ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

天君ダム

2022-06-16 08:00:00 | 熊本県
2022年5月25日 天君ダム
 
天君ダムは左岸が熊本県上益城郡御船町上野、右岸が同町田代の二級河川緑川水系矢形川にある農地防災目的の重力式コンクリートダムです。
農林省(現農水省)の補助を受けた県営防災ダム事業により1970年(昭和45年)に竣工しました。
完成後は御船町が管理を受託しています。

下流から遠望
農地防災ダムですが、昭和40年代のダムと言うことでラジアルゲートを装備。
畑の畔を辿ればダムのすぐ下まで行けたんですが、私有地なので自重しました。


写真では片方しか見えませんが、左右両側に放流管があり平時は流入量はそのまま放流します。


ゲートをズームアップ
巻き上げ機は下流面台座上に乗せられているので、凹凸が少ないすっきりとした天端になっています。


1990年(平成2年)にダム右岸の御船層群と呼ばれる地層から恐竜の化石が発掘されました。
これはその説明版。
もちろん個人での発掘は禁止されています。


下流面。


上流面
青いゲージは放流管取水口
有効貯水容量すべてが農地防災容量となる防災専用ダムですが、堆砂容量32万1000立米分が貯留されています。
左岸に管理事務所があり農地防災ダムとしては珍しく職員さんが駐在しています。
事務所に下の湖岸に巡視艇が繋留されています。


天端は車両通行可能
ゲート部分だけわずかに上流側にクランクしています。


天端から減勢工を見下ろすと
左右両岸に放流管。


こちらが上流側の取水口で、平時は流入量はそのまま放流します。
内側のゲージの中に予備ゲートがあります。


右岸の放流管をズームアップ。


左岸から下流面。

訪問翌年の2023年(令和5年)6月の豪雨に際には異常洪水時防災操作(緊急放流)寸前まで洪水を貯め込み、下流域の防災に大きく貢献しました。

(追記)
天君ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2664天君ダム (1859)
左岸 熊本県上益城郡御船町上野
右岸         同町田代
緑川水系矢形川 
 
 
39メートル 
195メートル 
1661千㎥/1340千㎥ 
御船町
1970年
◎治水協定が締結されたダム

松瀬ダム

2022-06-15 23:00:00 | 福岡県
2022年5月25日 松瀬ダム

松瀬ダムは左岸が福岡県八女市黒木町大淵、右岸が同町北大淵の一級河川矢部川本流にある福岡県企業局県が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
福岡県最初の補助多目的ダムとして1962年(昭和37年)に日向神ダムが竣工します。福岡県企業局は工場進出で電力需要が旺盛な大牟田向け電力を賄うため同事業に発電事業者として参加し、1961年に最大出力7500キロワットの大渕発電所が稼働しました。
松瀬ダムは大渕発電所の出力調整による水位変動を緩和するための逆調整池として1963年(昭和38年)に完成、併せてここで取水された水はさらに6.3キロの導水路で木屋発電所に送られ最大6000キロワットのダム水路式発電が行われます。

下流からダムと正対できますが、木が邪魔をして全景を見ることはできません。
クレストローラーゲート2門のほか、向って右手(ダム左岸)は自由越流頂になっています。


ダムの下流は洗堀を防ぐためコンクリート工で保護。


ダム湖は総貯水容量50万6000立米ですが、堆砂が進み有効貯水容量はわずか19万8000立米
上流約1キロに日向神ダムがあり、左上にダム左岸の安山岩の岩壁が見えます。


ピア側面に嵌め込まれた銘板と記念碑。


天端は対岸への通路となっており車両通行できます。
下流側はゲート扶壁に合わせて前面に張り出し小さなバルコニーになっています。


ゲートを真上から
フラッシュボード付き。


ピアにはらせん階段。


これは巡視艇の格納庫
ホイストクレーンで昇降させます。


右岸の取水口と管理棟
ここから約6.3キロの導水路で木屋発電所に送水されます。


上流面。


(追記)
松瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2411 松瀬ダム(1858)
左岸 福岡県八女市黒木町大淵
右岸        同町北大淵
矢部川水系矢部川
25メートル
70.5メートル
506千㎥/198千㎥
福岡県企業局
1963年
◎治水協定が締結されたダム

日向神ダム

2022-06-15 20:00:00 | 福岡県
2022年5月25日 日向神ダム

日向神(ひゅうがみ)ダムは左岸が福岡県八女市黒木町大淵、右岸が同町北大淵の一級河川矢部川本流にある福岡県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
当初矢部川には建設省直轄事業によるダム建設が計画されていましたが、1953年(昭和28年)の西日本大水害を受けて、県は『矢部川総合開発事業』を採択、工場進出で電力需要旺盛な大牟田向け発電を行うため県企業局が事業参加し1962年(昭和37年)に日向神ダムが竣工しました。
日向神ダムは福岡県最初の補助多目的ダムで、矢部川の洪水調節のほか矢部川流域1万2000ヘクタールへの不特定灌漑用水への補給と安定した河川流量の維持、福岡県企業局大渕発電所(最大出力7500キロワット)でのダム式発電を目的としています。
また翌年には下流1キロ地点に大渕発電所の逆調整池として松瀬ダムが完成しました。

