ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

山の神池

2018-04-19 12:35:30 | 愛媛県
2018年3月27日 山の神池
 
山の神池は愛媛県南宇和郡愛南町広見の惣川水系左支流(河川名未確認)源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1963年(昭和38年)に岡の駄馬水利組合により竣工と記されており、現在も同水利組合が管理を行っています。
リアス式海岸が続く南予地区では広範な水田が広がる場所は限られていますが、愛南町広見地区は盆地に水田が広がり大小20基近い溜池が密集しています。山の神池はその一つです。
 
 
堤体下から
堤高17.5メートルとなっていますが見た目は微妙・・・・。
 
天端は車道。
 
右岸の小さな洪水吐。
 
洪水吐導流部はトンネル式。
 
上流面。
 
総貯水容量は12万3000立米。
周りには同規模の溜池がいくつも並んでします。
 
池周辺の桜は満開。
 
右岸の取水設備。
 
こちらの取水設備も現役のようです。
 
山が海岸まで迫り広大な水田地帯はほとんど見かけない南予地区ですが、わずかな平たん地を開拓して水田を作った先人たちの苦労が偲ばれる溜池でした。
 
2255 山の神池(1327)
ため池コード
愛媛県南宇和郡愛南町広見
DamMaps
惣川水系惣川
17.5メートル
76メートル
123千㎥/123千㎥
岡の駄馬水利組合
1963年

大久保山ダム

2018-04-19 00:54:01 | 愛媛県
2018年3月27日 大久保山ダム
 
大久保山ダムは愛媛県南宇和郡愛南町緑甲の僧都川水系大久保川源流部にある灌漑・上水道用水目的のアースフィルダムです。
愛南町が位置する南予地区は瀬戸内沿岸に比べれば降水量は多いものの降雨は夏季に集中し、また大河がなくリアス式海岸が続くという地理的特性から沿岸部を中心に慢性的な水不足に悩まされてきました。
特に1967年(昭和42年)の大干ばつは7月上旬から90日も雨がないという苛烈なもので、一帯農家はもちろん上水道でも断水が続き甚大な被害をもたらしました。
この事態を受け、愛媛県は農水省の補助を受けたかんがい排水事業を採択し灌漑目的のダム建設を決定、さらにこの事業に当時の御荘町・一本松町・西海町によって設立された南宇和上水道企業団(現愛南町水道課)が事業参加し1979年(昭和54年)に竣工したのが大久保山ダムです。
大久保山ダムはかんがい排水事業に合わせて設立された大久保山土地改良区向けの灌漑用水、当時の御荘町・城辺町・一本松町・西海町によって設立された南宇和上水道企業団(現愛南町水道課)向けの上水道用水の水源となっています。
なお大久保山ダムの堤高55.8メートルはアースダムとしては熊本県の清願寺ダムに次いで全国第2位の高さを誇るとともに、洪水吐導流部は全長425メートルと全国のフィルダムの中でも屈指の長さとなっています。
 
愛南町中心部から県道64号を北上すると、梶郷上集落に大久保山ダムを示す小さな案内板があります。
これに従って右手の枝道に入り大久保川沿いの隘路を3キロほど進むと左手に大久保山ダムの大きな下流面が見えてきます。
堤高55.8メートルはアースダムとしては全国第2位の高さ。
 
左岸の洪水吐導流部
全長425メートルとこれまたビッグサイズ。
 
横越流式洪水吐。
 
 
上流面はロック材で護岸されています。
 
天端から下流面
谷間を埋める逆三角形で、途中に地山が残っています。
 
広い天端。
 
総貯水容量は75万立米。
正面に取水塔が見えます。
 
取水塔
管理橋はトラス。
 
上流から
貯水池周辺の桜が満開でした。
 
アースダムとしては日本第2位の高さを誇ります。
天端から見てもその高さは実感できましたが、できればダム下から見上げてみたいものです。
 
2270 大久保山ダム(1326)
愛媛県南宇和郡愛南町縁甲
僧都川水系大久保川
AW
55.8メートル
170メートル
750千㎥/700千㎥
大久保山土地改良区
1979年

