好曲好盤探訪

名曲か、名盤か、というより、個人的好みで好きな曲の好きな演奏との出会いを求めてボチボチと。同じような方の参考になれば

ブルックナー 交響曲第8番 ハイティンク/ドレスデンシュターツカペレ

2024-01-14 00:09:04 | ブルックナー 交響曲(第3番/第5番/第8番)

ブルックナー
交響曲第8番

指揮…ハイティンク 
演奏…ドレスデンシュターツカペレ
好み度…5(5点満点)

堂々たる大きさ、重み、音の圧、美しさ。
弦は深みを帯びたそれでいて輝かしいばかりの艶をもった響きで鳴り渡り、金管は重く重なり合って十分に咆哮しながら尖らず、ティンパニのここぞでの迫力も十分。
各楽器群はめいっぱい力強く響きながらもそれぞれオケ全体の中でのバランスを知っているかのようにどれが突出しすぎることなく、浮かぶべき音を浮かび上がらせる。
いやぁ、これはすごい盤があったものですね。
ハイティンクというと頑固に無難と真面目を貫く体の大きなどこかのそういうタイプの校長先生のようなイメージがあって、これまでこの人のブルックナーを聴いてこなかったが、考えてみれば余計ないじりをしない実直なスタイルはブルックナーに合っているのかもしれない。
オケのよいところを引き出すことには定評があるようだから、3番のウィーンフィルもオケの美音を堪能する思いがしたし、この盤もドレスデンシュターツカペレってこんな凄い音を出すオケだっけ?と感動に似た思いを受けながら感じたりする。
テンポは急がず変にいじらず、堂々と自然な流れ。ゆったりだが決して弛緩などせず、むしろ一音一音が柔らかく光り輝くような艶と重みを持って、思わずこれを聞き逃しまいとするような緊張感を与えて第1楽章等あっという間の感すらある。圧倒的な重量感と、一音ですら単調になぞらず独特の息遣いを感じるような丁寧な表現力、金管も弦もティンパニもめいっぱい鳴っているようで、しかしきっと極上のバランスをそれぞれが知っていて、どれも効果的に響いてうるさくなく、大きく重く美しい。第1楽章からこんなに圧倒的な演奏があったろうか。
アダージョは静かに光り輝く大海原のように大きく重く美しく、終楽章もファンファーレは重くかっこいいし緊張感は緩まず飽きさせることがない。長い曲だし、終盤に向けて失速しちゃう演奏や逆に尻上がりによくなる演奏もあるが、よく団員の集中力がもったものだと感心する。
テンポはゆっくりだし、全体でとても長いんだけど、最初から最後まで美しさが密度濃くぎゅっと詰まって重くなってるような、圧倒的な大きさと美しさを感じる演奏。こういう演奏を聴くとこの曲が他と一線を画す美しき大交響曲であるとの評も頷ける気がする。
この曲の大名盤と思う。 
ブラームス、ベートーヴェン、マーラー…、今までハイティンクの交響曲はしっかりはしているが感銘を受けたことはなかったが、これとウィーンフィルとの3番、特にこの盤は別格となった。


ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ドホナーニ/フィルハーモニア管

2024-01-14 00:06:57 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」

ベートーヴェン
交響曲第3番「英雄」

指揮…ドホナーニ
演奏…フィルハーモニア管
好み度…4.5(5点満点)

併録の運命は覇気のない響きと聴こえたが、こちらは同じ組み合わせか?と思うくらいの堂々とした覇気ある響きで良質の英雄が聴ける。
重みと覇気のある力の込もった響きがいいし、各パートの響かせ方など細部への配慮を両立させながら、こぢんまりとまとまらない、力の込もった、大きさと重みのある華ももった、堂々良質の名演級の英雄のように思う。


ブラームス 交響曲第1番 カヒッゼ/トビリシ響

2024-01-14 00:04:42 | ブラームス 交響曲第1番

ブラームス
交響曲第1番

指揮…カヒッゼ 
演奏…トビリシ響
好み度…4.5(5点満点)

