ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

矢那川ダム

2021-02-24 01:51:36 | 千葉県
2016年1月21日 矢那川ダム
2021年2月19日
 
矢那川ダムは千葉県木更津市矢那の矢那川水系田高川にある千葉県県土整備部が管理する治水目的の傾斜コア遮水壁型アースフィルダムです。
1987年(昭和62年)の東京湾横断道路(東京湾アクアライン)の着工に合わせて、千葉県は木更津から君津にわたる丘陵地帯にバイオテクノロジーを中心とした研究拠点「かずさアカデミアパーク」建設を決め、1991年(平成2年)から278ヘクタールの山林造成が開始されました。
造成による雨水流出量増加に対処するための防災調整池として1998年(平成10年)に竣工したのが矢那川ダムです。
矢那川ダムは矢那川の洪水調節及び安定した河川流量の維持を目的とする補助治水ダムです。
洪水調節については矢那川上流に分水堰を設けてダムまでの導水路トンネルを整備し、洪水時に矢那川の水量をカットしてダムに貯留することで下流の洪水を防ぐという仕組みが採られています。
 
一方かずさアカデミアパークはバブル崩壊のあおりをまともに受け、計画通りの企業誘致は進まず運営する第3セクターは破たん、足元の景気回復をうけ進出企業は増加傾向にあるものの、依然として計画比50%程度の進出率にとどまっています。
 
矢那川ダム一帯は『矢那川ダム公園』として整備され、近隣住民の憩いの場となっています。
今回はダム下流の第2駐車場に車を止め徒歩で見学しました。
ダム下で洪水吐導流部(向かって左手)と矢那川(向かって右手)が合流します。
 
洪水吐減勢工わきにダム湖上流に設けられた低水放流管および常用洪水吐の吐口があります。
河川維持放流はここから放流されます。
 
こちらは矢那川本流
普段はクリークのような小河川です。
 
堤体下流面は盛り土され芝生の公園となっています。
 
非常用洪水吐となる右岸の横越流式洪水吐とダム管理施設。
試験湛水以来ここから越流したことはないそうです。
 
天端。
4車線分くらいの幅がありますが、公園の一部として車両は走行できません。
正面(ダムの南側)の丘陵上にアカデミアパークが広がります。
 
天端から
気持ちのいい芝生の公園です。
 
総貯水容量は172万立米ですが、その大半が洪水調節容量のため普段のダム湖はカラカラ。
 
上流面ですが、こうやってみるとこっちが下流面に見えてしまいます。
 
ダム湖上流部は河川維持用として不特定利水容量が確保され小さなため池のようになっています。
対岸にあるのが低水放流管および常用洪水吐、
手前にあるのが分水堰からの導水トンネル放流口。
 
導水路トンネル放流口。
洪水時はカットされた矢那川の水がここに放流されます。
 
低水放流管および常用洪水吐
ここで取水された水が2枚目写真の吐口から放流されます。
 
洪水時に分水堰で水量をカットして導水路で別河川のダムに貯留し洪水調節を行うやり方は、長野県の小仁熊ダムや山形県の前川ダムでも採用されています。
今回は予習不足で矢那川上流の分水堰は見ないままで終わりました。
機会があれば再訪してチェックしたいと思います。
 
3035 矢那川ダム(0201)
千葉県木更津市矢那
矢那川水系田高川
FN
29.3メートル
284メートル
1720千㎥/1600千㎥
千葉県県土整備部
1998年

高滝ダム

2021-02-23 04:15:10 | 千葉県
2016年1月21日 高滝ダム
2021年2月19日
 
高滝ダムは千葉県市原市養老の養老川水系養老川中流部にある千葉県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで養老川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、千葉県営水道及び市原市営水道への上水道用水の供給を目的として1990年(平成2年)に竣工しました。
蛇行を繰り返す養老川地形を生かし、7万8000立米の堤体積で有効貯水容量1250万立米を支えており、貯水効率160倍と非常に効率の良いダムとなっています。
 
高滝ダムには2016年2月21日に初めて訪問し、2021年2月19日に再訪しました。
ダムを正面から見れるのは下流を高架橋で跨ぐ圏央道だけです。
ということで車の助手席からシャッターを切ってみました。
堤高に対して大きなローラゲートとピアがなんともアンバランスで、昭和20~30年代の発電用ダムのようです。(2021年2月19日)
 
