大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・26「中庭のバトル・3」

2018-02-03 12:28:59 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・26

『中庭のバトル・3』

 

 

 もう話した方がいい。

 

 佐伯さんの様子にイスカは小さく呟いた。

「あ、えと……」

 リアルが苦手なオレは、おいそれと的確な言葉なんか出てこない。ましてイスカが喘ぎながらくっ付いているところを見られたんだ――あれは、イスカのチャージで、佐伯さんが思ったようなことじゃないんだ――と浮かんでも、言葉は喉の所で絡んで、いっこうに音声にならない。だいたいリアルにおけるオレって、伝える内容よりも伝え方というか、身振り手振りやら表情だけでも不快な印象を人に与える。だからたじろいでしまう。まして、今のチャージの様子なんて18禁のエロエロで――あれはチャージなんだ!――と正直に言って理解してもらうなんて不可能だ。

 ――もういい――

 そんな目つきをして、イスカは一歩踏み出した。

「わたし、西田佐知子ってことになってるけど、それは仮初めの名で、真名……ほんとうは堕天使イスカ、暗黒魔王サタンの娘。この地上に蔓延ろうとしているダーク魔王ルシファーを封じ込めるためにやってきているの。未熟な堕天使だからエネルギーのチャージは、この北斗勇馬に頼っている、つまり、さっきのはバトルで使ったエネルギーの急速チャージをやっている最中だったのよ……」

 イスカは、ゆっくりと横顔を見せながらベンチに座る。正対して話すには荒唐無稽すぎ、素直に佐伯さんに入らないだろうと思ったようだ。

「佐伯さんと接触するのは、これで二度目……トラブルやバトルは時間を止めて亜空間でやるものなんだけど、状況が悪くなってきて、リアルで戦わざるを得なくなってきたの」

「……三宅先生ね」

「ルシファーは……って、今は、その下のマスティマというのが相手なんだけど、人の心を汚染しつつある……リアルの人間相手じゃ亜空間に移る余裕は無いの……」

「つまり……佐伯さんを巻き込むことになってしまったようなんだ、そうだろ?」

「そういうことだから、理解してほしいの」

 いつのまのにかイスカの傍に寄っていた佐伯さんは、しずかにイスカの手をとった。

「おもしろい冬になりそう……これからもよろしく。ね、北斗君も」

「これからも苦労をかけることになるかもしれないけど……その、よろしく。二人のことは全力で護るから」

「えと……オレからもよろしく」

 

 自然に三人で手をとりあった。まるで新しいギルドを結成してボス戦に臨むときのようだ。ネトゲなら、新ギルド結成を祝してファンファーレでも鳴り響くところだ。

 

 キ~ンコンカンコ~ン キンコ~ンカ~コ~ン

 

 鳴り響いたのは下校時間を告げるチャイムの音だ。

 あれだけのバトルがあったというのに中庭以外は平穏な様子……嵐の前の静けさというフレーズが浮かんできた。

 

 

 

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高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・102『第二十章 嗚呼荒川のロケーション・6』

2018-02-03 05:58:47 | エッセー

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・102   



『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。

『第二十章 嗚呼荒川のロケーション・6』


 それは、ラストシーンの撮影が終わった直後におこった。

 監督さんがOKを出したあと、ディレクターとおぼしき(あとでNOZOMIプロの白羽さんだって分かる)人が、ADさんに軽くうなづくの。

 すると、ロケバスの上から花火があがって、カメラ載っけたクレーンから垂れ幕!

――『春の足音』ロケ開始! 主演坂東はるか!――

「え、ええ……ちょっと、これってCMのロケじゃないんですか!?」
 驚きと、喜びのあまり、はるかちゃんはその場に泣き崩れてしまいました。
「おどかしちゃって申し訳ない。むろんCMのロケだよ。でもカメラテストでもあったんだ。僕はせっかちでね、早くはるかちゃんのことを出したくってね。スポンサーと話して、CMそのものがドラマの冒頭になるようにしてもらったんだ。監督以下、スポンサーの方も文句なしだったんで、で、こういう次第。ほんと、おどかしてごめんね」
 白羽さんの、この言葉の間に高橋さんが、優しく抱き起こしていた。さすが名優、おいしいとこはご存じでありました。
「月に三回ほど東京に通ってもらわなきゃならないけど、学校を休むようなスケジュ-ルはたてないからね。それに相手役は堀西くんだ、きちんとサポートしてくれるよ」
「わたしも、この手で、この世界に入ったの。大丈夫よ。わたしも、きちんとプロになったのは高校出てからだったんだから」
 と、堀西さんから花束。うまいもんです、この業界は……と、思ったら、ほんとうに大した気配り。とてもこの物語には書ききれないけど。

 で、まだ、サプライズがあんの。

「分かりました、ありがとうございました。わたしみたいなハンチクな者を、そこまでかっていただいて。あの……」
「なんですか?」
 このプロデューサーさんは、とことん優しい人なのよね。
「周り中、偉い人だらけで、わたし見かけよりずっと気が小さいんです。人生で一等賞なんかとったことなんかありませんし。よかったら、交代でもいいですから、そこの仲間と先輩に、ロケのときなんか付いててもらっちゃいけませんか……?」
「いいよ……そうだ、そうだよ。ほんとうの仲間なんだからクラスメートの役で出てもらおう。きみたち、かまわないかな?」
「え、わたしたちが……!?」

 というわけで、その場でカメラテスト。

 笑ったり、振り返ったり、反っくり返ったり……はなかったけど。歩いたり、走って振り返ったり。最後は音声さんが持っていたBKB47の音源で盛り上がったり。上野百合さんが――あんたたち、やりすぎ!――って顔してたので、BKB47は一曲の一番だけで終わりました。

「監督、変なものが写ってます!」

 編集のスタッフさんが叫んだ。みんなが小さなモニターに集中した。
 それは、わたしたちがBKB47をやっているところに写りこんでいた。
「兵隊ですかね……」
「兵隊に黒い服はないよ……これは、学生だな……たぶん旧制中学だ」
 と、衣装さん。
「この顔色は、メイクじゃ出ませんよ」
 と、メイクさん。
「今年も、そろそろ大空襲の日が近くなってきたからなあ……」
 と、白羽ディレクター。
「これ、夏の怪奇特集に使えるなあ」
 と、監督。
 わたしたちはカメラの反対方向を向いてゴメンナサイをしている乃木坂さんを睨みつけておりました。
「どうかした?」
 潤香先輩と、堀西さんが同時に聞くので、ごまかすのにアセアセの三人でした。

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