一見、緊張感や締まりが感じられず、ぼやけたような重みはあるが迫力も感じられない、
そんな演奏のような印象を与えるようで、
だが、何だか捨て難い、
聴いているうちに、何だかこの曖昧模糊としているようで実は崩れていない、輪郭を少し曖昧にした中でゆたりのたりとうごめく重みを帯びた音たちがこれはこれでいい雰囲気をつくっているような気もしてきて、
ゆったりしたテンポで謳われる情や歌もむしろ他ではないような気もするし、
実は結構いい盤なのでは、と思えてきたり…
何か不思議な感じのする盤。
他の盤でよいと思ったようなものの再現とかうまさとかを期待するとがっかりするかもしれないが、そういう聴き方をしなければ実は結構味わい深い盤のように思える。


ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番 グルダ/シュタイン/ウィーンフィル 

2024-01-07 11:04:54 | ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」&第4番

ベートーヴェン
ピアノ協奏曲第4番

ピアノ…グルダ 
指揮…シュタイン 
演奏…ウィーンフィル 
好み度…4.5(5点満点)

グルダのどこか軽快で洒脱な響きはどこかクラシック離れした雰囲気を感じさせ、ウィーンフィルも弦や木管にらしさを覗かせよく響きつつその音質は優美な洗練味というよりは快活さが勝るような印象で、全体としてちょっとこの曲らしからぬ雰囲気を漂わせている。繊細とか女性的な柔らかな気品とかいうのではなくちょっと他の盤でのこの曲のイメージとはちがうような気もするが、オケにもピアノにも張りと艶と快活な躍動感が感じられ、特にグルダのピアノは独特の小気味よい躍動感と美しさがあって、特に第1楽章終盤とか終楽章での快活で美しい躍動感とか、グルダでしか聴けない魅力を持った盤のように感じる。
グルダの音色はどうしてもこうも思うくらい美しくその語り口はスリリングですらあり爽快である。


チャイコフスキー 交響曲第4番 ネシリング/サンパウロ響 

2024-01-07 11:02:07 | チャイコフスキー 交響曲第4番

チャイコフスキー
交響曲第4番

指揮…ネシリング 
演奏…サンパウロ響 
好み度…4.5(5点満点)

ちょっと残響多めの録音と、開放的で伸びやかな響きがこの曲には合っているようで、爽快に聴ける。
南米のオケでロシアのチャイコフスキーというのもちょっと微笑が出そうな気もするが、チャイコの中でも感情豊かな曲なので(フィナーレなんてまさにお祭りだもんね、というかお祭り的にやってもらいたい曲)、感情的で開放的な南米のイメージともそういう点では合うような気もする。
演奏の質が低いとも思われず、おおらかで開放的なチャイ4を堅苦しくならずに聴けるよい盤と思いますよ。


チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 セヴィドフ/フリードマン/ロシアフィル

2024-01-07 10:58:44 | チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番

チャイコフスキー
ピアノ協奏曲第1番

ピアノ…セヴィドフ 
指揮…フリードマン 
演奏…ロシアフィル
好み度…4(5点満点)

私にとっては無名な方たちの演奏だが、どうしてなかなか重みのあるしっかした演奏のように思う。
ピアノはどちらかといえば重く力強い音で、技巧の程はよくわからないし、はっとするような美音があるとかというわけではないが、ややゆっくりめのテンポで旋律の謳いっぷりも変にいじくることなくなかなか情が込められ、飾り気のない情熱と思い入れのようなものが感じられて悪くない。
オケもしっかり低音を効かせた音で厚くサポートし、中庸というよりは厚く重みの効いたロシア的情感も漂う演奏のように思う。

 


ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 シュタイン/バンベルク響 

2023-12-31 12:21:58 | ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」

ベートーヴェン
交響曲第3番「英雄」

指揮…シュタイン 
演奏…バンベルク響 
好み度…4(5点満点)

