ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

高岡ダム

2021-10-31 23:29:58 | 宮崎県
2021年10月17日 高岡ダム
 
高岡ダムは左岸が宮崎県宮崎市高岡町浦之名、右岸が同県都城市高城町四家の一級河川大淀川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なため、戦前から各河川で電源開発が進められてきました。
大淀川では電気化学工業(現デンカ)及び同社傘下の大淀川水力電気が電源開発を進め、
1925年(大正14年)の大淀川第一発電所に次いで1931年(昭和6年)に完成したのが高岡ダムです。
ここで取水された水は約6.3キロの導水路で大淀川第二発電所に送られます。
これらの発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が継承しました。
完成当初の大淀川第二発電所の最大出力は3万キロワットでしたが、昭和30年代に最大7万1300キロワットに増強されました。
 
見学はダム左岸のみで、ほぼフェンス越しとなります。
8門のラジアルゲートで大淀川を閉め切っており、すり鉢状の減勢工は昭和初期の発電ダムらしい作り。



クレストに並ぶ8門のラジアルゲート
扶壁は鮫の背びれのよう。

 
両端が絞り込まれたすり鉢状の減勢工
対岸には波返しの付いた導流壁。


右岸に魚道があります。



 
上流面
ほぼ満水
対岸に魚道の吞口があります。
 
ゲート直上の第二取水口
昭和30年代に増設されました。

 
第二取水口の取水ゲート。

 
第二取水口の上流に第一取水口があります。


取水ゲート。

上流から見た第一取水口。

水利使用標識。
 
(追記)
高岡ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2806 高岡ダム(1734)
左岸 宮崎県宮崎市高岡町浦之名
右岸 宮崎県都城市高城町四家
大淀川水系大淀川
34.9メートル
124.2メートル
12464千㎥/3653千㎥
九州電力(株)
1931年
◎治水協定が締結されたダム

日南ダム

2021-10-31 16:39:23 | 宮崎県
2021年10月19日 日南ダム 
 
日南ダムは宮崎県日南市酒谷甲の広渡川水系酒谷川にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受け、酒谷川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給を目的とした補助治水ダムとして1984年(昭和59年)に竣工しました。
2016年(平成28年)に河川維持放流を利用した宮崎県企業局酒谷発電所(最大520キロワット)が稼働しました。
利水従属発電になりますが、これにより宮崎県ではダムの目的を『FN』から『FNP』に、治水ダムから多目的ダムに変更しており当ブログでもこれに従うことにします。
 
下流から
一部樹木に隠れていますが、クレスト自由越流頂と自然調節式オリフィスを備えたよくあるゲートレスダムに見えます。

 
ダム下には2016年に完成した宮崎県企業局酒谷発電所
これにより治水ダムから多目的ダムに変更されました。

 
左岸高台、国道222号線日南ダム展望所から
ここから見るとダムの様相は一変します。
まず目につくのが右岸側の半円形越流式オリフィス。いわゆるダム穴風洪水吐
さらに上流側にせり出した左右両側のクレスト自由越流堤
滋賀の青土ダムも衝撃的ですが、それに引けを取らない『異形』のダムです。

 
直線の天端管理道路に対して、屈曲したクレスト越流頂や導流壁が立体交差。

 
こちらは半円形越流式オリフィス
越流部には振動防止のスポイラーが並びます。

 
いよいよダムサイトへ
ダムの説明板。 


堤体左岸側は『逆Z字』に折れ曲がり『カド』になっています。

 
上流面
左岸クレスト越流頂は上流側にオフセット。

 
左岸は逆Z、右岸は円形と文字通りの左右非対称。


オリフィスの左手は取水ゲート。グリーンの予備ゲートが格納されています。


左岸導流部は減勢のために階段状になっています。


天端から減勢工。


右手は酒谷発電所
左手は低水放流用バルブ。

 
オリフィスは越流中
ダム湖は総貯水容量600万立米で細長く上流に続きます。


右岸から。


左右非対称かつ不規則に折れ曲がった堤体
上流にオフセットセットされたクレストとダム穴風オリフィス
訪問前から楽しみにしていたダムでしたが、生で見ると期待以上の衝撃。
惜しむらくは九州の最果てにあるため、知る人ぞ知る存在になっていること
もし首都圏近郊にあったなら、日本100ダム間違いなし。

2840 日南ダム(1732) 
宮崎県日南市酒谷甲 
広渡川水系酒谷川 
FNP 
 
47メートル 
189メートル 
6000千㎥/4640千㎥ 
宮崎県県土整備部 
1984年 

広渡ダム

2021-10-31 08:40:54 | 宮崎県
2021年10月19日 広渡ダム 
 
広渡ダムは宮崎県日南市北郷町北河内の広渡川水系広渡川にある宮崎県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
国交省の補助を受けて建設された補助治水ダムで、広渡川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給を目的として1993年(平成5年)に竣工しました。
 
