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ひとり考え続けていることを公開しています。また、文学的な作品もあります。

短歌味体Ⅲ1902-2001 (作品集)

2017年09月14日 | 作品集
  短歌味体 Ⅲ      日付 
短歌味体Ⅲ 1902-1903 わかるシリーズ・続    2017年08月02日
短歌味体Ⅲ 1904-1905 即興詩シリーズ・続 2017年08月03日
短歌味体Ⅲ 1906-1907 即興詩シリーズ・続  2017年08月04日
短歌味体Ⅲ 1908-1909 心の底からシリーズ 2017年08月05日
短歌味体Ⅲ 1910-1911 即興詩シリーズ・続  2017年08月06日
短歌味体Ⅲ 番外 戦後70年シリーズ 2017年08月07日
短歌味体Ⅲ 1912-1914 心の底からシリーズ・続 2017年08月08日
短歌味体Ⅲ 1915-1917 心の底からシリーズ・続 2017年08月09日
短歌味体Ⅲ 1918-1919 心の底からシリーズ・続  2017年08月10日
短歌味体Ⅲ 1920-1921 心の底からシリーズ・続  2017年08月11日
短歌味体Ⅲ 1922-1923 吉本隆明シリーズ・続 2017年08月12日
短歌味体Ⅲ 1924-1925 吉本隆明シリーズ・続 2017年08月13日
短歌味体Ⅲ 1926-1927 あっシリーズ 2017年08月14日
短歌味体Ⅲ 1928-1929 あっシリーズ・続 2017年08月15日
短歌味体Ⅲ 1930-1931 あっシリーズ・続 2017年08月16日
短歌味体Ⅲ 1932-1933 あっシリーズ・続 2017年08月17日
短歌味体Ⅲ 1934-1935 あっシリーズ・続 2017年08月18日
短歌味体Ⅲ 1936-1937 あっシリーズ・続 2017年08月19日
短歌味体Ⅲ 1938-1939 あっシリーズ・続 2017年08月20日
短歌味体Ⅲ 1940-1941 あっシリーズ・続 2017年08月21日
短歌味体Ⅲ 1942-1943 あっシリーズ・続 2017年08月22日
短歌味体Ⅲ 1944-1945 あっシリーズ・続  2017年08月23日 
短歌味体Ⅲ 1946-1947 あっシリーズ・続   2017年08月24日
短歌味体Ⅲ 1948-1949 あっシリーズ・続  2017年08月25日
短歌味体Ⅲ 1950-1951 あっシリーズ・続  2017年08月26日
短歌味体Ⅲ 1952-1953 みどりのシリーズ 2017年08月27日
短歌味体Ⅲ 1954-1955 みどりのシリーズ・続  2017年08月28日 
短歌味体Ⅲ 1956-1958 通路シリーズ 2017年08月29日
短歌味体Ⅲ 1959-1961 通路シリーズ・続 2017年08月30日
短歌味体Ⅲ 1962-1964 通路シリーズ・続 2017年08月31日
短歌味体Ⅲ 1965-1966 通路シリーズ・続 2017年09月01日
短歌味体Ⅲ 1967-1968 通路シリーズ・続  2017年09月02日
短歌味体Ⅲ 1969-1971 通路シリーズ・続 2017年09月03日
短歌味体Ⅲ 1972-1974 通路シリーズ・続 2017年09月04日
短歌味体Ⅲ 1975-1976 通路シリーズ・続 2017年09月05日
短歌味体Ⅲ 1977-1978 通路シリーズ・続 2017年09月06日
短歌味体Ⅲ 1979-1981 通路シリーズ・続  2017年09月07日
短歌味体Ⅲ 1982-1983 やさしい歌シリーズ 2017年09月08日
短歌味体Ⅲ 1984-1986 やさしい歌シリーズ・続 2017年09月09日
短歌味体Ⅲ 1987-1989 やさしい歌シリーズ・続 2017年09月10日
短歌味体Ⅲ 1990-1993 通路シリーズ・続 2017年09月11日
短歌味体Ⅲ 1994-1995 吉本隆明シリーズ・続   2017年09月12日
短歌味体Ⅲ 1996-1998 通路シリーズ・続 2017年09月13日
短歌味体Ⅲ 1999-2001 やさしい歌シリーズ・続 2017年09月14日