非常用洪水吐として4門のクレストローラーゲートを備えてします。
写真左手前に常用洪水吐のコンジットローラーゲートと低水位放流バブルがあります。
 
右岸の土手に「たかたきダム」の植栽。(2021年2月19日)
 
頭でっかちなゲートピア。
よく見るとなかなか凝ったデザインです。
さすがバブル期のダム。
 
天端は車両通行可能
ピアには螺旋階段がつきます。(2021年2月19日)
 
減勢工
正面の高架橋が圏央道。
 
高滝湖
見えているのはダム湖の一端で、大きく蛇行を繰り返しながら上流に続きます。
 
天端高欄には地元の小中学生による壁画が描かれています。
これはダムそばを走る養老鉄道
天端を鉄道が走る唯一のダムです。笑
 
右岸から
ゲート手前の建屋が予備ゲート操作室兼選択取水設備。
 
一番右手のコンジットの予備ゲート左が選択取水設備です。
 
さらに引いて。
 
湖畔には市原湖畔美術館があり、湖面に巨大トンボが水上展示されています。
 
0681 高滝ダム(0210)
千葉県市原市養老
養老川水系養老
FNW
24.5メートル
379メートル
14300千㎥/12500千㎥
千葉県県土整備部
1990年

平沢ダム

2021-02-22 04:26:53 | 千葉県
2016年2月21日 平沢ダム
2021年2月19日

平沢ダムは千葉県夷隅郡大多喜町平沢の夷隅川水系平沢川源流部にある灌漑目的の傾斜コア遮水壁型アースフィルダムです。
夷隅川は千葉県最大の流域面積を持つ二級河川で、古くから流域の貴重な灌漑用水源となってきました。
しかし、房総半島南東部には地表近くに水溶性天然ガス層があり、夷隅川流域では渇水期に河床や水田からガス成分や塩分を多量に含んだ『かん水』が湧出し、農業に多大な悪影響を与えていました。
かん水対策として1978年(昭和45年)に夷隅町(現いすみ)に建設された荒木根ダムの実効性が高かったことを受け、農水省の補助を受けた県の鉱毒対策事業『大多喜地区』で1998年(平成10年)に平沢ダムが竣工しました。
運用開始後は大多喜町が受託管理を行っています。

平沢ダムには通常の灌漑用水容量とは異なり鉱毒希釈用水容量が設定してあり、灌漑期において流域の塩分濃度が上昇した際に希釈用水を放流し灌漑用水の中和を図っています。
農水省の補助を受けた鉱毒対策事業によって建設されたダムとしては千葉県いすみ市の荒木根ダム、宮城県の田ダム、山形県の生居川ダムがあります。
 
平沢ダムには2016年2月21日に初めて訪問し、2021年2月19日に再訪しました。
堤体は犬走りを挟んで2段構成、ダム下に放流設備があります。
(2016年2月21日)
 
余水吐から結構な勢いで越流しています。(2016年2月21日)
 
灌漑期に下流の夷隅川で塩分濃度が上昇すると、ここから希釈用水が放流されます。
 
下流面。
時節柄きれいに刈られています。
 
貯水池は総貯水容量116万立米。
満水です。
 
左岸の余水吐。
 
天端は車両通行可能
奥に管理事務所と斜樋があります。
 
上流面はコンクリートブロックで護岸されていますが、ずいぶん草が生えています。 
 
管理事務所と斜樋、巡視艇。
 
左岸の横越流式余水吐
満水のため薄く越流しています。
 
立派な竣工記念碑。
 
ダムの目的としてはAの灌漑に分類されますが、実際には灌漑用水ではなく鉱毒対策としての希釈用水の供給を目的とする非常に珍しい農業用ダムです。 
 
2976 平沢ダム(0238)
千葉県夷隅郡大多喜町平沢
夷隅川水系平沢川
25.6メートル
159メートル
1160千㎥/1088千㎥
大多喜町
1998年

勝浦ダム

2021-02-22 03:38:51 | 千葉県
2016年1月21日 勝浦ダム
2021年2月19日
 
勝浦ダムは千葉県勝浦市上植野の夷隅川水系古新田川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
農林省(現農水省)の補助を受けた県のかんがい排水事業により1975年(昭和50年)に竣工し、完成後は勝浦市土地改良区が管理を受託し勝浦市ほぼ全域の水田に灌漑用水を供給しています。
勝浦ダムは古新田川源流部にあり自己流域だけで湛水が不可能なため、非灌漑期に下流から揚水して貯留を行っています。
 
