ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

三保ダム

2018-02-20 10:00:00 | 神奈川県
2016年1月16日 三保ダム
2018年2月17日
 
三保ダムは神奈川県足柄上郡山北町神尾田の二級河川酒匂川水系河内川にある神奈川県企業庁が管理する多目的ロックフィルダムです。
高度成長を受けて神奈川県内への人口、事業所の集中は一段と加速し、従来の相模川水系だけでは増加の一途をたどる都市用水需要を賄うことが困難となってきました。
そこで神奈川県は県西部最大河川である酒匂川に着目、建設省の補助を受けた補助多目的ダム建設事業に着手し、1978年(昭和53年)に三保ダムが竣工しました。
三保ダムは酒匂川水系の洪水調節、神奈川県全域への上水道用水の供給、東京発電田ノ入発電所での最大7400キロワットのダム式水力発電を目的としています。
 
三保ダム貯水池の丹沢湖は西神奈川を代表するレクリエーションエリアとなっており、四季を通じて多くの観光客やハイカーが訪れています。
またダム自体もダム下に公園が整備されているほか、堤体を登る道路も歩行者に開放されておりダム湖百選にも選ばれています。
 
県道76号から丹沢湖手前でダム広場への道に入ると正面に三保ダムが姿を現します。
三保ダム最大の特徴はまるで重力式コンクリートダムと見まがうばかりの巨大な洪水吐です。
この写真だけを見れば重力式コンクリートダム以外の何物でもありません。
 
ダム直下の吊り橋から
洪水吐はラジアルゲート4門、右岸に越流高の異なるローラーゲートが1門、一番右岸(向かって左手)寄りに横越流式洪水吐からの放流口があります。
 
 
ダム下公園にはミニチュアのダムや吊橋が作られています。
 
左岸から見た堤体下流面
リップラップには芝生が張られ見た目はアースフィルダム。
 
天端および下流面の道路は歩行者のみ開放されています。
 
天端は緩やかにカーブし上下に畝っています。
 
ここを見るとロックフィルだとわかります。
 
上流面
堤体が緩やかに湾曲。
 
ダム湖の丹沢湖は総貯水容量6490万立米
神奈川を代表するレクリエーションエリアです。
 
減勢工
減勢工の隣には茶畑。
 
ゲート最右岸には非常用洪水吐である横越流式洪水吐があります。
 
ダム下公園に置かれた東京電力田ノ入ダムのゲート巻き上げ機と嵐発電所のライナー。
 
東京発電田ノ入発電所の放流口。
ここは分水工になっていて、右手は嵐発電所の取水口、左手は河川維持放流や常用浮流として河内川に戻されます。
 
芝生が張られアースダムと見紛うような女性的な堤体と、それだけ見れば恰も重力式コンクリートダムのようなスパルタンな洪水吐の対比が非常に美しい三保ダム。
神奈川と言えば宮ヶ瀬ダムの人気が高いですが、個人的には三保ダムの方が好みです。
 
追記
三保ダムには1000万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに522万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0702 三保ダム(0191)
神奈川県足柄上郡山北町神尾田
酒匂川水系河内川
FWP
95メートル
587.7メートル
64900千㎥/54500千㎥
神奈川県企業庁
1978年
◎治水協定が締結されたダム

飯泉取水堰

2018-02-20 02:44:05 | 神奈川県
2018年2月17日 飯泉取水堰
 
飯泉取水堰は神奈川県小田原市の2級河川酒匂川河口から上流に2.3キロ地点にある神奈川県広域水道企業団が管理する上水道目的の可動堰です。
神奈川県の『酒匂川総合開発事業』に上水道事業者として事業参加した神奈川県広域水道企業団の取水堰として1973年(昭和48年)に竣工、翌年から運用が開始されました。
1978年(昭和53年)の三保ダム完成により日量最大156万4300立米の取水が可能となり、県内3カ所の浄水場を経て神奈川県営水道・横浜市営水道・川崎市営水道・横須賀市営水道に上水道用水を供給しています。
1985年(昭和60年)には近代水道の代表的施設として近代水道百選に選ばれました。
 
酒匂川にかかる国道255号線飯泉橋から下流に飯泉取水堰が見えます。
ちょうど日の出時間の訪問となり逆光に取水堰が浮かびます。
手前が上流です。
 
同じく上流から
対岸左手が取水口になります。
 
右岸下流から
管理橋は現在補修工事中
赤いゲートが朝日に映えて鮮やか。
 
洪水吐ゲート8門、土砂吐ゲート1門、計9門のゲートが並びます。
 
今度は左岸下流から
手前のコンクリートの導流堤の間に魚道がありますが、フェンスが邪魔で見えません。
背後には箱根の山越しに富士山も望めます。
 
左岸にある取水設備は立ち入り禁止ですが、定期的に見学会を催しているようです。
機会があればぜひ見学してみたいものです。
 
3078 飯泉取水堰(1246)
左岸 神奈川県小田原市中新田
右岸 神奈川県小田原市扇町四丁目
酒匂川水系酒匂川
MB
5.4メートル
342.5メートル
---千㎥/---千㎥
神奈川県広域水道企業団
1973年