まずはダム下へ
渓谷の狭隘部にそそり立つその姿は偉大で、79.5メートルの堤高以上の高さを感じます。
クレストラジアルゲート2門、コンジット高圧ローラーゲート2門のほかダム下部両側ににフィクストコーンバルブ2条を備えた美しいシンメトリー。


ラジアルゲートをズームアップ。


こちらは県企業局大淵発電所
建屋は新しく近年刷新されたようです。


天端に上がります。
まず目に入るのは対岸に屹立した天戸岩と呼ばれる大岩壁。
岩はマグマの貫入によって生成された日向神溶岩と呼ばれる安山岩です。


天端に鎮座するエメラルドグリーンのガントリー
コンジットおよびコーンバルブの予備ゲートを運搬します。


天端は車道ですが幅は狭く離合は難しい。でも車はほとんど通りません。
路面にはコンジットゲート用のグレーチング。


天端から。


ダム湖は細長く上流に続き総貯水容量は2790万立米となります。
ダムは狭隘な渓谷をうまく利用して作られ堤体積はわずか23万5000立米、貯水効率118倍と効率のいいダムです。


右岸のトンネル
天端両岸がトンネルという珍しいダム。


取水設備の向こうに繋留設備があります。


ダムは日向神溶岩と呼ばれる硬い安山岩の岩壁をつないで建設されました。
日向神溶岩はダム周辺のみ分布しており、ダム建設地点は地質的にも絶好の場所と言えます。




(追記)
日向神ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2410 日向神ダム(1857)
左岸 福岡県八女市黒木町大淵
右岸        同町北大淵
矢部川水系矢部川
FNP
79.5メートル
146メートル
27900千㎥/23900千㎥
福岡県県土整備部
1962年
◎治水協定が締結されたダム

藤波ダム

2022-06-15 12:00:00 | 福岡県
2022年5月25日 藤波ダム 
 
藤波ダムは左岸が福岡県うきは市浮羽町妹川、右岸が同市浮羽町小塩の筑後川水系巨瀬川にある福岡県県土整備部が管理する治水目的のロックフィルダムです。
巨瀬川は筑後川の南側を並行して流れる筑後川の主要左支流で、もとの流域は筑後川の氾濫原だったこともあり流路が固定されたのちも洪水が頻発していました。
ダム建設は1970年(昭和45年)に採択されましたが、本体着工は2004年(平成16年)にずれ込み2009年(平成21年)に竣工しました。
建設省(現国交省)の補助を受けた補助治水ダムで、巨瀬川の洪水調節(最大毎秒270立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給を目的としてしています。
 
ダムの下流はダムの建設残土を埋め立て藤波ダム公園として整備されています。
藤波ダム公園からロックフィル堤体を望む。
実は公園入口からダム直下まで遊歩道が整備され、もっと近い位置からダムを見ることができたんですが。
この日は5月にして気温32度、猛暑に耐え切れずギブアップしてしまいました。

 
右岸から下流面
リップラップは草が侵食しつつあります。


上流面。


左岸の斜樋。
ダムの目的はFNの治水ダムなので、ここでは流入量を取水し、不特定利水と併せて放流します。

 
ダム下は建設残土で盛り土され、広大なダム下公園となっています。
減勢工の導流壁の高さから土が盛られていることがわかるでしょう。
実は山の反対側には農水省施工の合所ダムがあり、その水圧を緩和するための盛土だそうです。


洪水吐斜水路と減勢工。


洪水吐は非常用常用一体のバスタブ型。


右岸の管理事務所と裏手に伸びる繋留設備。


広い天端ですが車両は進入禁止で、徒歩のみ開放。


上流から
総貯水容量は295万立米でうち洪水調節容量は200万立米。
堆砂容量と不特定利水容量95万立米が貯留されています。


斜樋と洪水吐を遠望。


ダム湖畔の落合バス停
愉快なアンパンマンのキャラが勢ぞろいなんですが、これ夜は絶対に怖い。
つーか著作権の許諾は受けてるんだろうか?