勝浦ダムには2016年(平成18年)1月に訪問しましたが日没間近で十分な見学ができず、2021年(令和3年)2月19日に再訪しました。
日付の記載がない写真はすべて再訪時のものです。
 
県道178号に勝浦ダムを示す標識があり、標識の先に放流設備があります。
揚水時にはここからポンプアップするようです。
 
標識に従って西に折れると勝浦ダムが姿を現します。
秋にきれいに刈り込まれ、冬枯れの芝が黄金色に輝いています。
 
堤体は犬走りを挟んで3段構成。
 
上流面はロック材で護岸。
 
総貯水容量196万6000立米と関東の農業用ダムとしてはかなり大規模
非灌漑期に揚水するためほぼ満水です。
 
左岸の取水・揚水設備とインクライン
取水・揚水設備を間近で見たかったのですが、立ち入り禁止エリア。
(2016年1月21日撮影)
 
天端から。
 
天端は車両通行可能です
奥は管理事務所。
 
右岸から。(2016年1月21日撮影)
 
右岸の円形越流式洪水吐。(2016年1月21日撮影)
 
洪水吐導流部。(2016年1月21日撮影)
 
非灌漑期に揚水し、灌漑期に放流する非常に珍しいタイプの農業用ダムです。
 
(追記)
勝浦ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました
 
0668 勝浦ダム (0209)
千葉県勝浦市上植野
夷隅川水系古新田川
29メートル
231.2メートル
1966千㎥/1850千㎥
勝浦市土地改良区
1975年
◎治水協定が締結されたダム

三島ダム

2021-02-21 23:22:55 | 千葉県
2016年1月21日 三島ダム
2021年2月18日
 
三島ダムは千葉県君津市正木の小糸川水系小糸川上流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
小糸川中下流部沿岸は河岸段丘が続くため流域農地は水源を小河川や天水に依存せざるを得ず、毎年のように干ばつ被害に悩まされてきました。
昭和に入り小糸川上流部への灌漑用溜池建設機運が高まり、1939年(昭和13年)に水利組合が結成され、1943年(昭和18)に君津市正木地区にて溜池建設工事が着手されました。
しかし、戦争激化や戦後の混乱等で工事は大幅に遅延、1952年(昭和27年)に県営土地改良事業の認可を得てたのち1955年(昭和30年)にようやく三島ダムが竣工しました。
運用開始後の管理は小糸川沿岸土地改良区が管理を行っています。
 
1968年(昭和43年)には3キロ上流に工業用ダムの豊英ダムが完成し、三島湖から豊英湖一帯は清和県民の森としてキャンプ場や野外活動センター、ハイキングコースなどが整備され、房総地区有数のレクリエーションエリアとなっています。
三島ダムには2016年(平成28年)1月21日に訪問しましたが、当時は洪水吐の改修工事中でした。
改修工事を終えた2021年2月18日に再訪しました。
なお改修工事終了後に余水吐から漏水がありその後も対策工事が継続中です。
 
堤体下流面はアーチ状、一方上流面は直線状の変則的な形で、一見したところどこが堤体だかわかりずらくなっています。
 
堤体を横切る旧国道410号線。
 
ダム下に降りて下から見上げてみます。
凹凸があるのでただの斜面にしか見えません。
 
堤体の下に下りると左岸から余水吐が現れます。
 
堤体上流面に沿って別の道路が走っており、これが天端になります。
上流面はコンクリートで護岸。
 
ほぼ同じアングルで
再訪時、ダム湖側にはフェンスが設置されていました。
 
左岸に横越流式余水吐があります。
こちらは初回訪問時。
 
2021年再訪時
2018年に改修された余水吐から漏水がありその応急措置としてこの切り欠きが開けられました。
 
上流側。
 
2021年再訪時。
 
工事中の余水吐導流部
導流部は堤体とは逆方向に延び、養老川に流下します。
再訪時は余水吐に架かる橋の工事のため同じアングルの写真は撮れませんでした。
 
こちらが改修が終わった余水吐の全容
左手の建物が管理事務所。
 
越流堤右側の白い部分は雨水侵入防止のための防水処理です。
こちらも漏水対策として施工されました。
 
ダム湖と取水塔
総貯水容量482万7000立米と千葉県の農業用ダム最大規模を誇りますが、ダム湖は奥に細長く続くため数字ほどの広さは感じられません。
 
(追記)
三島ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0662 三島ダム(0204)
千葉県君津市正木
小糸川水系小糸川
25.3メートル
127.7メートル
5400千㎥/5210千㎥
小糸川沿岸土地改良区
1955年
◎治水協定が締結されたダム

