goo

わたしを離さないで


監督 マーク・ロマネク
出演 キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ

 寄宿制の学校ヘールシャムはイギリスの緑ゆたかな田園地方にある。生徒は18歳になれば卒業する。若い10代の男女が共同生活をし、学び、そして絵や音楽、詩、と創作活動にはげむ。生徒キャシー、ルース、トミーは仲良し。その3人も18歳になりヘールシャムを卒業し、外の世界へと飛び立っていった。そして彼らにも通知が来る。「提供」の通知が。だいたい3回「提供」すると「終了」する。「猶予」が申請できるという噂がある。また、「介護人」になる道もある。キャシーは介護人になった。ヘールシャムを卒業して10年、彼女は28歳になっていた。映画は介護人キャシーがトミーが「提供」するところで始まり、終る。
 カズオ・イシグロの傑作「わたしを離さないで」の映画化である。理不尽な話しを、静謐な筆致で描く原作の雰囲気はよく出ていた。映画の方が、理不尽さ、不条理さ、非情さがより際立って描かれていた。
 SF映画の佳品である。近未来の科学技術がもたらした不条理、歪みを描写するのもSFの効用である。なにも派手に宇宙船が飛び交うだけがSF映画ではない。こういう静かに理不尽を描くことも立派なSF映画だ。
 本作はイギリス映画である。これがハリウッドなら、ヘールシャムを脱走した3人を、ヘールシャムの追っ手が追跡するといった、カムイ外伝みたいなアクション映画にするだろう。それはそれで面白そうだが、さすがにイシグロがエクゼクティブ・プロデューサーに噛んでいるので、そんなバカなことにはならなかった。静かな傑作である。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
« ガラガラの甲... たった一度の... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (悠々遊)
2011-10-22 08:43:27
この小説も映画も見ていません。雫石さんの文脈から察するに、ハリウッド映画にアレンジしたら「アイランド」になる、ということでしょうか。
 
 
 
悠々遊さん (雫石鉄也)
2011-10-22 13:30:03
「アイランド」という映画は観てませんが、似た設定の映画ですね。
これ、原作も映画もお勧めです。また、同じカズオ・イシグロの「日の名残り」も原作、映画両方お勧めです。
 
コメントを投稿する
 
現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。