短歌味体 Ⅲ | 日付 |
短歌味体Ⅲ 1902-1903 わかるシリーズ・続 | 2017年08月02日 |
短歌味体Ⅲ 1904-1905 即興詩シリーズ・続 | 2017年08月03日 |
短歌味体Ⅲ 1906-1907 即興詩シリーズ・続 | 2017年08月04日 |
短歌味体Ⅲ 1908-1909 心の底からシリーズ | 2017年08月05日 |
短歌味体Ⅲ 1910-1911 即興詩シリーズ・続 | 2017年08月06日 |
短歌味体Ⅲ 番外 戦後70年シリーズ | 2017年08月07日 |
短歌味体Ⅲ 1912-1914 心の底からシリーズ・続 | 2017年08月08日 |
短歌味体Ⅲ 1915-1917 心の底からシリーズ・続 | 2017年08月09日 |
短歌味体Ⅲ 1918-1919 心の底からシリーズ・続 | 2017年08月10日 |
短歌味体Ⅲ 1920-1921 心の底からシリーズ・続 | 2017年08月11日 |
短歌味体Ⅲ 1922-1923 吉本隆明シリーズ・続 | 2017年08月12日 |
短歌味体Ⅲ 1924-1925 吉本隆明シリーズ・続 | 2017年08月13日 |
短歌味体Ⅲ 1926-1927 あっシリーズ | 2017年08月14日 |
短歌味体Ⅲ 1928-1929 あっシリーズ・続 | 2017年08月15日 |
短歌味体Ⅲ 1930-1931 あっシリーズ・続 | 2017年08月16日 |
短歌味体Ⅲ 1932-1933 あっシリーズ・続 | 2017年08月17日 |
短歌味体Ⅲ 1934-1935 あっシリーズ・続 | 2017年08月18日 |
短歌味体Ⅲ 1936-1937 あっシリーズ・続 | 2017年08月19日 |
短歌味体Ⅲ 1938-1939 あっシリーズ・続 | 2017年08月20日 |
短歌味体Ⅲ 1940-1941 あっシリーズ・続 | 2017年08月21日 |
短歌味体Ⅲ 1942-1943 あっシリーズ・続 | 2017年08月22日 |
短歌味体Ⅲ 1944-1945 あっシリーズ・続 | 2017年08月23日 |
短歌味体Ⅲ 1946-1947 あっシリーズ・続 | 2017年08月24日 |
短歌味体Ⅲ 1948-1949 あっシリーズ・続 | 2017年08月25日 |
短歌味体Ⅲ 1950-1951 あっシリーズ・続 | 2017年08月26日 |
短歌味体Ⅲ 1952-1953 みどりのシリーズ | 2017年08月27日 |
短歌味体Ⅲ 1954-1955 みどりのシリーズ・続 | 2017年08月28日 |
短歌味体Ⅲ 1956-1958 通路シリーズ | 2017年08月29日 |
短歌味体Ⅲ 1959-1961 通路シリーズ・続 | 2017年08月30日 |
短歌味体Ⅲ 1962-1964 通路シリーズ・続 | 2017年08月31日 |
短歌味体Ⅲ 1965-1966 通路シリーズ・続 | 2017年09月01日 |
短歌味体Ⅲ 1967-1968 通路シリーズ・続 | 2017年09月02日 |
短歌味体Ⅲ 1969-1971 通路シリーズ・続 | 2017年09月03日 |
短歌味体Ⅲ 1972-1974 通路シリーズ・続 | 2017年09月04日 |
短歌味体Ⅲ 1975-1976 通路シリーズ・続 | 2017年09月05日 |
短歌味体Ⅲ 1977-1978 通路シリーズ・続 | 2017年09月06日 |
短歌味体Ⅲ 1979-1981 通路シリーズ・続 | 2017年09月07日 |
短歌味体Ⅲ 1982-1983 やさしい歌シリーズ | 2017年09月08日 |
短歌味体Ⅲ 1984-1986 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月09日 |
短歌味体Ⅲ 1987-1989 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月10日 |
短歌味体Ⅲ 1990-1993 通路シリーズ・続 | 2017年09月11日 |
短歌味体Ⅲ 1994-1995 吉本隆明シリーズ・続 | 2017年09月12日 |
短歌味体Ⅲ 1996-1998 通路シリーズ・続 | 2017年09月13日 |
短歌味体Ⅲ 1999-2001 やさしい歌シリーズ・続 | 2017年09月14日 |
[短歌味体Ⅲ] わかるシリーズ・続
1902
わからないとさじ投げたあとに
空気ゆるみ
ちいさなみどりの芽が出はじめる