ダムは県道33号都城北郷線沿いにあります。
下流から
クレスト自由越流頂8門、自然調節式オリフィス1門のゲートレスダムです。
訪問時はオリフィスから放流中。

 
堤体両岸には波返しのついた堤趾導流壁。

左岸ダムサイトの管理事務所
宮崎県営ダムではおなじみ、こちらも管理人さんが常駐しているはずですが訪問時は買い物でも行かれたのか?不在でした。

 
竣工記念碑。


上流面
一見水位は低めですがこれで常時満水位。
堤体中央に低水放流用の取水ゲートがあります。

天端から減勢工を見下ろす。

 
ダム湖は上流まで細長く続き総貯水容量は640万立米あります。 
上流には広渡ダムレイクサイド公園があり、夏に開設されるウォータスライダー付き天然水プールは子供たちに大人気。 


右岸の艇庫と長ーいインクライン。

 
天端は徒歩のみ開放
右手は資料館、左手は管理事務所。

 
右岸から下流面
個人的にこういうアングルの堤趾導流壁が好み。

 
右岸から上流面

 
バブル期着工のダムということで、補助ダムにもかかわらず資料館兼備。
ただ、訪問が早朝だったこともあり管理人さんは不在、資料館も閉まっていました。
 
2843 広渡ダム(1731) 
宮崎県日南市北郷町北河内
広渡川水系広渡川
FN
66メートル
170メートル
6400千㎥/5350千㎥
宮崎県県土整備部
1993年

天神ダム

2021-10-30 16:33:57 | 宮崎県
2021年10月19日 天神ダム
 
天神ダムは左岸が宮崎県都城市山之口町山之口、右岸が宮崎市田野町乙の大淀川水系境川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
大淀川右岸地区は南九州特有の透水性の高い火山灰土壌で形成され、地味が薄い上に水利に乏しく安定した水源確保と灌漑施設の整備が強く求められていました。
1981年(昭和56年)に農水省による国営大淀川右岸地区かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2001年(平成13年)に完成したのが天神ダムです。
土地改良事業全体も2004年(平成16年)に完了し大淀川右岸土地改良区の約1900ヘクタール超の田畑のかんがい排水設備が整備され、大淀川右岸地区は宮崎県有数の野菜、果樹等園芸農業地帯となっています。
ダムの管理は宮崎市が受託しています。

一方、2005年(平成17年)台風14号により貯水池上流で大規模な山体崩壊が発生し、大量の土砂流入により計画以上の堆砂が進行するとともに貯水池の濁水が常習化しました。
これに対処するため2023年(令和5年)竣工をめどに国営施設機能保全事業が着手され、土砂流入防止設備や清水選択放流設備などが整備されてます。
 
堤高62.4メートル、堤頂長441.7メートルと農業用ロックフィルダムとしてはなかなかのスケール。

 
洪水吐直下まで車で入れますがスペースがないのでUターンが大変。
転回できないと500メートル以上の鬼バック。

 
左岸から下流面
リップラップにはセイタカアワダチソウが繁茂。

 
上流面も然り。


左岸の横越流式洪水吐。


天端からの眺め
左手は洪水吐、奥の高架橋は宮崎道。

総貯水容量670万立米の貯水池。
2005年(平成17年)に貯水池上流で大規模な山体崩壊が発生しました。

山体崩壊による濁水対策として国営施設機能保全事業で設置された清水選択放流設備。
表層の清水を選択取水できるようになりました。

 
右岸の斜樋
巡視艇繋留用浮桟橋が隣接しています。

広い天端ですが車両は進入禁止で徒歩のみ開放。

 
洪水吐脇の親柱には『田の神様(たのかみさあ)』が安置されています。
南九州特有の民間信仰で田んぼの守り神とされています。

竣工記念碑。


水利使用標識
受益農地の過半が畑地のため、年間を通じて水利権が配分されています。

 
管理事務所。

 
宮崎県北部のダムでは必ずついて回る2005年(平成17年)の台風14号ですが、県南部の天神ダムでもその災厄を受け、対応を余儀なくされました。
 
(追記)
天神ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2844 天神ダム(1730) 
左岸 宮崎県都城市山之口町山之口 
右岸 宮崎県宮崎市田野町乙 
大淀川水系境川 
 
 
62.5メートル 
441.7メートル 
6700千㎥/6270千㎥ 
宮崎市 
2001年 
◎治水協定が締結されたダム

渡川ダム

2021-10-30 08:30:13 | 宮崎県
2021年10月18日 渡川ダム
 
渡川ダムは左岸が宮崎県東臼杵郡美郷町南郷中渡川、右岸が同県日向市東郷町下三ケの一級河川小丸川上流部にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1935年(昭和10年)に内務省は河川総合開発の先駆となる『河水統制事業』を採択し全国で治水・利水を一貫した河川開発が実施されることとなりました。
宮崎県では1938年(昭和13年)に県電気建設部(現県企業局)により小丸川の治水と発電を目的とした『小丸川河水統制事業』が採択され、4基のダムおよび発電所の建設が着手されました。
このうち浜口ダム(現川原ダム)と川原発電所、戸崎ダムと石河内第二発電所は1940年(昭和15年)に完成するも直後に日本発送電に接収され、戦後は九州電力が事業を継承しました。 
一方多目的ダムとして松尾ダムが戦時中の中断を挟んで1951年(昭和26年)に竣工、こののち小丸川河水統制事業は『小丸川総合開発事業』に衣替えし、同事業により1956年(昭和31年)に小丸川最上流部に渡川ダムが竣工しました。
渡川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで小丸川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、宮崎県企業局渡川発電所(最大1万2000キロワット)でのダム水路式発電を目的としています。
渡川ダムの完成により、1938年に着手された『小丸川河水統制事業』は着手より18年の年月をかけようやく全事業が竣工するに至りました。
 
