ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

萩形ダム

2018-08-30 00:16:11 | 秋田県
2018年7月17日 萩形ダム
 
萩形(はぎなり)ダムは秋田県北秋田郡上小阿仁村南沢の米代川水系小阿仁川上流部にある秋田県建設部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、小阿仁川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、秋田県杉沢発電所での最大1万5500キロワットのダム水路式発電を目的として1966年(昭和41年)に竣工しました。
秋田県建設部が管理するもっとも古いダムは1963年(昭和38年)竣工の皆瀬ダムですが、同ダムは建設省の特定多目的ダムとして建設され完成後に移管されたため、秋田県管理の補助多目的ダム第1号は萩形ダムとなります。
その後2014年(平成26年)には河川維持放流を利用した秋田県公営企業萩形発電所が完成し最大450キロワットの小水力発電が開始されています。
 
隘路が続き名ばかり県道の県道129号線を小阿仁川沿いに南下すると萩形ダムに到着します。
ダム下は立ち入り禁止のためダムと正対できません。
非常用洪水吐としてクレストにラジアルゲートが1門、常用洪水吐としてコンジットゲートが1門装備されているようです。
 
下流面左岸側には独特の突起が並んでいます。
ダム建設時にここに作業用の足場が架けられたとのこと。
通常は作業終了後に撤去してモルタルなどで埋めることが多いのですが、萩形ダムではそのまま残されています。
 
突起をズームアップ。
 
上流面
利水放流用の選択取水設備があります。
 
天端は車両通行可能です。
対岸から続く林道奥で工事が行われれているため、ダンプや重機の通行用に鉄板が敷かれています。
 
ダム下の様子。
クレストゲート導流部右手の溝はコンジットゲートの導流部です。
 
クレストはラジアルゲートが1門、フラップがついています。
導流部は直線状。
ダム下左岸には利水放流設備と利水放流を利用した萩形発電所があります。
 
 
ダム周辺は険しい岩峰が連なり、深山幽谷の趣。
 
クレストゲートの操作室。
 
竣工から50年、なかなか趣のあるダムです。
できればダム下から眺めたかったな。 
 
追記
萩形ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量を確保することになりました。
 
0379 萩形ダム(1358
秋田県北秋田郡上小阿仁村南
米代川水系小阿仁川
FNP
61メートル
173メートル
14950千㎥/11650千㎥
秋田県建設部
1966年
◎治水協定が締結されたダム

協和ダム

2018-08-29 22:43:28 | 秋田県
2018年7月17日 協和ダム
 
協和ダムは秋田県大仙市協和船岡の雄物川水系淀川上流部にある秋田県建設部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、淀川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、大仙市協和地区(旧協和町)への上水道用水の供給を目的として1997年(平成9年)に竣工しました。
当初は河川名から淀川ダムという名称で事業が進められましたが、大阪の淀川と間違えやすいということで当時の町名を採り協和ダムとなりました。
 
ダム下から
非常用洪水吐として自由越流クレスト6門、常用洪水吐として自由調節式オリフィスゲート1門、利水放流用の低水放流施設が備わっています。
 
右岸ダムサイトのモニュメント
奥は艇庫で屋上は展望台になっています。
 
ダムの説明板とダム湖の案内板。
 
展望台からの上流面
ゲートの中央に取水設備があります。
 
天端は歩行者のみ通行可能
右手はエレベーター棟。
 
減勢工の下流にはエンドシルがあります。
右岸は利水放流設備、左岸には『KYOWA DAM』とペイントされています。
 
ダム湖(美山湖)は総貯水容量780万立米。
 
左岸から下流面。
 
上流面
 
右から艇庫とインクライン、管理事務所。
建屋はすべてピンクで統一されています。
 
ダム湖上流には親水公園がありますが、悪天候のためダムの見学だけにとどめました。
ダムサイトもよく整備されており、気候のよい時期にのんびりと訪れたいダムです。 
 
追記
協和ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量を確保することになりました。
 
0393 協和ダム(1357
秋田県大仙市協和船岡
DamMaps
雄物川水系淀川
FNW
49.3メートル
222.5メートル
7800千㎥/7050千㎥
秋田県建設部
1997年
◎治水協定が締結されたダム