山財ダム

2018-04-18 15:35:40 | 愛媛県
2018年3月27日 山財ダム
 
山財(さんざい)ダムは愛媛県宇和島市津島町山財の岩松川上流にある愛媛県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、岩松川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、旧津島町への灌漑用水と上水道用水の供給を目的として1980年(昭和55年)に竣工しました。
 
左岸を県道319号が通り、ダムサイトに管理事務所と駐車場があります。
これは左岸から
ダムを下流から見れる場所はありません。
 
クレストにはローラーゲートを2門装備。
ゲート越しにみた導流面と減勢工です。
岩松川下流に上水道の取水堰があるため、利水放流はかなり多め。
 
利水放流
ローラーゲートの導流部の右側に導流壁を挟んでもう一つ導流部があります。
これは自然調節式のオリフィスゲートの導流部です。
 
左岸の艇庫とインクライン。
 
天端。
 
右岸から
正面が管理事務所。
 
ダムカードを貰いに事務所に行きダムを下から見れる場所はありませんか?と伺うとなんとなんと監査廊とダム下に案内していただけました。
感謝、感謝!
 
ダム下に降りてわかりましたが、クレストのローラーゲートのほかに高圧ラジアルゲートのコンジットがあります。
目の前がコンジットゲート操作室。
 
下流面とフーチング。
 
上流から
ここから見るとゲート構造がよくわかります。
左から取水設備、ローラーゲート2門と間にコンジットゲートの予備ゲート、さらに右手にオリフィスゲートがあります。
 
ダム湖(鷺里湖)は総貯水容量650万立米。
湖畔の桜が満開。
 
今回は職員さんのご厚意で監査廊とダム下に立ち入ることができました。
昭和50年代施工ということでゲートと自然調節式ゲートが混在したコンクリートダムです。
 
追記
山財ダムには406万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに72万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2273 山財ダム(1324
愛媛県宇和島市津島町山財
岩松川水系御代の川
FNAW
64メートル
205メートル
6500千㎥/5900千㎥
愛媛県土木部
1980年
◎治水協定が締結されたダム

須賀川ダム

2018-04-18 14:24:12 | 愛媛県
2018年3月27日 須賀川ダム 
 
須賀川ダムは愛媛県宇和島市柿原の須賀川本流中流部にある愛媛県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、須賀川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への補給補給、宇和島市への上水道の供給を目的として1975年(昭和50年)に竣工しました。
 
宇和島市中心部から国道320号線を東に進むとすぐに須賀川ダムに到着します。
下流から
クレストにラジアルゲート2門、コンジットに高圧ラジアルゲート1門を装備したいかにも昭和40年代着工の県営ダムといった風です。
須賀川沿いの桜はちょうど満開を迎えていました。
 
ダム下への接近はここが限度。
 
ダム湖畔が公演のため天端は車両が通行できます。
 
下流面。
 
導流部と減勢工。
 
ダムは宇和島市街そばにあり、文字通り『宇和島の守り神』です。
 
ダム湖右岸は公園になっており湖畔の桜は満開。
 
ダム湖(若山湖)は総貯水容量305万立米。
周辺の山桜も満開です。
 
左岸を国道が通り、ダムサイトに管理事務所と艇庫、インクラインが並びます。
 
上流面
クレストゲートの間にコンジットの予備ゲートがあります。
 
追記
須賀川ダムには150万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに22万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2268 須賀川ダム(1323
愛媛県宇和島市柿原
須賀川水系須賀川
FNW
40.2メートル
159.5メートル
3050千㎥/2930千㎥
愛媛県土木部
1975年
◎治水協定が締結されたダム

