礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

特異なキャラクターのキーマンが介在している

2021-07-25 02:25:51 | コラムと名言

◎特異なキャラクターのキーマンが介在している

 橋本惠(さとし)氏の『謀略 かくして日米は戦争に突入した』(早稲田出版、一九九九)を再読した。日米開戦直前に、開戦を回避するために、懸命の努力をした黒畔豪雄(いわぐろ・ひでお)という一軍人(当時、駐米日本大使館付武官補佐官)の再評価を試みた本である。
 四、五年前に読み、たいへんな力作であり、問題作だと思った。
 今回、再読してみて、改めて、その感を強くした。と同時に、ひとつ、たいへん驚かされたことがあった。それは、著者が、同書の「あとがき」で述べていたことと関わる。
 著者は、「あとがき」で、この本を書いたキッカケのひとつに「エイズ薬害禍」(薬害エイズ事件)があったとした上で、次のようなことを指摘していた。

 すべてが後手後手にまわったエイズ薬害禍であるが、日米交渉の挫折と以下の諸点で相似形を呈している。
①正規の手続きを踏んでなされた国家的規模の過ちであるという点。
②施策が間違った方向へと進路をとるにあたって特異なキャラクターのキーマンが介在しているという点。
③キーマンの傲慢さが政府機関の意志決定を制度的にも心理的にも席巻しているという点。
④過ちが明らかになるに従って徹底的な隠蔽工作がなされたという点。
 その後の報道では、当時、キーマンの意向に反対し、被害を最小限に食い止めようとする意見も出ていたというが、キーマンの意向はいつのまにか組織の意向として機能し、いかにも日本的な会議運営のもと、結局、取り上げられることはなかったという。
「反対しない方が身のためだ」というような恫喝も飛び出したというから、日本は、戦後も、 ちっとも進歩していない。
 エイズ薬害問題だけではない。
 その頃から新聞紙上を賑わすようになった証券不祥事にしろ、銀行や住専の破綻にしろ、どれをとっても同様な問題が根に巣くっている。予想できた危機を全く避けようとしていない。〈二四七~二四八ページ〉

 読んで、ハッとした。今回の新型コロナの問題、その中でのオリンピック開催の問題も、まさに、著者のいう「相似形」を呈しているではないか。
 なぜか著者は、日米交渉の挫折の際の「特異なキャラクターのキーマン」の名前、エイズ薬害禍の際の「特異なキャラクターのキーマン」の名前を挙げていない。しかし、前者が第二次近衛内閣の外相・松岡洋右(ようすけ)であり、後者が厚生省エイズ研究班班長・安倍英(たけし)であることは、容易に察しがつく。
 今回の新型コロナ問題・オリンピック開催問題に際しても、「特異なキャラクターのキーマン」の介在を指摘することができる。松岡洋右と姻戚関係にある某政治家である。ちなみに、松岡洋右と安倍英とは、ともに山口県の出身だったが、その某政治家も、選挙区は山口県にある。

*このブログの人気記事 2021・7・25(10位になぜか椋鳩十)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« カッコ内は願書類差出先の連... | トップ | 小学校教科用書『読書入門』... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

コラムと名言」カテゴリの最新記事