(追記)
藤波ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2437 藤波ダム(1856)
左岸 福岡県うきは市浮羽町妹川
右岸      同市浮羽町小塩   
FN
52メートル
295メートル
2950千㎥/2450千㎥
福岡県県土整備部
2009年
◎治水協定が締結されたダム

千倉ダム

2022-06-14 18:00:00 | 大分県
2022年5月25日 千倉ダム

千倉ダムは大分県日田市三和の筑後川水系千倉川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には大分県の事業で1965年(昭和40年)に竣工と記されていますが、現地に由来碑などはなく、ネットでも情報がないため詳細は不明です。
現地を見た限りは農業水利事業やかんがい排水事業ではなく既設の溜池をため池整備事業等で改修した公算が強そう。
また、実情は溜池ですが日田市のため池データベースに記載がないので『農業ダム』と分類します。
管理は山田原土地改良区が行っています。

グーグルの空撮写真を見てわかるように、千倉ダムは地山を挟んで東西二つの堰堤で形成されています。
ここでは便宜的に右手(東側)の堰堤を東堤、左手(西側)の堰堤を西堤と呼ぶことにします。
ダム便覧の位置情報では東堤を主堤としています。


まずはダム下へ
こちらは副堤となる西堤
見た目では堤高15メートル以上あります。


底樋管も西堤にあります。


こちらが天端への入り口
東屋がありかつては公園として整備されたようですが、今は荒れています。
「釣り禁止」と明文されています。


左岸から
手前が主堤である東堤、奥が西堤
水位が異常に低く湖底が露出しています。


左岸わきの越流式洪水吐。


東堤下流面。


小さな地山を挟んで西堤へ
狭いですが車で入ってこれます。
止まっているのは釣り師の車。


西堤上流面
両堰堤ともに上流面は花崗岩できっちり護岸されています。
しかしどこにでもいる、禁止場所で釣りをするバカ。


総貯水容量56万7000立米ですが、水が溜まっているのはこれだけ。
これから灌漑期なんですが大丈夫なのかな?
もしかしたら大規模改修でも始まるのかもしれません。


西堤の奥に取水設備がありました。


湖面に伸びる7本のシャフト
かなりさび付いてますけど大丈夫?


東西二つの堤で形成されたユニークな溜池、できれば満々と水を湛えた姿を見てみたいものです。
帰宅後改めて調べると、訪問直後から大規模な改修工事が着手されるとのこと。
水位が低かったのは工事に備えて水が抜かれていたようです。

2755 千倉ダム(1854)
大分県日田市三和
筑後川水系千倉川
22メートル
94.5メートル
567千㎥/561千㎥
山田原土地改良区
1965年

耶馬溪ダム

2022-06-14 14:00:00 | 大分県
2022年5月25日 耶馬溪ダム
 
耶馬渓ダムは左岸が大分県中津市耶馬渓町大島、右岸が同町柿坂の一級河川山国川水系山移川にある多目的重力式コンクリートダムです。
山国川は九州北東部有数の大河で古くから流域の水源として利用される一方、洪水や干ばつも多く抜本的な治水・利水対策が求められていました。
1970年(昭和45年)に建設省(現国交省)の直轄事業による山移川への多目的ダム建設が採択され1984年(昭和59年)に竣工したのが耶馬溪ダムです 
耶馬溪ダムは国交省九州地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、山国川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、中津市・北九州市・京築水道企業団への上水道用水の供給、田辺三菱製薬への工業用水の供給、大分県企業局耶馬溪発電所(最大1700キロワット)でのダム式発電を目的としています。
大分県内にあるダムですが、福岡県への利水も賄っている点は水不足が慢性化している福岡県の悩みの深さの表れでもあります。
耶馬溪ダム完成直後から山国川河口部に取水堰建設が着手され1990年(平成2年)に竣工、元号から平成大堰と命名されました。

一方ダム建設に合わせてダム周辺の公園整備も進めら、ダム下には記念公園が、湖畔には水上スキーやウェイクボードが楽しめる耶馬溪アクアパークが開設されました。
ダム湖での水上スキースポットは全国初とのこと。

ダム下流から
クレストラジアルゲート3門、オリフィス高圧ラジアルゲート1門、コンジット高圧ラジアルゲート2門のほか利水放流管2条を備えています。
右手の建物はB&G海洋センター。


非常用洪水吐であるクレストゲートと、常用洪水吐であるオリフィス・コンジットゲートの減勢工が導流壁で仕切られているのが特徴です。


天端は車両の通行が可能
右岸堤体直上に繋留設備がありますが、作業船含め4隻の船が繋がれているのは珍しい。


天端から
非常用と常用洪水吐が導流壁で仕切られています。
左下手前が放流設備、奥が大分県企業局耶馬溪発電所。


総貯水容量2330万立米の耶馬溪湖
湖畔各所に公園やレジャー施設が整備されています。


左岸から下流面
対岸に管理事務所がありますが、早朝の訪問のためまだ開いておらずカードゲットならず。


右岸斜面の『やばけい』の植栽
ツツジのようですが、この時期緑に埋もれて判読しづらい。


左岸高台プラント跡は『もみじの丘』として公園化され展望台を兼ねた紅葉スポットになっています。


もみじの丘から俯瞰
右手は名物の噴水設備ですが、これまた早朝のため稼働していません。


低い位置から。


上流から遠望
噴水や曝気装置など様々な水質保全装置が並びます。


ゲートをズームアップ
クレストゲートは佐世保重工、オリフィス予備ゲートは三菱重工、コンジット予備ゲートは田原製作所とメーカーが異なります。
これほど大きなダムのクレストゲートを、当時中堅だった佐世保重工が担うのは珍しいようです。


