礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

レスリー・M・カークの墓がミズーリ州にある

2018-04-15 04:05:30 | コラムと名言

◎レスリー・M・カークの墓がミズーリ州にある

 本日も、功刀俊雄氏の論文(二〇〇七、二〇〇八)の紹介である。功刀論文によれば、「一マイル競走」(初出、一九四六年六月)は、吉田甲子太郎のオリジナルではなく、その「原作」があるという。まず、功刀論文〔2007〕を引用する。

 ところで、『少年クラブ』に掲載された「一マイル競走」の末尾には、「(レスリー・エム・カーク作「一マイル鼓走」による。)」と付記されている。また、後にこの作品を収めた〔吉田〕甲子太郎訳著の『空に浮かぶ騎士――海外少年小説選――』の「一マイル競走」にも最後に「(アメリカ、レスリー・M・カーク作「一マイル競走」による)」と付記されている。こうした原作と甲子太郎の作品の関係及び「訳著」の意味について解説した西本〔鶏介〕によれば、甲子太郎の作品は「原作の忠実な訳ではなくて」、「翻案、再話」あるいは「原作に素材を借りた創作」を意味し、甲子太郎自身はこれを「わたしは原作をそのまま翻訳せず、かなり自由な気持ちで日本文に書きあらためた」と説明しているという。カーク及び彼の「一マイル競走」については今のところ何一つ情報が得られていない。カークの「一マイル競走」と甲子太郎のそれとを比較し得ない現状にあつては確かなことは言えないのであるが、甲子太郎の「一マイル競走」はアメリカの児童文学作品(少年小説)を訳出し、そこから「素材を借りて創作」したことはほぼ間違いなく、そこで描かれているチームのための自己犠牲的な作戦、監督の命令、これを忠実に実行しようとするエルトンの犠牲の精神もアメリカの作品から借用したものと思われる。

 ここで、『空に浮かぶ騎士――海外少年小説選――』とあるのは、一九五六年(昭和三一)に新潮社から刊行された吉田甲子太郎訳著『空に浮かぶ騎士――海外少年小説選――』のことである。このほかにも、一九七九年(昭和五四)に学習研究社から刊行された吉田甲子太郎訳著『空に浮かぶ騎士』がある。後者には、児童文学者の西本鶏介氏による「解説」が付されているという。
 功刀論文によると、〝カーク及び彼の「一マイル競走」については今のところ何一つ情報が得られていない〟とのことであった。気になったので、インターネットで調べてみたところ、Leslie M. Kirkという人物の生没年、および、その墓石の写真がヒットした。Leslie M. Kirkは、一九一七年七月二一日に生まれ、一九八五年三月一九日に、六七歳で亡くなっている。墓は、アメリカ合衆国ミズーリ州ジョンソン郡ノブ・ノスターというところの、「ノブ・ノスター墓地」(Knob Noster Cemetery)にある。墓には、Vesta Jeanという名前と、その生没年月日も刻まれているが、おそらくこれは、Leslieの妻のものであろう。ただし、わかるのはここまでであって、Leslie M. Kirkが、「一マイル競走」の作者であるかどうかは不明である。
 吉田甲子太郎の作品の話、ないし、功刀俊雄氏の論文の紹介については、まだ続きがある。しかし、明日は、とりあえず話題を変える。

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