礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

イラク派遣「日報」問題とソンタク

2018-04-08 05:11:11 | コラムと名言

◎イラク派遣「日報」問題とソンタク

 朝日新聞デジタルによれば(2018/4/7、19:06配信)、防衛省は、昨七日、自衛隊のイラク派遣の際の活動報告(日報)について、昨年二月に探索を求めた稲田朋美防衛相(当時)の指示の内容を明らかにした。それによれば、二〇一七年二月二二日、防衛省大臣室で、稲田防衛相が、辰己昌良統幕総括官(当時、現・大臣官房審議官)に対して、「イラクの『日報』は本当にないのか」と口頭で探索を「指示」したという。
 この報道に接して、まず感じたのは、辰己統幕総括官(当時)は、稲田防衛相(当時)の意図を「忖度」〈ソンタク〉したのに違いない、ということである。すなわち、防衛相による口頭による探索指示の際、そこから、「このまま、日報は存在しないという形でゆきたい」という言外の意思を感じ取り(ソンタクし)、その感じとった意思に従って、形だけ「探索」をおこなったのだろう、ということである。
 その探索であるが、防衛相から探索の指示があった日、辰己統幕総括官の部下である統幕参事官付が、「RE:イラクの日報」という件名で、統幕、陸空の幕僚監部の一部の部署の担当者あてにメールを送った。そのメールには、探索の指示を直接的に表現した文言はなく、稲田防衛相の発言を「指摘」とし、「探索いただき無いことを確認いただいた組織・部署名を本メールに返信する形でご教示いただけますでしょうか」と記すにとどまっていたという。辰己統幕総括官のソンタクは、メールを送った統幕参事官付にも、また、メールを受け取った各部署にも、伝わっている。防衛省の各組織、各部署は、当然、そのソンタクに従って、形だけ「探索」をおこない、「ない」という内容の返信をおこなう。
 さて、私は、以上のことを、ほぼ、朝日新聞デジタルの記事に依拠して書いたわけだが、同記事は、「忖度」などという言葉を一度も使っていない。しかし、同記事が伝えようとしたことは、辰己統幕総括官が稲田防衛相の言外の意思をソンタクし、そのソンタクが防衛省の各組織、各部署に伝わったということではないのか。
 少なくとも私は、この記事をそのように読み取ったわけだが、こうした読み取り方自体が、実はソンタクであったかもしれない。

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