(追記)
耶馬溪ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2787 耶馬溪ダム(1853)
左岸 大分県中津市耶馬渓町大島 
右岸         同町柿坂 
山国川水系山移川 
FNWIP 
 
62メートル 
313メートル 
23300千㎥/21000千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1984年 
◎治水協定が締結されたダム 

夜明ダム

2022-06-14 08:00:00 | 福岡県
2022年5月24日 夜明ダム
 
夜明ダムは左岸が福岡県うきは市浮羽町三春、右岸が大分県日田市夜明の一級河川筑後川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により、
日本発送電は解体され九州では新たに九州電力が誕生します。
同社は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進め1954年(昭和29年)に完成したのが夜明ダムです。
ここで取水された水は約850メートルの導水路で夜明発電所に送られ、最大1万2000キロワットのダム式発電を行います。
建設途中の1953年(昭和28年)の西日本水害により堤体の大半が決壊、また2017年(平成29年)7月の九州北部豪雨の際にも管理所が流出するなど川の屈曲地点にあるダム故、被災が多いダムです。

右岸ダムサイトから
8門のローラーゲートと2門のシェル型ローラーゲートで筑後川を閉め切ります。


3番ゲートにはフラッシュボードがついています。


左岸に移ります。
ダムの直下で川が左手に大きく屈曲しているため、こちらには河川敷が形成されにより近い位置から見学できます。


赤いトラス製ピアが特徴的。


川が左手に屈曲するため、左岸のゲート2門は越流工が高く且つ径間の広いシェル型ローラーゲートになっています。


赤いトラス製ピアをズームアップ。


アングルを変えて。


どうしてもここに目が行きます。


右岸上流側には取水口や管理所が置かれていますが、国道の交通量が多かったので撮影は自重しました。

(追記)
夜明ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2751 夜明ダム(1852)
左岸 福岡県うきは市浮羽町三春
右岸 大分県日田市夜明
筑後川水系筑後川
15メートル
223メートル
4050千㎥/790千㎥
九州電力(株)
1954年
◎治水協定が締結されたダム

高瀬川ダム

2022-06-13 20:00:00 | 大分県
2022年5月24日 高瀬川ダム
 
高瀬川ダムは大分県日田市高瀬の一級河川筑後川水系高瀬川にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
筑後川上流部への松原ダム下筌ダム建設に発電事業者として参加した九州電力は、松原・下筌両発電所を建設します。
同時に両発電所の放流水を有効利用するため、1973年(昭和48年)に柳又発電所(最大出力6万3800キロワット)および松原発電所放流口直下を取水口とした約13キロの導水路が完成しました。
この導水路と筑後川左支流高瀬川の交差地点に建設されたのが高瀬川ダムです。
ここでは高瀬川から新たに最大68立米/秒の水が取水されるほか柳又発電所の出力調整に伴う取水量の増減を平準化する調整池となっています。

下流から遠望
川が狭くゲート部分だけが見えます。
手前は古い灌漑用取水堰の遺構。


クレストラジアルゲート2門と、向って右手(左岸)に排砂ゲート1門
ダム下は灌漑用の水路橋、向って左手(右岸)から河川維持放流が行われています。


フェンスがあるので、下流はこれが精いっぱい。


ゲートをズームアップ。


ダムサイトの草に覆われた竣工碑。


天端は開放されていますが幅が狭いので通れるのは自転車とバイクくらい。


天端から
水路橋やバルブ類は既得水利権となる灌漑用水用です。
ダム左岸の取水口から必要水量を分水し、左右両岸の灌漑用水路に流します。
水路橋やコンクリートが新しいので近年刷新されたんでしょう。


ダム湖は総貯水容量27万3000立米
高瀬川では発電は行わず、導水路で柳又発電所に送られます。


これは右岸側の農業用バルブ。


右岸から
堤体直上に取水口スクリーンがあります。
管理事務所横の民家も九州電力の所有でかつては職員が常駐、生活していたのかも?


