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強制不妊手術は障害者に人権を認めない差別政策だったのであり、障害者雇用率の偽装も同根。国会審議なしの母体保護法制定

2024-07-03 21:55:03 | ハンセン病

 旧優生保護法は、障害者を劣性とみなし排除抹殺すべきものとした当時の国会議員の大勢の意識風潮により1948年に成立したものであり、また、時の政府はその国会と同じ意識に基づいて障害者に対する施策(国策)を積極的に推進してきた。すでに戦後の政治や社会の基本として日本国憲法が1947年に施行されている点を考えれば、このような前近代的な保護法が成立した背景には、当時の国会議員の意識が、日本国憲法にその原理として定めている、基本的人権の保障についての理解が十分になされていなかった事を表しており、国会議員間においても共通認識となっていなかった事を表している。ちなみに保護法成立時の国会議員は、憲法成立時と同じ構成メンバーであり、1945年4月の新選挙法による第22回総選挙で選出された議員(当選者の50%は保守系で、翼賛選挙での推薦議員中心の日本進歩党が20%、非推薦議員中心の日本自由党30%、のち両党は財界の強い要望により自由民主党を結成)であるにもかかわらずである。強制的に不妊手術を推進した行為は、障害者には人権を認めないとする差別的な価値観を有する政府(自民党)の差別的政策(国策)として実施されたものである。1996年、橋本自民党政府において人権侵害の「らい予防法」を廃止した際にも政府は保護法には意図的に触れなかった。そして、国会議員間においても問題提起されていない。つまり、政府も国会も「人権侵害」という「憲法の原理に背く犯罪とも言うべき重大な間違いを犯してきた」という事実に目を向けなかったのである。

 1993年には障害者基本法を制定し、第1条には「すべての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される」と規定し、2014年には、その第17条に「全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する」と規定し、第23条には「障害者が、他の者との平等を基礎として生殖能力を保持すること」と明記している障害者権利条約を批准しているのである。

 2016年3月には、国連の女性差別撤廃委員会が安倍自公政府に対し、優生保護法下で強制的に行われた不妊手術に対し国による補償や謝罪を求める勧告を出したが、それに対する2016年6月のNHK取材でも厚労省は「当時、不妊手術は合法的なものだった」とまったく理解できない独善的な回答をしている。

 しかし、このような差別(人権侵害)体質は、どのように装っても暴露するものであり、それは2018年8月に発覚した、中央省庁及び地方自治体による障害者雇用数の偽装である。

 それでも安倍自公政府は、未だに「旧優生保護法下の強制不妊手術は合法だった」という姿勢を改めていない。これまでの自民党政権も現在の安倍自公政権もいかに独善的で差別的な体質を有しているかを改めて認識すべきである。

 最後に、優生保護法が1996年に母体保護法に改定された驚くべき経緯を以下に紹介し、この点についても究明する事を求めたい。

 改定の際には、国会での審議はまったくされなかった。改定の理由についても橋本政府まったく説明しなかった。メディアも「らい予防法」の廃止だけしか取り上げなかった。そして、96年9月に施行された。1997年8月、メディアは「スウェーデンで強制的な不妊手術」を報道した。しかし、前年まで日本に存在していた優生保護法について報道する事はなかった。衝撃を受けた女性団体が1997年9月16日、厚生省要望書を提出した。内容は、①優生保護法の下で強制的に不妊手術された人、「不良な生命」と規定された人々への謝罪と補償、②実態検証のための特別調査委員会設置、③優生保護法も禁じている子宮摘出事例の調査と被害者救済、などである。それに対し当時の厚生省母子保健課の課長補佐は「優生保護法の下では、優生手術は合法であった。現代社会にそぐわない法であったとしても、すでに改正がなされている」と回答したのである。すでに法改定したから何もする必要はない、謝罪も補償も実態調査の予定もない、という態度を示したのであった。

(2019年4月17日投稿)

 

 

 

 

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