ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

松ヶ房ダム

2023-12-28 16:35:33 | 福島県
2017年 5月28日 松ヶ房ダム
2023年11月 3日
 
松ヶ房(まつがぼう)ダムは左岸が福島県相馬市山上、右岸が宮城県伊具郡丸森町筆甫の宇多川水系宇多川本流にある灌漑目的のロックフィルダムです。
浜通り北部に位置する相馬市や新地町は地味は豊かながら水利に乏しく干ばつが常習化し、安定した水源確保は地域農家の悲願となっていました。
これを受け1978年(昭和53年)に福島県営かんがい排水事業相馬地区が着手され、その灌漑用水源として1997年(平成9年)に竣工したのが松ヶ房ダムです。
運用開始後は相馬市が管理を受託し約2800ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
ダムの完成や灌漑設備の整備により当地域での慢性的水不足は大いに改善されました。
松ヶ房ダムは福島・宮城県境にありますが、左岸が福島県ということでダム便覧には福島県のダムとして掲載されています。
また宇多川の流域の大半を福島県で占めており受益地も福島県となりますが、福島県の施設でありながら管理事務所は右岸の宮城県側にあります。

松ヶ房ダムには2017年(平成29年)5月に初訪、2023年(令和5年)11月に再訪しました。
掲載する写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
東北中央自動車道相馬山上インターから北西に約9キロ、車で15分ほどで松ヶ房ダムに到着します。
初回訪問時はダム下に立ち入ることができました。
堤高46メートル、堤頂長242.7メートルのロックフィルダムで右岸に洪水吐があります。
この時はダム下には除染物質が積まれここが福島であることを思い知らされました。
(2017年5月28日)

 
右岸から
ダムサイトには駐車スペースが設けられ植栽が並びます。
(2023年11月3日)


事業説明版と竣工記念碑
(2023年11月3日)

 
洪水吐斜水路と減勢工。
減勢工はシュートブロック、バッフルピア、エンドシルの減勢工3点セット装備。
(2023年11月3日)

 
横越流式洪水吐。
(2023年11月3日)

 
上流面と取水設備。
(2023年11月3日)

 
管理事務所
福島県の施設ですが建っているのは宮城県。
玄関横に定礎石が置かれています。
(2023年11月3日)

 
農業用ダムとしては珍しく管理事務所内は資料室になっています。
(2023年11月3日)

 
(2023年11月3日)

 
天端からダム下を望む
手前が洪水吐減勢工
右奥が放流設備
灌漑用水は宇多川に放流されたのち、下流の頭首工で取水され受益農地に供給されます。
(2023年11月3日)

 
建設着手がバブル期だったこともあり、花崗岩の高欄やガス灯風の照明など意匠も手が込んでいます。
(2017年5月28日)

 
ダムは福島・宮城県境を跨ぎます。
斜めの白い線が境界線。
(2023年11月3日)


左岸から下流面
やや草が目立つものの農業用ロックフィルダムとしてはきれいに管理されている方でしょう。
(2017年5月28日)

 
天端は舗装されていますが車両は進入禁止
徒歩のみ開放。
(2023年11月3日)

 
総貯水容量は971万立米と本州の農業用ダムとしては屈指のスケール。
宇多川湖と命名されています。
(2023年11月3日)

 
取水設備をズームアップ
スクリーン一体型の斜樋。
(2023年11月3日)

上流から遠望
再訪時は灌漑期が終わり水位は低め。
(2023年11月3日)
 
(追記)
松ヶ房ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0529 松ヶ房ダム(1009)
左岸 福島県相馬市山上
右岸 宮城県伊具郡丸森町筆甫
宇多川水系宇多川
46メートル
242.5メートル
9710千㎥/9200千㎥
相馬市
1997年
◎治水協定が締結されたダム

川原子ダム

2023-12-27 17:00:22 | 宮城県
2016年 9月11日 川原子ダム
2023年11月 3日
 
川原子ダムは宮城県白石市福岡八宮の一級河川阿武隈川水系白石川左支流青沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
白石川左岸段丘に位置する旧福岡村では17世紀初頭に青沢の湧水を水源とした川原子堰用水路を開削し約400へクタールに及ぶ新田が開拓されました。
しかし水量が乏しく渇水による干ばつが頻発し安定した水源確保は福岡地区永年の悲願となっていました。
昭和初頭より貯水池築造機運が高まり、1944年(昭和19年)に当時の福岡村営事業としてダム建設が着手されますが、戦争激化により中断。
1951年(昭和26年)に県営事業により再着工されますが、基礎地盤が悪く漏水対策に時間を要し1969年(昭和44年)にようやく川原子ダムが竣工しました。
運用開始後は白石市が管理を受託し同市福岡地区約450ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
その後2001年(平成13年)に県のため池等整備事業で改修が行われ現在に至っています。

川原子ダム周辺は水源地の環境を守るため『不伐の森』(伐採をしない森)として保護され豊かな自然が残されています。
ダム湖をめぐる一周5.4キロの散策路が整備され春秋には多くのハイカーが訪れる憩いの場となっています。
川原子ダムには2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)11月に再訪しました。
掲載する写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
ダム湖周辺は散策路が整備されており、ダム入り口には駐車場と清潔な公衆トイレが設置されています。
ダムの入り口。
(2023年11月3日)

 
左岸の横越流式洪水吐。
(2023年11月3日)

 
初回訪問時は直前にまとまった雨があり越流していました。
(2016年9月11日)

 
洪水吐導流部。
(2023年11月3日)

事業説明版。
(2023年11月3日)

 
完成記念碑。
(2023年11月3日)

 
川原子ダムは宮城蔵王三十六景に選ばれています。
奥の山は南蔵王の主峰、不忘山。
(2023年11月3日)

 
堤体はススキに覆われています。
意図して草を刈らないのかも?
(2023年11月3日)

 
天端は舗装され車両通行できます。
ただし対岸から先はかなり荒れたダートの林道。
(2023年11月3日)

 
上流面はロック材で護岸。
(2023年11月3日)

 
左岸の斜樋
再訪時は灌漑期が終わったこともあり、斜樋の大半が顔を出しています。
(2023年11月3日)


初訪時は満水でした。
(2016年9月11日)

 
ススキに覆われていますが、ダム下に続く階段があります。
立ち入り禁止の表記はありませんでしたが、草が深く自重。
(2016年9月11日)

 
総貯水容量は233万3000立米。
本州の農業用アースフィルダムとしてはかなり大規模。
風がなければ湖面に蔵王が映るのですが・・・・。
(2023年11月3日)

揚水技術のない時代、大河の段丘上はどこも目の前の水を指をくわえて眺めるのみ。
そんな中、遥か高所に水源を求めた先人たちの意地ともいえる川原子ダムです。
 
(追記)
川原子ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0296 川原子ダム(0556)
宮城県白石市福岡八宮
阿武隈川水系白石川左支流青沢川
20メートル
121メートル
2333千㎥/2150千㎥
白石市
1969年
◎治水協定が締結されたダム