(追記)
高瀬川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2777 高瀬川ダム(1851)
大分県日田市高瀬
筑後川水系高瀬川
25.6メートル
97メートル
273千㎥/240千㎥
九州電力(株)
1973年
◎治水協定が締結されたダム

女子畑第二調整池

2022-06-13 16:00:00 | 大分県
2022年5月24日 女子畑第二調整池
 
女子畑(おなごはた)第二調整池は大分県日田市天瀬町女子畑にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1911年(明治44年)に設立された九州水力電気(株)によって同社初の発電所として1913年(大正2年)に女子畑発電所が完成します。
同発電所は出力1万2000キロワットで稼働を始め、八幡製鉄所をはじめ北九州や福岡向けの送電が開始されましたが、電力需要の拡大を受け2度の出力強化により発電能力は2万9500キロワットまで増強されました。
女子畑第二調整池は発電所の出力増強に合わせ、出力調整に対するバッファとして1931年(昭和6年)に建設されました。
女子畑発電所関連施設は日本発送電及び九州配電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令で新たに誕生した九州電力(株)が事業を継承しています。
また女子畑第二調整池は戦前の貴重な土木遺産としてCランクの近代土木遺産に選ばれています。

残念ながら女子畑第二調整池がある一帯は九州電力の社有地として普段は一般開放されておらず、その姿は上流側からわずかに垣間見るのみです。
グーグルの空撮写真


調整池のある女子畑いこいの森の入口
徒歩での立ち入りは可能ですが、仮に先に進んでもダムの手前に厳重なフェンスがありダムの姿を目にすることはできません。




樹間からわずかに堤体を垣間見るのみ。



2020年(令和2年)に九州在住のダム友さんが、九州電力に申し込み見学会を実現させました。
前回はスケジュールが合いませんでしたが、次回その手のイベントが行われる際はぜひとも参加してみたいと思います。

2774 女子畑第二調整池
大分県日田市天瀬町女子畑
筑後川水系筑後川
34.3メートル
133メートル
392千㎥/113千㎥
九州電力(株)
1931年

大山ダム

2022-06-13 12:00:00 | 大分県
2022年5月24日 大山ダム
 
大山ダムは大分県日田市大山町西大山の一級河川筑後川水系赤石川にある資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1964年(昭和39年)の『筑後川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)採択により、筑後川水系では水資源開発公団(現水資源機構)により河川総合開発が進められることになりました。
同公団は1972年(昭和47年)に筑後川水系小石原川に江川ダム、1978年(昭和53年)に佐田川に寺内ダムを建設しますが、同年発生したいわゆる『福岡大渇水』により福岡市では時間指定断水が287日間に及ぶ異常事態となり、新たな水源確保が緊急課題に浮上しました。
これを受け公団は1983年(昭和589年)に筑後川上流部の右支流赤石川への多目的ダム建設に着手、2007年(平成19年)に本体工事が着工され2012年(平成24年)に竣工したのが大山ダムです。
大山ダムは水資源機構法による多目的ダムで、筑後川流域の各ダムと連携した赤石川および筑後川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、福岡地区水道企業団および福岡県南広域水道企業団への上水道用水の供給を目的としています。

大山ダム独自の特色として放流水の水質保全及び、流入水と放流水の温度差解消のためダム湖上流に取水堰を設けダム湖をバイパスしてダム下流に直接放流する流入水バイパスが設けられています。
流入水バイパスは同じ水資源機構が2021年(令和3年)に建設した三重県の川上ダムでも採用されています。
また、利水放流を活用した大山ダム発電所で最大520キロワットの小水力発電が行われています。

一方大山町が人気アニメ『進撃の巨人』原作者の諌山創氏の出身地であることから、2020年(令和2年)にダム下公園にエレン、ミカサ、アルミンの等身大銅像が設置され、人気観光スポットなっています。

ダム下へ通じる道路を跨ぐ九州電力の水圧鉄管。
松原ダム下流の筑後川から柳又発電所への水圧鉄管で、大山ダムとは水利関係はありません。


ダム下から
堤高94メートル、堤頂長370メートルでクレスト自由越流頂4門、自然調節式オリフィス1門のゲートレス。
造形としてはたいして面白みのないダムです。



こちらが流入水バイパスからの河川維持放流水。


放流設備兼小水力発電所
各種放流ゲート3条を装備し、最大520キロワットの発電を行います。


これが流入水バイパスの鉄管。


エレン、ミカサ、アルミンの実物大銅像
アプリをダウンロードしてダムにかざすとARでダムに巨人が現れます。


左岸から下流面。


繋留設備へのインクライン。


左右非対称の減勢工。

ダム湖は『鳥宿湖』で総貯水容量1960万立米
曝気装置が稼働しています。


天端は徒歩のみ開放
左岸の三角屋根が管理事務所。


左岸高台の大規模農道からダムを俯瞰できます。


(追記)
大山ダムにはには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2802 大山ダム(1850)
大分県日田市大山町西大山
筑後川水系赤石川
FNW
94メートル
370メートル
19600千㎥/18000千㎥
水資源機構
2012年
◎治水協定が締結されたダム

松原ダム(再)

2022-06-13 06:00:00 | 大分県
2022年5月24日 松原ダム(再)
 