竜沢寺池

2018-04-18 13:03:28 | 愛媛県
2018年3月27日 竜沢寺池
 
竜沢寺池は愛媛県西予市城川町魚成の肱川水系魚成川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧にはダム事業者により1955年(昭和30年)に竣工と記されており、農林省(現農水省)・県の補助を受けた団体営事業で建設されたと思われます。
池の管理は城川町土地改良区が行っています。
竜沢寺は14世紀初頭に創基され禅宗の名刹で、3700坪の広大な敷地に桃山様式の伽藍を配しており池は寺の奥に位置しています。
池周辺はキャンプ場やバンガロー、バーベキューハウスなどを備えた竜沢寺緑地公園となっており、竜沢寺ともども南予の観光スポットの一つです。
 
庭園の先に竜沢寺池の堤体が見えます。
非常に美しい眺めなのですが、生憎の逆光。
 
堤体左岸から流下する洪水吐導流部。
 
天端は車両通行可能。
 
左岸の横越流式洪水吐。
 
 
上流面は谷積の石で護岸されています。
 
総貯水容量は10万立米。
 
天端から。
 
花が美しい竜沢寺山門。
 
枝垂れ桜も満開。
 
竜沢寺の庭園の桜も、緑地公園の桜もほぼ見ごろ
素晴らしい環境にある竜沢寺溜池でしたが、生憎の逆光でうまく撮影できなかったのが至極残念。
 
2249 竜沢寺池(1322)
ため池コード
愛媛県西予市城川町魚成
DamMaps
肘川水系魚成川
22.3メートル
99メートル
100千㎥/100千㎥
城川町魚成土地改良区
1955年

東蓮寺ダム(東蓮寺池)

2018-04-18 01:45:18 | 愛媛県
2018年3月27日 東蓮寺ダム(東蓮寺池)
 
東連寺ダムは愛媛県宇和島市吉田町沖村の立間川水系河内川上流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
農水省の南予用水農業水利事業で既存の東蓮寺池を再開発し1996年(平成8年)に竣工しました。
南予用水土地改良区連合が受託管理し、宇和島市の旧吉田町一帯の果樹園に灌漑及び防除用水を補給しています。
なおダム便覧では東蓮寺池となっていますが、管理者は東蓮寺ダムの名称を使用しているのでここでも東蓮寺ダムと記すことにします。
 
下流から、
愛媛らしくダム下もミカン農地です。
 
右岸高台から
堤体に芝が張られ、一見アースに見えますがロックフィルです。
ダム周辺の桜はちょうど満開。
 
ダム下も整備され桜が植えられています。
左奥の白い建物は揚水機場です。
 
貯水池を周回する道路があり、天端も車両通行可です。
 
上流面
こちらを見るとロックフィルダムとわかります。
左岸に洪水吐と管理事務所があります。
 
斜樋。
 
下流面
どう見てもアースフィルダム。
 
横越流式洪水吐。
 
 
国営事業で整備されて20年、非常にきれいに整備されており宇和島周辺のミカン農地にとっては貴重な水源であることが分かります。
桜も満開、いい時期に訪問できました。
 
2277 東蓮寺ダム(東蓮寺池)(1321
愛媛県宇和島市吉田町沖村
立間川水系高畑川
38.1メートル
170メートル
963千㎥/954千㎥
南予用水土地改良区連合
1996年 

