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サトリ


ドン・ウィンズロウ 黒原敏行訳              早川書房 
 
 というわけで「サトリ」を読んだ。CIAが釈放を条件に、もちかけた仕事を主人公ニコライ・ヘルは引き受けた。その仕事を描いたのが本書だ。ニコライ・ヘルが20代のころのことである。
 CIAがヘルに課した仕事。建国直後の中華人民共和国に飛んで、ソ連の外交官ユーリ・ベロシェーニンを暗殺せよ。目的はKGBの幹部でもあるベロシェーニンを殺害して中国とソ連の間にクサビを打ちこみ、中国をアメリカに接近させること。中国潜入前に、フランス人女性ソランジュからフランス人になりきるための指導を受ける。ヘルとソランジュは相思相愛となる。
 ソランジュとの再開を約束して、フランス人武器商人に化けて中国に潜入したヘルは偽装取引を行う。反毛沢東派の劉将軍からロケットランチャーを仕入れて、ベトナムの反政府ゲリラヴェトミンに売却するという取引を成立させる。金はCIAから将軍に振り込まれた。
 ヘルは暗殺に成功。ところが脱出を手引きするはずのCIAの手の者に殺されそうになる。CIAが裏切ったのだ。
 CIAの放った殺し屋を倒したヘルは、劉将軍の部下の助けを得て、ロケットランチャーを運んでベトナムに逃げる。途中メコン川の匪賊の頭目の手を借り、また頭目の命も助ける。
 サイゴンに着いたヘルは、当時のベトナムの宗主国フランスの軍隊、コルシカ・マフィア、ベトナムの国長、ヴェトミンの工作員、匪賊の頭目、かってのCIAの顔見知りのエージェント、たちと味方となり敵対しあいながら、フランス人ミシェル・ギベールとして活動する。そして恋人ソランジュとも再会を果たすが、彼女は○○の女となっていた。そうこうしているうちにヘルは正体不明凄腕の殺し屋「コブラ」に狙われる。
「シブミ」は数奇な運命を背負った西洋人の伝記といった方がいいが、本書はまごうことなき、直球ストライクの冒険小説である。小生はこの「サトリ」の方が好きだ。
 中国国内とサイゴンでのヘルの活躍は、スパイ活劇として楽しめ、中国からサイゴンまでの道中は、これはもう本格冒険小説の面白さである。
 ところで「コブラ」の正体だが、これは驚かされた。ちゃんと伏線は張ってあったが、まさか××××とは思わなかった。
 近ごろ辛口の冒険小説がないと、お嘆きの貴兄にお勧め。 
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