蔵王ダム『ダム研見学会』後編

2023-12-26 17:11:43 | ダム見学会
2023年11月2日 蔵王ダム『ダム研見学会』後編
 
蔵王ダム『ダム研見学会』前編では、ダムの天端から堤体内部の上部監査廊の見学内容について紹介しました。
ここではその続編、管理事務所からダム下、そして堤体内下部監査廊の見学について紹介したいと思います。

前編同様まず山形県県土整備部ホームページ内の蔵王ダム平面図を添付します。
中空ダムといっても堤体内部がすべて空洞というわけではありません。
いわゆるダイヤモンドヘッドでブロックごとに中空空間が仕切られています。
これを踏まえたうえで・・・・


管理事務所内の見学。
右手は古いダムコンで近々更新予定とか。


コンジットゲートの模型
社会見学の子供向けの模型ですが、真鍮製でかなりの出来栄え。


管理事務所の窓から
ダムの全景はここからの眺めが一番。


見学はすでに2時間を経過。
今度はダム下に移動します。
蔵王ダムは堤頂長273.8メートルとコンクリートダムとしてはかなりの横長。
放流設備は右岸側に偏っています。


非常用クレストゲート2門、常用コンジットゲート1門
利水放流用ジェットフローゲート1門
コンジットゲート上部の穴は先ほど外を覗いた空気孔になります。


天端からは見えなかったクレストラジアルゲート。


堤体から突き出た水圧鉄管は利水用の管路です。
中段に分水工があり、左手のジェットフローゲートとダム下流にある管理用小水力の蔵王ダム発電所に分水されます。


水圧鉄管をズーム
前方彼方の高架橋は上水用の水路管。


振り返ると
奥の蔵王ダム発電所に続く水路管
右手は洪水吐減勢工。


水路管の接続部。


建設時のドリル跡。

ジェットフローゲートのバルブ。


ゲート操作室の裏手からクレストゲート導流部を見上げる


再び堤体内へ。
今度は下部から中空を見上げます。


監査廊ではおなじみ三角堰漏水計。


こちらは堤体内仮排水路のあるブロック
基礎岩盤である花崗閃緑岩が露出。
堤体内で岩盤が露出しているのも中空ダムならでは。


見上げるとまるでダイヤモンドのような光景
先ほど歩いた上部監査廊がはるか上に見えます。




今度はプラムラインと排水ピットのあるブロックに移動。
こちらはプラムライン。


プラミラインを見上げます。
頂上部にかかるのが上部監査廊。


こちらは前編でも紹介した上部監査廊から見たプラムライン。


中空内部に置かれた定礎石。


排水ピット。


こちらも上部監査廊からの写真。

最後に管理用小水力発電所である蔵王ダム発電所へ。
水利使用標識。


認可出力484キロワット
最近塗装が塗りなおされ青が鮮やか。

最後に集合写真。



事前に精鋭ぞろいとお伝えしたせいか?参加者9名に対し職員様4名体制で対応していただきました。
さらにあれも見たいこれも見たいという無茶ぶりにも快く応対して頂き、通常1時間程度のメニューのところなんと3時間にもわたる濃い内容の見学会となりました。
マイスターとして初の見学会で幹事役としては不慣れな部分もあったかと思いますが、参加者の皆様には十二分に満足していただける会になったのではと自画自賛しております。
それもこれも山形県村山総合支庁建設部山形統合ダム管理課の職員の皆様のおかげと感謝の気持ちに堪えません。
改めて厚く御礼申し上げます。

蔵王ダム『ダム研見学会』前編

2023-12-25 16:42:02 | ダム見学会
2023年11月2日 蔵王ダム『ダム研見学会』前編
 
今年5月に当面の目標であった2000ダム訪問を達成、これを契機にこれまでの自分の欲求のためだけのダム活動からもう少し幅を広げてみようと思い、日本ダム協会のダムマイスターに応募し8月に拝命しました。
これまでもただダムを見て回るだけじゃなく、このブログで訪問したダムを紹介するとともにダム便覧への写真の提供、フェイスブックでのダム勉強会グループである『ダム研』の主催などの活動を行ってきました。
マイスター就任後は、さらにダムの周知・広報の一助になるとともにダムへの理解を広く深めるために『ダム研』メンバーをベースにした見学会や勉強会を企画・実施してゆこうと考えました。
その第一弾として選んだのが山形県山形市にある蔵王ダムです。
蔵王ダムを選んだ理由としては、全国で13基しかない希少な中空重力式ダムであること、さらに普段は立ち入り規制が多く見学ポイントの少ないダムであることなどです。
山形県県土整備部が管理するダムでは参加者5名以上でのダムの内部見学が可能です。
今回は『ダム研』メンバーから参加者を募り無事見学会実現にこぎつけました。
ここではその詳細についてご紹介してゆきたいと思いますが、写真が70枚近くになるため前編・後編に分けてアップしたいと思います。
またダムの一般的な内容については『蔵王ダム』の項をご覧ください。

見学を紹介する前に山形県県土整備部ホームページ内の蔵王ダム平面図を添付します。
中空ダムといっても堤体内部がすべて空洞というわけではありません。

いわゆるダイヤモンドヘッドでブロックごとに中空空間が仕切られています。


まずは下流面
ここは普段唯一ダムの全容が望める見学ポイントです。
中空ダムらしく襟はなく堤頂部からスロープが始まります。

ダムサイトの説明版。

 
上流面
水面直上からダイヤモンドヘッド、通称『たこ足』が見えます。


少しズームアップして
手前は艇庫で船はクレーンで昇降させます。
最奥の赤いゲートはコンジット予備ゲート。
注目すべきは艇庫のすぐ先の取水設備、黒いレールのようなものが見えますが蔵王ダムの取水設備は珍しい『ヒンジ式』です。


右岸ダムサイトから天端を進みます。
近年の改修で高欄がかさ上げされ路面も再舗装されました。

ダムの銘板。


蔵王ダムには取水設備が2か所あります。
こちらは左岸側の山形市への上水用取水設備から延びる水路管。
専用管で浄水場まで送水されます。

上で紹介した艇庫内の巡視艇
乗船したまま船を昇降させるそうです。
怖いけど乗ってみたい。


このマンホールの下にはプラムラインが設置されています。
後ほど中の様子も紹介します。


水位計
正副2台あり右が正のフロート式、左が副の水晶式。


蔵王湖と命名されたダム湖は総貯水容量720万立米。
奥の山は北蔵王雁戸岳
紅葉は見ごろなのですが曇天に加えて靄っぽいあいにくのお天気。


こちらは10月半ばに職員さんが撮った写真
風がなく湖面が鏡面のようです。


水利使用標識。
水道・水力発電と書かれていますが、こちらは山形市向け上水道用水の水利権。


ヒンジ式取水設備
右手はワイヤーの案内滑車でワイヤーの巻き上げにより黒いガイドレースに沿ってヒンジが動きゲートを開閉します。 
同タイプの取水設備は新潟県佐渡市の大大野川ダムにも設置されています。