ダム便覧には10年以上前に撮影された下流からの写真が掲載されていますが、今は木が茂りこの写真が精いっぱい。
クレストにラジアルゲート3門を備えています。
 
ダム下流面が望めるのはこのアングルだけ
堤頂部の襟がなく曲線でスロープに続く独特のフォルム
一方黒ずんだ堤体はコルゲートパイプのシェルターで被覆されまるでクロヒョウのような雰囲気。
 
撮影ポイントがないので同じような絵が続きます。
 
ズームアップ
コルゲートパイプを使ったチューブ状のシェルターは同じ宮崎県営の綾南ダム松尾ダムなどで見られます。
 
渡川ダム貯水池図
ずいぶん傷んでます。
 
水利使用標識
ダム便覧では有効貯水容量は2990万立米となっていますが、こちらは2790万立米。
当ブログでは水利使用標識に従います。
 
湖岸にしがみつくように建つ管理事務所。
こちらにも管理人さんご夫婦がが住み込みで駐在されています。
 
撮影ポイントがないのは宮崎県ダムあるある。
無理に欲張らず見えるところで満足するのも長く安全にダム巡りするコツだと思います。
 
(追記)
渡川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2818 渡川ダム(1729) 
左岸 宮崎県東臼杵郡美郷町南郷中渡川 
右岸 宮崎県日向市東郷町下三ケ 
小丸川水系渡川 
FNP 
 
62.5メートル 
173メートル 
33900千㎥/27900千㎥ 
宮崎県県土整備部 
1956年 
◎治水協定が締結されたダム 

上椎葉ダム

2021-10-29 23:06:26 | 宮崎県
2021年10月18日 上椎葉ダム
 
上椎葉ダムは宮崎県東臼杵郡椎葉村下福良の二級河川耳川上流部にある九州電力(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
包蔵水力豊富な耳川水系では戦前から九州送電による電源開発が進められ、1938年(昭和13年)には戦前としては最も堤高が高い塚原ダムが建設されるなど、日本有数の電源地帯となっていました。 
電力管理法によって誕生した日本発送電は戦中より当地へのダム建設を検討、戦後の経済急回復を受け1950年(昭和25年)に日本初の本格的アーチダムである上椎葉ダム建設に着手します。 
しかし翌1951年(昭和26年)の電気事業再編令で同社は解体され、事業は九州電力が引き継ぎ、5年の歳月をかけた難工事の末1955年(昭和30年)に上椎葉ダムが完成しました。
竣工年度では島根県の三成ダムに遅れるものの、堤高100メートルを超える大ダムとしては日本初のアーチダムで、上椎葉ダムの成果は同じ九州電力の一ツ瀬ダムへと受け継がれのちに黒部ダムという大輪を咲かせることになります。
ここで取水された水は上椎葉発電所に送られ最大9万3200キロワットのダム水路式発電を行っています。
さらに2013年(平成25年)には河川維持放流を利用した上椎葉維持放流発電所(最大出力330キロワットの小水力発電)が稼働しました。
 
上椎葉ダムは両岸にジャンプ台式減勢工を備えた独自のスタイルとも相まってダム愛好家の間では『閣下』の愛称で親しまれています。
また特に毎年11月に開催される観光放流はダム愛好家のみならず一般観光客にも人気のイベントになっています。
上椎葉ダムは日本ダム協会により日本100ダムに、ダム湖の『日向椎葉湖』はダム湖百選に選ばれています。
また2018年(令和元年)には土木学会選奨土木遺産に選定されました。
 
上椎葉ダムには展望スポットが多く、事前に整理してゆかないと右往左往する羽目になります。
ダム下から
上椎葉ダムはいわゆる円筒型アーチ、ドーム型アーチのような圧迫感はない代わりに直下から見上げるとその高さを実感できます。
 
山中展望台への途中から
真正面は凹凸感が消え平面的な絵になります。
 
山中展望台から
ダムをこのアングルから見下ろせるのはいいですね。
貯水池の日向椎葉湖は総貯水容量は9155万立米。
有効貯水容量はダム便覧の7600万立米から堆砂の進行により6307万5000立米に減少しています。
 
椎葉村と言えば平家の落人伝説もあり九州山地の秘境というイメージですが、ダムは市街地近くてびっくり。
ダムのそばには中学校もあります。
堤高100メートル超えのダムと学校がワンフレームに収まるのはここだけかも?
 
右岸高台から
ゲート部分の屈曲がよくわかります。
 
ゲートは左右に2門ずつ、計4門
こちらは右岸のラジアルゲート。
 
ゲートを至近から。
 
右岸から
普通の広角ではフレームに収まらないので超広角で。
 
アングルを変えて。
左右両岸にジャンプ台式減勢工を備えることで、放流時、両岸から放流された水が谷の中央部でぶつかりエネルギーを相殺し堤体への影響を最小限にしようとしました。(ウィキペディア引用)。
 
天端中央から。
 
左岸ダム湖畔の取水設備
取水ゲートはキャタピラゲート。
 
左岸から。
 
ダムの銘板と選奨土木遺産プレート。
 
『日向椎葉湖』の石碑とダム湖百選のプレート
石碑は日向椎葉湖と命名した文豪吉川英治の筆。
椎葉は平家落人伝説の村、吉川英治は大河ドラマにもなった『新平家物語』の著者という縁。
 