大堤

2018-08-29 04:44:43 | 秋田県
2018年7月16日 大堤
 
大堤は秋田県男鹿市北浦北浦の浦の沢川水系左支流(河川名未確認)源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1921年(大正10年)に水利組合の事業により竣工と記されていますが、記念碑等がないためその後の詳細は不明です。
池は国有地で管理は男鹿市土地改良区が行っています。
 
池のすぐ下流をなまはげラインが通っており堤体と正対できます。
 
天端は車道。
手前は左岸洪水吐に架かる橋です。
 
天端。
 
左岸の斜樋。
 
天端からの眺め
橋はなまはげライン。
 
貯水池は総貯水容量27万3000立米。
隣接するオートキャンプ場設置に合わせて貯水池を周回する散策路が整備されたようですが、今は荒れて使う人もありません。
 
右岸から。
 
左岸に洪水吐と導流部がありますが、いずれも木の枝葉が茂り撮影することはできません。
ため池の見学は草刈が終わった後にするものですね。 
 
3397 大堤(1356)
ため池コード
秋田県男鹿市北浦北浦
浦の沢川水系賀茂川左支流
15.6メートル
133メートル
273千㎥/273千㎥
男鹿市土地改良区
1921年

真山1号ダム

2018-08-29 03:53:03 | 秋田県
2018年7月16日 真山1号ダム
 
真山(しんざん)1号ダムは秋田県男鹿市北浦真山の相川水系相川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1922年(大正11年)に当時の真山耕地組合の事業により建設と記されていますはそれ以外の詳細は不明です。
池の管理は男鹿土地改良区が行っています。
また真山1号ダムのほかに2号から5号ダムまであり、ため池データベースでは4号ダムの堤高が15メートルになっています。
 
堤体は犬走りを挟んで2段構成、右岸側がわずかに屈曲しています。
右岸堤体に沿って洪水吐導流部があります。
 
写真右手に底樋があるのですが草が茂り写真が撮れません。
 
天端。
 
上流面は草ボウボウ。
 
左岸の取水設備
池栓なのか?尺八樋なのか?これでは判別がつきません。
 
天端から
空気が済んでいれば海越しに白神山地まで見えるようです。
肉眼では辛うじて海が見えましたが写真ではご覧の通り。
 
総貯水容量は7万立米。
 
右岸の洪水吐。
 
右岸から下流面。
 
洪水吐はなんとか撮影できましたが、導流部は枝葉に阻まれて撮影断念。
 
夏場のため池見学は厳しいものがあります。
 
0330 真山1号ダム(1355)
ため池コード
秋田県男鹿市北浦真山
相川水系相川
17.4メートル
85メートル
70千㎥/70千㎥
男鹿市土地改良区
1922年

滝川ダム

2018-08-29 02:36:15 | 秋田県
2018年7月16日 滝川ダム
 
滝川ダムは秋田県男鹿市男鹿中滝川の滝川水系滝川上流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
1984年(昭和59年)に農水省の補助を受けた秋田県のかんがい排水事業が着手され、その中核施設として1998年(平成10年)に竣工しました。
運用開始後は男鹿市が受託管理を行っています。
 
国道101号の船川港仁井山交差点からなまはげラインに入ると三ツ森集落の先に滝川ダムの標識があります。
標識に従い自衛隊管理道路に入ると再び滝川ダムの標識が現れます。
これに従って左折するとダムサイトに到着します。
ここからダム下まで車の進入が可能なのでまずダム下へと向かいました。
直前にまとまった降雨があり左岸の洪水吐から越流しています。
 