 


   [短歌味体Ⅲ] わかるシリーズ・続


1902
わからないとさじ投げたあとに
空気ゆるみ
ちいさなみどりの芽が出はじめる


1903
「でっきるっかな、でっきるっかな、
はてはてふむー」
わかる谷の靄(もや)振り払い進む

註.「 」は、ノッポさんとゴン太君が出てくる昔のNHK番組の「できるかな」という歌より。




   [短歌味体Ⅲ] 即興詩シリーズ・続


1904
いやなことぐるぐる巡る
冷たい
らせん階段暗い深みへ


1905
突き抜けて差し込む日差し
固い殻に
静かにひび入れやわらげ去る




   [短歌味体Ⅲ] 即興詩シリーズ・続


1906
古臭いと判定する
芯の方
とっても古いものが駆動している


1907
カッコつけ流れに乗るも
家に残した
丁シャツのゆらゆら浮かぶ




   [短歌味体Ⅲ] 心の底からシリーズ


1908
絞り出す、カクカクした
言葉たち
なめらかな水流に乗れないな


1909
湧き上がる言葉の滴
黙する
テレビ画面のようにもくもく

註.昔の放送終了時のザァーと音する画面。




   [短歌味体Ⅲ] 即興詩シリーズ・続


1910
晴れ渡った青空に
白雲の
静かに浮かび台風近づく


1911
未来が大まかにでも
読めるなんて
台風ゆらゆら、ぱ進む座標系




   [短歌味体Ⅲ]  番外 戦後70年シリーズ


敗・戦・後・70年
ですか
するめのように噛み続けるわけにはいかない


そそくさと「もはや戦後ではない」
くり返す
打ち消しの韻荒地の戦後に刺さるる


マラルメ・まるらめ・マルメラ
ですか
不明の森のさびしい語音


「明治は 遠くなりにけり」
聞いたことがある
昭和も人も遠く薄らぐ


「終戦・です・か・・・」
薄らぐ今が
ゾンビ呼び寄せ「鬼畜米英」


薄らぐ表皮の下に
未明の
昭和も人も眠る流れがある


何度でもくり返してきた
このヘンな気持ち
時が流れる渦流が起こる


戦争の日々の意味を
生涯
考え詰めてきた吉本さんは




   [短歌味体Ⅲ] 心の底からシリーズ・続


1912
うまく聞き取れなくても
じいんとくる
(それそれそれ)の言葉の表情


1913
〈好き嫌い〉〈スイーツと失恋〉
等価な
言葉ここにあらずの言葉たち


1914
とある駅、〈心〉と〈言葉〉が
行き違う
電車の解離イメージ




   [短歌味体Ⅲ] 心の底からシリーズ・続


1915
(どうなのどうなのどうなのお)
迫り来る
問いがいくつかの駅を現す


1916
最終に息せき切って
乗り込んだ
今イエスが走り出すよ


1917
選択し走り出してみる
救われない
イエスとノウの深い谷があり




   [短歌味体Ⅲ] 心の底からシリーズ・続


1918
思いっ切り心の底から
打ち上げても
線香花火パチ パチ パチ


1919
あっついごはん頬張って
他所にいる
あちちのきみは試されている




   [短歌味体Ⅲ] 心の底からシリーズ・続


1920
なぜ今浮上するのか
わからない
昔聴いた(オー・マイ・ダーリン・クレメンタイン)