左岸展望台から
やっぱりアーチダムは下流側高台から俯瞰するのが一番格好いい。
肉厚且つ円筒型アーチであることがよくわかります。
 
『大本命は一番最後にやってくる』と言いますが、耳川水系の最上流部にあるのが上椎葉ダム。
下流から順番にダムを辿って、最後に登場したのはやはり大本命でした。

2815 上椎葉ダム(1728) 
宮崎県東臼杵郡椎葉村下福良 
耳川水系耳川
110メートル
341メートル
91550千㎥/63075千㎥
九州電力(株)
1955年

岩屋戸ダム

2021-10-29 16:05:21 | 宮崎県
2021年10月18日 岩屋戸ダム
 
岩屋戸ダムは左岸が宮崎県東臼杵郡椎葉村下福良、右岸が同村松尾の二級河川耳川上流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから戦前から活発な電源開発が進められてきました。
耳川水系では九州送電(株)による電源開発が進められ、1929年(昭和4年)の西郷ダム・田代発電所(現西郷発電所)を手始めに山須原ダム・山須原発電所、塚原ダム・塚原発電所が建設されました。
そして同社が最後に手掛けたのが岩屋戸ダムですが、完成直後の1941年(昭和16年)に日本発送電に接収されたのち、1951年(昭和26年)の電気事業再編により九州電力が事業継承しました。
ここで取水された水は岩屋戸発電所(最大出力5万2000キロワット)に導水されダム水路発電を行います。
 
国道327号線の尾平トンネル手前で左手の旧道に入ると左手に岩屋戸ダムが姿を現します。
残念ながら左岸が姿を隠したままですが、右岸の導流壁に沿って流下する放流水が白糸のような美しさです。
すり鉢状の減勢工など当時の発電ダムの典型的スタイルとなっています。
 
フェンスと草木に阻まれ下流面はこれが限界。
 
ゲートをズームアップ
ダムカードの文章を借りれば『斜めに整列しているピアが美しい』
 
水利使用標識とバス停。
残念ながらバス停名はダム名ではありません。
ダム便覧では有効貯水容量は635万8000立米となっていますが、堆砂が進み現在は362万3000立米。
2005年(平成17年)の台風14号の影響が大きいようです。
 
天端入り口にチェーンが架かり立ち入り禁止。
 
上流面
塚原ダム同様、取水口がクレストゲートと並んでいます。
 
取水口をズームアップ。
 
ラジアルゲートをズームアップ。
 
総貯水容量は635万8000立米。
 
こちらは戦後に増設された第二取水口。
 
施工は塚原と同じ間組。
完成後に日本発送電による接収が決まっていた中で九州送電(株)の意地で建設された岩屋戸ダムです。

2811 岩屋戸ダム(1727) 
左岸 宮崎県東臼杵郡椎葉村下福良
右岸         同村松尾 
耳川水系耳川 
 
 
57.5メートル 
171メートル 
8309千㎥/3623千㎥ 
九州電力(株) 
1938年

塚原ダム(古園ダム)

2021-10-29 08:23:35 | 宮崎県
2021年10月18日 塚原ダム(古園ダム)
 
塚原(つかばる)ダムは左岸が宮崎県東臼杵郡諸塚村七ツ山、右岸が同郡美郷町西郷三ヶの二級河川耳川上流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから戦前から活発な電源開発が進められてきました。
耳川水系では九州送電(株)による電源開発が進められ、1929年(昭和4年)の西郷ダム・田代発電所(現西郷発電所)、1931年(昭和6年)の山須原ダム・山須原発電所に次いで1938年(昭和13年)に完成したのが塚原ダムです。
ここで取水された水は塚原発電所に導水され最大6万7050キロワットのダム水路発電が稼働しました。
塚原ダムを始めとした耳川水系の発電施設は日本発送電の接収を経て、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業継承しました。
 
塚原ダムの施工は『ダムの間』と称された間組(現安藤ハザマ)が担い、可動クレーンなどを用いた当時の世界最先端レベルの機械化施工が行われるとともに、玉石モルタルに替えて日本で初めて硬練りコンクリートによる打設が行われました。
また堤高87メートルは戦前着工ダムとしては最高を誇り、塚原ダムの成果が戦後の佐久間ダムへとつながったとも言われています。
これらの点を評価して大ダムとしては小牧ダムに次いで登録有形文化財に指定されるとともに、経産省による近代化産業遺産、Aランクの近代土木遺産にも選定されています。
 
諸塚村中心部から国道327号を西へ3キロ超走ると左手に半身の塚原ダムが姿を見せます。
『早く全景を見てみたい』と心が急かされます。
 
次のコーナーを曲がると期待に違わぬ景色が目の前に現れます。
クレストにずらっと並ぶラジアルゲートと戦前のダムでは珍しい直線状の導流壁
何よりも87メートルの堤高がこれが戦前のダムであることを忘れさせます。
 
2005年(平成17年)の台風14号では下流で大規模な山体崩落が発生し天然のダム湖が出現、塚原ダムのゲート近くまで水位が上昇したそうです。
 
クレストに並ぶ8門のクレストゲート
2009年(平成11年)にかけてゲートの改修が行われました。
 
クレストゲートに並んで設置された取水ゲート
凹凸になった天端高欄は万里の長城を模したと言われていますが、ゲート脇の小塔はむしろ西洋の城壁にも見えます。
一方恐竜の手のような逆S字の二本の空気孔が、ダムの堅牢な表情をほぐしています。
 
宮崎あるあるのダム名のついたバス停がここにもあります。
古園は塚原ダムの別名、でも円堤じゃなくて堰堤でしょ?
 