ダム下の設備
取水設備からの水がここで二つの灌漑用水路に分水されます。
 
下流面
ロックフィルダムですが、芝が張られ見た目はアース。
北海道をはじめ豪雪地帯では芝が張られたロックフィルダムをちょくちょく目にします。
 
貯水池の総貯水容量は69万立米、
左手前は管理事務所、奥は斜樋の操作室。
 
天端からの眺め
ダム下は広場になっています。
 
天端は車両通行可能
突き当たり左折するとダム下へと通じます。
 
上流面を見るとロックフィルダムだとわかります。
 
洪水吐導流部。
 
左岸の横越流式洪水吐。
 
管理事務所と斜樋。
 
0399 滝川ダム(1354)
秋田県男鹿市中滝川
DamMaps
滝川水系滝川
28.7メートル
175メートル
690千㎥/560千㎥
男鹿市
1998年

吉田溜池

2018-08-29 01:45:38 | 秋田県
2018年7月16日 吉田溜池
 
吉田溜池は秋田県秋田市金足吉田の馬場目川水系馬踏川左支流にある灌漑目的のアースフィルダムで、ダム便覧には1954年(昭和29年)に秋田県の事業により竣工と記されています。
秋田市北部から潟上市にかけての太平山西麓地区では、戦後の食糧増産政策を受け積極的な農地開発が進められ、併せて多くのため池が築造、整備されました。
吉田溜池もそんな池の一つで周辺のため池ともども新城川土地改良区が管理を行い402ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
 
秋田市周辺では梅雨明け後にため池の草刈りが行われますがここはまだ。
写真手前側の堤体右岸に洪水吐導流部があるのですが草や枝葉に覆われ見ることができません。
居合わせた地元の方の話では、これから草刈りを行う予定とのこと。
訪問するのが一週間早すぎた!
 
 
 
堤体は逆『へ』の字型に屈曲。
 
天端からの眺め。
 
総貯水容量は95万7000立米と本州の溜池としてはかなり大規模。
 
左岸の斜樋。
 
左岸から下流面
こちらからも堤体が屈曲しているのが分かります。
 
斜樋の操作室。
 
草に覆われ右岸にある洪水吐や導流部の写真を撮ることができませんでした。
またダム下への道は直前の雨でかなり荒れていたため断念。底樋は確認できませんでした。
 
3393 吉田溜池(1353)
ため池コード
秋田県秋田市金足吉田
馬場目川水系馬踏川支流
18メートル
230メートル
957千㎥/957千㎥
新城川土地改良区
1954年

箒田溜池

2018-08-28 04:07:32 | 秋田県
2018年7月16日 箒田溜池
 
箒田(ほうきでん)溜池は秋田県秋田市下新城小友の雄物川水系新城川右支流(河川名未確認)源流部にある灌漑目的のアースフィルダムで、ダム便覧には1938年(昭和13年)に秋田県の事業により建設と記されています。
秋田市北部から潟上市にかけての太平山西麓では戦前から農地開発が進めら、併せて新城川普通水利組合が組織され県の補助を受け1937年(昭和12年)に大滝沢溜池、翌1938年(昭和13年)に箒田溜池と猿田沢溜池が建設されました。
戦後、箒田用水路が新たに開削され箒田溜池はその補給を受けています。
池の管理は周辺のため池ともども水利組合が改組された新城川土地改良区が行っています。
 
地図の
赤マルが新城川の取水地点
青線が箒田用水路
黒マルが新城川からの用水路吐口。
 
下流から遠望。
 
左岸堤体下にある取水設備からの底樋樋門。
 
下流面はきれいに刈り払われています。
左下に見えるのは投棄された自動車。
 
天端には轍があります。
左岸に斜樋があるので、そこまで車を乗り付けるようです。
 
上流面は草が茂り状況が分かりません。
 
左岸の斜樋。
 
右岸を上流に進むと小さな洪水吐があります。
枝葉や草に覆われていますが、本当に小さな洪水吐で導流部はトンネルになっています。
 
天端からの眺め。
 
貯水池は総貯水容量34万1000立米、
3基並ぶ溜池の中では最小です。
 
左岸の斜樋の操作室。
 
0348 箒田溜池(1352)
ため池コード
秋田県秋田市下新城小友
雄物川水系新城川支流
25.7メートル
104メートル
341千㎥/341千㎥
新城川土地改良区
1938年