野村ダム

2018-04-17 16:28:31 | 愛媛県
2018年3月26日 野村ダム 
 
野村ダムは愛媛県西予市野村町野村の一級河川肱川水系肱川本流にある重力式コンクリートダムです。
大河のない愛媛県南予地方では古くから用水確保は困難をきたし少雨のたびに干ばつ被害や断水が発生しました。特に1967年(昭和42年)には7月上旬から90日も雨がないという異常事態となり安定した水源確保が強く迫られることになります。
肱川では1958年(昭和33年)に鹿野川ダムが建設されていましたが、利水容量を持たない治水ダムでした。そこで建設省は1971年(昭和46年)に肱川上流部への新たな多目的ダム建設事業に着手、これに農水省や南予水道企業団が事業参加してダム建設が進められ、1981年(昭和56年)に竣工したのが野村ダムです。
野村ダムは国交省四国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、下流の鹿野川ダムと連携した肘川の洪水調節、農水省の南予用水農業水利事業により整備された水路を通じて宇和島市、八幡浜市、西予市、伊方町の3市1町の約7200ヘクタールの樹園地への灌漑用水の供給、同用水を利用し南予水道企業団向けの上水道用水の供給を目的としています。
野村ダムは有効貯水容量1270万立米のうち、特定灌漑容量が1020万とその大半を占めており文字通り南予の水がめと言っても過言ではありません。
またダム完成にともなって出現したダム湖は『朝霧湖』と命名されダム湖100選に選ばれています。
 
その後鹿野川ダム再開発事業で同ダムの洪水調節容量が大幅に増強され、また防災ダムとして山鳥坂ダムの建設が進められています。
一方で2018年(平成30年)の平成30年7月豪雨においては野村ダム、鹿野川ダム双方で過去最大規模の流入量を記録し貯水容量が満水位に到達、これに対応した異常洪水時防災操作(緊急放流)により西予市野村地区及び大洲市で死者9名、浸水家屋3500戸という甚大な洪水被害が発生しました。
この件により緊急放流時の地域への告知方法の見直しが大きな議論になるとともに、緊急災害時において既存ダムの事前放流による洪水調節容量の確保、いわゆる『ダムの事前放流に関する治水協定』が全国各ダムで締結されるきっかけとなりました。
 
 
ダム直下へは立ち入りできず下流の写真はこれが限界。
クレストにラジアルゲート2門、コンジットに高圧ラジアルゲート1門を備えるほか、利水放流管1条があります。
 
左岸から。
 
天端は車両通行可能。
 
国交省直轄ダムらしく周辺は非常によく整備されています。
右岸に『のむらダム』の植栽、ダム周辺の桜は満開。
 
減勢工と放流管
河川維持放流が行われています。
 
ダム湖(朝霧湖)は総貯水容量1600万立米。
ダム湖百選に選ばれています。
 
左岸の艇庫とインクライン。
 
上流から
選択取水設備とゲート
クレストゲートの間にコンジットの予備ゲートがあります。
訪問時は満水状態でした。
 
右岸から俯瞰
ダム湖一帯が公園になっています。
湖面に浮かぶフロートは目的が分かりません。
 
 
追記
野村ダムには350万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに411万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2274 野村ダム(1320
愛媛県西予市野村町野村
肘川水系肘川
FAW
60メートル
300メートル
16000千㎥/12700千㎥
国交省四国地方整備局
1981年竣工
◎治水協定が締結されたダム

山鳥坂ダム

2018-04-17 14:37:48 | 愛媛県
2018年3月26日 山鳥坂ダム 
 
山鳥坂(やまとさか)ダムは愛媛県大洲市肱川町山鳥坂の肱川水系川辺川に国交省四国地方整備局が2026年(令和8年)竣工を目指して建設工事中の治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)により肱川水系3番目の多目的ダムとして1986年(昭和61年)に事業着手されますが、激しい反対運動に加えて経済状況の変化を受け水道事業者として事業参加していた松山市の離脱などがあり、2010年(平成22年)に国交省による検討対象ダムとなりました。
結局特定多目的ダム法にに基づく基本計画は破棄され、2013年(平成25年)に洪水調節と不特定利水を目的とする治水ダムとし事業が継続することになりました。
 
訪問時、本体工事は全くの手つかずで道路の付け替え工事が着手されたばかり。
県道55号線の付け替え工事。
 
 
 
1986年(昭和61年)の事業着手から32年、ようやく本格工事へ進み出した山鳥坂ダムですが、本体に手がかかるのはまだまだ先のようです。
 
2944 山鳥坂ダム(1319
愛媛県大洲市肱川町山鳥坂
肘川水系河辺川
FN
103メートル
282メートル
24900千㎥/23200千㎥
国交省四国地方整備局
2026年竣工予定