豊英ダム

2021-02-21 04:40:49 | 千葉県
2016年1月21日 豊英ダム
2021年2月18日
 
豊英(とよふさ)ダムは千葉県君津市豊英の小糸川水系小糸川上流部にある千葉県企業局が管理する工業用水目的の重力式コンクリートダムです。
戦後の復興を受け千葉県企業庁は東京湾臨海部での埋め立てによる工業用地造成の整備を進め、いわゆる京葉臨海工業地帯が形成されます。
昭和30年代に入ると開発の手は木更津や君津まで伸び、1960年(昭和35年)には八幡製鉄(現日本製鉄)が君津への高炉製鉄所建設を決定しました。
県企業庁は新たに木更津南部地区工業用水道を創設、その主水源として1968年(昭和43年)に二級河川小糸川上流部に建設されたのが豊英ダムです。
小糸川には灌漑目的の三島ダムがあり、受益者である小糸川沿岸土地改良区との水利権交渉が難航しましたが、1966年(昭和41年)に君津製鉄所の拡充が決まったことで用水確保が急務となり、交渉妥結後に工期1年4カ月という驚くべき短期間で豊英ダムは建設されました。
運用開始以降千葉県企業庁が管理運営を行ってきましたが、2015年(平成27年)の組織改編により現在は千葉県企業局が管理を引き継いでいます。
豊英ダムから放流された水は小糸川下流の人見取水堰で取水され、人見浄水場を経て木更津市南部、君津市、富津市臨海部の工業地谷に給水されています。
また三島ダムから豊英ダム周辺は清和県民の森として整備が進められ、キャンプ場やロッジ、ハイキングコースなどを備えた房総有数のレクリエーションエリアとなっています。
 
豊英ダムには2016年(平成28年)1月21日に訪問、2021年(令和3年)2月18日に再訪しました。
掲載写真はすべて再訪時のものです。

ダムの下流は深い渓谷になっており、これが精いっぱい。
洪水吐は自由越流式クレストゲート3門だけ。
 
ダム入り口にある銅製銘板。
 
ダムの概要説明版。
 
ダム入り口から車両通行禁止。
 
機械室。
 
導流部と減勢工
ちょっと見づらいですが導流部の下に排砂ゲートらしき穴があります。
 
豊英湖と命名されたダム湖は総貯水容量482万7000立米。
地質的な要因があるのか房総のダムやため池の水はみな濁っています。
 
下流面。
 
左岸左上に管理事務所があります。
 
上流から。
 
巡視艇昇降用クレーン。
 
0664 豊英ダム(0205)
千葉県君津市豊英
小糸川水系小糸川
38メートル
115メートル
4827千㎥/4200千㎥
千葉県企業局
1968年

佐久間ダム

2021-02-21 03:57:03 | 千葉県
2016年1月21日 佐久間ダム
2016年2月21日 
2017年2月04日 
2021年2月18日
 
佐久間ダムは千葉県安房郡鋸南町上佐久間の佐久間川水系大崩川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
1977年(昭和52年)に農林省の補助を受けた県営かんがい排水事業『佐久間地区』が着手され、その灌漑用水源として1986年(昭和61年)に竣工しました。
運用開始後は鋸南町鋸南土地改良区が受託管理を行い、255ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
 
ダム湖畔は佐久間ダム親水公園として整備され、スイセン、頼朝桜と呼ばれる河津桜、梅、花桃、ソメイヨシノなどが植えられ房総有数の花の名所として知られています。
これまで花の時期に合わせて4回訪問しました。
ダム下のソメイヨシノはまだ冬枯れのままです。
 