ダムの敷地は立ち入り禁止
管理事務所の背後にあるのはバットレスのバッチャープラント跡。
 
門扉には近代化産業遺産と登録有形文化財のプレート。
 
水利使用標識
ダム便覧では有効貯水容量は1955万5000立米となっていますが、その後堆砂が増え現在は1763万3000立米まで減っています。
 
上流面
奥にゴミや流木を取り除く作業船、手前に巡視艇が繋留されています。
 
発電用ダムと言うことでほぼ満水。
ダム湖の総貯水容量は3432万6000立米。
 
こちらはダムの下流2キロちょっとにある塚原発電所
Bランクの近代土木遺産です。
 
閣下と呼ばれる上椎葉ダムの下流にあるため、どうしても前座的な目で見られがちな塚原ダムですが、このダムの成果が戦後の佐久間ダムや黒部ダムへと続いたことを鑑みれば大ダムで2基しかない登録有形文化財指定も納得です。

2808 塚原ダム(古園ダム)(1726)
近代化産業遺産
左岸 宮崎県東臼杵郡諸塚村七ツ山
右岸      同郡美郷町西郷三ヶ
耳川水系耳川
87メートル
215メートル
34326千㎥/17673千㎥
九州電力(株)
1938年

諸塚ダム

2021-10-28 23:54:19 | 宮崎県
2021年10月18日 諸塚ダム
 
諸塚ダムは宮崎県東臼杵郡諸塚村家代の耳川水系柳原川にある九州電力(株)が管理する発電目的の中空重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編で誕生した九州電力は戦後の復興や高度経済成長による電力需要拡大に対処するため積極的な電源開発を進めます。
耳川水系では1955年(昭和30年)に上椎葉ダムと上椎葉発電所、翌1956年(昭和31年)に大内原ダムと大内原発電所が稼働、そして1960年(昭和35年)に同社初の揚水式発電所として諸塚発電所が完成します。
諸塚発電所と同時に建設されたのが諸塚ダムで、当ダムを上部池、既存の山須原ダムを下部池として最大5万キロワットの混合揚水式発電を行っています。
完成当時は揚水発電所としては日本最大出力を誇り、豊水期に一般水力、渇水期に一般水力および日周期揚水発電を行います。
諸塚ダムは九州で唯一の中空重力式ダムですが、通常中空ダムでは上流面に『タコ足』と呼ばれるスリットが施されます。しかし当ダムは下流面にも5本のスリットが入った下流面開放型を採用した希少な中空ダムです。
 
国道327号線から県道50号新塚原高千穂線に入り柳原川に沿いを約8キロ北上すると諸塚ダムに到着します。
一番の推しが下流面のスリットなんですが、木の枝が邪魔になって…
 
左岸の取水設備と管理事務所
1960年(昭和35年)竣工ということで取水設備はずいぶん大掛かり。
 
ダム名のついたバス停、宮崎あるあるです。
しかし付近に住宅もなく一体だれがこのバス停を利用するのか?
 
堤頂部を真上から俯瞰
ゲート部分がクランクになり下流側に張り出してます。
ダム湖は総貯水容量348万4000立米に対して有効貯水容量は104万1000立米とかなり堆砂が進んでいます。
 
上流面
水位が高く『タコ足』は確認できません。
 
ゲートはラジアルゲート1門。
 
低い位置から下流面を撮ってみます。
相変わらず木が邪魔。
堤体、導流壁、ゲートのハウジングの傾斜が統一された、ユニファイなデザイン。
 
スリット
正面から見てみたい。
 
中空ダムらしく堤頂部からスロープが始まっています。
 
天端
実はこの手前にゲートがあり、この先は立ち入りできません。
 
九州唯一の中空ダム、しかも下流面にスリットがあるのはここだけ。
ダムツーリズムに積極的な九電さんなら、せめてもう少し下流面が見えるように樹木を何とかしていただければ!

2824 諸塚ダム(1725)
宮崎県東臼杵郡諸塚村家代
耳川水系柳原川
HG
59メートル
149.5メートル
3484千㎥/1041千㎥
九州電力(株)
1960年

宮の元ダム

2021-10-28 16:35:50 | 宮崎県
2021年10月18日 宮の元ダム
 
宮の元ダムは宮崎県東臼杵郡諸塚村七ツ山の耳川水系七ツ山川にある九州電力(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編で誕生した九州電力は戦後の復興や高度経済成長による電力需要拡大に対処するため積極的な電源開発を進め、耳川水系では1960年(昭和35年)に同社初の揚水式発電所として諸塚発電所を建設します。
同発電所は諸塚ダムを上部池、山須原ダムを下部池として最大5万キロワットの混合揚水式発電を行いますが、併せて支流七ツ山川に建設されたのが宮の元ダムです。
当ダムは諸塚発電所の発電効率を高めるため、本来同発電所下流で耳川に合流する七ツ山川の水を諸塚ダムに導水するための取水ダムとなっています。
また当ダムは堤高18.5メートルとアーチダムとしては徳島県の高西ダムに次いで日本で二番目に低いダムとなっています。
 