もう一盤のベルリンドイツ響のものと比べるとこちらは歯切れのよさが目立つ。
引き締まって少し軽快な趣も感じさせながら快活な響きを聴かせている。
個人的には特に終楽章等もう少し力感か重みか、そんなものが欲しいかな、といったところ。


ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」 ボールト/ロンドンフィルハーモニックプロムナード管

2023-12-31 12:19:59 | ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」

ベートーヴェン
交響曲第5番「運命」

指揮…ボールト 
演奏…ロンドンフィルハーモニックプロムナード管
好み度…4(5点満点)

ちょっと拾い物の感のあるいい盤。
同じコンビの「英雄」の投稿でも書いたが、オケは聞かない名前だが、ロンドンフィルのよう。聴いていてもしっかりしたオケであることが感じられる。
オーソドックスに、力と熱気を感じさせる演奏は、素の力強さとそこから醸し出されるちょっと温かな古風な雰囲気がなんだかいい。
やはりこの曲はあれこれいじるより、そのままをどこまで音に中身を込めて響かせられるか、なんじゃないかと思わせ、特に終楽章の躍動感と熱気を帯びた(しかし全然崩れない)演奏は爽快。
弦も低弦含めよく響き、随所でのホルンも含め金管も爽快に響いている。
56年の録音のようだが、録音はときにちょっと不安定を感じるところもあるが、音質は問題なし。


ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 メニューイン/ロイヤルフィル/ブライトンフェスティヴァル合唱団 他 

2023-12-31 12:15:36 | べートーヴェン 交響曲第9「合唱」

ベートーヴェン
交響曲第9番「合唱」

指揮…メニューイン 
演奏…ロイヤルフィル 
合唱…ブライトンフェスティヴァル合唱団 他 
好み度…3.5(5点満点)

そう、あのヴァイオリニストのメニューインだそうです。
楽器奏者から転向の指揮者の演奏はどこか緊張感に欠けたり、よくてうまくなぞっているとこまで、との印象がないでもないが、第1楽章などはなかなか堂に入った響き。ロイヤルフィルの華やかみを帯びた厚い響きによるところも大きいかもしれないけど。
第2楽章はやや速め、標準的に鳴らして特に緊張感とか激しさとか何かを感じるということもない。
第3楽章は冒頭も特にゆっくり謳うというタイプではないが明るさを帯びて清廉な美しさは漂わせる。
終楽章では合唱も大きく響いているが、どこか表層的というか、「何か」を感じることがない感じ。
全体として、よく鳴らしているけど特に感銘を受けることもないか、といった印象。


ブラームス 交響曲第2番 ヴァント/NDR 

2023-12-24 19:26:01 | ブラームス 交響曲第2番

ブラームス
交響曲第2番

指揮…ヴァント 
演奏…NDR 
好み度…セッション4 ライブ4.5(5点満点)

ヴァントのブラ2にはNDRとのセッション(1983年)とライブ(1996年)のものがある(私が知ってる範囲では)。
セッションの演奏はどちらかといえば穏やかな雰囲気の、良演とは思うが印象としては特に可もなく不可もなく、といった印象。ただ、終盤の盛り上がりは厚く力感と爽快感もあっていい感じ。
ライブ盤も快活な明るさなどを感じさせるタイプではないが、ブラームスのじわりとした重みと滋味が感じられるようなところがあり、セッション盤との比較では第1楽章・第2楽章では同じ穏やかでも表現力が深化した感があり、終楽章の活力もライブ盤に分がある。第1楽章の弦による主題はしっとり美しく、弦が追いかけるように重なり合うところは下降する弦が美しく聴こえるし、第2楽章も冒頭はじめ落ち着いた重みと広がりのある響きが美しい。終楽章も重みと活力を程よく兼ね備えて味わいと爽快感が感じられる。このライブ盤の全集は第一に4番、次に1番が評判のようだが、ゆっくりめのテンポで華やかさや明るさとは別の魅力をもった、どうしてこの2番も地味だが味わい深い名盤の域かと思う。