松原ダム(再)は左岸が大分県日田市大山町西大山、右岸が同市天瀬町出口の一級河川筑後川本流にある国交省九州地方整備局が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1953年(昭和28年)の西日本水害を契機に『筑後川水系治水基本計画』が採択され、筑後川上流部への松原ダム・下筌ダム建設事業が着手されます。
しかし『蜂の巣城紛争』と呼ばれる13年に渡る激しい反対運動によりダムの完成は大きくずれ込み、1972年(昭和47年)にようやく竣工しました。
松原ダムは国交省が直轄管理する特定多目的ダムで、当ダムの上流3.9キロ地点に同時に建設された下筌ダムと一体運用されています。 
当初は筑後川の洪水調節と九州電力松原発電所(最大1万3000キロワット)でのダム水路式発電を目的としていましたが、1984年(昭和59年)にかけての再開発により有明海の海苔養殖業者向けの不特定利水容量および福岡県への上水道用水容量が追加されました。

ダム下から
ダムを正面から見る場所はありません。
クレストにラジアルゲート4門を装備、両端のゲートは径間が短く放流量の細かな変更が可能です。
また写真では写せませんでしたが、コンジット高圧ラジアルゲート3門を備えています。


左岸から。


堤体左岸側直上の繋留設備と巡視艇。


天端は日田と阿蘇を結ぶ国道212号線が通り、結構な交通量です。
大型車も多く車が途切れたタイミングで天端を歩きます。


ダム下には九州電力松原発電所(最大5万600キロワット)
放流水は川の下をくぐり右岸から導水トンネルで2.3キロ下流に放流されます。


ゲート越しに
発電所手前から河川維持放流が行われています。この設備は河川維持放流義務化の際に後付けされたものです。

4門のうち右端のゲートがフルオープンしておりちょっと珍しい絵柄
奥はダム管理事務所。


上流面
対岸は上流の下筌ダム通じる県道647号線。

水面に顔を出すのはコンジットの予備ゲート。
キャタピラゲートです。


上流から
利水放流は基本発電所を通じ行われます。


上流から遠望
右端のゲートが開いていいます。


上流の梅林橋から
二つのトラス橋とダムの絵は珍しいかも?


(追記)
松原ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2775 松原ダム(元) 
左岸 大分県日田市大山町西大山 
右岸     同市天瀬町出口 
筑後川水系筑後川 
FP 
 
83メートル 
192メートル 
54600千㎥/47100千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1972年 
---------------- 
2773 松原ダム(再)(1849) 
左岸 大分県日田市大山町西大山 
右岸     同市天瀬町出口 
筑後川水系筑後川 
FNWP 
 
83メートル 
192メートル 
54600千㎥/47100千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1984年 
◎治水協定が締結されたダム

下筌ダム(再)

2022-06-11 22:00:00 | 大分県
2022年5月24日 下筌ダム(再)
 
下筌(しもうけ)ダム(再)は左岸が大分県日田市中津江村栃野、右岸が熊本県阿蘇郡小国町黒渕の一級河川筑後川水系津江川にある国交省九州地方整備局が管理する多目的アーチ式コンクリートダムです。
1953年(昭和28年)の西日本水害を契機に『筑後川水系治水基本計画』が採択され、筑後川上流部への松原ダム・下筌ダム建設事業が着手されます。
しかし『蜂の巣城紛争』と呼ばれる13年に渡る激しい反対運動によりダムの完成は大きくずれ込み、1972年(昭和47年)にようやく竣工しました。
下筌ダムは国交省が直轄管理する特定多目的ダムで、松原ダムの上流3.9キロ地点の松原ダム湖直上にあり、両ダムは完成当初から一体運用されています。 
当初は筑後川の洪水調節と九州電力下筌発電所(最大1万3000キロワット)でのダム水路式発電を目的としていましたが、1986年(昭和61年)にかけての再開発により有明海の海苔養殖業者向けの不特定利水容量が追加されました。
また津江川上流に取水堰を設け、自己流域だけでは湛水が賄えない熊本県の竜門ダムへの補給も行われています。

蜂の巣城闘争はその後の公共工事に大きな影響を与え、これを契機に『水特法』が施工されます。下筌ダムはダム建設の在り様の大きなターニングポイントとなった点も考慮し日本ダム協会により日本100ダムに選ばれています。

洪水期に向けて松原ダムの水位が低下する5月~6月のみ、下筌ダム直下まで近づくことができます。
クレストラジアルゲート3門とコンジット高圧ローラーゲート2門というアーチダムらしいゲート配置。
ダム直下で川が左方向に蛇行しているため、コンジットゲートはダムの右岸側(向かって左)に配置されています。


