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オービタル・クラウド


 藤井大洋     早川書房

 時代設定は2020年。今から6年後だ。近未来である。だから、あの国とあの国はあいかあらず困ったちゃんだ。
 その困った国のひとつが打ち上げたロケットの2段目がおかしな動きをする。使用済みの空のロケットだから、大気圏に落ちて消滅するはず。それが落ちない。それどころか軌道が上昇している。考えられない。
「神の杖」と呼ばれるそれは、何者かが意図的に動かしている。燃料の無い使用済みロケットの2段目をどうして動かしているのか。その目的は。
 宇宙を舞台にしたテロが実行されようとしている。その背景には、先進国だけに独占されている宇宙を、だれでも、どの国でも使えるようにすべきとの意志を持った技術者がいた。その技術者を支援する国がある。
 画期的な宇宙での推進方法の理論を考え出した天才科学者。それを実用化した技術者。恐るべき企みに気がついた軍人。企み阻止に動くCIAのエージェント。「神の杖」の動きをいち早く察知した日本のWeb技術者。その相棒の天才的ITエンジニアの女性。「神の杖」を観察する大富豪のアマチュア観測家。初めて民間で有人宇宙飛行をなし、宇宙に「ホテル」を設置した実業家とその娘。これらの人々が「神の杖」の動きに振り回され、そして必死で振り回そうとする。
 いかにも面白そうな宇宙を舞台にしたサスペンス活劇のようだが、正直、さして面白くなかった。確かに、燃料無しで宇宙で物体を動かすアイデア。宇宙はだれのものかと問う問いかけ。など、ストーリー、プロットはいいが、肝心の小説としての演出が下手。二人が宇宙で生命の危機におちいる。地上の計画が成功しなければあと数日で確実に死ぬ。そのわりには妙にのん気だ。このあたりは、もっと緊迫感をもって描写しなくてはならない。
 また、こういう小説では悪役というか敵の造形が大切。この作品にも悪役はいるが、まったく魅力のない悪役である。そもそもあいつを悪役といっていいかどうか。西村寿行の「往きてまた還らず」のテロリスト僧都保行とまでは望まない。もうちょっとらしいテロリストを造形すべし。この作者、エンタティメント小説の作家としては。まだまだ修行する必要が有る。精進せいよ。
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