言葉で説明してもわかりづらいので図面を添付。


こちらが取水設備の機械室。
右手のドラムでワイヤーを巻き上げます。

次にクレストラジアルゲート
ゲートは2門ありともに石川島播磨重工(現IHI)製。


天端からはクレストゲートのアームが見えるのみ。


クレストゲートの巻き上げ機。
ゲートは巨大ですが開度を変えるだけなので取水設備に比べたら機械は簡素。


こちらはコンジットゲートの空気孔。
ゲートの充水時の空気抜きと緊急遮断時の給気用を兼ねています。
通常は堤体の前面にあることが多く、この位置にあるのは珍しい。


今度はコンジット予備ゲートです。
直轄ダムではクレスト、オリフィス、コンジット、予備ゲートなどはメーカーを分けることが多いのですが、蔵王ダムはすべて石川島播磨重工(現IHI)製。


予備ゲート操作室
クレストゲートに比べて稼働距離が大きいのでかなり大がかり。
二つのワイヤードラムでゲートを昇降させます。 


当の予備ゲートは隙間から垣間見るだけ。


天端から減勢工を見下ろします。
副ダム下流は岩盤が露出。
左手の管路は利水放流用で、奥の建屋は管理用発電所である蔵王ダム発電所。


天端はゲート部分だけ上流側にクランク。


右岸から下流面。


利水放流用のジェットフローゲート。
利水放流は放流量によりこのゲートと管理用発電所を併用もしくは使い分けます。


ようやく堤頂長273.8メートルの右岸に到着。
見れるものはすべて見せていただいており見学開始からすでに1時間近く経過。
この階段の左下に上部監査廊入り口がありいよいよ中空ダム内部に向かいます。


と、右手の法面に何やら蓋されたものが?
実はここには蔵王権現を勧請した水神が祭られているのですが、冬に備え木板で覆われています。


いよいよ上部監査廊に突入。
最初に添付した平面図を見ればわかるように中空ダムは空洞空間はブロックごとに仕切られています。
そのため上部監査廊はコンクリート部と空洞部が交互に繰り返されます。


3つ目の空洞は広いホールになっています。
実はここがコンジットゲート操作室。
前方の丸い穴は中空ダムおなじみの空気孔になります。


空気孔から外を覗いてみると紅葉が見ごろ。
巣穴から外を覗くキツツキになった気分。


コンジットゲートのプレート。
先述のようにこちらも石川島播磨重工(現IHI)製。


こちらがコンジットゲートの油圧シリンダー。


ゲート操作は管理事務所で行われますが、万一に際し手動用の装置もあります。

 
コンジットゲート。


監査廊を先に進みます。
眼下の十字に見るのは排水溝で上の四角が排水ピット。


壁の管はプラムライン。
こうやってプラムラインを見下ろせるのも中空ダムならでは。


こちらが上部監査廊の一番左岸よりのブロック。


終点間際にはこんなものも
コンクリートが乾く前に踏み込んだ足跡だそうです。
しかし足跡がやたら多い。


最後の階段を上がると。


左岸の管理事務所に到着。


振り返ると
中空ダムのこんな位置から堤体を見れるのも見学会ならでは。


一度にすべてを紹介すると、ブログの文字制限3万字を超えてしまうので今回はここまで。
後編に続く。

蔵王ダム

2023-12-24 17:00:37 | 山形県
2017年 5月27日 蔵王ダム
2023年11月 2日
 
蔵王ダムは山形県山形市上宝沢の一級河川最上川水系馬見ヶ崎川にある山形県県土整備部が管理する多目的中空重力式コンクリートダムです。
山形市街は馬見ヶ崎川によって形成された扇状地上に発展しますが、急流且つ土砂流出量が多く抜本的な治水対策が求められていました。
一方、古くから灌漑用水源となってきた市街東部を流れる須川が昭和初期より酸性化し灌漑用水としては不適となります。
さらに高度成長による都市用水需要の増加を受け安定した水源が求められていました。
当初山形市が馬見ヶ崎川への上水用ダム建設を企図し、のちに県が河川総合開発事業として1970年(昭和45年)に竣工したのが蔵王ダムです。
建設に際してはコンクリートの節約が見込め、県として木地山ダムでの実績のあった中空重力式が採用されました。
蔵王ダムは建設省(現国土交通省)の補助を受けた補助多目的ダムで、馬見ヶ崎川の洪水調節(最大毎秒385立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、山形市への上水道用水の供給を目的としているほか、利水放流を利用した蔵王ダム発電所(最大出力484キロワット)で小水力発電を行います。
 
蔵王ダムには2017年(平成29年)5月に初訪、ダムマイスターとして最初の見学会を開催した2023年(令和5年)11月に再訪しました。
国道286号の蔵王インター入り口から県道272号経由で蔵王ダムまで約9キロ、車で15分ほどの行程です。

ダムの写真の前に県ホームページ内の蔵王ダム平面図ここでダムの平面図。
中空ダムといっても堤体内部がすべて空洞というわけではありません。
いわゆるダイヤモンドヘッドでブロックごとに空洞空間が仕切られています。 


それを踏まえたうえでまずは初回訪問時の写真から
ダム下や天端は立ち入り禁止で見学ポイントは限られます。
左岸下流から
中空ダムらしく襟がなく堤頂部からスロープが始まります。


利水放流設備であるジェットフローゲートから放流中。


水位が高く中空ダム特有のダイヤモンドヘッド、いわゆるたこ足は見れません。


ダム手前のプラント遺構。
通常ですと目にできるのはこれくらい、見学ポイントが非常に少ないダムです。


ここから先は2023年(令和5年)11月の再訪時の記事となります。
なお、見学会の詳細については蔵王ダム『ダム研見学会』をご覧ください。
まずは初回訪問時と同じアングルで
あれ?電線が消えた??

 
上流面
水位が低くダイヤモンドヘッドの先端がはっきり見えます。
手前は艇庫でクレーンで船を昇降させます。
奥の赤いゲートはコンジット予備ゲート。

 
蔵王ダムには取水設備は2基あります。
左岸側は山形市向け上水用で専用水路で浄水場まで送水されます。

 
ダム湖は蔵王湖
総貯水容量730万立米。
紅葉は見ごろですが、曇天且つ薄く霞がかかるあいにくのお天気。

  
取水設備はヒンジ式。
右手はワイヤーの案内滑車でワイヤーの巻き上げにより黒いガイドレールに沿ってヒンジが動きゲートを開閉します。
同タイプの取水設備は新潟県佐渡市の大大野川ダムにも設置されています。


こちらはコンジット予備ゲート
蔵王ダムは上流側からの展望ポイントはなく、予備ゲートの全景は見れません。


クレストゲート導流部と減勢工
左手の白い管は利水放流用水路管で、奥に管理用の蔵王ダム発電所があります。
利水放流は放流量によりジェットフローゲートと発電所の兼用もしくは使い分けとなります。


右岸から下流面。


利水放流用のジェットフローゲート。


中空ダムではおなじみ、空気孔からの眺め
まるでキツツキになった気分。


常用洪水吐であるコンジットラジアルゲート。


中空部、上部監査廊から
左手のパイプはプラムライン
プラムラインが露出しているのも中空ダムならでは。


上部監査廊を左岸まで戻り管理事務所へ
こちらはダムコン。


管理事務所からのダムの眺めが素晴らしい。
紅葉と相まって堤体の直線が際立ちます。


今度はダム下へ
堤高66メートル、堤頂長273.8メートル
ゲートは堤体右岸側に寄っています。


非常用区クレストラジアルゲート2門、常用コンジットラジアルゲート1門
利水放流設備としてジェットフローゲート1門
右手の水路管は利水放流用
コンジットゲート上方の大きな穴が先ほど覗いた空気孔。