堀田溜池

2018-08-28 03:14:51 | 秋田県
2018年7月16日 堀田溜池
 
堀田溜池は秋田県秋田市下新城小友の雄物川水系新城が右支流(河川名未確認)源流部にある灌漑目的のアースフィルダムで、ダム便覧には1956年(昭和31年)に秋田県の事業により建設と記されています。
秋田市北部から潟上市にかけての太平山西麓地区では、戦後の食糧増産政策を受け積極的な農地開発が進められ、併せて多くのため池が築造、整備されました。
吉田溜池もそんな池の一つで周辺のため池ともども新城川土地改良区が管理を行っています。
 
秋田市下新城小友地区には新城川土地改良区が管理する灌漑用ため池が3基並び、真ん中に位置するのが堀田溜池です。
池の両側は秋田らしく杉林となっています。
 
秋田市周辺では梅雨明け直後から池の整備が行われるようで、ちょうど草刈直後の訪問となりました。
 
天端には轍があります。
左岸に斜樋があるので、そこまで車を乗り付けるんでしょう。
 
上流面はコンクリートで護岸されています。
 
左岸の斜樋
 
右岸を上流に進むと小さな洪水吐があります。
 
天端から
谷筋から下流に向けて水田が続きます。
 
貯水池は総貯水容量67万2000立米、ずいぶん水位が低くなっています。
 
右岸から
堤体は右岸寄りがわずかに屈曲しています。
 
斜樋の操作室。
 
0347 堀田溜池(1351)
ため池コード
秋田県秋田市下新城小友
雄物川水系新城川支流
22.6メートル
160メートル
672千㎥/672千㎥
新城川土地改良区
1956年

猿田沢溜池

2018-08-28 02:12:01 | 秋田県
2018年7月16日 猿田沢溜池
 
猿田沢溜池は秋田県秋田市下新城小友の雄物川水系新城川右支流(河川名未確認)源流部にある灌漑目的のアースフィルダムで、ダム便覧には1938年(昭和13年)に秋田県の事業により建設と記されています。
秋田市北部から潟上市にかけての太平山西麓では戦前から農地開発が進めら、併せて新城川普通水利組合が組織され県の補助を受け1937年(昭和12年)に大滝沢溜池、翌1938年(昭和13年)に箒田溜池と猿田沢溜池が建設されました。
池の管理は周辺のため池ともども水利組合が改組された新城川土地改良区が行っています。
 
秋田市下新城小友地区にはは新城川土地改良区が管理する3基の灌漑用ため池が並んでいますが、一番南に位置するのが猿田沢溜池です。
秋田らしく池の両側は杉林になっています。
 
左岸ダム下には取水設備からの底樋樋門があります。
秋田市周辺では梅雨空け時期から溜池の整備を行うことが多いようで、ちょうど草刈り直後の訪問となりました。
 
ポータルは扁額付き。
 
天端右岸に向け車道が伸びていますが、ダートのためここは歩いて登ります。
 
堤体は右岸が『へ』の字に屈曲しています。
 
天端には轍があります。
対岸に取水設備があるのでそこまで車で入るようです。
 
天端から
生憎霞んでいますが延々と水田が続きます。
 
総貯水容量93万立米と本州のため池としてはかなり大規模。
 
取水設備は斜樋ではなく取水塔。赤が目立ちます。
 
上流面。
 
グーグルの空撮写真では右岸上流側に洪水吐らしき水路が記載されていますが、草が繁茂していたので立ち入りはあきらめました。 
 
0346 猿田沢溜池(1350)
ため池コード
秋田県秋田市下新城小友
DamMaps
雄物川水系新城川支流
20.5メートル
218メートル
946千㎥/946千㎥
新城川土地改良区
1938年