鹿野川ダム(再)

2018-04-17 03:33:39 | 愛媛県
2018年3月26日 鹿野川ダム(再) 
 
鹿野川ダム(再)愛媛県大洲市肱川町宇和川の肱川水系肱川本流中流部にある国交省四国地方整備局が管理する重力式コンクリートダムです。
肘川は流路延長103キロの一級河川で愛媛県最大の河川ですが、支流の多さに加え大洲盆地を貫流した先の下流部が狭窄となっていることから、豪雨の際のバックウォーター現象による洪水被害が絶えませんした。
1953年(昭和28年)に建設省は肘川流域総合開発事業に着手し1958年(昭和33年)に治水・発電を目的とする鹿野川ダム(元)が竣工し、管理は愛媛県に移管されました。
1981年(昭和56年)に肘川上流に野村ダムが完成しますが、野村ダムは利水に重点を置いたダムだったことから、その後も洪水被害は絶えずさらなる洪水対策が迫られました。
一方鹿野川(元)ダムには不特定利水容量がなく下流の渇水対策に限度があること、貯水池の水質悪化などダム構造上の問題が浮上してきました。
そこで国交省四国地方整備局は2006年(平成18年)に同ダムを国交省直轄管理に移管して鹿野川ダム再開発事業に着手し、2018年(平成30年)に同事業は竣工しました。
再開発事業は
①トンネル洪水吐の新設とクレストゲート改良による洪水調節機能の増強
②選択取水設備と低水位放流施設の新設による不特定利水目的の付加
③曝気循環装置設置によるに貯水池水質改善
の三点からなっており洪水調節容量は従来の1650万立米から1.4倍の2390立米に増強されました。
再開発により特定多目的ダムとなった鹿野川ダム(再)は野村ダムと連携した肘川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、愛媛県公営企業局肘川発電所での最大1万400キロワットの発電を目的としています。
また肘川主要支流である河辺川では治水目的の山鳥坂ダム建設が始まっています。 
 
追記
2018年(平成30年)の平成30年7月豪雨では鹿野川ダム、野村ダム双方で過去最大規模の流入量を記録しサーチャージ水位に到達、これに対応した異常洪水時防災操作(緊急放流)により西予市野村地区及び大洲市で死者9名、浸水家屋3500戸という甚大な洪水被害が発生するとともに肱川発電所が被災し運転不能となりました。
この件により緊急放流時の地域への告知方法の見直しが大きな議論になる一方、緊急災害時において既存ダムの事前放流による洪水調節容量の確保、いわゆる『ダムの事前放流に関する治水協定』が全国各ダムで締結されるきっかけとなりました。
愛媛県企業局肱川発電所は2023年(令和5年)1月の運転再開を目指し復旧工事が進められています。 
 
 
鹿野川ダムは国道197号線にあります。
まずは下流から
クレストには改造されたラジアルゲートが4門並びます。
向かって右手が肘川発電所で、写真では見えませんが発電所わきに新設された低水位放流設備があります。
 
左手が新設工事中のトンネル洪水吐吐口。
 
左岸から
対岸は管理事務所 ダム周辺の桜はちょうど満開。
 
クレストのラジアルゲート
従来のゲートよりも2.8メートル高くなり洪水調節容量が1.4倍に増えました。
 
天端は車両通行可能
2011年(平成23年)に設置された新ゲート操作室建屋はまだまだピカピカ。
 
天端から
トンネル洪水吐建設のための仮設道路が伸びています。
 
愛媛県公営企業局肘川発電所
低水位放流設備の追加に合わせて発電容量は不特定利水容量に変更され、発電は利水放流に合わせて行う利水従属発電となりました。
 
ダム湖(鹿野川湖)は総貯水容量4820万立米と愛媛県第2位の規模。
右手は曝気循環装置。
 
再開発事業によって刷新された選択取水設備。
 
トンネル洪水吐呑口の建設工事が続いています。
 
 
2252 鹿野川ダム(元)
愛媛県大洲市肱川町宇和川
DamMaps
肘川水系肘川
FNP
61メートル
167.9メートル
48200千㎥/29800千㎥
国交省四国地方整備局
1958年
---------------------
3600 鹿野川ダム(再)(1318)
愛媛県大洲市肱川町宇和川
肘川水系肘川
FNP
61メートル
167.9メートル
48200千㎥/36200千㎥
国交省四国地方整備局
2018年再開発事業竣工

