雫石鉄也の
とつぜんブログ
デビルマン
永井豪&ダイナミックプロ 講談社
「ハレンチ学園」で、世の教育ママどもの逆麟を触りまくった、漫画界の革命的パイオニア永井豪が、そんなことは意に介さず、さらにパワーアップした物凄い漫画を描いた。それが、この作品だ。たしかアニメもあって、そっちは少しもおとなしいモノだったのではないか。こっちの漫画版は永井豪がリミッターを取っ払ってフルパワーで描いた。
人類以前に地球を支配した種族がよみがえり、人類を駆逐しようとする。話の根本アイデアはラブクラフトの「クトゥルフ神話」と同じだが、永井がラブクラフトから着想を得て、この「デビルマン」を描いたかどうかは判らない。
話の出発点は、二人の少年である。不動明と飛鳥了。了は明に、考古学者であった父の残した研究を見せる。明は悪魔が復活するという恐ろしい事実を知る。だれかが悪魔と戦わなければならない。で、明は悪魔の勇者アモンと合体して、人間の理性と悪魔の肉体を持ったデビルマンとなる。
デビルマンと悪魔の戦いの描写は、たいへんなスピードとパワーで描かれる。その迫力もさることながら、実は人間も悪魔に負けないほど、悪魔性を持っていることがこってりと描かれる。人間は理性があるから人間なんだ。理性をなくした人間は悪魔にも劣る、ということ。
主人公不動明のガールフレンド牧村美樹。恋人未満友だち以上という関係だが、悪魔と戦う理由を失った明が、ただ一つ戦いのよりどころとしたのが美樹の存在。「彼女を守るためだけでも戦う」明は最後の最後になって、美樹がそんな存在であったことを判る。
しかし、いろんな漫画のいろんなヒロインを見てきたが、この漫画の牧村美樹ほど、ひどいめにあわされたヒロインは知らない。
ラストは非常に美しい。名ラストシーンといえよう。「あしたのジョー」のラスト、「火の鳥 鳳凰編」のラストに匹敵する名ラストシーンだ。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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原作とアニメ(乃至は実写版)の内容が異なるというのはまま在る事ですが、「永井作品の場合、其の乖離度合いが激しい。」というのが特徴でも在りますね。「デビルマン」もそうですが、「ハレンチ学園」や「キューティー・ハニー」等、原作の余りの“破滅性”に、読んだ時は非常にショックを受けたもの。
でも、其の破滅性が在ったからこそ、未だに強く印象に残っているのも事実。「デビルマン」も描写だけ見れば残酷な面も強いけれど、雫石様も書かれている様に“美しさ”も感じられる。本当に、凄いクリエーターです。
此れだけ凄いクリエーターなのに、きちんとした形(抜粋版みたいなのは過去に在りましたが。)での全集が上梓されていないのは、とても残念。
永井豪の場合、破壊力をともなった破滅性ですかね。破壊力だけなら他にも漫画家はおります。しかし、永井の場合、ベクトルが「破滅」へと向かっているのではないでしょうか。だから、美しいのでしょう。
おっしゃるとおり、すごいクリエイターだと私も思います。
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