雫石鉄也の
とつぜんブログ
とつぜんコラム№126 もう若くない
いにしえの太古の時代、この国にバブルと呼ばれた時代があった。ジャパン・アズ・ナンバーワンなどといわれて、地価と株価は天井知らずに値上がりするものと思われていた。「男はつらいよ」の寅さんがいう「ひたいに汗して働く労働者諸君」といった第二次産業の製造業よりも、不動産、証券、金融といった第3次産業がもてはやされ、みんなフトコロがゆたかで、ディスコだグルメだブランドもんだと、国中をあげて浮かれていた。そういえばバース、掛布、岡田のバックスクリーン3連発があったりして、阪神タイガース日本一もあのころだった。世界に冠たる経済大国でメイドイン・ジャパンが世界を席巻していた。
「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」と平家物語にあるように、生者必滅は世の習いである。あれから悠久の時が流れた。今の日本は、あのころの日本ではない。
貿易収支が31年ぶりに赤字転落した。31年前といえばバブル以前だ。海外から原料を仕入れて、優れた技術と品質で加工して、輸出して成り立っていた、日本の主たる収入源が大きく崩れてしまった。また、これまで日本の経済を支えてきた、製造業も悪化が止まらない。シャープ2900億、ソニー2200億、マツダ1000億、NEC1000億、任天堂650億と、日本を代表する製造業の企業が3月期決算で大きな赤字。またパナソニックも過去最大の赤字となる見込みとのこと。
家電、デジタル機器、自動車、ゲーム。今まで日本の米びつともいうべき稼ぎ頭たちだ。昨今の超円高、ヨーロッパの経済危機、タイの洪水、そして東日本大震災と、悪いことが重なった結果だろう。さらには、韓国のサムスン、ヒュンダイといった企業が、猛烈な追い上げを見せる。これら韓国企業は、電機、自動車と日本の得意ジャンルと完全にダブる。すでに日本の敗北は始まっているのかも知れない。また、中国もいまは巨大な消費地として、日本の経済に寄与しているが、近い将来、巨大な工場として稼動し始めると、品質さえまともならば、安価な中国製工業製品は日本の市場に大量に出回るだろう。
日本の人口は減少していて、近い将来1億人を切ることは確実である。少子化の傾向は歯止めがかからず、少子高齢化は進み、労働人口が大幅に減少する。少ない働き手で多くの老人を支えていかなくてはならない。労働者一人で老人一人を養わなくてはならないだろう。小生もいずれ年金が頼りの生活に入る。調べれば調べるほど絶望的になる。悠悠自適などはどこの世界の話か。小生が受給する年金だけではカスミを食べて生きて行くしかない。こうなりゃ、今のうちにカスミの料理法でも研究しておくか。
と、景気の悪いことばかり書き連ねてきたが、ようは、日本という国が、そういう段階に入ってきたということだ。
1960年代から70年代にかけては、成長期、見る見る背が伸びる少年期青年期だ。そういえば日本は12歳なんて失礼なことをいったメリケン人がいたが、ある意味当たっていたかも知れない。
1980年から1990年はバブル期と重なっていて、浮かれ、お祭騒ぎの日々ではあったが、壮年期だ。今、考えると壮年期にバブルという能天気なバカ騒ぎを経験したことは、あまり良い経験とはいえない。反面教師としてあの経験を生かすべきだろう。このころ突然の病気を患った。1995年1月17日阪神淡路大震災。近代の大都市を直下から襲った震度7は、高速道路を倒し、日本の安全神話に警鐘を鳴らした。
2000年代に入り日本は初老になったといっていいだろう。そして、日本はまた大病に罹った。2011年3月11日。東日本大震災。東北に押し寄せた巨大な津波は、この国がいかに危うい土地に存在するかを教えた。また福島第一原発の事故により、日本の安全神話は完全に終った。
そして今、2012年。ユーラシア大陸の東に弓状に横たわる弧状列島にある日本は、大陸側プレートと太平洋プレートの境い目でグラグラ揺れながら、日々の営みを続けている。先の戦争のけじめをつけきれず、中国、韓国といった周辺の国からチクチクと古傷をつつかれる。戦勝国アメリカに逆らいきれず、年替わりで首相を変え、不満不平はいっぱい貯まっているが、デモひとつ起こらない。
日本は、前立腺肥大と高血圧と血糖値と尿酸値に悩む、初老となってしまった。
でも、初老なら初老なりの生き方がある。その生き方を探っていく必要がある。もう若くはないんだから。
星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。
「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」と平家物語にあるように、生者必滅は世の習いである。あれから悠久の時が流れた。今の日本は、あのころの日本ではない。