再び堤体内に入り中空部を見上げます。
まるでダイヤモンドのような美しさ。


基礎岩盤が堤体内に露出しているのも中空ダムだからこそ。
ちなみに岩盤は花崗閃緑岩。日本では普通に花崗岩と呼ばれます。


プラムラインを見上げます。
上の歩廊で16枚目の写真を撮りました。


最後に管理用発電所へ
最近塗装が塗り替えられたようで、青が鮮やか。


上記のように、見学会の詳細については別項で紹介しますが、改めて対応していただいた山形県県土整備部山形統合ダム管理課の皆様には厚く御礼申し上げます。 

(追記)
蔵王ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0435 蔵王ダム(1006)
山形県山形市上宝沢
最上川水系馬見ヶ崎川
FNW
HG 
66メートル
273.8メートル
7300千㎥/5200千㎥
山形県県土整備部
1969年
◎治水協定が締結されたダム

福井谷貯水池(福井谷川ダム)

2023-12-23 17:00:46 | 北海道
2023年10月25日 福井谷貯水池(福井谷川ダム)

福井谷貯水池は北海道樺戸郡新十津川町大和の石狩川水系福井谷川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
新十津川町は1889年(明治22年)の奈良県十津川大水害を契機に被災者約2500人が当地に入植したのを起源としています。
明治30年代には水田開拓が本格化し、現在では北海道有数の稲作地帯となっています。
福井谷貯水池もそんな新十津川の発展を支えた水源の一つで、1926年(大正15年)に道営事業により竣工、戦後1976年(昭和51年)に大規模老朽ため池事業による大規模改修を経て現在に至っています。
現在は新十津川土地改良区が管理し、約80ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
なおダム便覧では福井谷川ダムと記載されていますが、ここでは現地記念碑やため池データベースに倣い福井谷貯水池と記すことにします。

福井谷貯水池は滝川市中心部の北西10キロほどにあり車での到達は可能です。
ただしラスト2キロはダートなので走行には注意が必要。
池下に記念碑があり、ため池築造から大規模改修に至る経緯が詳しく刻されています。


堤高20.2メートル、堤頂長134メートルのアース堤体。
手前の水路は底樋門からの水路。


基部は石積みで中央の階段で天端に上がれます。


右岸池下の底樋門。
灌漑期が終わり流入水はそのまま放流されています。


左岸から下流面


洪水吐斜水路
減勢工にはバッフルブロックが並びます。


横越流式洪水吐。


水利使用標識。


天端から
洪水吐導流路と底樋からの水路が池下で合流
灌漑用水は福井谷川を経由して供給されます。


総貯水容量55万8000立米の貯水池
灌漑期が終わり水が抜かれるのは北海道では当たり前の光景。


右岸の取水設備。


上流面
影になり見づらいですが、コンクリートブロックで護岸。


取水設備は北海道でよくみられる多孔式斜樋。


斜樋の底部の土砂吐ゲート
非灌漑期は流入水はここからそのまま放流されます。

奈良県人である私にとって新十津川は縁浅からぬ場所。
さらに十津川の移民の苦難を描き斉藤由貴さん主演でNHKでドラマ化された『新十津川物語』の作者故川村たかし先生は高校時代の国語の教師というご縁もあります。

(追記)
福井谷川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました

0010 福井谷貯水池(福井谷川ダム)(2027)
ため池コード
北海道樺戸郡新十津川町大和
石狩川水系福井谷川
20.2メートル
134メートル
558千㎥/543千㎥
新十津川土地改良区
1925年
◎治水協定が締結されたダム

サンルダム

2023-12-22 16:46:43 | 北海道
2023年10月23日 サンルダム

サンルダムは北海道上川郡下川町珊瑠の一級河川天塩川水系サンル川にある北海道開発局が管理する多目的ダムで、形式は台形CSGです。
天塩川は流路延長256.2キロと日本第4位の大河川ですが、流域全般で河川整備が遅れる一方、農地開拓や流域の人口増加を受け抜本的な治水・利水対策が求められていました。
こうした中、1970年(昭和45年)に天塩川本流に岩尾内ダムが竣工、1988年(昭和63年)にサンルダム建設が事業が採択されます。
しかし民主党政権による事業検証など紆余曲折により2013年(平成25年)にようやく本体工事に漕ぎ着け事業着手から30年目の2018年(平成30年)に竣工しました。 
サンルダムは国土交通省北海道開発局が直轄管理する特定多目的ダムで、サンル川の洪水調節(最大毎秒610立米/秒の洪水カット)、安定した河川流量と河川環境の維持、下川町及び名寄市への上水道用水の供給、北海道電力傘下で中小水力発電を手掛けるほくでんエコエナジー(株)サンル発電所(最大出力1100キロワット)でのダム式水力発電を目的としています。
特定多目的ダム及び国交省直轄ダムとしては日本最北に位置します。

ダム建設に際しては当初の重力式コンクリートから、周辺環境への負荷が少なく経費削減が期待できる台形CSGに変更されました。
またサンル川は北海道有数のサクラマス遡上河川となっており、魚類の遡上に配慮し従来のダム下から貯水池に至る魚道ではなく、ダムやダム湖を迂回する延長7キロに及ぶバイパス魚道が整備されているのも特徴です。

ダム本体を見学する前に左岸高台にある『象の鼻森林公園展望台』へ
こんなアングルで俯瞰できるダムはほかにはなかなかありません。
しかも見下ろす先は現在全国に4基しかない台形CSGダム。


対岸にはサンルダムの売りである魚道。
台形CSGダムは重力式コンクリートダムよりも比重が小さいため堤体は台形の名が示すように上下ともに傾斜がついています。
取水設備も傾斜式。

ダム湖は『下川珊瑠湖』で、総貯水容量は5720万立米。
湖面の立ち枯れが美しいのですが、実はこれ経費節減のため伐採しなかっただけで景観を意識したものではないとのこと。
見た目には美しいのですが、巡視艇の運行には大きな障害になるようです。


展望台にはダム建設に伴い移転を余儀なくされた珊瑠地区望郷の碑が設置されています。


次にダム本体へと向かいます。
下川町中心部から道道60号を約3.5キロ、車で10分足らずでダムに到着。


堤高46メートル、堤頂長350メートルの横長堤体。
対岸高台に上記『象の鼻森林展望台』があります。
洪水吐は非常用クレスト自由越流長5門と常用自然調節式オリフィス1門
訪問時はオリフィスから越流中。
なお、クレストからは試験湛水以降一度も越流はないそうです。


今回は事前にダムの説明をお願いし管理支所長様直々にガイドしていただきました。
右岸管理支所1階が資料室を兼ねたラウンジなっており、ここで支所長様と待ち合わせ。


今回は監査廊など内部見学はなく、バイパス魚道の運用に的を絞った説明となります。
天端からバイパス魚道を見下ろします。
魚が遡上できる傾斜を維持するため階段式となっており、より自然に近い環境を維持するため魚道には石が敷かれているほか、遡上した魚が休憩できるプールが各所に設けられています。
左手手前の建屋は利水放流設備、奥はほくでんエナジー(株)サンル発電所。


