先日、有名な米国二輪ネットCycle News 誌が「AMA Inducts New Hall of Fame Members」を投稿していた。米国モーターサイクル協会主催の2022年AMA二輪殿堂入り(毎年、モーターサイクル界で最も功績のあった重要な人々がAMAモーターサイクル殿堂入りする)した6人の一人に、アメリカの著名モトクロスライダー”James Stewart”の名があった。
加えて、5日の「Motocross Actionネット誌 」は James Stewartがカワサキ在籍当時活躍したKX80の写真を投稿している。
「We get misty-eyed sometimes thinking about past bikes we loved and those that should remain forgotten. We take you on a trip down memory lane with bike tests that got filed away and disregarded in the MXA archives. We reminisce on a piece of moto history that has been resurrected. Here is our original February 2001 test of James Stewart’s last mini.」
ところで、Kawasaki KX80はカワサキの二輪オフロード事業を構築した、その原点だと思う。前にも書いたが、TeamGreenの成功がカワサキのオフロードビジネスの成功の原点だとすれば、その骨格の基本を構成したのがKX80を頂点とするミニバイク群だと考えている。その成功の過程は、例えば、Ponca Cityや Loretta Lynnレースでの誇るべき戦績で語ることができる。それらの細かく分けられたカテゴリーには、排気量とは別にストック(無改造、量産車のまま)とモディファイド(改造)があったが、カワサキは最激戦区の80ccモディファイドクラスに、まだ市販されていない翌年型KX80の量産試作車を毎年投入した。この作戦が大ヒットした。レースの1週間か10日程前、ロスアンゼルス近郊のサドルバックで、Ponca Cityに参戦する10~15才位のキッズ選手数人を招集し事前テストする。このテストは量産移行可否のテスト確認の場でもあるが、殆どがプロ選手とほぼ同等のラップで走る飛びぬけて優秀な選手達で、しかも彼らの技量に合わせ特別のセッチングをするものだから、Ponca CityやLoretta Lynnに出場する他の選手より圧倒的に早く、他の競争ライダーを簡単にラップしてしまう。当時は、モディファイドクラスにはホモロゲーションは要らなかったので、発売前の新型でも出られた。当時はモトクロッサーが毎年劇的に進化していた時代で、たとえば現行の空冷エンジンに対して来年型が水冷エンジンだったりすれば、これはもう羨望の的だった。性能的にも格段の差があったうえに、あえてストックのまま出ても他社の改造車に勝てるのに、今度のKXを買えば勝てるぞ、という明確で強烈なインパクトをPonca CityやLoretta Lynnで与えた。この作戦は大成功で、「Team Green活躍」が格好の宣伝となり、KXシリーズの販売台数はうなぎ登りに上昇の一途をたどったのは事実である。Ponca CityやLoretta Lynnでのレース活動にはライダー育成や実戦テストといった側面もあって、すべてが好循環に回っていった時代。そう言う時代を経てカワサキのオフ車は成長し成功してきた。James Stewartが、Ricky Carmichaelが 、そしてJeff EmigやRyan Villopoto 等を含むアメリカモトクロス界を代表する著名なライダーが、選んだミニバイクは他ならぬカワサキのKX80だった。