1921
流れる髪(アチチアチ燃えて
るんだろうか
アチチアチ)すぱーんと青空




   [短歌味体Ⅲ] 吉本隆明シリーズ・続


1922
小石積む少年の
振り返り
ふとこぼれる微笑みの『幸福論』


1923
大げさに構えなくても
もうすでに
歩き出してるよ微分『幸福論』

註.この「微分」は、曲線に沿って接線次々に引くという具体性のイメージとして。




   [短歌味体Ⅲ] 吉本隆明シリーズ・続


1924
例えば三十代と
八十代
同じ言葉なのにコクや深さがちがう


1925
概念に詰まっているイメージの
生命(いのち)の旅程
とある駅で荷下ろしする『言葉からの触手』




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ


1926
遠くに飛行機
飛んで・い・る
折り畳まれ改行されゆく夕空


1927
タイマーセットし忘れ
(うううう う)
あっ 浴槽がモーゼの大海原




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1928
遙か太古赤ん坊みたいに
泣く声が
言の葉には滲みていた


1929
あっと気づいたときには
乾いた風に
解離する 心と言の葉ねじれてる




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1930
あっ、あああああ
避けようもなく
ぐらりからざっざざざざざ倒れゆく


1931
あっと口には出さなくても
波固く
打ち寄せて来る〈あっ〉の流れ




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1932
あっ、ああ、あ。・・・
滑空し
失速・墜落してゆく、言葉もまた


1933
あっ、観てるだけなのに
力の
繊維波打ち力束となる




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1934
作者よりすばやくすでに
すり抜けて
待ち合わせ場所に到達している


1935
思いもしないようなことや
約束の地
湧き出ている朝がある




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1936
これって何? (あっ) と湧き立つ
思いがある
くり返している流れがある


1937
ああそれはねと言いながら
(あっ)
すばやく素通りしていくものの気配




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1938
おそらくは〈あ〉から〈っ〉までの
無限の旅程
幼い核の時間の走法


1939
考える間もなく振り切り
走り出す
条件反射のような〈あっ〉




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1940
一瞬のとまどい残し
深みへ
じんじじんと滲みてゆく〈あっ〉は


1941
異形に見えてもくり返す〈あっ〉
の旅路は
心とからだ馴染ませてゆく




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1942
風のようなひと言にも
遙か遠く
風の起源が折り畳まれ匂う


1943
何ですか?と聞き返す
通路には
見慣れぬ置物や空気漂う




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1944
頭へ到りイメージ浮かぶ
間もなく
暗い深みからひかり突き差す


1945
みどり葉の緑流るる
道々を
みどりバッタは歩いて行くよ




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1946
真昼間の青天の広がる
一本道
雲やわらかに踏み進んでゆく


1947
自在にも歩いてるようで
固有の
座標系を歩まされてるよ




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1948
滑る すべる すべるう
張り詰める
くうきの中すべるう あっ


1949
あと少しあと三秒の
時間差
あったなら〈あっ〉は不在に眠る




   [短歌味体Ⅲ] あっシリーズ・続


1950
通い慣れた風景ぐらり
傾いて
いつもの座標が遠ざかりゆく


1951
見慣れても時には青天の
大海原に
変位する内なる風景は




   [短歌味体Ⅲ] みどりのシリーズ


1952
飛び石をとびゆく日々の
あわいには
みどりみちのみどりに映える


1953
あわいからミュージック流れ
みどり陰
リズムに乗って揺らゆら進む




   [短歌味体Ⅲ] みどりのシリーズ・続


1954
言葉が服を身に着け
装いして
みどりの小道歩いて行くよ


1955
〈みどりの〉と言うほかない
匂い立つ
脈打つ光景が立ち現れる




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ


1956
事件の内外(うちそと)
葬式の
内外と無縁、視線の避けようもない別れ


1957
無縁でもひかれてゆく
視線
〈とおりゃんせ とおりゃんせ〉


1958
〈ここはどこの細道じゃ〉
行き来する
視線は人形(ひとがた)の森の負荷に染まる




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1959
中に入るには特殊な
カギでなく
自らの内なる経験の日々


1960
外なる目他が漂流する
しずかに見る
内なる言葉にならぬ頂から


1961
通路にただかける言葉なく
silently
旅する者の視線交わし合う




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1962
通路には見知らぬ花咲き
〈ぱなぷらか〉
異国の言葉の匂うことあり