諸塚村家代の国道327号線から国道503号線に入り七ツ山川沿いを約8キロ北上すると宮の元ダムに到着します。
ダムの敷地に沿ってフェンスが設置され、さらに草木が伸びているため堤体の撮影は困難、さらに堤体半分が影になる悪条件。
堤高18.5メートルは基礎地盤からの高さのため、見た目はもっと低くなります。
越流部には切れ目があり、また減勢工には副ダムが設置されていますがいずれうまく撮影できません 。
 
上流から
堆砂がひどく堆砂率は100%近そう。
手前の取水口から約4キロの導水路で諸塚ダムに導水されます。
 
さらに対岸上流に支流の川内川からの導水路吐口があるはずですが、これまた確認できませんでした。

2825 宮の元ダム(1724)
宮崎県東臼杵郡諸塚村七ツ山
耳川水系七ツ山川
18.5メートル
87.4メートル
141千㎥/62千㎥
九州電力(株)
1960年

山須原ダム(元)

2021-10-28 08:23:24 | 宮崎県
2021年10月18日 山須原ダム(元)
 
山須原ダム(元)は左岸が宮崎県東臼杵郡諸塚村家代、右岸が同郡美郷町西郷三ヶの二級河川耳川にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから戦前から活発な電源開発が進められてきました。
耳川水系では九州送電(株)による電源開発が進められ、1929年(昭和4年)の西郷ダム・田代発電所(現西郷発電所)、に次いで、1931年(昭和6年)に竣工したのが山須原ダム(元)です。
ここで取水された水は山須原発電所に導水され最大4万1000キロワットのダム水路発電を行います。
当ダムを始めとした耳川水系の発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編により九州電力が事業継承しました。
同社は戦後の電力需要増加に対応して1960年(昭和35年)に耳川左支流柳原川に新たに諸塚ダムを建設、同ダムを上部ダム、当ダムを下部ダムとする同社初の揚水式発電所である諸塚発電所(最大出力5万キロワット)を完成させました。
完成当初は揚水発電としては日本最大出力を誇り、豊水期に一般水力、渇水期に日周期の揚水式発電を行う混合揚水式発電所となっています。
 
しかし2005年(平成17年)の台風14号により耳川水系では大量の土砂が河川および貯水池に堆積し、流域の浸水リスクが高まるとともに河川環境の悪化が危惧されました。
これを受け県・九州電力などは耳川の『総合土砂管理』に取りかかり、西郷ダムおよび山須原ダムの『通砂運用』機能付加のための再開発事業に着手します。
事業は2011年(平成23年)に着工され、2018年(平成30年)にまず西郷ダム(再)が誕生、当ダムの再開発も2022年度中に竣工予定です。
再開発事業では、台風などの出水時にダムの水位を下げることで貯水池を本来の川のような状態に近づけ、上流から流下する土砂を下流へ通過させる『通砂運用』を可能にするため、ダムの一部が切り下げられ新たに大型洪水吐ゲートが設置されます。

国道327号線諸塚トンネル手前から山須原ダムを遠望できます。
 
ズームアップしますが、ダムの一部が見えるのみ。
 
場所を変えると、再開発で堤体を切り下げ新たに設置された大型ラジアルゲートが見えました。
 
工事中のため、天端への立ち入りはできません。
中央の大型ゲートを挟んで左右に3門ずつラジアルゲートを備えます。
堤体直上には戦後増設された第二取水口が隣接します。
 
第二取水口をズームアップ。
 
こちらは1931年(昭和6年)の第一取水口。
 
再開発事業は2022年(令和4年)に竣工予定です。
西郷ダム(再)では新たにダム展望広場が設置されましたが、山須原ダムでもぜひ同様の施設が設置されることを期待します。

2807 山須原ダム(元)(1723)
左岸 宮崎県東臼杵郡諸塚村家代
右岸      同郡美郷町西郷山三ヶ
耳川水系耳川
29.4メートル
91.1メートル
4194千㎥/1261千㎥
九州電力(株)
1931年
--------------------
3672 山須原ダム(再)
左岸 宮崎県東臼杵郡諸塚村家代
右岸      同郡美郷町西郷山三ヶ
耳川水系耳川
29.4メートル
91.1メートル
4194千㎥/1261千㎥
九州電力(株)
2011年~
2022年 再開発事業竣工予定

西郷ダム(再)

2021-10-27 23:30:57 | 宮崎県
2021年10月18日 西郷ダム(再)
 
西郷ダム(再)は宮崎県東臼杵郡美郷町西郷小原の二級河川耳川中流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから戦前から活発な電源開発が進められてきました。
耳川水系では九州送電(株)による電源開発が進められ、水系最初の発電施設として1929年(昭和4年)に西郷ダム(元)と田代発電所(現西郷発電所)が建設され最大8000キロワットのダム水路式発電が稼働しました。
西郷ダムを始めとした耳川水系の発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編により九州電力が継承、同社は田代発電所を西郷発電所と改称するとともに、戦後の電力需要増加に対応して発電能力を3倍以上の最大2万7100キロワットまで増強しました。
 