4度とも冬場の訪問ということで、下流面はきれいに刈られています。
 
右岸の余水吐導流部。
 
横越流式余水吐。
 
左岸ダム下に放流設備がありますが、立ち入り禁止のためそばで見ることはできません。
 
 
天端は車両通行可能ですが、花のシーズンは時計回り一方通行となります。
 
総貯水容量は127万立米、本州の農業用アースダムとしては大きなほうです。
地質的な問題なのか、房総のダムやため池は総じて濁りがひどくなっています。
 
左岸の斜樋。
 
上流面はコンクリートで護岸されています。
 
貯水池上流から。
 
ダム湖畔のスイセン。
 
 
こちらは頼朝桜と呼ばれる河津桜
貯水池右岸に植えられています。 
 
 
 
 
こちらは左岸の梅。
 
 
 
 ダムの知名度としては静岡の同姓同名ダムに遠く及びませんが、ダムを訪れる観光客の数ではこちらが圧勝です。 
 
0680 佐久間ダム(0199)
千葉県安房郡鋸南町上佐久間
佐久間川水系大崩川
25.5メートル
186メートル
1270千㎥/1216千㎥
鋸南町鋸南土地改良区
1986年

郡ダム

2021-02-20 04:42:34 | 千葉県
2016年2月21日 郡ダム
2021年2月18日
 
郡ダムは千葉県君津市郡の小糸川水系郡川にある千葉県企業局が管理する工業用水目的のアースフィルダムです。
戦後の復興を受け千葉県企業庁は東京湾臨海部での工業用地開発を進め、いわゆる京葉臨海工業地帯が形成されます。昭和30年代に入ると開発の手は千葉市以南まで広がり、開発に合わせて工業用水道の整備も進められ工水専用ダムとして1964年(昭和39年)に山倉ダムが、1969年(昭和44年)に豊英ダムが建設されました。
郡ダムは木更津南部から君津、富津地域に工業用水を供給する木更津南部工業用水道事業の調整池として1972年(昭和47年)に竣工しました。
同水道事業は小糸川上流の豊英ダムを水源としいますが、渇水期には十分な用水需要を賄えない懸念がありました。そこで富津市の湊川取水場で取水した水を流域変更して郡ダムで貯留し、渇水期に小糸川に放流することで用水供給の安定化を図っています。
郡ダムは郡川での集水はほとんどなく、いわゆる河道外貯留ダムとなります。
運用開始以降長らく千葉県の外庁である千葉県企業庁が管理運用を行ってきましたが、2015年(平成27年)の組織変更により千葉県企業局が管理を引き継いでいます。
 
郡ダムには2016年(平成28年)2月21日に初めて訪問し、2021年(令和3年)2月18日に再訪しました。 
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載してあります。

君津市郡で国道127号線から県道298号に入ると正面に郡ダムが見えてきます。
こちらは初回訪問時の写真。
朝霧がかかり幻想的な眺めとなっていました。
さすが、県管理のダムということで堤体やダム下はきれいに刈りこまれています。
外見からはわかりませんがダムの遮水は傾斜コア方式が採用されています。
(2016年2月21日)
 
左岸の余水吐導流部。(2016年2月21日) 
 
こちらが余水吐。(2021年2月18日)
 
ダムサイトの駐車場わきのダムの説明版。(2021年2月18日)
 
千葉県企業局のダム管理事務所。(2021年2月18日)
 
上流面インクラインの巡視艇。(2021年2月18日)
 
この下に取水設備があるようです。(2021年2月18日)
 
天端から下流面
ダム湖を周回する遊歩道が整備され、2車線幅の天端もその一端となっています。
(2021年2月18日)
 
ダム下の様子(2021年2月18日)
 
右岸から下流面
堤体は地山を挟んだ先まで続き、堤頂長は720.5メートルにも及びます。
(2016年2月21日)
 
ダム湖は総貯水容量400万4000立米。
関東の大学から氷上スキ―競技会場に使わせてほしいという申し出があるようですが、現在のところ、釣りやボートなど湖面利用は一切認められていません。
(2021年2月18日)
 
上流面の護岸にははスラグ(鉱滓)が使われています。
郡ダムの建設時期から見て川崎製鉄(現JFEスチール)千葉製鉄所のスラグが使われているようです。
(2021年2月18日)
 
0666 郡ダム(0231)
千葉県君津市郡
小糸川水系郡川
 I
38.2メートル
720.5メートル
4004千㎥/3880千㎥
千葉県企業局
1972年