好曲好盤探訪

名曲か、名盤か、というより、個人的好みで好きな曲の好きな演奏との出会いを求めてボチボチと。同じような方の参考になれば

マーラー 交響曲第5番 マゼール/ウィーンフィル

2022-08-25 12:30:55 | マーラー 交響曲(第2番「復活」 第5番)
マーラー 
交響曲第5番

指揮…マゼール 
演奏…ウィーンフィル
好み度…4.5(5点満点)

録音はやや硬質の音質。そのせいかどうなのか、第1楽章などもゆっくり奏しているのだが、情を感じさせるというよりどこか冷めた雰囲気を感じる。
無機質ではない、しかし熱くならない。
ウィーンフィルの弦はこの盤でも潤いを感じさせて美しく、鋭く響く金管は冷気を与えるようでもある。
テンポはどちらかといえばゆっくりめに、盛り上げどころはしっかり大きな響きをつくってくる、しかし熱は帯びない。フィナーレも大きさはあるが熱は感じない、そんなマーラーも悪くない。
アダージェットは起伏は控えめながら何を押し付けてくることもなく、静かに丁寧に奏された美しいアダージェット。甘く美しい退廃とでもいおうか、マーラーっぽいどこか儚げな雰囲気も感じられるのはウィーンフィルだからだろうか。


ブラームス ピアノ協奏曲第1番 モラヴェッツ/ビエロフラーヴェク/チェコフィル

2022-08-25 12:28:32 | ブラームス ピアノ協奏曲(1番・2番)
ブラームス 
ピアノ協奏曲第1番

ピアノ…モラヴェッツ 
指揮…ビエロフラーヴェク 
演奏…チェコフィル
好み度…5(5点満点)

あの重かったり勇ましかったりする前奏からして渋い味わい漂うような、もうビエロの世界である。
渋いといってもしおれてたり干からびたというのではなく、出る音はしっかり出て、艶と緊張感を湛えた味わいである。
この前奏を聴いて美しいと思うこともあんまりないように思うが、この前奏はちょっと哀すら漂うようで美しい。
続くピアノがまたしっかりした力強さをベースに透明感と情に満ちた音色で、スッと浮いてくる音もまた美しい。
無機的でなく、繊細とかでなく、自然でおおらかで血の通った情があって美しい。
2番ではちょっと合わなかったけど、これはいい。
そんなオケとピアノが一緒になって、息も合って美しく融合し、名サポートとはこのような演奏だろう、ピアノを前に感じさせながら、オケも決して脇役でなく、控えめなのにこの演奏の美しい雰囲気に決定的な影響を与えている。
壊れやすいくらいに繊細だけどどっしり重く、カッティングによって様々な美しい色合いを見せるガラスの花瓶を連想させるようである。

ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」 ラトル/ウィーンフィル

2022-08-25 12:26:31 | ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
ベートーヴェン 
交響曲第5番「運命」

指揮…ラトル 
演奏…ウィーンフィル
好み度…4(5点満点)

熱とか劇的な情とか、そういったものでなく、響きのよさを聴く盤でしょうね。
悪い意味でないし、そういった意味ではさすがの感がある。
堅苦しくなくしかししっかり整って、明るい艶を伴った響きはこのコンビならではなのかもしれない。
これくらい演奏されているこの曲にどこかセンスのある新鮮味を感じさ、といって新鮮味に偏りすぎて別物になてしまうこともないのもラトルらしい。

ブルックナー 交響曲第8番 ケーゲル/ライプツィヒ放送響

2022-08-20 19:03:40 | ブルックナー 交響曲(第3番/第5番/第8番)
ブルックナー 
交響曲第8番

指揮…ケーゲル 
演奏…ライプツィヒ放送響
好み度…5(5点満点) 
※ODEレーベルのライヴ盤でなくPILZレーベルからの盤。

豪快だが耳障りでなくどっしりと重なる金管、
地を震わせるようなティンパニ、
がっちりした密度を感じさせる弦。
ときに締まりのなさを感じさせることもあるこのオケだが、この盤のこのオケは立派なものだし、ケーゲルの剛毅でまっすぐなブルックナーが心地よい。どっしりと剛毅な、緊張感といい意味での野性味を帯びるような力強さに圧倒感さえ感じるようなブル8である。
力強い中で、音の重なりにはしっかり配慮がなされ、第3楽章はずしりとした重みと大きさのある、血の通ったような美しさを湛えたアダージョであり、終楽章は冒頭から少しも格好つけないものが持つ堂々実直の格好よさに満ち、その颯爽重厚堂々たる格好よさはちょっとなかなか他では聴かれない域。
どの盤をこの交響曲の名盤とするか、人によって評は分かれるところとは思うが、この盤は好みを超えた名盤の1つであろうと思う。

マーラー 交響曲第2番「復活」 テンシュテット/ロンドンフィル/ロンドンフィル合唱団

2022-08-20 18:56:25 | マーラー 交響曲(第2番「復活」 第5番)
マーラー 
交響曲第2番「復活」

指揮…テンシュテット 
演奏…ロンドンフィル 
合唱…ロンドンフィル合唱団 他
好み度…5(5点満点)