1903
「でっきるっかな、でっきるっかな、
はてはてふむー」
わかる谷の靄(もや)振り払い進む
註.「 」は、ノッポさんとゴン太君が出てくる昔のNHK番組の「できるかな」という歌より。
[短歌味体Ⅲ] 即興詩シリーズ・続
1904
いやなことぐるぐる巡る
冷たい
らせん階段暗い深みへ
1905
突き抜けて差し込む日差し
固い殻に
静かにひび入れやわらげ去る
[短歌味体Ⅲ] 即興詩シリーズ・続
1906
古臭いと判定する
芯の方
とっても古いものが駆動している
1907
カッコつけ流れに乗るも
家に残した
丁シャツのゆらゆら浮かぶ
[短歌味体Ⅲ] 心の底からシリーズ
1908
絞り出す、カクカクした
言葉たち
なめらかな水流に乗れないな
1909
湧き上がる言葉の滴
黙する
テレビ画面のようにもくもく
註.昔の放送終了時のザァーと音する画面。
[短歌味体Ⅲ] 即興詩シリーズ・続
1910
晴れ渡った青空に
白雲の
静かに浮かび台風近づく
1911
未来が大まかにでも
読めるなんて
台風ゆらゆら、ぱ進む座標系
[短歌味体Ⅲ] 番外 戦後70年シリーズ
敗・戦・後・70年
ですか
するめのように噛み続けるわけにはいかない
そそくさと「もはや戦後ではない」
くり返す
打ち消しの韻荒地の戦後に刺さるる
マラルメ・まるらめ・マルメラ
ですか
不明の森のさびしい語音
「明治は 遠くなりにけり」
聞いたことがある
昭和も人も遠く薄らぐ
「終戦・です・か・・・」
薄らぐ今が
ゾンビ呼び寄せ「鬼畜米英」
薄らぐ表皮の下に
未明の
昭和も人も眠る流れがある
何度でもくり返してきた
このヘンな気持ち
時が流れる渦流が起こる
戦争の日々の意味を
生涯
考え詰めてきた吉本さんは
[短歌味体Ⅲ] 心の底からシリーズ・続
1912
うまく聞き取れなくても
じいんとくる
(それそれそれ)の言葉の表情
1913
〈好き嫌い〉〈スイーツと失恋〉
等価な
言葉ここにあらずの言葉たち
1914
とある駅、〈心〉と〈言葉〉が
行き違う
電車の解離イメージ
[短歌味体Ⅲ] 心の底からシリーズ・続
1915
(どうなのどうなのどうなのお)
迫り来る
問いがいくつかの駅を現す
1916
最終に息せき切って
乗り込んだ
今イエスが走り出すよ
1917
選択し走り出してみる
救われない
イエスとノウの深い谷があり
[短歌味体Ⅲ] 心の底からシリーズ・続
1918
思いっ切り心の底から
打ち上げても
線香花火パチ パチ パチ
1919
あっついごはん頬張って
他所にいる
あちちのきみは試されている
[短歌味体Ⅲ] 心の底からシリーズ・続
1920
なぜ今浮上するのか
わからない
昔聴いた(オー・マイ・ダーリン・クレメンタイン)
1921
流れる髪(アチチアチ燃えて
るんだろうか
アチチアチ)すぱーんと青空
[短歌味体Ⅲ] 吉本隆明シリーズ・続
1922
小石積む少年の
振り返り
ふとこぼれる微笑みの『幸福論』
1923
大げさに構えなくても
もうすでに
歩き出してるよ微分『幸福論』
註.この「微分」は、曲線に沿って接線次々に引くという具体性のイメージとして。
[短歌味体Ⅲ] 吉本隆明シリーズ・続
1924
例えば三十代と
八十代
同じ言葉なのにコクや深さがちがう
1925
概念に詰まっているイメージの
生命(いのち)の旅程
とある駅で荷下ろしする『言葉からの触手』
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ
1926
遠くに飛行機
飛んで・い・る
折り畳まれ改行されゆく夕空
1927
タイマーセットし忘れ
(うううう う)
あっ 浴槽がモーゼの大海原
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1928
遙か太古赤ん坊みたいに
泣く声が
言の葉には滲みていた
1929
あっと気づいたときには
乾いた風に
解離する 心と言の葉ねじれてる
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1930
あっ、あああああ
避けようもなく
ぐらりからざっざざざざざ倒れゆく
1931
あっと口には出さなくても
波固く
打ち寄せて来る〈あっ〉の流れ
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1932
あっ、ああ、あ。・・・
滑空し
失速・墜落してゆく、言葉もまた
1933
あっ、観てるだけなのに
力の
繊維波打ち力束となる