上流側のバイパス魚道
一般の魚道はダム下と貯水池を結んで設置されていますが、当ダムではダム湖をバイパスしてインレットまで7キロの魚道が設けられているのが特徴です。
前者の場合、上流で孵化した稚魚が海まで流下せずダム湖内で回遊して一生を終えるケースが発生し生態系に大きな影響を与えます。
また下流河川と貯水池では水質や水温等環境が大きく変わるため俎上した魚へのストレスが大きくなります。
バイパス魚道はサクラマスがより自然に近い生態を維持できるよう配慮された結果です。


ダム直上のバイパス魚道余水吐
バイパス水路の水量1.5立米/秒に対し階段式魚道の水量は0.2立米/秒にとどまるため、余水吐を設け1.3立米/秒をダム湖に越流させます。
この際魚類がダム湖に迷入しないよう越流側に傾斜を設けるとともに照明を照射するなど配慮されています。




天端から減勢工を見下ろす
右手はオリフィス、左手はクレストの減勢工で導流壁により隔離されています。
訪問時は直前にかなりまとまった雨が降ったこともあり、オリフィスから越流するほか利水放流設備・発電所からも放流されていました。


アングルを変えて
手前はクレストの減勢工となります。
上記のようにサンルダムでは試験湛水時以降一度もクレストからの放流はありません。


天端
余計な装飾が許されないご時世、高欄はいたってシンプル。
対岸のコンクリート法面は建設時のクレーン台座跡。


右岸から上流面。


ダム湖最上流部に道道60号線珊瑠大橋が跨いでいます。
ここで、右岸湖岸に続くバイパス魚道を見下ろせます。
水路は開水路で勾配に緩急をつけるなど、より自然河川に近い環境を維持しています。


珊瑠大橋からダム湖最上流部を望む
この上流にバイパス水路と本線の接続施設がありますが、残念ながら見学することはできません。

公共事業における自然環境への配慮が重視される昨今、ただ魚道を設けるだけではなく生態系への影響を付加を最小限に抑える工夫が各所に見られるのがサンルダムの特徴です。今回は事前に説明付き見学を要請し、管理支所長様直々に特にバイパス魚道の仕組みについて詳細な解説をしていただきました。
ダム管理支所及び管理支所長様には厚く御礼申し上げます。

(追記)
サンルダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2995 サンルダム(2026)
北海道上川郡下川町珊瑠
天塩川水系サンル川
FNWP
CSG
46メートル
350メートル
57200千㎥/50200千㎥
国交省北海道開発局
2018年
◎治水協定が締結されたダム

温根別ダム

2023-12-21 17:00:27 | 北海道
2023年10月23日 温根別ダム

温根別ダムは北海道士別市温根別の一級河川天塩川水系犬牛別川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
温根別地区は水稲と大豆を中心に営農が展開されてきましたが、融雪が遅く栽培期間が短いうえに灌漑設備が未熟なため、収益性が低く抜本的な農業水利支援が求められていました。
これを受け1972年(昭和47年)に北海道開発局により国営かんがい排水事業温根別地区が着手され、その灌漑用水源として1985年(昭和60年)に竣工したのが温根別ダムです。
運用開始後は温根別土地改良区(その後の土地改良区統合により現在はてしおがわ土地改良区)が管理を受託し当初は約1500ヘクタール、現在は1082ヘクタールの田畑に灌漑用水を供給しています。
事業全体も同年完了し、灌漑設備の整備により営農の集約化・合理化が進捗しました。

士別市中心部から国道239号線~道道251号線で約21キロ、車で20分超で温根別ダムに到着します。
直近の改修で新調された洪水吐の白いコンクリートが際立ちます。


堤高33.7メートル、堤頂長178メートルのロック堤体。
北海道のロックフィルダムでは珍しくリップラップはロック材が剝き出し。


水利使用標識
受益農地約1082ヘクタールのうち水田が738ヘクタール、畑地が343ヘクタール
畑地は大豆栽培が大半で水利権は5月~7月の灌漑期のみ配分されています。


対岸からさらに林道が続くため舗装された天端は車両通行可能。


総貯水容量931万2000立米の貯水池
訪問時は灌漑期が終わり水は抜かれています。


北海道でよくみられる赤いトラスの取水塔
灌漑用ですから表層取水。
取水塔の左下には土砂吐ゲート


天端からダム下を望む
左手は洪水吐減勢工
右手に放流設備があり下流で合流します。
ダム下に通じる管理道路に規制はありませんが、草が覆いクマが怖いので立ち入りは自重。
正面の山には大きな地滑り跡、この辺りは蛇紋岩質で地滑りが多い地域です。


放流設備をズームアップ
灌漑用水は犬牛水別川に放流し下流の取水堰で取水されます。
この時期は流入量はそのまま放流されます。


左岸の記念碑。

定礎石。


洪水吐斜水路と減勢工
直近の改修で新調されたためコンクリートが白い。


横越流式洪水吐。


左岸から上流面
水が抜かれているので普段水没している上流面の構造がよくわかります。


右岸の事務所を遠望
ちょっと見づらいですが事務所わきからインクラインが伸びています。


洪水吐そばの慰霊碑
農業用ダムで慰霊碑は珍しいのですが、建設にあたり殉職者が出たんでしょうね?
合掌。


水が抜かれた時期には貯水池の上流側でダム湖に沈んだ集落の遺構が見れるそうで、むしろ廃墟マニアには有名なスポットです。
今回、足を延ばしたかったのですがこの後サンルダムの見学が控えていたのでパスしました。

(追記)
温根別ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0123 温根別ダム(2025)
北海道士別市温根別
天塩川水系犬牛別川
33.7メートル
178メートル
9312千㎥/8590千㎥
てしおがわ土地改良区
1985年
◎治水協定が締結されたダム

滝里ダム

2023-12-20 17:03:03 | 北海道
2021年 7月16日 滝里ダム
2023年10月24日 
 
滝里ダムは北海道芦別市滝里町の一級河川石狩川水系空知川中流部にある国土交通省北海道開発局が直轄管理する特定多目的ダムで、型式は重力式コンクリートダムとなります。
空知川は石狩川水系最大支流で流域の貴重な水源となる一方、洪水も多く抜本的な治水・利水対策が求められていました。
1967年(昭和42年)に上流部に国交省により金山ダムが建設されますが、その後の流域での利水需要増加に加え、1981年に発生した『昭和56年石狩川大水害』を契機に新たな多目的ダム建設が採択され、1992年(平成4年)に本体工事着工、1999年(平成11年)に竣工したのが滝里ダムです。
滝里ダムは空知川及び石狩川下流部の洪水調節(最大毎秒1200立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、特定灌漑用水及び上水道用水の供給、利水容量を活用した利水従属発電として北海道電力滝里発電所でのダム水路式発電(最大出力5万2000キロワット)を目的としています。
このほか河川維持放流を利用したダム管理用発電(最大2300キロワット)も行います。
 