1989年ライブ盤
巨大と言っていいような大きさと力強さを感じる復活。
荒々しいような気迫とか激しさとかというより、大きなうねりのような情の起伏やエネルギー感を感じさせつつ、大きい。
録音はこのコンビの録音の中では最上の部類かと思う。
大きな病の告知を受けた後の、病と闘いながらの、指揮者・オケとも気持ちの入った渾身の演奏であろうと感じられ、といってそれが空回りすることなくしっかり音のエネルギーとか空気感に昇華されて放出されているように感じられる。
演奏の完成度もこのコンビの録音の中では最上の部類ではなかろうか。
声楽のソロも申し分なく、原光も美しく、終楽章合唱が加わってからは音量は抑えて静かに、しかし荘厳さも加わるようで、その後のフィナーレの圧倒的な大きさ荘厳さは渾身の祈りのようでもあり高らかな賛歌のようでもあり、ちょっと他では聴かれない類で鳥肌の立つ思いがする。
爆演のイメージで語られることの多いテンシュテットだし、他の盤ではときにもたついて聴こえるロンドンフィルだが、ここではむしろ丁寧に、響きと情感に大きなうねりとエネルギーを感じさせ、徒に激しかったり煽ったりということはないのだが、最後は感動的に〆る、テンシュテットの高い1つの到達点を聴く思いである。

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 オピッツ/デイヴィス/バイエルン放送響

2022-08-20 18:52:49 | ブラームス ピアノ協奏曲(1番・2番)
ブラームス 
ピアノ協奏曲第1番

ピアノ…オピッツ 
指揮…デイヴィス 
演奏…バイエルン放送響
好み度…4(5点満点)

デイヴィスのサポートは例えばコワセヴィッチとのときなどよりはずい分力強さを出している。
ピアノは実直で美しい。低音での重みなどはあまり感じさせないが独奏部でのふくよかで伸びやかな高音なんかは印象的でもある。
デイヴィスが結構厚く前に出てきているのはピアニストのタイプを見て、独奏部できらめきを聴かせながら高揚部ではオケが一緒になって厚い底をつくったほうがいい、というような考えもあるのだろうか。
オケもピアノも実直で美しい、特別な感銘はないが好感の持てる演奏のように思う。

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番 コワセヴィッチ/デイヴィス/BBC響

2022-08-12 18:08:26 | ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」&第4番
ベートーヴェン 
ピアノ協奏曲第4番

ピアノ…コワセヴィッチ 
指揮…デイヴィス 
演奏…BBC響 
好み度…4.5(5点満点)

オケはBBCなので上品な気品とかそういうのではないが(ただ、私はBBCの実直でちょっと野性味の感じられる響きは結構好きである)、しっかり力が入っている印象が感じられてその実直さがある意味爽やかで好印象。
ピアノは凛とした空気感と自然な広がりを感じさせつつどこか陰を感じさせるような雰囲気と古風な重みも感じさせるようで好演。
特に名人芸を聴くといった盤ではないように思うが、古風で実直な伸びやかさと陰を感じさせる古風な美しさが感じられて心地よい盤のように思う。 

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ザンデルリング/フィルハーモニア管

2022-08-12 18:05:23 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
ベートーヴェン 
交響曲第3番「英雄」 

指揮…ザンデルリング
演奏…フィルハーモニア管
好み度…4.5(5点満点)

特に重みを感じるということはないが、厚くふくよかで、ゆったりめのテンポをとって、力みはないがしっかりした力感も持っておおらかな奥行きと大きさを感じさせる演奏のように思う。
最初の2音もごく自然な入りだし特に目新しいことはしていないが、第1楽章終盤のトランペットが主題を吹く部分は途中からトランペットは吹かないが勇ましさが消えるというよりは力強さを失わずにより豊かに響くような感があり、終楽章のホルンは巨大な何かを回想するようであり、全編特に何を強調するということはないが、自然な重さと深さを湛えながら、ふくよかで力強く大きな英雄のように思う。

ブラームス 交響曲第2番 ヤング/ハンブルクフィル

2022-08-12 18:01:07 | ブラームス 交響曲第2番
ブラームス 
交響曲第2番 

指揮…ヤング
演奏…ハンブルクフィル
好み度…4.5(5点満点)

演奏も録音もいい。
厚い響きは艶を備え爽やかであり柔らかい情を持ちつつしっかりしたメリハリと覇気も兼ね備える。
響きも表現も洗練され丁寧ながらか細くなったりすることなく伸びやかな清清しさを感じさせ、第1楽章の主題の情感は心地よく、第2楽章はゆったり大きく、終楽章のアンサンブル豊かな活力もなかなかに見事。フィナーレも違和感なく自然に盛り上げている。
全編通して感じられる微熱のような熱はライブならではかとも感じるし、この演奏がライブであることにこのコンビの完成度の高さを感じたりもする。
明るさとか田園的といった表現で語られることの多いこの曲に、明るく洗練され爽やかながら軽くなったり爽快に偏らずに、濃い情と大曲感をすらまとわせた、壮快な演奏と思う。