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1934
作者よりすばやくすでに
すり抜けて
待ち合わせ場所に到達している
1935
思いもしないようなことや
約束の地
湧き出ている朝がある
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1936
これって何? (あっ) と湧き立つ
思いがある
くり返している流れがある
1937
ああそれはねと言いながら
(あっ)
すばやく素通りしていくものの気配
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1938
おそらくは〈あ〉から〈っ〉までの
無限の旅程
幼い核の時間の走法
1939
考える間もなく振り切り
走り出す
条件反射のような〈あっ〉
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1940
一瞬のとまどい残し
深みへ
じんじじんと滲みてゆく〈あっ〉は
1941
異形に見えてもくり返す〈あっ〉
の旅路は
心とからだ馴染ませてゆく
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1942
風のようなひと言にも
遙か遠く
風の起源が折り畳まれ匂う
1943
何ですか?と聞き返す
通路には
見慣れぬ置物や空気漂う
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1944
頭へ到りイメージ浮かぶ
間もなく
暗い深みからひかり突き差す
1945
みどり葉の緑流るる
道々を
みどりバッタは歩いて行くよ
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1946
真昼間の青天の広がる
一本道
雲やわらかに踏み進んでゆく
1947
自在にも歩いてるようで
固有の
座標系を歩まされてるよ
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1948
滑る すべる すべるう
張り詰める
くうきの中すべるう あっ
1949
あと少しあと三秒の
時間差
あったなら〈あっ〉は不在に眠る
[短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続
1950
通い慣れた風景ぐらり
傾いて
いつもの座標が遠ざかりゆく
1951
見慣れても時には青天の
大海原に
変位する内なる風景は
[短歌味体Ⅲ] みどりのシリーズ
1952
飛び石をとびゆく日々の
あわいには
みどりみちのみどりに映える
1953
あわいからミュージック流れ
みどり陰
リズムに乗って揺らゆら進む
[短歌味体Ⅲ] みどりのシリーズ・続
1954
言葉が服を身に着け
装いして
みどりの小道歩いて行くよ
1955
〈みどりの〉と言うほかない
匂い立つ
脈打つ光景が立ち現れる
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ
1956
事件の内外(うちそと)
葬式の
内外と無縁、視線の避けようもない別れ
1957
無縁でもひかれてゆく
視線
〈とおりゃんせ とおりゃんせ〉
1958
〈ここはどこの細道じゃ〉
行き来する
視線は人形(ひとがた)の森の負荷に染まる
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1959
中に入るには特殊な
カギでなく
自らの内なる経験の日々
1960
外なる目他が漂流する
しずかに見る
内なる言葉にならぬ頂から
1961
通路にただかける言葉なく
silently
旅する者の視線交わし合う
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1962
通路には見知らぬ花咲き
〈ぱなぷらか〉
異国の言葉の匂うことあり
1963
通路には無重力の
言葉もあり
つんつんつんつま先立つ
1964
ゆかしさの通路に入る
食べてみたいな
言葉の果汁〈ぱいなっぷりん〉
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1965
全面の遮断ではなく
土砂の上
ただ記号ばかり浮遊している
1966
閉ざされた心の在り処(ありか)
上に浮遊する
記号たちは必死の「蜘蛛の糸」
註.「蜘蛛の糸」は、芥川龍之介の作品。
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1967