クレストゲートズームアップ。


コンジットゲート。


堤高98メール、堤頂長248.2メートルの本格的アーチ
広角で撮るとどこも似たり寄ったりになるのは致し方ないですね。




右岸の管理事務所から堤体や崖に張り付くようにキャットウォークへと続く階段棟。


天端から減勢工を見下ろす。
エンドシルのすぐ先がもう松原ダム湖。


右岸から超広角で。


コンジットゲートをズームアップ。


天端高欄のダム銘板はダム反対運動を指揮した室原知幸氏の書が使われています。

ダム湖名は反対運動闘争から『蜂の巣湖』と命名されました。


天端は県道12号阿蘇天瀬線になっています。


対岸右手はインクライン、左手は九州電力下筌発電所の取水口。


下筌ダムでは豪雨の際には大量の流木や塵芥を捕捉するため、ダムとしては非常に珍しく自前のゴミ焼却プラントを保有しています。


上流から
クレストゲートの下にはコンジットの予備コースターゲート
訪問時はゲートの点検中で右側のゲートの動作チェックが行われていました。


(追記)
下筌ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2775 下筌ダム(元) 
左岸 大分県日田市中津江村栃野 
右岸 熊本県阿蘇郡小国町黒渕 
筑後川水系津江川 
FP 
 
98メートル 
248.2メートル 
59300千㎥/52300千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1972年 
---------------- 
2797 下筌ダム(再)(1848) 
左岸 大分県日田市中津江村栃野 
右岸 熊本県阿蘇郡小国町黒渕 
筑後川水系津江川 
FNP 
 
98メートル 
248.2メートル 
59300千㎥/52300千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1986年
◎治水協定が締結されたダム

竜門ダム

2022-06-11 18:00:00 | 熊本県
2022年5月24日 竜門ダム
 
竜門ダムは熊本県菊池市竜門の一級河川菊池川水系迫間川にある重力式コンクリート・フィル複合(フィルコンバインド)の多目的ダムです。 
菊池川の治水、流域の菊池台地や玉名平野への灌漑用水源の確保、有明海臨海部への工場集積による都市用水の供給などを目的に1970年(昭和45年)に『迫間川総合開発事業』が採択され、竜門ダム建設事業が着手されました。 
しかし補償交渉が長期化したため本体工事着工は1990年(平成2年)にずれ込み、2001年(平成13年)にようやく竣工しました。 
竜門ダムは国交省九州地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、迫間川および菊池川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、玉名平野及び菊池台地計約6000ヘクタールへの特定灌漑用水の供給、大牟田市・荒尾市・長洲町への上水道用水の供給、大牟田市・荒尾市への工業用水の供給を目的としています。 
また利水放流を利用して竜門ダム発電所で最大2000キロワットの小水力発電を行っています。

菊池ダムは重力式コンクリート・フィル複合ダムとしてはわが国最大規模のダムですが迫間川だけでは4150万立米の貯水池を満たすことはできず、筑後川水系津江川および菊池川本流からそれぞれ最大10立米/秒の補給を受けています。 
一方菊池川本流が水量不足の場合にはダムから最大2.5立米/秒を補給します。

また竜門ダムは国交省による『地域に開かれたダム』の指定を受け、ダム湖の斑蛇口(はんじゃぐち)湖は九州有数のワカサギ釣りスポットとして知られるほか、湖畔には漕艇競技場が設けられ熊本県のボート競技のメッカとなっています。

ダム南西より遠望
ちょうど逆光となってしまいました。
背後には阿蘇外輪山が連なります。

 
ダム下から
堤高99.5メートルは国内フィルコンバインドダム最高を誇ります。
放流設備としてはクレスト自由越流頂10門、常用越流頂1門、コンジットスライドゲート4門、ジェットフローゲート1条を装備


クレスト自由越流頂のうち、コンジットの左手1門だけ越流部が低くこれが常用越流頂となります。
コンジットゲートはRが強調された特徴的なデザイン、ゲートは4門ですが吐出し口は2門。


減勢工左岸にある放流施設群
山鹿の古い街並の土蔵をモチーフにしたデザイン。


左岸から
堤頂長は620メートル
対岸(右岸)にわずかにフィル堤体が見えます。


天端は2車線で車両通行可能。
親柱には竜や鯉の彫刻があり照明も竜をモチーフにしたデザイン。


天端から減勢工を見下ろします。


放流建屋群をズームアップ、まるでミニチュアの街並みのよう。
左手の大きな建屋は竜門ダム発電所、その奥の小さい建屋は農業用ゲート、右手の建屋は九州電力竜門発電所向けゲート。


フィルとコンクリートの接続部。
コンクリート堤体は接続部左岸側で湾曲しています。


上流面
コンジットゲート同様Rのデザインが際立つ選択取水設備、サイズがでかい!

