よみびとしらず。

あいどんのう。

BIRTHDAY

2019-09-30 12:17:58 | 詩(イラスト付)
世界は美しいものではないことを証明しなさいとあなたは言いました誰よりもそれを否定したいあなたの口から放たれたその言(こと)問ひに含まれたあなたの苦しみに身を削るほどの悲しみをわたしが抱いたところであなたは救われないからだからわたしはあなたに伝えますいかにこの世界が美しいものであるのかをそしていつの日かあなたが世界に絶望したときわたしはあなたの隣にいられますようにただそれだけを願って生まれた夜の星 . . . 本文を読む

ヒカリの子とヤミの子

2019-09-29 18:07:41 | 散文
あるところに二人の姉妹がいた。姉はヒカリの子と呼ばれ、妹はヤミの子と呼ばれた。ヒカリの子はその名のごとく光に満ちていて、数々の奇跡をいともたやすくおこなった。その陰で妹は特になにをすることもなく、いつも隅のほうでおどおどしていた。その対比から妹は、いつの頃からかヤミの子と呼ばれるようになった。人々はいつもヒカリの子に群がりヤミの子にはつらく当たった。ヤミの子は何をされても何をいわれてもじっとこらえ . . . 本文を読む

colors

2019-09-28 13:00:20 | 散文
腹のなかからふつふつと猛り狂うほどの怒りは燃え立ちて腹のそこからふつふつと底知れぬ悲しみの渦は巻き起こる雨降りて晴れて日は昇り夜のとばりは降りてくる暮れた思いの果てしれず明けたのは太陽かそれとも海か開かれた瞳にうつるあお色の波打つ瀬戸際にひとの姿なし影は隠された月の裏側うさぎ追いかけた影法師月の影は何も知らずに夜を追い鬼の素性は誰も知らない鬼ごっこみんなどこかから逃げ帰りたいと懸命に駆けた 吊り橋 . . . 本文を読む

流星

2019-09-25 17:26:52 | 散文
思いの流れたかたちが流れ星のようであってほしいと願った暗やみにひとり うかんではきえたひとりごと人魚姫の泡のごとく 淡く儚く美しいものであったならばとたとえ本当のそれが本当はきれいなものではなかったとしても宝石箱みたいな美しい世界がこの世のどこかにあることをどうか否定しないでと産まれたパンドラの箱たとえ本当のそれがきれいなものではなかったとしてもぼくがきれいだと感じたそれをそのままの気持ちで認める . . . 本文を読む

蜃気楼II

2019-09-24 09:25:50 | 散文
そこにないもののなかにわずかな本音を隠そうとしたそこにあるもののなかでなんとかあらわになるものかと踏ん張るあなたをどうにかして見つけ出したくて偽りの塔には誰もいないからわたしはからっぽの檻のなかきみを待つつめたい水におおわれたやわらかな思いはいまだめざめずいつかみた高き塔の前 ひとりたつそこにあなたはいないと知りながらわたしはあなたに会いに塔に入る差しのべて差しのべられた手がつかんだものは浜辺に打 . . . 本文を読む

初恋

2019-09-20 18:18:27 | 散文
この世の全ての色を重ねてもわたしの悲しみにはまだ足りないこの世の全ての色を合わせてもわたしの歓びにはまだ足りないどんな彩りを与(くみ)してもわたしの感情には満ち足りず与えられた色彩は次第にくすみ光をうしなった色彩満ちてなお感情は満たされずあとはもう欠けていくばかりだと不条理にこの世の全ての色を重ねた夜の月暗やみにみえる色はなくそのなかで感情はうごめき静観と躍動をくりかえす月は満ちて欠け姿消しまた現 . . . 本文を読む

FREEDOM

2019-09-18 15:31:38 | 散文
炎は燃えて 足枷とれたもうここにいる意味もないのだと自由はわたしを追い立てる向かうべき場所へ向かいなさいと炎は燃えて わたしは解けた慈しみの雨は降るなんの縛りもないからだを動かしてわたしは進む 何処へなりとも . . . 本文を読む

パレード

2019-09-16 10:43:28 | 散文
音楽は聴こえず行進もないけれども音の満ちた夜に喉のつぶれた人魚の歌声はこだまするさやさやと衣ずれと木々の重なる音は調和して誰も知らないパレードは続く音のない夜に窓をあけると影だけが寝床に忍びこみあなたの寝顔を眺めて歌う音もたてずにさやさやとせめて夢のなかで会えますように起きたら消えゆく泡沫(うたかた)に思いのすべてを託して歌う青雲に夜の名残はなく光に満ちた真昼の空に深海の歌は届かないそれでも耳すま . . . 本文を読む

Fire

2019-09-15 17:07:13 | 散文
苛立ちは燃えて静けさはおちていった水の底もういっそのこと、なくなってしまえば良かったのにそれでも残る跡形もなくなくなることなど誰ひとり許してはくれなかったいまなお燃える苛立ちも悲しみも涙のあとさえも残らずにわたしは燃える炎よ燃えろその悲しみの意味など疾(と)うに知るよしもないそれでも消え失せるわけにはいかないとどこまでも続くと決めた 命のともしび . . . 本文を読む

蛇と猫

2019-09-13 17:59:26 | 散文
蛇のねぐらに星おちて明るさを知らない猫は夜にとけこみあくびをひとつおちてきた星のようになりたいと願った蛇はその星を飲み込み一夜明け目の前から消え失せた星のことなどはすっかり忘れてしまった輝けるなにかを得たいと蛇は思った太陽の明るさは苦手でも夜空にまたたく星々のきらめきに憧れた欲しいものは手に入らぬと嘆く蛇の腹のなかおちてきた星はきらきらと輝くその輝きを見透かすかのように夜にとけこんだ猫は真っ直ぐな . . . 本文を読む

EYES

2019-09-11 11:31:51 | 詩(イラスト付)
暗闇に輝くその光が眩しくて目を閉じていた僕はたまらなく目を開く目を閉じてさえいれば逃れられると思っていたのに光はどこまでも僕を追いかけてきてその痛みに思わず目を開くもその世界にさえ光はどこまでも満ちていた逃れられない悲しみをただ海だけが受けとめてくれたから僕はその波音にいつまでも郷愁をおぼえる何度でも 何度でも . . . 本文を読む

金魚すくい

2019-09-09 14:26:31 | 詩(イラスト付)
迷うなかれのしがらみさなかおおいに迷えとあなたは云ったたとえ太陽目指すとも時に闇夜をかけても良いとあなたの許容(ことば)にどれほど私が救われたのかつゆほどもあなたは知らぬでしょういつか届くとも届かなくとも私は歌う あなたに愛をすくう気なくともすくわれたかけがえのないあなたへ会いに わたしは泳ぐ . . . 本文を読む

日ノ入リテ出(イズル)

2019-09-07 05:05:53 | 散文
いつかどこかで止まるその時を望む場所はじまりの揺りかご 日溜まりのぬくもりそこから遠く離れたわけでもないのに暗闇になれたこのからだは重たくて息のつぎ方さえ忘れたかった本当は知っていた 木洩れ日の唄 かそけき光けれど欲しいのはその光の色ではないと主張した光の色など知らないくせに止まれ止まれと繰り返しそれでもなにひとつ止まらない不良品ばかり手を差しのべてもつかめなかったつかまれた手からは逃れようともが . . . 本文を読む