誘われて歩いてゆくと
突然の
横穴へツーと引き込まれてゆく
1968
上がり込んだ他人の家の
匂いと
我が匂い通路でぶつかり合う
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1969
ひとつ道メビウスの森へ
迷い込み
人抜けて花花へと分岐してゆく
1970
花に会い人つながりは
ほどかれて
花花緑の流れに乗る
1971
花の酔いさめて重心
戻るように
メビウスの輪を抜け帰宅する
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1972
駆けてゆく駆けてゆく通路
絆打つ
ぬかるむ網に足取られながらも
1973
断ち切れば人つながりの
重圧も
うそのような浮力働く
1974
見震う緊急時の
閉ざされた
人つながりの通路にも青空の見ゆ
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1975
通路から太い文字が
飛び立つとき
小さな文字の欠けら横たわる
1976
張りぼての鳥には生きた
等身大の
言葉がない潤いがない
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1977
通路を潜り抜けると
よそ行きの
パシッと締めた服の言葉になる
1978
通り抜ける秘儀は自然に
成就する
着慣れた服を着こなすように
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1979
どんな通り方でもいい
それがきみの
こころに沿った流れならば
1980
秋空ばかりではなく
濁った
あくも出るにんげんだから
1981
ぶつかって他人(ひと)傷つける
走法なら
今は少し微調整する
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ
1982
ど・れ・に・し・よ・う・か・な
小さい子の
あつい視線が席取り競う
1983
店の前でバタバタする
泣き叫ぶ子にも
時にはやさしいドアの開けばいい
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
1984
ええっとねええっとね
小さい子の
時空を巡る旅の報告
1985
時空はまだ晴れ上がらない
濃い果汁
の言葉揺らぎ流れる
1986
〈ええっとね〉の焦る速度に
定まらぬ
旅程はっきり記されてある
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
1987
やわらかな翼だけでは
全土は回れない
失速する少青年期
1988
ゆったりと飛ぶグライダー
の夢見つつ
飛行機は全土を回る
1989
思わず流してしまった
微笑みは
拭いようもなく棚引いている
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1990
引き出された子牛のように
校門に
浮かない春の気分で母といた
1991
チューリップをうまく描けない
そのことが
何事かであるように学校(世界)は始まる
1992
自然にまみれた日々は
禁じられた
気ままさの中に深く深く沈む
1993
貧弱なモビルスーツを
思い思いに
着込んでいるのが見える
[短歌味体Ⅲ] 吉本隆明シリーズ・続
1994
たとえばさあ『母型論』、なぜそこまで深く
見えるのかって?
苦の大洋を
溺れる不安が泳いできたからさ
1995
言葉の走行する
風景には
苦の実感が流れている『母型論』
[短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続
1996
あくまの気持ち知る前は
〈恥ずかしい〉
家庭の内情(うち)を作文する子あり
1997
大文字の衣裳着れねば
踏み迷う
小文字は通路に黙々と煙る
1998
生きものの赤ちゃんはみな
数光年
濁ったわれらは遠い眼差しす
[短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続
1999
遙か遙かの幼年は
理想の背
から静かに思い見るのみ
2000
戻れない帰れない
の舟に乗り
ただ未来ばかりが影差してくる
2001
「大きゅうなんしゃったねえ」
に笑(え)み返し
しがらみの海深こうまなざし帰る
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