壺芋池

2018-04-16 17:04:59 | 愛媛県
2018年3月26日
 
壺芋池は愛媛県西予市城川嘉喜尾の肱川水系黒瀬川左支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では1942年(昭和17年)に神内拓男氏の事業により竣工となっており、神内氏が個人所有する灌漑用溜池だと思われます。
全国的に見れば個人が所有する溜池は相当数存在しますが、大半は中小溜池であり河川法のダムの要件を満たすものはここだけじゃないでしょうか?
ただ、ダム便覧の堤高15メートルに対して愛媛県のため池データベースでは7.1メートルとなっており、数字に大きな違いがあります。
 
下流の県道312号から遠望。
 
県道から山道を1~2分歩くと池に到着します。
 
堤体基部はコンクリートの擁壁で、下流面はきれいに刈り払われています。
ここを基準にするとため池データベースの堤高7.1メートルほどしかありません。
基礎地盤をどこにするか?でしょうね。
 
天端。
 
天端からの眺め
下に見える道が県道312号です。
 
取水設備は木栓を差し込む原始的な尺八樋。
 
左岸の洪水吐。
 
堤体左岸縁に続く洪水吐導流部。
 
総貯水容量はわずか6000立米。
 
個人所有のダムという点では非常にレアな存在です。
ただし堤高次第ではダム便覧から消えてしまうかもしれません。
 
3664 壺芋池(1317)
ため池コード
愛媛県西予市城川町嘉喜尾
肘川水系黒瀬川左支流
7.1メートル(ダム基準未達)
60メートル
20千㎥/20千㎥
神内拓男氏
1942年

柳谷ダム

2018-04-16 14:59:14 | 愛媛県
2018年3月26日 柳谷ダム
 
柳谷(やなだに)ダムは愛媛県上浮穴郡久万高原町西谷の仁淀川水系黒川にある四国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1960年代以降、わが国の発電事業においては火主水従が鮮明になりますが、オイルショックを契機に水力発電が見直され各地で水力発電所の新設や再開発が行われました。
柳谷ダムは柳谷発電所の取水ダムとして1989年(平成元年)に竣工し、ここで取水された水は約2キロの導水路で柳谷発電所に送られ、最大出力2万3000キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
国道440号に柳谷ダムへの管理道路入口に到着しますが、門扉がありこの先は関係者以外進入不可。
 
 
ここから柳谷ダムが遠望できます。
これが唯一の撮影ポイント。
 
ズームアップ
ローラーゲートが2基、左岸管理事務所奥に取水ゲートがあるようです。
 
追記
柳谷はは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに14万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2926 柳谷ダム (1315)
愛媛県上浮穴郡久万高原町西谷
仁淀川水系黒川
28.5メートル
98.5メートル
270千㎥/150千㎥
四国電力
1989年
◎治水協定が締結されたダム

面河第3ダム

2018-04-13 16:07:05 | 愛媛県
2018年3月26日 面河第3ダム
 
面河第3ダムは愛媛県上浮穴郡久万高原町中津の仁淀川本流上流部にある四国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
水量豊富な仁淀川上流域では昭和初期から伊予電鉄(当時)によって電源開発が進められ、電力管理法や配電統制令による日本発送電及び四国配電の接収ののち、戦後の電気事業再編政令により四国電力が事業を継承しました。
面河第3発電所も戦前伊予電鉄によって建設された発電所ですが、発電能力増強のために1980年(昭和55年)から再開発が行われ1984年(昭和59年)に新生面河第3ダムおよび面河第3発電所が竣工しました。面河第3発電所では最大出力2万2000キロワットのダム式水力発電を行っています。
 