大滝沢溜池

2018-08-28 01:25:37 | 秋田県
2018年7月16日 大滝沢溜池
 
大滝沢溜池は秋田県秋田市上新城道川の雄物川水系新城川左支流道川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムで、ダム便覧には1937年(昭和12年)に秋田県の事業により建設と記されています。
秋田市北部から潟上市にかけての太平山西麓では戦前から農地開発が進めら、併せて新城川普通水利組合が組織され県の補助を受け1937年(昭和12年)に大滝沢溜池、翌1938年(昭和13年)に箒田溜池と猿田沢溜池が建設されました。
池の管理は周辺のため池ともども水利組合が改組された新城川土地改良区が行い430ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
 
大滝山温泉の駐車場がここが大滝沢溜池への入口で、ダートの道を500メートルほど進むと池が見えてきます。
秋田市周辺では池の整備は梅雨明けごろから行われるようで、草刈直後の訪問となりました。
 
左岸の横越流式洪水吐
手前に導流部が伸びていますが、草木が茂り撮影できませんでした。
 
天端には轍があり奥の取水塔まで車が入れるようです。
 
上流面。
 
貯水池は総貯水容量169万5000立米と本州のため池としては屈指の規模です。
 
赤が目立つ取水塔。
 
天端から下流面。
この下に取水塔からの底樋があるようですが、下るのは自重しました。
 
大滝沢溜池に向かう途中のゲート
左に分水路があり油圧式倒立ゲートで水量調節を行います。
 
地図には貯水池一帯が大滝山自然公園と記されていますが、山の上にキャンプ場があるだけで、貯水池周辺は特に公園として整備されているわけではありません。 
 
0344 大滝沢溜池(1349)
ため池コード
秋田県秋田市上新城道川
雄物川水系道川
26.0メートル
114.0メートル
1695千㎥/1695千㎥
新城川土地改良区
1937年

藤倉ダム(参考掲載)

2018-08-27 04:42:41 | 秋田県
2018年7月16日 藤倉ダム
 
藤倉ダムは秋田県秋田市山内の雄物川水系旭川上流部にある重力式コンクリートダムです。
東北地方初の上水道目的ダムとして1911年(明治44年)に秋田市によって建設され、以来60年以上にわたり秋田市の上水道水源として機能してきました。
しかし1973年(昭和48年)に秋田市の上水道水源がすべて雄物川に切り替えられたことで、藤倉ダムはその役割を終えました。
しかし運用終了後も堰堤一帯はそのまま保存され、1993年(平成5年)にダムを含む周辺一帯の構造物および土地が『藤倉水源地水道施設』として重要文化財に指定され、近代水道百選やAランクの近代土木遺産にも選ばれています。
またその美しい堰堤と越流から大分県の白水堰堤、愛知県の長篠堰堤とともに日本三大美堰堤とされています。
 
秋田市中心部から旭川沿いに県道18号を北東に進むと、道路右手に藤倉ダムが見えてきます。
向かって右手が本堤、左手が放水路となります。
堰堤や赤いトラス橋、放水路などの構造物および貯水池を含む周辺の土地すべてが重要文化財に指定されています。
 
ダム下流の旧沈砂池跡は2007年(平成19年)に秋田市水道100周年を記念して『藤倉記念公園』として整備されました。
記念碑と秋田市上下水道部のマスコット『カンちゃん』。
 
ダム下の秋田市水道誕生の碑、藤倉ダムの沿革が記されています。
 
こちらには重要文化財の指定書と指定範囲が記されています。
 
ダムは全面越流式で、赤いワーレントラスの管理橋が架かってします。
直前の前線通過による降雨で激しく越流しており、美しい越流も石積みも見ることができません。
 
 
手前の仕切られた水路はかつてこちら側にあった排砂設備の跡のようです。
 
エンドシルも石張りですが、辛うじてそられらしきものはうかがえます。
エンドシルの下流にはバッフルブロックが並びますがそれも水の中。
 
 
高覧の四角い親柱はいかにも明治大正といった風情。
 
訪問時は薄い霧がかかり藤倉ダム一帯は幻想的な雰囲気に包まれていました。
一方で増水により越流は激しく美しい転波越流も石積みも見ることはできませんでした。
できれば緩やかな越流時、さらに越流面の石張りを望める非越流時に再訪してみたいものです。
 
