2013.07.05(金)【即時就任時期】(金子登志雄)
6月の定時株主総会の終結時に現任取締役ABC3名全員が任期満了退任するの
で、「取締役5名選任の件」という議題で、議事録には「現任取締役全員(3名)
が本総会終結と同時に任期満了退任するため、また、経営体制強化のため、取締役
2名を増員することとし、ABCDE5名の選任をはかったところ、満場一致によ
り選任された。なお、被選任者は席上即時就任を承諾した」とありました(念のた
め、仮定の話です)。
株主総会議事録には、出席取締役名を列挙しなければなりませんから(会社法施
行規則72条4項)、「出席取締役ABC」といたしました。
ここで、「増員取締役DEも即時就任したのなら、総会中に取締役になったのだ
から、出席取締役として記載すべきだ」という登記事務官がいたとか。後記する松
井見解の誤解による影響でしょうか。
皆さんどう思います?
議事録に「ABCの【後任して】ABCDE」とあれば誤解を招かないでしょう
が、仮に「後任として」という記載がなくても、この場合は、本来の増員(任期中
の取締役に新取締役を追加)ではないでしょう。ABCが定時総会「終結」と同時
に任期満了するため、DEの選任・就任の効力も、総会終結時であって、「即時」
就任の用語に惑わされるべきではないからです。定款に「増員取締役の任期は他の
在任者の任期の残存期間とする」とあれば、本総会終結時に任期満了退任してしま
うという不都合も生じます。
では、ABCは翌年の定時総会終結時まで任期があって、今回の定時総会でDE
を選任した場合はどうでしょうか。
この場合も会社の選任意思としては、総会終結後に取締役としてスタートすると
いうもので、総会中に取締役になったと考えるべきではないと私は思っています。
総会中に取締役になったのなら、議事録に「出席役員」として書く前に、総会議場
の役員席に坐るべきですが、そうしないところをみると、取締役としてのスタート
時点は、やはり総会終結後というべきでしょう。そう解釈しないと、新取締役は株
主総会の議案につき説明義務が生じてしまいかねません(314条)。株主は新取
締役に会社のことをいろいろ質問してもよいのでしょうか。
登記実務上は、「総会の席上において新任の役員等が就任承諾をして即時就任の
効果が生ずる場合(金子注:既存取締役のCが席上辞任し、新たにDが席上就任承
諾した場合など)において、議事録をもって就任承諾書に援用するときは、当該議
事録の『出席した役員』に後任者の氏名も記載することとなるので、注意が必要で
ある」とされています(松井信憲著『商業登記ハンドブック』第2版148頁)。
もっとも、この松井見解には「即時就任の効果が生ずる場合」とありますから納
得することができますが、現実には「即時就任」とあっても、総会終結後から取締
役になることを即時に承諾した場合のほうが多いのではないでしょうか。いずれに
しろ、こういう問題が生じますので、株主総会中の就任か、総会終結後からの就任
か、はっきりさせる株主総会の運営が望まれます。
http://esg-hp.com/
塾があるから学校の宿題を減らせという司法書士さんですがお門違いもいいところですよね。
6月の定時株主総会の終結時に現任取締役ABC3名全員が任期満了退任するの
で、「取締役5名選任の件」という議題で、議事録には「現任取締役全員(3名)
が本総会終結と同時に任期満了退任するため、また、経営体制強化のため、取締役
2名を増員することとし、ABCDE5名の選任をはかったところ、満場一致によ
り選任された。なお、被選任者は席上即時就任を承諾した」とありました(念のた
め、仮定の話です)。
株主総会議事録には、出席取締役名を列挙しなければなりませんから(会社法施
行規則72条4項)、「出席取締役ABC」といたしました。
ここで、「増員取締役DEも即時就任したのなら、総会中に取締役になったのだ
から、出席取締役として記載すべきだ」という登記事務官がいたとか。後記する松
井見解の誤解による影響でしょうか。
皆さんどう思います?
議事録に「ABCの【後任して】ABCDE」とあれば誤解を招かないでしょう
が、仮に「後任として」という記載がなくても、この場合は、本来の増員(任期中
の取締役に新取締役を追加)ではないでしょう。ABCが定時総会「終結」と同時
に任期満了するため、DEの選任・就任の効力も、総会終結時であって、「即時」
就任の用語に惑わされるべきではないからです。定款に「増員取締役の任期は他の
在任者の任期の残存期間とする」とあれば、本総会終結時に任期満了退任してしま
うという不都合も生じます。
では、ABCは翌年の定時総会終結時まで任期があって、今回の定時総会でDE
を選任した場合はどうでしょうか。
この場合も会社の選任意思としては、総会終結後に取締役としてスタートすると
いうもので、総会中に取締役になったと考えるべきではないと私は思っています。
総会中に取締役になったのなら、議事録に「出席役員」として書く前に、総会議場
の役員席に坐るべきですが、そうしないところをみると、取締役としてのスタート
時点は、やはり総会終結後というべきでしょう。そう解釈しないと、新取締役は株
主総会の議案につき説明義務が生じてしまいかねません(314条)。株主は新取
締役に会社のことをいろいろ質問してもよいのでしょうか。
登記実務上は、「総会の席上において新任の役員等が就任承諾をして即時就任の
効果が生ずる場合(金子注:既存取締役のCが席上辞任し、新たにDが席上就任承
諾した場合など)において、議事録をもって就任承諾書に援用するときは、当該議
事録の『出席した役員』に後任者の氏名も記載することとなるので、注意が必要で
ある」とされています(松井信憲著『商業登記ハンドブック』第2版148頁)。
もっとも、この松井見解には「即時就任の効果が生ずる場合」とありますから納
得することができますが、現実には「即時就任」とあっても、総会終結後から取締
役になることを即時に承諾した場合のほうが多いのではないでしょうか。いずれに
しろ、こういう問題が生じますので、株主総会中の就任か、総会終結後からの就任
か、はっきりさせる株主総会の運営が望まれます。
http://esg-hp.com/
塾があるから学校の宿題を減らせという司法書士さんですがお門違いもいいところですよね。