後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

「消息不明の高校時代の2人の友人の思い出」

2024年04月16日 | 日記・エッセイ・コラム
仙台一高時代の私の2人の友人の思い出です。
友人の野田君はフルートを吹いていました。戦後のバラック建ての暗い彼の家の中で何度か美しいフルートの音色を聞かせてくれました。ガランとして貧しそうな家の中に澄んだフルートの音が響き渡ります。母子家庭だった彼の母は働いていたので家にはいつも誰もいませんでした。細く揺れ響くフルートの曲目を聞くとバッハの「トッカータとフーガ」だと言います。
野田君は色の白い小柄な少年でした。無口で控え目な性格でした。その野田君とは高校卒業以来二度と会えません。消息不明なのです。
どんな人生を送ったのでしょうか。「トッカータとフーガ」のオルガン曲を聞くたびに野田君の事を思い出します。暗いバラック建ての家に響いたフルートの音をありありと思い出すのです。

もうひとりの友人は皆川君です。彼はフランスの象徴詩を読んでいました。当時大学生のあいだに流行っていた象徴詩です。彼は私に装丁の立派な象徴詩の本を一冊手渡して読んで見ろと言います。そしてその本を友情のしるしとして贈呈すると言うのです。そんなキザな言い方が似合ったハイカラな雰囲気の少年でした。
彼は私に象徴詩を読む楽しさを教えようとしたのでしょう。彼の赤みがかった髪がちぢれていてロシア人のような風貌をしていました。背丈も高くなんとなくヨーロッパ文化を連想させる雰囲気を持っていました。
高校卒業以来消息が分かりません。私の本棚には彼のくれた装丁の立派な象徴詩の本が一冊長い間残っていました。この記事を書くために2階の書棚を丁寧に見ましたが、このフランスの象徴詩集はもう見つかりませんでた。
時々この本の事を思い出し、彼の人生安らかなれと祈っています。

こうして老境に高校時代のことをもう一度考えなおして見ると、それは自分にとって楽しい青春の一こまだったことに気がついたのです。
別離の悲しみも思い出しますが、その別離も懐かしい美しい思い出になりました。

今日の挿し絵代わりの写真は箱根の彫刻の森で撮った風景写真です。このような彫刻の間をゆっくり散歩しながら野田君と皆川君のことを思い出していたのです。

 それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)




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