1963
通路には無重力の
言葉もあり
つんつんつんつま先立つ


1964
ゆかしさの通路に入る
食べてみたいな
言葉の果汁〈ぱいなっぷりん〉




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1965
全面の遮断ではなく
土砂の上
ただ記号ばかり浮遊している


1966
閉ざされた心の在り処(ありか)
上に浮遊する
記号たちは必死の「蜘蛛の糸」

註.「蜘蛛の糸」は、芥川龍之介の作品。




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1967
誘われて歩いてゆくと
突然の
横穴へツーと引き込まれてゆく


1968
上がり込んだ他人の家の
匂いと
我が匂い通路でぶつかり合う




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1969
ひとつ道メビウスの森へ
迷い込み
人抜けて花花へと分岐してゆく


1970
花に会い人つながりは
ほどかれて
花花緑の流れに乗る


1971
花の酔いさめて重心
戻るように
メビウスの輪を抜け帰宅する




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1972
駆けてゆく駆けてゆく通路
絆打つ
ぬかるむ網に足取られながらも


1973
断ち切れば人つながりの
重圧も
うそのような浮力働く


1974
見震う緊急時の
閉ざされた
人つながりの通路にも青空の見ゆ




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1975
通路から太い文字が
飛び立つとき
小さな文字の欠けら横たわる


1976
張りぼての鳥には生きた
等身大の
言葉がない潤いがない




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1977
通路を潜り抜けると
よそ行きの
パシッと締めた服の言葉になる


1978
通り抜ける秘儀は自然に
成就する
着慣れた服を着こなすように




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1979
どんな通り方でもいい
それがきみの
こころに沿った流れならば


1980
秋空ばかりではなく
濁った
あくも出るにんげんだから


1981
ぶつかって他人(ひと)傷つける
走法なら
今は少し微調整する




   [短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ


1982
ど・れ・に・し・よ・う・か・な
小さい子の
あつい視線が席取り競う


1983
店の前でバタバタする
泣き叫ぶ子にも
時にはやさしいドアの開けばいい




   [短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続


1984
ええっとねええっとね
小さい子の
時空を巡る旅の報告


1985
時空はまだ晴れ上がらない
濃い果汁
の言葉揺らぎ流れる


1986
〈ええっとね〉の焦る速度に
定まらぬ
旅程はっきり記されてある




   [短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続


1987
やわらかな翼だけでは
全土は回れない
失速する少青年期


1988
ゆったりと飛ぶグライダー
の夢見つつ
飛行機は全土を回る


1989
思わず流してしまった
微笑みは
拭いようもなく棚引いている




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1990
引き出された子牛のように
校門に
浮かない春の気分で母といた


1991
チューリップをうまく描けない
そのことが
何事かであるように学校(世界)は始まる


1992
自然にまみれた日々は
禁じられた
気ままさの中に深く深く沈む


1993
貧弱なモビルスーツを
思い思いに
着込んでいるのが見える




   [短歌味体Ⅲ] 吉本隆明シリーズ・続


1994
たとえばさあ『母型論』、なぜそこまで深く
見えるのかって?
苦の大洋を
溺れる不安が泳いできたからさ


1995
言葉の走行する
風景には
苦の実感が流れている『母型論』




   [短歌味体Ⅲ] 通路シリーズ・続


1996
あくまの気持ち知る前は
〈恥ずかしい〉
家庭の内情(うち)を作文する子あり


1997
大文字の衣裳着れねば
踏み迷う
小文字は通路に黙々と煙る


1998
生きものの赤ちゃんはみな
数光年
濁ったわれらは遠い眼差しす




   [短歌味体Ⅲ] やさしい歌シリーズ・続


1999
遙か遙かの幼年は
理想の背
から静かに思い見るのみ


2000
戻れない帰れない
の舟に乗り
ただ未来ばかりが影差してくる


2001
「大きゅうなんしゃったねえ」
に笑(え)み返し
しがらみの海深こうまなざし帰る


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