面河第3ダムは国道33号線にあり、久万高原町の柳谷大橋から高知方面に進むと右手にダム湖が広がってきます。
左岸ダムサイトの四国電力の門扉前に車を止めて見学します。
巨大なローラーゲートが4門、堤高は42メートルありますが基礎地盤が水中に没しているためそれほどの高さには見えません。
 
ゲートピアのジグザグの階段が目立ちます。
 
ダム敷地は立ち入り禁止。
対岸左手が面河第3発電所です。
発電所の有効落差は52メートルなので発電所は相当深い場所に作られたようです。
 
上流から。
 
インクラインや桟橋はなく巡視艇はクレーンで昇降させます。
 
下流の橋から
いかにも発電用ダムといった風。
 
ダム直下の河原へ下りることができました。
すぐ左手が面河第3発電所になります。
 
それにしても大きなローラーゲートです。
 
追記
面河第3ダムはは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに390万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2279 面河第3ダム (1311)
仁淀川水系仁淀川
42メートル
162メートル
6218千㎥/2410千㎥
四国電力
1984年
◎治水協定が締結されたダム

関地池

2018-04-13 11:22:57 | 愛媛県
2018年3月25日 関地池
 
関地池は愛媛県西予市宇和町信里の肱川水系宇和川にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
関地池の起源は古く江戸初期の寛永12年(1635年)に、宇和島藩初代藩主伊達秀宗の命により築造されたとされています。
戦後1952年(昭和27年)から1962年(昭和32年)にかけて農林省(現農水省)の補助を受けた県の事業により大規模な拡張工事が行われ現在の規模となりました。
管理は西予市上町土地改良区が行っています。
関地池の由来について現地説明板では、当初難工事で築造が進まない中『お関』という名の親子連れの巡礼が人柱になることを申し入れ、その後工事がはかどっったそうです。そこで『お関』さんのおかげでできた池ということで関地池になったと書かれています。
江戸時代の溜池築造に際しては各所にこのような人柱の伝承が残っています。
一方池の左岸には池に向かってボールを打つ水上ゴルフ場があります。広島県福山市の溜池ではおなじみですが、四国では西条市の城ノ谷池でゴルフ場跡を見かけただけ。四国で営業している水上ゴルフ場は関地池だけのようです。
 
国道56号線に関地池公園や宇和水上ゴルフ場を示す看板があり、これに従うと池の堤体が見えてきます。
訪問時は桜祭りに備えて多くの吹き流しや幟が立てられていました。
堤体は2段に見えますが、これは堤体中段を道路が通っているためです。
 
右岸に洪水吐があり、数日前までの雨で水位が上がった影響で越流しています。
転波により鱗が見えます。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
左岸の斜樋。
 
総貯水容量100万立米と溜池としては大規模な貯水池。
左岸に水上ゴルフ場があります。
 
水上ゴルフ場をズームアップ
「池に向かって打て!」
かなりの盛況です。
 
天端は車両通行可能
桜祭りの幟が立っていますが桜はまだまだ蕾、代わりに菜の花が満開です
桜祭り際には天端が来場者の車でいっぱいになるそうです。
 
下流面と祭りの吹き流し。
 
左岸の洪水吐
緩やかに湾曲しており、右岸側壁の洗堀を防ぐために中央に導流壁が作られています。
 
越流部
突起はゴミや流木の流下を防ぐためのものでしょうか?
 