S510 藤倉ダム(参考掲載)(1348)
秋田県秋田市山内
雄物川水系旭川
16.3メートル
65.1メートル
秋田市上下水道局
1911年竣工
1973年運用終了

滝の沢溜池

2018-08-27 03:41:55 | 秋田県
2018年7月16日 滝の沢溜池
 
滝の沢溜池は秋田県秋田市太平八田の雄物川水系太平川右支流(河川名未確認)源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1934年(昭和9年)に孫右エ門堰土地改良区の事業により建設と記されていまが、戦前には土地改良区はありませんので前身となる耕地整理組合か水利組合の事業により建設されたと思われます。
池の管理は秋田市孫右エ門堰土地改良区が行っています。
 
池の下流から遠望
車止めの鎖がありここからは徒歩となります。
 
下流面をズームアップ
左岸(向かって右手)に洪水吐導流部がありますが、草に覆われ全く見えません。
 
下流面は犬走りを挟んで2段構
この手前が洪水吐導流部です。
 
天端。
 
下流の眺め。
 
上流面。
 
総貯水容量は18万8000立米。
秋田らしくい溜池周辺は杉林です。
 
左岸にある斜樋の操作室
本当はこの左手に横越流式洪水吐があるのですが斜樋ともども草木に覆われ撮影できません。
 
やはり溜池の見学は落葉後か春に限ります。
 
0337 滝の沢溜池(1347)
ため池コード
秋田県秋田市大平八田
雄物川水系大平川支流
21.2メートル
75メートル
188千㎥/188千㎥
秋田市孫右エ門堰土地改良区
1934年

鬼ヶ台ダム(参考掲載)

2018-08-27 01:55:27 | 秋田県
2018年7月15日 鬼ヶ台ダム(参考掲載)
 
鬼ヶ台ダムは秋田県由利本荘市中俣の子吉川水系小関川上流部にある治水目的の重力式コンクリート・フィル複合堰堤です。
管理事務所のプレートによれば農林省(現農水省)の補助を受けた秋田県の事業で1969年(昭和44年)に竣工、その後1988年(昭和63年)に県の大規模老朽ため池整備事業により改修が行われています。
運用開始後は大内町が受託管理していましたが、2005年(平成17年)の市町村合併で新たに誕生した由利本荘市が引き継いでいます。
堤高が12.5メートルとダムの要件を満たしていませんが、参考掲載としてダム便覧に登録されています。
 
ダム管理事務所のプレート。
 
下流から
主堤はアースフィル、右岸のゲート部分の右手が重力式コンクリート堰堤になっています。
 
洪水吐には赤いラジアルゲート。
 
ラジアルの右岸側(向かって左手)にはスライドゲートを備えた放流口がありますが、死角になっていて見えません。
 
天端
車は通れますが、対岸から先は草生したダート道。
 
ゲートは洪水時以外は常時開放されているようです。
 
ゲートの巻き上げ機。
 
ダム湖
総貯水容量は45万立米と溜池サイズですが、治水ダムのため普段は貯水せず湿地状態になっています。
この奥に取水塔がありますが、道が悪く確認できませんでした。
 
上流面。
 
S012 鬼ヶ台ダム(参考掲載)(1346)
秋田県由利本荘市中俣
子吉川水系小関川
GF
12.5メートル
96.3メートル
450千㎥/430千㎥
由利本荘市 
1969年

小羽広ダム

2018-08-06 22:02:05 | 秋田県
2018年7月15日 小羽広ダム
 
小羽広(こはびろ)ダムは秋田県由利本荘市岩野目沢の子吉川水系芋川上流部にある防災目的の重力式コンクリート・フィル複合ダムです。
農林省(現農水省)の補助を受けた秋田県の事業によって1972年(昭和47年)に竣工しました。
洪水時には最大毎秒43.9立米の水量を調節し芋川下流1013.8ヘクタールの農地を洪水被害から守る農地防災ダムです。
運用開始後は大内町が受託管理していましたが、2005年(平成17年)の市町村合併により新たに誕生した由利本荘市が管理を引き継いでいます。
 