実はフィル堤体は右岸上流側に伸び堤頂長は280メートルに及びます。


上流から遠望
ダム湖の斑蛇口湖は総貯水容量4250万立米
写真には写っていませんが、右手湖岸に市営漕艇場があります。


さすが国交省直轄ダム、見所が多く駆け足でのダム見学でも2時間を要しました。

(追記)
竜門ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2675 竜門ダム(1847)
熊本県菊池市竜門 
菊池川水系迫間川 
FNAI 
GF 
99.5メートル 
620メートル 
42500千㎥/41500千㎥ 
国交省九州地方整備局 
2001年 
◎治水協定が締結されたダム 

立野ダム

2022-06-11 12:00:00 | 熊本県
2022年5月24日 立野ダム
 
立野ダムは左岸が熊本県菊池郡大津町外牧、右岸が同町立野の一級河川白川本流に国交省九州地方整備局が建設中の治水目的の曲線重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)は1979年(昭和54年)より白川へのダム建設実施計画調査に着手し、立野ダム建設事業が採択されました。
しかし公共工事見直し機運が強まる中、2010年(平成22年)に国交省による検討対象ダムとなります。
2013年(平成25年)に改めて事業継続が決定し、2014年(平成26年)より仮排水路工事が着工、そして2018年(令和元年)から本体工事が着手され現在はコンクリート打設が行われています。
立野ダムは普段は貯水池に水を溜めない
流水型治水ダムで、ダム完成の暁には国交省直轄ダムとしては初の流水型治水ダムとして運用が開始される予定です。

建設現場はダム西方に設けられた立野ダム展望台から遠望できます。
建設現場手前に南阿蘇鉄道の橋梁が架かり、インスタ映えするスポットとして知られていますが、ダム愛好家としては橋が邪魔で打設の様子がはっきり見えないのが難。


おまけに朝もやが掛かり逆光という悪条件。


ダムカードフレームには熊本らしく『くまモン』


こちらには阿蘇のカルデラの説明。
世界屈指のカルデラですが、南北の谷の出口は立野ダムが建設されているこの狭い渓谷ただ一つ。
しかも地質は脆く流出しやすい火山堆積物。
大雨が降れば洪水が起きるのは自明の理。



九州という遠い地ですが、完成後に再訪できることを願っています。

2683 立野ダム(1846)
左岸 熊本県菊池郡大津町外牧
右岸        同町立野 
白川水系白川 
 
 
87メートル 
197メートル 
10100千㎥/千㎥ 
国交省九州地方整備局 
1979年~

大切畑ダム

2022-06-11 08:00:00 | 熊本県
2022年5月24日 大切畑ダム
 
大切畑(おおぎりばた)ダムは熊本県阿蘇郡西原村小森の白川水系鳥子川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
起源は江戸末期まで遡り1855年(嘉永7年)に熊本藩主細川斉護の命を受けた布田手永の惣庄屋矢野勘兵衛の手によって築造されました。
その後1975年(昭和50年)に大規模な改修が行われ、ダム便覧はこの改修の竣工を改修年度としています。
下流の水田・畑地約200ヘクタールに灌漑用水を供給する一方桜の名所として知られ、農水省によるため池百選にも選ばれています。

2016年(平成28年)4月の熊本地震により堤体及び洪水吐に亀裂が入り、さらにその後の調査で貯水池を横断する活断層の存在が確認されました。
2018年に農林省の補助を受けた県の大切畑ダム復興事業が採択され、既設ダムの上流237メートル地点への新ダム建設が決まりました。
工事は翌2019年(令和元年)に着工され、2024年(令和6年)の完成をめどに建設が進められています。
 
大切畑ダム復興事務所からはWEB上の情報発信は行われていません。
一方現地の掲示板には災害復旧工事の概要や工事の進捗状況が張り出してあります。
できればこういう情報もHPで発信していただきたいものです。


旧ダム堤体を走っていた県道28号
地震によって洪水吐に架かる橋が落橋するなど長く通行止めでした。
 


旧洪水吐に架かる大切畑ダム橋
地震で落橋しました。


標識の先に復興事務所があります。
訪問時が午前7時過ぎのため事務所はまだ開いてませんでした。
でも工事は始まっていましたが…。


こちらは旧洪水吐
提体と洪水吐に亀裂が入りました。

県道から工事現場を望む
提体は上流に237メートル移設。この間は盛土される予定。

右岸のダム軸。


対岸の法面が左岸のダム軸
仮排水トンネルはすでに完成し2020年(平成2年)12月から転流が行われています。
訪問時は池敷掘削や洪水吐法面施工が行われていました。
また今月(2022年5月)より仮締切の盛り立てが始っています。 


上流側の工事の様子
地質は透水性の高い阿蘇の火山堆積物で形成されるため、上流部全般でブランケット処理が施工される予定。 


2669 大切畑ダム(1845)
熊本県阿蘇郡西原村小森 
白川水系鳥子川 
 
 
23メートル(新ダムは29メートル) 
125メートル(新ダムは237メートル) 
851千㎥/720千㎥ 
西原村 
1975年
2018年復興事業着手
2024年竣工予定