志村史夫/講談社ブルーバックス
硬い勾玉に紐を通すための穴を開ける技術のように、今の技術と原理的には同じであるものもあれば、古代瓦(呼吸する瓦)やたたら製鉄で作った釘(錆びない)のように、1つ1つをとって見れば現代のものよりも良いものもある。大量生産と効率を求めるあまり失われてしまった古代の技術・・それにスポットを当てた本である。とても人気の本であり、図書館で順番待ちをしてやっと借りることができた。
とても読み応えがあったが、五重塔はなぜ倒れないか・・というのは別の本でも読んだから置いておくとして、私が一番感動したのは古代の瓦だった。
古代の瓦は気孔を多く含み(全体積の30が気孔。現代瓦の2倍)、水を良く吸収する。天気になると吸収した水を外へ排出するから、まるで呼吸する生き物のようであり、下部の木材を痛めたり結露させたりすることなく、木造建築の保存に貢献してきたのである。
後輩に、古代の瓦を使って花を活ける趣味の人がいるが、その古代瓦がものすごく心を打つのは、一つ一つ丁寧につくられているだけでなく、優れた機能を隠し持ちつつ自然と調和しているからだろうか・・なんて風にも思ってみる。