2251 関地池(1310)
ため池コード
愛媛県西予市宇和町信里
DamMaps
肘川水系宇和川
22.5メートル
155メートル
1000千㎥/1000千㎥
西予市宇和町土地改良区
1962年

布喜川ダム(布喜川調整池)

2018-04-12 17:42:58 | 愛媛県
2018年3月25日 布喜川ダム(布喜川調整池)
 
布喜川ダム(布喜川調整池)は愛媛県八幡浜市布喜川の千丈川水系流田川にある灌漑および上水道用水を目的とする重力式コンクリートダムです。
大河がない愛媛県南予地方では古くから用水確保は困難を極め慢性的に水不足に悩まされてきました。
これを打開するため農水省は建設省(現国交省)による肘川上流部への野村ダム建設事業に参加し、同ダムを水源とした南予地方全般にわたる南予用水農業水利事業に着手します。
布喜川ダムは同事業の一環として1985年(昭和60年)に建設された調整池で、野村ダムから導水された灌漑用水・上水道用水の需給ギャップを調整しています。
事業全体は1996年(平成8年)に竣工し、当ダムを含む施設全般は南予用水土地改良区連合が受託管理を行っています。
また南予用水中央管理所もここに置かれ、南予用水全体の管制が行われています。
なおダム便覧では布喜川調整池で掲載されていますが、ここでは現地案内板に従い布喜川ダムと記すことにします。
 
南予用水概要図(農水省HPより)
 
ダム下から
クレストに自由越流式洪水吐が1門、オリフィスゲート1門装備。
 
ダム左岸を県道が通りダムサイトには駐車場もあります。
駐車場わきの布喜川ダムの説明板。
 
下流面。
いかにも農業ダムといったつくり。
 
ダムの規模に比べて大きな取水設備。
 
総貯水容量は19万7000立米。
貯留の大半は野村ダムからの導水によります。
 
左手はこの調整池から分かれる5号支線向け揚水機場。
 
数日前までの雨で水位が上がり美しい転波越流が見られました。
 
天端は市道で車両通行可能。
 
左岸から下流面。
ダム管理所と併せて南予用水中央管理所が置かれています。
 
左岸から上流面。
 
2276 布喜川ダム(布喜川調整池)(1309
愛媛県八幡浜市布喜川
千丈川水系流田川
AW
33.7.1メートル
110メートル
197千㎥/150千㎥
南予用水土地改良区連合
1985年

八代ダム

2018-04-12 16:45:01 | 愛媛県
2018年3月25日 八代ダム
 
八代ダムは愛媛県八幡浜市八代の千丈川水系八代川源流部にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
八幡浜を含む南予地方はリアス式海岸特有の傾斜地と温暖な気候を生かして愛媛県有数のミカン生産地となっていますが、灌漑用水の確保が長年の懸案事項でした。
1967年(昭和42年)の大干ばつをきっかけに愛媛県内各地で灌漑用水源の整備が進みましたが、八代ダムもその一つで農林省(現農水省)の補助を受けた県の事業により1975年(昭和50年)に建設されました。
管理は八幡浜土地改良区が行っています。
 
八幡浜市中心から国道378号線を南下し県道28号を分けると、横峠という小さな峠手前で左手に市道が分かれます。
この道を辿り、最初の三叉路を左折するとあとは果樹園の中を数多く分岐する枝道には目もくれずひたすら進みます。
走ること10分も経たずに八代ダムのダム下に到着します。
 
堤高は24.2メートル
右岸(向かって左手)に洪水吐導流部があります。
 
取水設備からの底樋
愛媛県ではよく見られる扁額の入った立派な樋門です。
 
下流面
犬走りを挟んで2段構成。
 
天端には轍があります。
 
上流面はコンクリートで護岸、総貯水容量2万6000立米の小さな溜池です。
 
右岸の横越流式洪水吐。
 
洪水吐導流部。
 
天端からの眺め
回りは一面ミカン畑、海は見えそうで見えない。
 
右岸の斜樋。
 
ほぼミカン山の頂上に位置する八代ダム。
小さな溜池ですが、周辺の果樹園にとってはほんとに貴重な水源です。
 
3365 八代ダム(1308)
ため池コード
愛媛県八幡浜市八代
千丈川水系八代川
24.2メートル
93.2メートル
26.3千㎥/26.3千㎥
八幡浜市土地改良区
1975年