イタリア中部ジリオ島沖で大型クルーズ船「コスタ・コンコルディア号」が座礁、横転した事故は、通常航路を大きく外れて同島に異常接近したことによって起き、死者行方不明が多数に上っている。この事故は危険な航路を選び、避難誘導よりも自身の脱出を優先させたフランチェスコ・スケッティーノ船長(52)に非難が集中しているのであるが、イタリア人はあんなものだと思ってはいけない。私たちだって、3月11日以降、自分の責務を放棄して、病院に逃げ込んだ某電力会社の元社長を擁しているのである。私たちは第二次世界大戦後、60年以上の平和な時期を過ごし、私たちの社会の中心に座っている人たちが、いつのまにか、精神的にひ弱で、いざとなると役に立たない人ばかりになっているのではないかという事実に直面しているのである。むしろ、社会の下層にいる人たちのほうが、いざとなると勇気を持って、身を棄ててでも、困難に立ち向かう力を持っている。東日本大震災で、そのように感じるのである。明治維新のとき、幕府や各大名の重役たちは社会の動揺になすすべを持たなかった。立ち上がったのは下級武士や農民たちであった。「コスタ・コンコルディア号」といえば、イタリアを代表する大型客船である。その船長は当然、知識も家族の財力もあったのであろう。だから選ばれたはずである。わが国の官僚も皆、学力は人一倍あるだろう。だが、この国の困難な問題に真剣に立ち上がる勇気を持ち合わせてはいないように見える。
Y-FP Office Japan
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