滝里ダム最大の特徴は堤頂長445メートルという横長の堤体を生かして、非常用兼常用洪水吐である2門の自由越流頂と常用洪水吐の6門のオリフィスラジアルゲートを横並びに配した洪水吐です。
自由越流長の敷高が常時満水位となっており、非常用兼常用とすることで洪水調節の際のオリフィスゲートへの負担を減らし放流量に応じた柔軟な洪水調節が可能となっています。

滝里ダムには2021年(令和3年)7月に初訪、2023年(令和5年)10月に再訪しました。
掲載する写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
なお再訪時は、事前に説明付き見学をお願いし管理支所長様直々のガイドにより監査廊やゲート操作室、放流設備などを案内していただきました。
しかしダム内部の写真は公開しないという約束でしたので、内部見学については紹介を控えさせていただきます。
 
ダム下から
自由越流頂2門とオリフィスラジアルゲート6門が横に並ぶ独特の洪水吐。
それぞれの減勢工は導流壁で仕切られ、副ダムの高さも異なります。
こちらは初訪時の写真で、副ダム直下の管理用発電所から放流されています。
(2021年7月16日)


同じアングルで
再訪時は管理用発電所は停止しており、河川維持放流は副ダム上流側にある利水放流ゲートから行われていました。
(2023年10月24日)

独特の形状のオリフィスゲート
(2021年7月16日)

 
ダム直下から
堤高50メートルに対し堤頂長445メートルの横長堤体
この位置からは超広角でも堤体全体をフレームに収めることができません。
(2023年10月24日)


ダム湖は滝里湖。
(2021年7月16日)


広い天端は車両通行可能。
(2023年10月24日)


天端から
右奥の建屋の地下に河川維持放流を利用した滝里ダム管理用発電所が、手前の建屋の地下に利水放流設備があります。
(2021年7月16日)


右側が非常用洪水吐となる自由越流頂、左手が常用洪水吐となるオリフィスゲートの減勢工。
両者の副ダムの高さが異なります。
こちらは初訪時で管理用発電所が稼働し副ダムの下流から放流しているため減勢工は静か。
(2021年7月16日)


こちらは再訪時。
利水放流ゲートから減勢工に放流されています。
(2023年10月24日)


滝里湖と命名されたダム湖は総貯水容量1億800万立米。
上流湖岸にはキャンプ場、インレットにはパークゴルフ場があります。
(2023年10月24日)


北海道電力滝里発電所の取水口。
発電は利水従属となり、灌漑用水や上水はすべて発電所経由で供給されます。
(2023年10月24日)

 
管理事務所とインクライン。
(2023年10月24日)

 
下流面
北海道らしい横長停滞で襟が堤高の約半分を占めます。
(2021年7月16日)

 
上流面
奥は利水用取水設備。
(2021年7月16日)

 
上流から見た常用洪水吐
補助ゲートの並びも独特。
(2021年7月16日)


インクラインと巡視艇。
(2021年7月16日)


上流から遠望
自由越流頂の左にはオリフィスの補助ゲートが並びます。
(2021年7月16日)


2度目の訪問では管理支所長様直々のガイドでダム内部を案内していただけることができました。
改めて厚く御礼申し上げます。
 
(追記)
滝里ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0158 滝里ダム(1650)
北海道芦別市滝里町
石狩川水系空知川
FNAWP
50メートル
445メートル
108000千㎥/85000千㎥
国土交通省北海道開発局
1999年
◎治水協定が締結されたダム

大沢ダム

2023-12-19 17:14:04 | 北海道
2021年 7月17日 大沢ダム
2023年10月24日
 
大沢ダムは北海道上川郡当麻町開明の石狩川水系牛朱別川にある農地防災目的のロックフィルダムです。
当麻町の水田地帯を貫流する牛朱別川は流下能力が低く融雪期や豪雨時には洪水が頻発し流域の農地に多大な被害をもたらしてきました。
そこで北海道は1973年(昭和48年)に農水省の補助を受けた防災ダム事業開明地区を採択し、牛朱別川及び右支流小沢川に2基の防災ダム建設を進めます。
そして1994年(平成6年)の小沢ダムに次いで2002年(平成14年)に牛朱別川本流に完成したのが大沢ダムで、両ダムともに北海道上川総合振興局が管理し、牛朱別川流域約900ヘクタールの農地防災を行います。

大沢ダムへ通じる当麻町営林道はダム手前約1キロ地点でゲートアウト
この先は当麻町の町有林になっており立ち入るには当麻町の入林許可が必要です。
初回訪問時はここで引き返しました。

再訪時は、事前に大沢ダムを管理する北海道上川総合振興局でダムへの立ち入り許可を得たうえで、林道を管理する当麻町農林業振興課で入林許可申請をしました。
こちらが町有林への入林許可証で、併せてゲートの鍵を貸与されます。


無事にゲートを開放
貸与された鍵は退出後に農林業振興課に返却します。


ゲートのすぐ先で道は二岐に分かれます。
左手の道を500メートルほど進むとダム下に到着
堤高28.9メートル、堤頂長318メートルと北海道らしい横長のダムで、右岸に洪水吐斜水路が伸びます。


こちらは放流管からの放流口。
防災専用ダムなので平時は流入量はすべてここから放流されます。


堤体直下から
凍上対策で芝が張られた小沢ダムと違い、こちらはロック材が露呈。
一方、ダム下は盛土が施されているのか?基礎地盤が深いのか?
28.9メートルの高さがあるようには思えません。


二岐に戻り右手の道を進むと左岸ダムサイトに到着。
天端にはバリケードが設置されていますが今回は立ち入り許可を得ております。


ダムサイトの事業説明板。
色が剥げて読みにくい!


左岸から貯水池を望みます
風がなく湖面はみごとな水鏡。
左手の赤い設備は常用洪水吐となる放流設備。


貯水池は総貯水容量90万立米。
堆砂容量の22万2000立米分だけ貯留されています。
当然これで常時満水位。


放流設備をズームアップ
小沢ダムと同じ形式で、通常は流入量はここから放流されます。


天端からダム下流を望む
受益農地は遥か下流。

右岸の洪水吐斜水路。


非常用となる横越流式洪水吐。


上流面。


右岸高台から俯瞰
右手に洪水吐斜水路が伸びます。
対岸の建物は管理事務所で、普段は職員の駐在はありません。


同じ場所から上流側にカメラを振ると
トドマツが植林されているのが町有林。
当麻町には外郭団体として森林組合があり、町が林業や製材業を担っています。


立ち入り許可をもらうのはハードルが高いか?と思われたのですが、手順を踏むと簡単に許可が戴けました。
対応及び所々アドバイスを頂いた当麻町農林業振興課には厚く御礼申し上げます。
一方、見学のタイミングがよくダム周辺は紅葉の真っ盛り。
立ち入り規制があるのがもったいない大沢ダムでした。

0136 大沢ダム(2024)
北海道上川郡当麻町開明
石狩川水系牛朱別川
28.9メートル
318メートル
900千㎥/678千㎥
北海道上川総合振興局
2002年