しかし2005年(平成17年)の台風14号により耳川水系では大量の土砂が河川やダム湖に堆積し、流域の浸水リスクが高まるとともに河川環境の悪化が危惧されます。
これを受け県・九州電力などは耳川の『総合土砂管理』に取りかかり、当ダムおよび山須原ダム『通砂運用』機能付加のための再開発事業に着手し、2018年(平成30年)に新生西郷ダム(再)が誕生しました。
再開発事業では、台風などの出水時にダムの水位を下げることで貯水池を本来の川のような状態に近づけ、上流から流下する土砂を下流へ通過させる『通砂運用』を可能にするため、ダムの一部が切り下げられ新たに大型洪水吐ゲートが設置されました。
 
西郷ダム(再)は国道327号線沿いにあります。
『永遠の鐘』と名付けられたホイストクレーンのカバーがダムのシンボル
中央のローラーゲート2門が堤体を切り下げ新たに設置されたゲートです。
出水時にはこのゲートを開放して、川底に近い位置で放流することで土砂も併せて流下させます。
いわば、主ゲートが巨大な排砂ゲートです。

 
アングルを変えて、
ゲートは計5門、左奥に見えるのは取水ゲート。

 
左岸の魚道
河川維持放流はこの魚道を使い行われています。

 
同じく左岸には低水放流用のバルブがあります。


再開発に併せて国道沿いの右岸ダムサイトがダム広場として整備され、ダムのシンボルである鐘型クレーンカバーである『永遠の鐘』のモニュメントが置かれています。
この鐘は自由に鳴らすことができます。

竣工記念碑。
 

広場のベンチには同じく再開発事業で切り出された山須原ダムのコンクリートが使用されています。


九州電力のダムとしては珍しく、天端は開放。

  
『永遠の鐘』をズームアップ。
実際にはホイストクレーンのカバーで鐘が鳴らされることはありません。


ダムの下流。


貯水池の総貯水容量245万2000立米ですが2018年(平成30年)現在の堆砂量は74万1000立米。


右岸に取水口が二つあります。
右が1929年(昭和4年)からの第一取水口。左手が戦後の発電所増強により増設された第二取水口。

左岸の魚道。


全国で初めてとなる『通砂運用』機能を付加する、再開発が行われた西郷ダム(再)で、上流の山須原ダムでも同様の再開発が2022年(令和4年)に竣工しました。
山梨県の雨畑ダムで堆砂による浸水被害が問題化するなど、ダムの堆砂はダムの寿命や流域の河川環境にもかかわる重要なテーマです。
西郷ダムの成果は今後多くのダムでフィールドバックされてゆくに違いありません。

2804 西郷ダム(元)
宮崎県東臼杵郡美郷町西郷小原
耳川水系耳川
20メートル
84.5メートル
2452千㎥/1222千㎥
九州電力(株)
1929年
----------------
3671 西郷ダム(再)(1722)
宮崎県東臼杵郡美郷町西郷小原
耳川水系耳川
20メートル
84.5メートル
2452千㎥/1222千㎥
九州電力(株)
2018年 再開発竣工

大内原ダム

2021-10-27 16:06:21 | 宮崎県
2021年10月18日 大内原ダム
 
大内原(おおうちばる)ダムは宮崎県東臼杵郡美郷町西郷田代の二級河川耳川下流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編で誕生した九州電力は戦後の電力需要拡大に対処するため積極的な電源開発や既設発電施設の再開発を進めます。
耳川では1955年(昭和30年)に日本初の本格的アーチダムとなる上椎葉ダムと上椎葉発電所が完成、次いで翌1956年(昭和31年)に竣工したのが大内原ダムで大内原発電所で最大1万6000キロワットのダム式発電を行っています。
同発電所は耳川水系では唯一のダム式発電所です。
 
日向市から国道327号線を西進、美郷町との境界線すぐ先に大内原ダムがあります。
ダム全景を望めるスポットはなく、下流からはこれが精いっぱい。
写真ではゲートが3門しか見えませんが、全部で6門のローラーゲートを備えています。

 
ダム直下からもチャレンジしますがここまで。

 
ダム・発電所構内はすべて立ち入り禁止のため国道からフェンス越しの撮影となります。
こちらはダムに隣接した大内原発電所
耳川水系では唯一のダム式発電所です。


発電所を上流から
直上に開閉所があります。


手前2門が取水ゲート、奥にダムのピアが見えます。

 
取水ゲートを上流から。

 
ダムの上流面。
右手が除塵機がついた取水口。

 
ズームアップ
ピアにはアーチ状の鉄骨トラス製管理橋が架かっています。
同じようなトラス橋は中部電力名倉ダムでも見られました。

 
水利使用標識。

 
大内原ダムの標柱。

 
(追記)
大内原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2817 大内原ダム(1721)
宮崎県東臼杵郡美郷町西郷田代
耳川水系耳川
25.5メートル
152.6メートル
7488千㎥/1239千㎥
九州電力(株)
1956年

