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12月18日(火) 価値を決めるのは顧客

 陶芸家が作陶していて、出来上がった作品を眼光鋭く見つめ、いきなり地面に叩きつけたりする。不出来の作品を世に出すのが嫌だからだろう。
 あの行為、プロのやることではないと思う。確かに、作品の出来に責任を持つのは、モノを作る人間としての義務だ。しかし、それはあくまで一定のレベルを維持するためのもので、自分で自分のハードルを高くして「決して妥協しない厳しい創作態度」などというのはいかがなものか。
 陶芸家にしても作家にしても画家にしても、何かを創って生活しているプロは、その作品を売ってお金を得ているわけ。と、いうことは必ず顧客がいる。作品の価値を決めるのは顧客である。作者がどんなに気に食わない作品でも、その作品に価値を見いだす顧客がいるかもしれない。
 いや、私は陶芸のプロだ。見る目はある。私が見てダメなものはダメだ。と、いう人がいたらその人は芸術家として失格。芸術とは新しい美の発見である。そんなことをいう陶芸家は古今東西すべての陶器を見て、この世のあらゆる陶芸の美を知り尽くしているというのだろうか。もしそうならば、とんでもない思い上がりである。どんな偉大な芸術家でも人間一人の物指しはたかが知れている。「私が見てダメ」というのはその人の物指しから外れているだけ。別の人の物指しならば、そこに新しい美を発見するかもしれない。
 それでも、どうしても自分が気に食わない作品を世に出すのはイヤだという人はプロを辞めてアマチュアになればいい。アマチュアなら自分自身の楽しみだけで作品を作っているわけだから、思う存分選択して、気に入った作品だけを発表すればいい。気に食わない作品は叩き壊すなりなんなり好きにすればいい。アマチュアに顧客はいない。しいていえば自分が顧客である。
 作品を売って少しでもお金を取ればプロである。プロならば作品の価値を決めるのは顧客である。作者ではない。
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