苫前ダム

2023-12-18 18:00:54 | 北海道
2023年10月24日 苫前ダム

苫前ダムは北海道苫前郡苫前町三渓の古丹別川水系三毛別川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
苫前周辺では明治中期より入植がはじまり、大正期には開拓の手は三毛別川中上流域まで伸び、その過程で有名な三毛別羆事件の惨禍も発生しました。
戦後は稲作のほか海岸沿いの丘陵地で酪農や畑作が展開されますが、水源となる古丹別川や三毛別川は渇水が多い上に灌漑設備が未熟なため非効率な営農を余儀なくされていました。
これを受け1984年(昭和59年)に北海道開発局により国営かんがい排水事業苫前地区が着手され、その2期事業により1999年(平成12年)に竣工したのが苫前ダムです。
運用開始後は苫前町が管理を受託し1600ヘクタール超の田畑に灌漑用水を供給しています。
事業全体も2002年(平成14年)に完了し、営農の集約化・合理化が進んだほか、新たにメロン・かぼちゃ・スイートコーンなど高収益作物の生産も開始されています。

道道1049号、通称ベアロード射止橋手前から三毛別川沿いを約5キロ東進すると苫前ダムに到着します。
ちょっと木が邪魔になりますが、下流の橋からダムと正対できます。


農業用コンクリートらしく放流設備はクレスト自由越流頂6門と利水放流設備の組み合わせ。
残念ながら放流設備は見えません。


左岸ダムサイトにはクマが抱き着く事業説明板と水利使用標識
凄惨な三毛別羆事件の現場近くとなりますが、苫前町はこの惨禍を逆手に取り熊を使って町のアピールを行っています。


天端は立ち入り禁止。
右手はダム下へ通じる管理階段で雪に備えてシェルターがついています。


定礎。


竣工記念碑。


立派な管理事務所
巡回のみで職員の常駐はないようです。


上流面


取水設備は多段式。


管理事務所裏手のインクライン。


総貯水容量740万立米の貯水池。
灌漑最盛期は過ぎていますが、受益農地の6割強は畑地で年間を通じて水利権が配分されているため、秋冬も貯水池の水は抜かず水位低下させての運用となります。


湖畔の苫前ダム水天宮。


0180 苫前ダム(2023)
北海道苫前郡苫前町三渓
古丹別川水系三毛別川
34.8メートル
155メートル
7400千㎥/5700千㎥
苫前町
1999年
◎治水協定が締結されたダム

羽幌ダム

2023-12-12 17:00:16 | 北海道
2023年10月24日 羽幌ダム

羽幌ダムは北海道苫前郡羽幌町砿(あらがね)の築別川水系三毛別川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
羽幌町では明治中期より入植がはじまり、大正期より築別川下流域平坦地で稲作が本格化します。
しかし水源となる築別川は渇水が多く安定した農業用水源や灌漑施設の整備が求められていました。
これを受け1953年(昭和28年)に国営土地改良事業羽幌地区が着手されその灌漑用水源として1966年(昭和41年)に竣工したのが羽幌ダムです。
事業全体も同年に完了し約650ヘクタールの水田への灌漑設備が整備されました。
運用開始後は羽幌土地改良区が管理を受託していましたが、現在は土地改良区の統合によりオロロン土地改良区が管理を引き継いでいます。

羽幌ダムはダムに通じる林道が悪路のため到達困難なダムとされる一方、きれいに刈り込まれた美しいフォルムから『日本一美しいアースダム』とも呼ばれています。
今回はぜひとも羽幌ダムの見学を叶えたいと四輪駆動車をレンタルし悪路に備えました。
道道741号の旧羽幌炭鉱遺構から三毛別川沿いのダートの林道を約8キロ、車で20分ほどで羽幌ダムに到着します。
悪路ということで身構えていましたが、確かに林道各所で大きな水溜りが続きますが四輪駆動ということでさほど苦にはならず、むしろ四国の大森川ダムに至る南奥川林道の方がよほどの悪路でした。

あるサイトで『日本一美しいアースフィル』と書かれていましたが、さすがにそれは大げさだろうと思いつつ現着し目にしたその姿は!!
ダントツで日本一美しいアースダム!!。
単にきれいに刈り込まれているだけじゃなく、元の地形に合わせて成形された複雑なフォルム。
長く緩やかに伸びる斜水路と左岸のアクセントになるグラベル。
究極のアシンメトリー。


長く伸びる洪水吐斜水路
赤い管理橋がいいアクセント。


管理橋を渡り超広角で
右手は底樋門でその上部だけグラベルになっています。
灌漑期が終わり流入量はそのまま放流されています。


とにかくどのアングルで見ても美しい。


対岸に林道が続くため、天端は車両通行可。


ダムサイトから洪水吐斜水路を見下ろします。
2枚目写真は管理橋左手から撮りました。


横越流式洪水吐。


洪水吐そばの建屋。
煤けているのでかつて出火したのかも?


水利使用標識。


上流面はコンクリートブロックで護岸。


総貯水容量は330万立米で築別川下流域約650ヘクタールの水田に灌漑用水を供給します。
訪問時は灌漑期が終わり水は抜かれています。


左岸から下流面
左手の建物が管理事務所。
冬場を除き土地改良区の職員さんが駐在し、草刈り等ダムの整備を行っています


右岸から上流面。


取水設備は北海道らしい赤い取水塔
右下に土砂吐ゲートがあり、非灌漑期は流入量はそのまま放流します。


ダムの入口の旧羽幌炭鉱遺構
全盛期にはこの周辺に数千人が住み、都市対抗野球やジャンプ競技の強豪チームとしても知られていました。
まさに兵どもが夢のあと。 


日本一美しいアースの名に恥じぬ美しいダムです。
できれば湖面に水を湛えた時期、そして青い空の下で愛でてみたい美堰堤です。

0072 羽幌ダム(2027)
北海道苫前郡羽幌町砿
築別川水系三毛別川
27.8メートル
108.4メートル
3300千㎥/3160千㎥
オロロン土地改良区
1966年

民安ダム

2023-12-11 17:00:09 | 北海道
2023年10月23日 民安ダム

民安ダムは富里ダムは左岸が北海道天塩郡天塩町キトウシュナイ、右岸が同町更岸のサラキタナイ川水系サラキシ14号川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
天塩沿岸地区では日本海沿岸の平坦地とそれに続く丘陵地で広く酪農が展開されていますが、脆弱な飼料生産や排水能力の欠如、糞尿処理の手間などにより生産性の低い営農を余儀なくされていました。
これを受け1988年(昭和63年)に北海道開発局により国営畑かんがい排水事業天塩沿岸地区が着手され、その灌漑用水源として2001年(平成13年)に竣工したのが民安ダムです。
運用開始後は天塩町が管理を受託し約4000ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
事業全体も2005年(平成17年)に完了し、灌漑用水路・排水路が整備され、営農の集約化、合理化が実現しましたが、酪農については乳価の下落という大きな逆風が吹いているのも実情です。
一方2010年(平成22年)に始まった桜の植樹を契機に、農村景観保全が進められるとともにダム周辺は広く開放されています。

天塩町中心部から南に約10キロ、車で20分ほどで民安ダムに到着します。
堤高24メートル、堤頂長260.5メートルの北海道らしい横長堤体。
超広角レンズでもフレームに収まりません。


