◎『国策不捜査』には「Aさん」という仮名で
森友学園問題で自殺した赤木俊夫さん(元近畿財務局職員)が残した「手記」が、大きな話題になっている。これに関連して、昨二〇日の東京新聞朝刊に、〝森友改ざん 自殺職員手記/「財務省 文書隠し指示」〟 という見出しの記事が載った。遺族から提供された、赤木俊夫さんの写真(カラー)も載っている。執筆は、望月衣塑子記者である。
その記事の最初の部分を引用してみる。
学校法人「森友学園」の国有地売却問題で、財務省理財局長だった佐川宣寿【のぶひさ】元国税庁長官の指示で決裁文書の改ざんを強要されたとして、自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が残した手記に、会計検査院の検査の際に財務省の指示で内部文書の存在を隠し、国会で虚偽答弁が行われたと記載されていた。
二〇一七年四月と六月に近畿財務局が会計検査院から受けた二度の検査について、手記では、財務省から事前に「(森友学園との)応接記録はじめ、法律相談の記録などの内部検討資料は一切ださないこと、検査院には『文書として保存していない』と説明するよう指示があった」と明かした。【以下、略】
財務省からの指示中に、「応接」、「法律相談」という言葉があることに注意されたい。
今月の九日と一〇日に、籠池泰典さんの『国策不捜査』(文藝春秋、二〇二〇年二月)という本を紹介した。同書には、「Aさん」という仮名で、赤木俊夫さんも登場する。生前の赤木さんは、森友学園側と「応接」をおこなっていた。もちろん、籠池泰典さんとは面識があった。
『国策不捜査』から、「A氏」が登場する場面を引いてみよう。
「総理大臣も国会議員もやめる」
2月17日、過熱する報道への対応策を協議するため、ボクは酒井〔康生〕弁護士の所属する「北浜法律事務所」を訪れていた。すでに日は落ちていて、あたりは真っ暗だった。そこには近畿財務局の池田さん〔池田靖統括国有財産管理官〕と、A上席国有財産管理官もいた。Aさんは後に公文書改ざん事件発覚により、自ら命を絶つことになる人物だ。
この頃、森友学園と酒井弁護士、そして近畿財務局は事態沈静化のための運命共同体となっていて、緊密に連絡を取り合っていた。
この日、ボクが感じたのは、「とにかく近畿財務局の担当者たちの様子がおかしい」ということ。挙動不審と言ってもいい。国会や野党ヒアリングの対策で、連日にわたり大変な目に遭っている様子がうかがえた。そんなことを思っていると突然、
「この書面にサインをしてほしい」
と、いささか強引に一枚の書類を差し出してきた。
そこには森友学園顧問でもある酒井弁護士の名前とともに、
「平成28年3月に新たに発見された地下埋設物(ゴミ)については、小学校の建設に必要となる処理を適切に実施済である。地下埋設物の処理に際しては、掘削、埋め戻し、運搬、処分等の様々な経費を相当程度要しているが、建設工事費との明確な区分が困難であるため、地下埋設物の処理費のみを取り出してお示しすることはできない」
と書いてあった。
これまでもボクはマスコミの取材に対して、池田さんたち近畿財務局から押しつけられるような形で、事実と違うことを話し続けてきた。
ただし、この日〔二〇一八年二月一七日〕の池田さんとAさんには、なにやら尋常ならざる気配が漂っていた。
「サインはやめときます。口頭での約束にとどめておきたい。浪速流でいきましょう」
こう言って署名捺印は拒んだ。
もともとボクはあまりテレビを見ないたちである。家内とともにせわしなく人と会い、そのほかの時間は幼椎園で園児や教職員との会話に費やしていた。
なので、この日の国会で安倍晋三首相が、
「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います」
「繰り返しなりますが、私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総押大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい」
と啖呵を切っていたことは数日後に知った。
先述した池田さんたちの異様な立ち居振る舞いや、唐突な書類の提示は、安倍さんの国会答弁に閲連があったわけだ。そんなことを当時のボクは考えもしなかったのである。
この日、近畿財務局側が差し出した「一枚の書類」には、森友学園顧問である酒井康生弁護士の名前があったという。ということであれば、近畿財務局は、酒井弁護士と「法律相談」をおこなっていたことになる。
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