中岳ダム

2021-10-27 07:50:20 | 鹿児島県
2021年10月17日 中岳ダム
 
中岳ダムは鹿児島県曽於市末吉町南之郷の一級河川大淀川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
曽於東部地区は透水性の高いシラス台地となっており稲作には不向きで零細な畑作営農を余儀なくされていました。
1996年(平成8年)に農水省による国営曽於東部地区農業水利事業が着手され、その灌漑用水源として2007年(平成19年)に竣工したのが中岳ダムです。
事業全体も2013年(平成25年)に竣工し、曽於市・志布志市に跨る曾於東部地区土地改良区約3100ヘクタールの畑地の灌漑設備が整備されました。
これにより農業経営規模の拡大や合理化が図られるとともに高収益作物への転換など農業経営の改善につながっています。
ダムの管理は曽於市、志布志市が共同で受託、実際の操作は曽於東部土地改良区に委託されています。

ダムは大淀川にありますが、水利権の関係で大淀川からの補給は5%未満にとどまり、集水の大半は二級河川安楽川の高岡頭首工からの揚水に依ります。
 
国道222号線に『大淀川源流中岳ダム』の案内板があり、これに従うとダムに到着します。

ダム下から
ここからでは堤高69.9メートル、堤頂長312.5メートルの規模を実感できません。

 
右岸から
一級河川大淀川源流をロックフィル堤体が閉め切ります。

 
右岸親柱の施工者による竣工記念碑
九州ではおなじみ金箔文字。

 
右岸の横越流式洪水吐。

 
天端からの眺め。
受益農地はダムの南方遥か、ここからは見えません。

 
総貯水容量431万立米
貯水量の95%は安楽川からの揚水に依ります。

 
左岸には三角屋根の巨大な管理棟
肝付町の荒瀬ダムの管理棟とうり二つ。

 
左岸の斜樋
こちらは大淀川の河川維持放流用ゲート。

 
右岸の取水口
安楽川からの補給および灌漑用水の取水が行われます。

上流面
草が侵食しつつあります。

広い天端は徒歩のみ開放。

左岸ダムサイトには各種記念碑や説明板が並びます。
こちらは国営農業水利事業の竣工記念碑。


水利使用標識
畑地かんがいのため、年間を通じ水利権が配分されています。


湖岸に置かれた巡視艇。
艇庫もインクラインもありません。

 
中岳ダムは農業用ダムとしては珍しく一級河川本流源流部に位置します。
大淀川の水を灌漑用に利用するのではなく、既得水利権があった安楽川の水の貯留地とし大淀川を間借りしているという表現が妥当でしょう。
 
(追記)
中岳ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2881 中岳ダム(1720)
鹿児島県曽於市末吉町南之郷
大淀川水系大淀川
69.9メートル
312.5メートル
4310千㎥/4250千㎥
曽於市・志布志市
2007年
◎治水協定が締結されたダム

荒瀬ダム

2021-10-26 23:41:47 | 鹿児島県
2021年10月17日 荒瀬ダム
 
荒瀬ダムは鹿児島県肝属郡肝付町波見の肝属川水系荒瀬川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
肝属中部地区は県内有数の農業地帯でありながら透水性の高いシラス台地が広がり水利に乏しく不安定な農業経営を強いられてきました。
1997年(平成9年)に農水省による国営肝属中部地区かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2018年(令和元年)に竣工したのが荒瀬ダムです。
事業全体も同年完了し約1500ヘクタールの畑地の灌漑設備が整備されたことで農業経営の規模の拡大や経営効率化による採算向上が期待されます。
管理は肝属中部土地改良区が受託しています。
また灌漑用水路の落差を利用し荒瀬ダム発電所(最大291キロワット)で小水力発電を行っています。
 
ダム下から
堤高65.6メートル、右岸を洪水吐斜水路を流下します。
白い建屋は河川維持放流設備。
受益農地への供給は専用水路で行われるため、ここでは河川維持放流のみ。


左手は荒瀬川支流の沢ですが、ダム建設中はこの沢経由で仮排水が行われました。

 
こちらは灌漑用水を利用した荒瀬ダム発電所
最大281キロワットの小水力発電を行います。

 
左岸から下流面
堤高65.5メートル
堤頂長407.4メートルの堤体。
竣工してまだ4年ですが、リップラップにはずいぶん草が・・・。

 
ダムサイトには各種説明板や記念碑が並びます。
こちらは幹線水路で使用されたダクタイル鋳鉄管。
宮崎県西都市の東原調整池でも鋳鉄管が展示されていました。

 
農業水利事業の完工記念碑。
九州らしく金箔文字。

水利使用標識
畑地灌漑のため水利権は年間を通じ配分されています。


こちらは小水力発電の水利使用標識。


右岸から超広角で
洪水吐斜水路が長い!



 
天端は立ち入り禁止。
右岸から左岸、左岸から右岸に行くにはいったんダム下まで回りこむ必要があります。

 
右岸の横越流式洪水吐。
満水で薄く越流しています。

 
洪水吐越しの上流面
総貯水容量は257万立米と、周辺の農業ダムの中では小ぶり。

 
左岸には立派な管理事務所、艇庫、斜樋が並びます。
三角屋根の管理棟は国営事業で2007年に竣工した曽於市の中岳ダム管理棟とうり二つ。

 
(追記)
荒瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3031 荒瀬ダム(1719)
鹿児島県肝属郡肝付町波見
肝属川水系荒瀬川
65.6メートル
407.5メートル
2580千㎥/2180千㎥
肝属中部土地改良区
20187年
◎治水協定が締結されたダム