貿易収支が31年ぶりに赤字転落した。31年前といえばバブル以前だ。海外から原料を仕入れて、優れた技術と品質で加工して、輸出して成り立っていた、日本の主たる収入源が大きく崩れてしまった。また、これまで日本の経済を支えてきた、製造業も悪化が止まらない。シャープ2900億、ソニー2200億、マツダ1000億、NEC1000億、任天堂650億と、日本を代表する製造業の企業が3月期決算で大きな赤字。またパナソニックも過去最大の赤字となる見込みとのこと。
家電、デジタル機器、自動車、ゲーム。今まで日本の米びつともいうべき稼ぎ頭たちだ。昨今の超円高、ヨーロッパの経済危機、タイの洪水、そして東日本大震災と、悪いことが重なった結果だろう。さらには、韓国のサムスン、ヒュンダイといった企業が、猛烈な追い上げを見せる。これら韓国企業は、電機、自動車と日本の得意ジャンルと完全にダブる。すでに日本の敗北は始まっているのかも知れない。また、中国もいまは巨大な消費地として、日本の経済に寄与しているが、近い将来、巨大な工場として稼動し始めると、品質さえまともならば、安価な中国製工業製品は日本の市場に大量に出回るだろう。
日本の人口は減少していて、近い将来1億人を切ることは確実である。少子化の傾向は歯止めがかからず、少子高齢化は進み、労働人口が大幅に減少する。少ない働き手で多くの老人を支えていかなくてはならない。労働者一人で老人一人を養わなくてはならないだろう。小生もいずれ年金が頼りの生活に入る。調べれば調べるほど絶望的になる。悠悠自適などはどこの世界の話か。小生が受給する年金だけではカスミを食べて生きて行くしかない。こうなりゃ、今のうちにカスミの料理法でも研究しておくか。
と、景気の悪いことばかり書き連ねてきたが、ようは、日本という国が、そういう段階に入ってきたということだ。
1960年代から70年代にかけては、成長期、見る見る背が伸びる少年期青年期だ。そういえば日本は12歳なんて失礼なことをいったメリケン人がいたが、ある意味当たっていたかも知れない。
1980年から1990年はバブル期と重なっていて、浮かれ、お祭騒ぎの日々ではあったが、壮年期だ。今、考えると壮年期にバブルという能天気なバカ騒ぎを経験したことは、あまり良い経験とはいえない。反面教師としてあの経験を生かすべきだろう。このころ突然の病気を患った。1995年1月17日阪神淡路大震災。近代の大都市を直下から襲った震度7は、高速道路を倒し、日本の安全神話に警鐘を鳴らした。
2000年代に入り日本は初老になったといっていいだろう。そして、日本はまた大病に罹った。2011年3月11日。東日本大震災。東北に押し寄せた巨大な津波は、この国がいかに危うい土地に存在するかを教えた。また福島第一原発の事故により、日本の安全神話は完全に終った。
そして今、2012年。ユーラシア大陸の東に弓状に横たわる弧状列島にある日本は、大陸側プレートと太平洋プレートの境い目でグラグラ揺れながら、日々の営みを続けている。先の戦争のけじめをつけきれず、中国、韓国といった周辺の国からチクチクと古傷をつつかれる。戦勝国アメリカに逆らいきれず、年替わりで首相を変え、不満不平はいっぱい貯まっているが、デモひとつ起こらない。
日本は、前立腺肥大と高血圧と血糖値と尿酸値に悩む、初老となってしまった。
でも、初老なら初老なりの生き方がある。その生き方を探っていく必要がある。もう若くはないんだから。
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コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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カスミまで食されるとはなんとも驚嘆しました。
我が家の家計は常に「カスミを食う」ような状態ですが
さすがにまだ実物は食べたことはありません。
あまり大きく報道はされていませんけれど
日本の「貿易赤字転落」は本当に由々しき事態で
世界的なジャパンバッシングならぬパッシングが
このまま進行すると本当に「日本沈没」です。
やはりカスミを食べる準備をしておくべきでしょう。
「荒野の七人」も大好きですがマックィーンも大好きでした。大人になるのを懸命に抑制しているような、あの少年の眼差しと風貌が格好良く、憧れたものです。
日本の赤木圭一郎もそうですが、まさに男の胸の中に残り続ける伝説の俳優でしょうか。
「貿易収支の赤字」は真剣に取り組むべき問題ですね。日本の寄って立つ標がぐらつき始めたわけです。日本は政治は二流経済は一流といわれてきましたが、経済も二流になるでしょう。
マックィーン、私も好きです。いつまでもデビューしたてのような、初々しさが残っている俳優さんでしたね。
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