大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・信長狂詩曲(ラプソディー)・11『昼休みショートライブ』

2017-03-13 06:32:27 | ノベル2
信長狂詩曲(ラプソディー)・11
『昼休みショートライブ』



 信長という姓は山陰地方に多く見られ、広島県尾道市から岡山市の間に集中してみられる。信永氏、延永氏からの転化だといわれ、けして冗談や気まぐれで付いた苗字ではない。これは、そんな苗字で生まれた信長美乃の物語である。


 チャラーンポラン~チャランポラ~ン……と清洲高の昼のチャイムが鳴った。


 音は、あいかわらずハンパだが、この音と共にハンパではない女生徒の一群と、若干の男子がテキパキと動き出した。連休からこっち美乃のおかげで少しはまともになった清洲高だが、この一群のテキパキした生徒に気付く者は居なかった。またテキパキ生徒達も、それが起こるまでは、隠密を旨としていた。

 みなが昼食を終えた12:50分にそれは起こった!

 大音量の『前しか向かねえ』がかかり、校舎のあちこちからダンス部のユニホームを着た部員達が集まりリズムに合わせて動き始め、イントロが終わる頃には、クールなダンスであることが分かった。
「なんかやってんぞ?」「え、AKBじゃん!?」「前しか向かねえよ!」
 あっという間に、観光バスなら五台は入ろうかという本館の玄関前が特設のライブ会場になった!
 一番の途中になると、いっしょに唄ったり、知らず知らずにリズムをとる生徒達が現れだした。教師達は、最初は暴動でもおこったかと思ったが、どうも平和的にエネルギーを発散させているのだと気づき、遠巻きにそれを見ていた。
 二番になると、生徒のほとんどがリズムをとり、いっしょに歌っていた。ピンマイクなどという気の利いたものがないのでダンス部の子達の声は聞こえないが、しっかりと口を開けていたので、みんな、それに合わせて歌っているのだ。

「ようこそ、ダンス部のランチライブへ! いま踊ったのは、今度のダンスコンテストの課題曲でした。どんな出来になっているか、みんなの前で踊るまでは、とても心配だったけど、いまのみんなから力と勇気をもらいました。教えられるって、こういう感動をともなった共感なんですね。それでは、次は、その教え教えられることの共感をテーマにした曲です。先生方も、よかったらいっしょにどうぞ!」
 部長の高山宇子が荒い息のまま一気にMCの役割を果たした。そしてフォーメーションを組み、次の曲がかかった。

 最初は、ゆっくりしたバラード風に始まり、それが激しくテンポアップ。生徒達は知らない曲だが、もう空気ができていた。テンポアップしたところで、教師達はびっくりした。
 その曲は『仰げば尊し』だった。
 みんなのクラップで、声は聞き取りにくかったが、ダンス部のみんなは、ハッキリと「仰げば尊し~♪」と歌っていた。生徒達は意味は分からないが、ロックなので曲調にはすなおに入ってきた。一曲目にAKBをもってきたのが正解だった。教師の中には涙ぐむ者さえいた。

「ありがとうございまーす! これは日本人がしばらく忘れていた、教えと別れの歌です。この曲を見つけてくれたのは、新入部員の信長美乃!」
 美乃が立ち上がり、盛んな拍手をもらった。美乃は無言のまま四方にお辞儀をした。割れんばかりの拍手になった。
「それでは、ランチタイムライブ最後の曲いきまーす! 『フォーチュンクッキー』でーす! みなさんもごいっしょにどうぞ!」
 ほぼ全校生徒によるフォーチュンクッキーになった。予定をオーバーして、もうワンコーラスやったところで、部長の宇子が宣言した。
「今日は、このライブにあつまってもらってほんとうにありがとう! さあ、そろそろ予鈴がなります。これで解散!」
 見事にダンス部は撤収し、生徒達は予鈴を挟んで、興奮気味に教室へ帰っていった。

――バッチリの録画。放課後アップロ-ドしとく――

 明智からのメールがとどいた。そしてドヤ顔で教室にもどってきた滝川がおかしくって、思わず美乃は吹き出してしまった。よし……これで清洲高の新しい出発ができたと思った……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする