礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

掛けまくも畏かれども……(しきしまのみち会「のりと」)

2019-05-25 02:13:47 | コラムと名言

◎掛けまくも畏かれども……(しきしまのみち会「のりと」)

 簑田胸喜著『美濃部博士の大権蹂躪』(原理日本社、一九三五)を紹介している。本日は、その三回目。本日は、同書の冒頭に置かれている「のりと」を紹介したい。旧漢字(正字)は、現行のものに直したが、「國體」の二字のみは、そのままとした。

    の り と

 掛けまくも畏〈かしこ〉かれども呉竹〈くれたけ〉の代々木の大宮にしづまりします 明治天皇の御霊〈みたま〉の大前を天津御空〈あまつみそら〉はるかにもをろがみまつりて畏み畏みもまうさく掛けまくも畏かれども 神武天皇の古〈いにしえ〉にかへらせ給ひ天子ハ文武ノ大権ヲ掌握スルノ義を明かにしたまひし明治の大御代につかへまつりしみ民は大御歌をろがみよみ〔拝み詠み〕まつり日の本のしきしま〔敷島〕の道をふみなむちかひ〔誓〕をもちて志を同じうするもの道速振〈ちはやふる〉神のまにまに結びしシキシマノミチ会につながるみ民〔御民〕それがしたち御祖〈みおや〉の御代〈みよ〉より言ひ伝へ来し、大君ノミコトカシコミ。大君ノマケ〔任け〕ノマニマニ。大君ノシコ〔醜〕ノ御楯〈みたて〉ト。大君ノミカドノマモリ。大君ニマツロフ〔服う〕モノト。大君ハ神ニシマセバ。大君ハトキハ〔常磐〕ニマサム。大君ノヘ〔辺〕ニコソ死ナメ。とふ言霊〈ことだま〉のさきはひ〔幸い〕により高ひかる日の大朝廷【オホミカド】にはやく〔早く〕そなはりてありし道を憂【ウ】れたきかなその道をしもわすれなむとするものら君民の分際【アヒダ】をわすれて民にして御国を政治【マツリゴ】ちなむとしつゝ高き官【ツカサ】の位にのぼりたれば外つ国〈とつくに〉との交りに御国の名をけがすべき過をくりかへしつゝもなほ道速振神のまもりとまめやかにつかへまつる名も無き民のいたづきとにより安らけく治る御代〈おさまるみよ〉に厚く深き御国の御めぐみをかうぶり〔被り〕つゝその御めぐみをわすれ掛けまくも畏かれども 皇祖 皇宗ノ後裔ニ貽〈のこ〉シタマへル統治ノ洪範ヲ紹述スとのたまはせ給ひたる不磨の大典遠つ御祖の不文憲法の今日に発達したる大日本帝国憲法に対して従順の義務を負はざらむとして統治権の主体は国家にして君主は国家最高の統治機関なりとする天皇機関説を唱へつひに國體に反する民主民政主義を奉じそれと連絡する國體変革思想を宣伝しその実行を奨導するもの東京帝国大学に拠りて全国の知識層を赤化化し教育者司法官までも國體変革の罪を犯し国法に触るゝもの頻りにして共産党陰謀とゝもに大不祥事件のつぎつぎに起り来るに歴代内閣の大臣は此の東京帝国大学教授の反國體思想を批判する識見なくこれを処置する忠なく反國體思想の宣伝は官許公認せらるゝが如き有様となりゆきしその責〈せめ〉は全国民のひとしくこれを負ひその罪は全国民のひとしくこれをわかつべきものとかしこまりを申すもまことにかしこきことの限りのこそあれ掛けまくも畏かれども 天孫降臨ましましてよりこのかた天の壁立つ極み国の退【ソ】き立つ限り青雲の靄【タナビ】く極み白雲の墜坐向伏【オリヰムカフ】す限り皇神の見はるかします四方〈よも〉の国を天つ神の御子ながらも天に坐す神の依さし奉りしまにまに安国と平けく現【アキ】つ御神と知ろしめす 我大君につかへまつるこの皇神のいつくしき国言霊のさきはふ国の國體【クニガラ】をわすれて外つの國體をことあげするものらは大日本帝国憲法にまめやかにまつろひまつらむビするみ民の打ちほろぼして止【ヤ】むベき仇にしてこの仇波〈あだなみ〉をふせぎなむと天地の神にこひのみまつりかしこかれども大御歌をろがみよみて御国のみ民のやまとごゝろをよびめさしめむしめひとするさまを神ながらも見をなはしたまひて神のまもりあらせ給へと天津御空はるかにも大宮の大前をろがみまつりいつきまつらくとかしこみかしこみものりとごとまうしまつらくとまうす。
(昭和九年八月十二日松陰神社々務所にて遥拝奏上)
       し き し ま の み ち 会

 この「のりと」は、簑田胸喜の『美濃部博士の大権蹂躪』の冒頭に置かれているが、選者は、簑田胸喜ではなく、おそらく三井甲之(みつい・こうし)であろう。三井甲之(一八八三~一九五三)は、歌人・右翼思想家で、一九二五年(大正一四)に、簑田胸喜、松田福松らとともに、「原理日本社」を結成した。また、一九二八年(昭和三)には、「しきしまのみち会」を立ち上げ、明治天皇御製拝唱運動を展開した。ちなみに、『美濃部博士の大権蹂躪』の奥付を見ると、その発行所は、「しきしまのみち会/原理日本社」となっている。

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