ダム左岸に管理事務所と駐車場があり駐車場わきに竣工記念碑が置かれています。
 
左岸沿いの畦道を上流に進むとダムの上流面を一望できます。
堤体中央は重力式コンクリートダム、左右両岸はフィルダムとなっており、コンクリートとフィルの接続部がよくわかります。
コンクリート部分が低いのは、万一堤体越流があった際にフィル部分の崩壊を防ぐためです。
 
ゲートをズームアップ
クレストには非常用洪水吐としてローラーゲートが2門、その間に越流高の異なるスライドゲート1門、計3門のゲートが並びます。
ゲート手前に長方形の越流壁が設置され流木除けのスクリーン(鳥籠)の奥に自然流下式の放流管が3門あります。
通常は流入量がそのまま放流管から流下します。
 
対岸に農地や林道が続いており天端は車両が通れます。
ゲート部分だけ下流側に張り出したクランク。
 
ダム下には減勢工とエンドシルがあります。
訪問直前にまとまった雨があり流下水量が多くなっていました。
 
ダム湖は総貯水容量167万1000立米。
長細く川だか貯水池だかわかりません。
 
ゲート上流側は長方形の越流堤が作られ、プチダム穴風になっています。
 
下流から
左右両岸がフィルダムになっていることが分かります。
両岸に対して堤体中央が低く、まるで翼を広げた猛禽のようです。
中央の日本の導流壁はさしずめ鳥のくちばし。
 
 
ダム下から
クレストには非常用洪水吐としてローラゲートが2門と、その間に越流高の異なるスライドゲートが1門あります。
写真では見えませんが堤体下部に放流管があり平時は流入量はそのまま自然流下します。
 
重力式コンクリート・フィル複合ダムとして非常に美しいフォルムとなっているうえに、防災専用ダムとして見てもクレストの2種類の可動ゲートとダム穴風の常用洪水吐を備えた珍しいゲート配置となっています。
決してメジャーではありませんが、マニア好みの渋いダムであることは間違いないでしょう。
 
追記
小羽広ダムは治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たな洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0384 小羽広ダム(1345)
秋田県由利本荘市岩野目沢
子吉川水系芋川
GF
20メートル
171メートル
1671千㎥/1551千㎥
由利本荘市
1972年
◎治水協定が締結されたダム

大内ダム

2018-08-03 22:27:31 | 秋田県
2018年7月15日 大内ダム
 
大内ダムは秋田県由利本荘市小栗山の子吉川水系芋川右支流畑川源流部にある秋田県建設部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の小規模ダム事業である生活貯水池事業の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、畑川の洪水調節、既得取水権としての灌漑用水への補給と安定した河川流量の保持、由利本荘市大内地区簡易水道への上水道用水の供給を目的として2007年(平成19年)に竣工しました。
 
ダム下への管理道路は立ち入り禁止のためダム下からの見学はできません。
堤高の割に堤頂部の襟が高くなっており、なんとなく頭でっかちな印象。
 
取水設備の屋根は落雪しやすい様に貯水池側に傾斜しています。
豪雪地帯ならでは。
 
減勢工と放流設備。
 
総貯水容量72万4000立米の小さなダム湖。
 
天端入口に車止めがあり徒歩のみ通行可能
右手は取水設備操作室。
 
左岸から。
ダムの全容はここから見るのが一番です。
 
放流設備。
利水放流設備と緊急放流設備が並んでいますが、今回は直前にまとまった降雨があったため緊急放流が行われていました。
 
対岸は管理事務所。
 
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲート2門、その下に常用洪水吐として自然調節式オリフィスゲートの取水口があります。
ゲートの右手は多段式取水ゲート。
 
大内ダムの説明板。
 
追記
大内ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量を確保することになりました。
 
3110 大内ダム(1344)
秋田県由利本荘市小栗山
DamMaps
子吉川水系畑川
FNW
27.5メートル
106メートル
724千㎥/626千㎥
秋田県建設部
2007年
◎治水協定が締結されたダム