左岸ダム下の放流設備
灌漑用水はすべて専用水路での供給となり、こちらは河川維持や水位低下目的で使われます。


右岸の洪水吐


右岸から
このアングルでようやく堤体全体がフレームに収まります。
北海道では凍上対策のためロックフィルでも芝が張られていることが多く、見た目のアースとロックの区別が難しいのですが、こちらは正真正銘の均一フィルのアース堤体。


洪水吐斜水路と減勢工
ダム周辺はきれいに整備されています。


横越流式洪水吐と管理事務所。
職員の常駐はないようです。


洪水吐と上流面
上流面はロック材で護岸。
左奥の建屋は斜樋兼艇庫になります。


農業用ダムでおなじみの事業説明板。


ダムの下流には延々と牧草地が広がり、その先に日本海が望める素晴らしいロケーション。
『海が見えるダム』認定!!
ただ液肥化した家畜の糞尿を牧草地に散布するため、家畜の糞尿臭が漂うのが玉に瑕。


ダム下の建屋
手前は2枚目写真の放流設備
奥は揚水機場で、灌漑用水はすべてここから専用水路で供給されます。


貯水池は総貯水容量200万立米
北海道の農業用ダムとしては小規模。
畑地灌漑となるため冬場でも水を抜くことはありません。


天端は車両通行可能。


上流面はロック材で護岸
これ見ただけじゃアースかロックかわかりません。


左岸の建屋
艇庫と取水設備を兼ねています。


水利使用標識
年間を通して水利権が配分されています。


ダム周辺はきれいに整備され天端からの景観も素晴らしいダムです。
ただ糞尿臭が常時漂っており、個人的にはせっかくのロケーションも今一つというのが偽らざる印象。

0182 民安ダム(2026)
左岸 北海道天塩郡天塩町キトウシュナイ
右岸        同町更岸
サラキタナイ川水系サラキシ14号川
24メートル
260.5メートル
2000千㎥/1800千㎥
天塩町
2001年

北辰ダム

2023-12-10 17:00:51 | 北海道
2023年10月23日 北辰ダム

北辰ダムは北海道稚内市声問村の声問川水系タツニウシュナイ川にある稚内市建設産業部が管理する上水道用水目的のロックフィルダムです。
稚内市では1921年(大正14年)に自然沼である大沼を水源として近代水道事業が開始されました。
戦後の復興から高度成長に併せ数次にわたる事業拡張が進められますが、1970年代に入り大沼の水質悪化が深刻化、これを契機に第5次拡張事業が着手され1980年(昭和55年)竣工、翌年より運用が開始されたのが北辰ダムです。
現在はオホーツク沿岸の東浦地区および簡易水道を除く稚内市上水道の全てを北辰ダムが担い、日量約5万立米の水を供給しています。
北辰ダムは我が国最北端に位置するダムとしてダム愛好家に周知されていますが、上水用ダムという性格からダム周辺は広く立ち入りが制限され下流から眺めるのみです。

北辰ダムは稚内中心部から南東に約20キロに位置し周辺には牧草地が広がります。
下流から遠望。


天端に通じる道路はチェーンが架けられ立入禁止。
下流からの見学に留まります。


水利使用標識
字が読めん…


下流からその端正な姿を一望できます。
堤高32メートル、堤頂長180メートルの北海道らしい横長堤体。
ロックフィルですが、凍上対策で芝が張られているのも北海道ではおなじみ。
管理が行き届き、堤体のみならずダム周辺はきれいに刈り込まれています。


右岸に地山を利用した洪水吐があります。


前日までの激しい雨で洪水吐からは美しい転波越流。


ダム下からは目にすることはできませんが、貯水池は総貯水容量670万立米、約120日分の水が貯留されています。 

コンクリート建屋は河川維持用の放流設備。
水道水は貯水池から直接取水され専用管で浄水場に送られます。



0110 北辰ダム(2025)
北海道稚内市声問村
声問川水系タツニウシュナイ川
32メートル
180メートル
6700千㎥/5943千㎥
稚内市建設産業部
1980年

武利ダム

2023-12-09 17:00:42 | 北海道
2023年10月22日 武利ダム

武利(むり)ダムは北海道湧別郡遠軽町丸瀬布上武利の湯別川水系武利川にある北海道電力(株)が管理する発電目的のアスファルト中央遮水壁(アスファルトセンターコア)型ロックフィルダムです。
湧別川水系では大正時代に湧別川発電所が建設され、戦後北海道電力が事業継承しますが発電能力はわずか690キロワットに留まっていました。
1973年(昭和48年)に始まったオイルショックを契機に電力各社は水力発電の新規開発や再開発に邁進しますが、ここ湧別川では北海道電力が湧別川と武利川で新たな水利権を獲得し、その取水ダム兼上部調整池として1980年(昭和55年)に竣工したのが武利ダムです。
ここで取水された水は約9キロの導水路で瀬戸瀬発電所に送られ最大2万5000キロワットのダム水路式発電を行っています。
武利ダムは日本で唯一のアスファルトセンターコア型ロックフィルダムで、堤体に中央にアスファルト性の遮水壁が設けられ、河床のコンクリート遮水壁と接続して遮水を行います。

丸瀬布中心部から武利川沿いの道道1070号線を約8キロ、車で10分ほど南下すると武利ダムに到着します。
ダムは立ち入り禁止で左岸の道道から見学するのみ。
堤高15.5メートル、堤頂長173メートルで左岸にローラーゲート2門を装備。


日本で唯一のアスファルトセンターコア型ダムですが、見た目は普通のロックフィルダム。
中を伺う由もありません。


ゲートを何とか撮影。


ちょっとユニークな警告板。
『ピンポンパンポ~ン』を聞いてみたい。


敷地はフェンスで厳重にガード。
左手に石碑があります。


ピア上部に巻き上げ機が見えます。
豪雪地帯ですが被覆はありません。


ダム上流の説明板と水利使用標識。

説明版には、堤体のアスファルト遮水壁と河床のコンクリート遮水壁の構造が描かれています。


水利使用標識。


上流面
通常発電用の上部調整池の取水口はダム湖岸に設けられることが多いのですが、ここは導流堤先端に設置されています。


導流堤先端に除塵機が見えます。


貯水池は総貯水容量82万立米。
写真右手のコンクリート構造物が湧別川取水堰からの流入口。
湖面が波立っているのが見えます。


ダム湖直上は日帰り温泉施設やキャンプ場などを備えた丸瀬布森林公園いこいの森として整備されています。
この公園では当地を走っていた森林鉄道の車両が動態保存され、特に森林鉄道蒸気機関車雨宮21号は国内で唯一動く森林鉄道蒸気機関車として多くの鉄道ファンの人気を集めています。
ちょうど訪問時は今期の運行を終えたSLを車庫に格納する式典が行われていました。


鉄道ファンを兼ねるダム愛好家も多く、ここはそういう皆さんにはイチ押しのダムです。

(追記)
武利ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0101 武利ダム(2024)
北海道湧別郡遠軽町丸瀬布上武利
湧別川水系武利川
FC
15.5メートル
173メートル
820千㎥/500千㎥
北海道電力(株)
1980年
◎治水協定が締結されたダム