . . 本文を読む

いも

2022-09-21 17:31:56 | 散文
ひつじは鳴いたえあなたの夢を見るアンドロイドも眠りについて御伽噺は繰り返された常夜の波の音海は辿らずわたしは深まり日は沈むようやく知れたあなたの横顔はぱちんと割れた眠りから醒めて泡沫(うたかた)の白い漣(さざなみ)にわたしは怯えるいつか見た日の幸せを重ね合わせて夜はどんどん満ちていく溺れたわたしは海に流されて海のないところまで日は暮れて月の舟渡る誰かの面影に心許無くただ誰かに許してもらいたかった私 . . . 本文を読む

ウラガワ

2022-09-20 17:08:37 | 散文
喋んなくたってほらバレてんぞほらバレてんぞ居心地の良いその場所に居着いて気を許したなら喰べられたいつからか裏側に棲みついた月の裏面からその舌先の裏まであちこち廻りたどり着いたのはみんな付け出したマスクのウラ側仮面を外してわたしは現れる仮面をつけてようやく安堵したみんな同じで違うこと隠したわたしの本音とは裏腹にどうせバレないはずだったものなにを見誤りあなたに出会ったその裏側にまで手を伸ばすなかれ傷つ . . . 本文を読む

RIVER

2022-09-19 12:02:14 | 散文
あなたが優しくて流した涙は天の川となり夜空にかかるわたしの歓びもあなたの微笑みも困った顔して洗い流したとどまるなかれと君のいう数をかぞえて離れたわたしの手をとるあなたの大きな背中からわたしの手のひらは離れて熱をもついま確かにここにあるわたしは夜空にある星よりも輝いていたその一方で渇きを覚えたあなたはわたしに寄り添い水を求めた空にかかるは天の川わたしは届かない夜空に手を伸ばすこの手は冷たく濡れていた . . . 本文を読む

ツキ

2022-09-18 10:48:18 | 散文
あなたの見つめた美しい景色のそのひとかけらはわたしの悔しさからなっていた泣いて見たのは夜の月あなたの声を聴きながらなにも聞こえないと叫んでいたなにが言いたいのかも分からずになにかを伝えたくて歯噛みしてこの目はまったくもって見る目無く真実と嘘とに振り回されているくるくると廻りぐるぐるになったわたしは目を瞑り滂沱するそれでも開かねばならぬ視界の先に青い海はありわたしは応答を待ち未だ叶わぬ海に背を向けて . . . 本文を読む

ひとよい

2022-09-17 12:12:17 | 散文
誰もいない場所で人に酔い思い出すことは一宵のたおやかになびく黒髪の他には誰もいない暗闇に眼(まなこ)を開きて息を吐き瞳を閉じてさらに飲みこんだ鯨になる夢を肴にして酒の香は辛いとあなたは言った醒めて揺らいだ誰かの影を辿れども行き着いたその杜の水辺にはひとつの白夜人の気は大勢で声を張り上げて歌う大きな暗闇は悔しくて泣いたただわたししかいなかった . . . 本文を読む

転た寝(うたたね)

2022-09-16 09:29:24 | 散文
なにも考えなければ飛べるはずの鳥は考えることを放棄して眠りについたおやすみなさいと云う声の誰かに届けと星は祈ったそのまどろみに住むあなたの優しさはいくつかえりて時を待つ癒えてあなたの口ひらく時わたしは犯した罪を知る空の色は青いまま草は風にそよぎてその姿を隠す記憶をたよりに足跡を消したわたしは夜にさえ届かずにいる . . . 本文を読む

御高説

2022-09-15 11:13:19 | 散文
こわくないこわくないもうこわくないと自分を奮い立たせたそのすぐあとに否定しちゃ駄目だとご指摘を受けたやっぱりこわいこわいこわいこわいこわいと再び震え出したわたしはこの場から動けずに固まった青色の空はきれいだとあなたはわたしの手を引っ張り美しく笑うわたしもまた笑いそれはとても死んださかなの様な目で否定して否定しちゃだめだから否定しなくなったもうどうしようもなくなにも考えなくなったわたしの耳元にあなた . . . 本文を読む

2022-09-14 09:19:38 | 散文
とんでいけたらいいのにと嘆くその鳥の背中には羽がついている見えない傷はどぶんと鳥の羽を濡らしただけでは飽きたらずお前はもう飛べない鳥だと繰り返し何度でもあなたの名前をささやいた鳥なのに飛ばないのはおかしいと正論を吐き鳥なのに飛べないのは可哀想だと憐れんだそんな私とお前に吐き気がした鳥は空を睨むこのかごの内側から外側にあるあなたまで震えたくちびるで歌をうたえば風は吹くひとつふたつとわたしには一切の執 . . . 本文を読む

PLAY

2022-09-12 11:41:47 | 散文
世のためもなく人のためもなくまして自分はかやのそとそれを一体あそびと説くや狐につままれた鼻つまみ者踊れや踊れその舞いのなか海を思い出したさかなの子はここを抜け出して大地を蹴りあげた一目散に目指すは海の底わだつみの声はなりやまぬ道しるべ去るとき聞かばと知りながら力は抜けてわたしは夢に入る誰の帰りも分からずにずっと待っていたお月さま . . . 本文を読む