石小屋ダム

2016-02-12 13:00:00 | 神奈川県
2016年2月11日 石小屋ダム

石小屋ダムは宮ケ瀬ダムの直下にある国交省関東地方整備局相模川水系広域ダム管理事務所が管理する多目的重力式コンクリートダムで、宮ヶ瀬ダムと同じ2000年(平成12年)に竣工しました。
宮ヶ瀬ダムの逆調整池のほか、宮ヶ瀬ダムと連携して不特定利水、上水道の供給を目的とするほか、河川維持放流を利用して神奈川県企業庁愛川第二発電所で最大1200キロワットの発電を行っています。
当初ダム便覧では『宮ケ瀬副ダム』で登録されていましたが、2021年(令和3年)の改編で石小屋に変更されました。
 
全面越流式
中央に予備ゲートが見えますのでこの下に発電所への取水口があるんでしょう。
 
越流面
型枠を使った石積風のデザインです。
 
下流から。
 
石積風の堤体のデザインに合わせて天端も凝ったデザインになっています。
 
減勢工
堤体だけじゃなく導流壁も石積風で統一されています。
左岸にあるのは発電所からの放流口です。
 
3243 石小屋ダム(0230)
神奈川県愛甲郡愛川町半原
相模川水系中津川
FNWP
34.5メートル
87メートル
557千㎥/386千㎥
国交省関東地方整備局
2000年

宮ケ瀬ダム

2016-02-12 11:00:00 | 神奈川県
2016年2月11日 宮ケ瀬ダム
 
相模川は神奈川の水源として戦後間もなくから神奈川県による河川総合開発が進められ、1947年(昭和22年)に相模ダム、1970年(昭和45年)に城山ダムが完成しました。
しかし、神奈川県の人口急増や京浜工業地帯の発展による水需要の増加に追い付かず新たな水源の確保が求められました。
一方で相模川流域の本来氾濫原であった地域にも宅地化の波が押し寄せ治水対策の強化が喫緊の課題となっていました。
そこで建設省関東地方建設局は相模川の主要支流である中津川に着目、補償交渉の難航などもあり29年の歳月をかけて2000年(平成12年)に完成したのが宮ヶ瀬ダムです。
宮ヶ瀬ダムは中津川及び相模川中下流の洪水調節、沿岸の既得取水権への補給と河川流量の維持、相模大堰を通じた上水道の供給を目的とするほか、神奈川県企業庁の愛川第一発電所で最大2万4000キロワットの発電を行っています。
またダム湖は道志導水路と津久井導水路により道志川、相模川と結ばれ流域面積は広いものの貯水量に限界のある道志ダム、相模ダム、城山ダムに対し流域面積は劣るものの貯水容量の大きい宮ヶ瀬ダムの特性を生かし連携して水を無駄なく運用できるようになっています。
 
宮ヶ瀬ダムの堤体積は国内の重力式コンクリートダムで第1位、堤高156メートルは浦山ダムと並び第2位、ダム湖の宮ヶ瀬湖の総貯水容量は関東3位の規模を誇り、日本屈指の巨大ダムとなっています。
毎週水曜と第二日曜に行われる観光放流は、今や神奈川を代表する観光イベントになっているほか、ダム下流はあいかわ公園として整備され、ダム湖周辺も多くのレクリエーション施設があり年間を通して多くの観光客が訪れる神奈川有数の観光・レジャースポットになっています。
 
今回は右岸ダムサイトに駐車まずはエレベータで下に下り下流から見学します。
日本有数の巨大ダムを真下から見上げます。
 
下流の石小屋ダムから
右手は津久井導水路の取水口です。
 
クレストは自由越流式
奥に扶壁が見え天端側水路の存在がわかります。
 
名物のインクラインで上に上がります。
 
インクラインから。
 
天端
洪水吐に天端側水路を備えているので非常に広くなっています。
 
天端から
右手は神奈川県企業庁の愛川第一発電所
 
ダム湖(宮ヶ瀬湖)
関東第3位の総貯水容量を誇ります。
奥には丹沢山地主峰の蛭ヶ岳。
 
左岸から
 
上流面
取水口と洪水吐
クレストは天端側水路を備えた自由越流式洪水吐ですが逆光でうまく撮影できませんでした。
 
追記
宮ヶ瀬ダムには4500万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに2592万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0703 宮ヶ瀬ダム(0229)
左岸 神奈川県相模原市緑区青山
右岸   同県愛甲郡清川村宮ケ瀬
下流      同郡愛川町半原   
相模川水系中津川
FNWP
156メートル
375メートル
193000㎥/183000㎥
国交省関東地方整備局
2000年
◎治水協定が締結されたダム

寒川取水堰

2016-02-12 09:00:00 | 神奈川県
2016年2月11日 寒川取水堰
 
寒川取水堰は相模川河口から7キロ地点の左岸高座郡寒川町、右岸平塚市にある神奈川県企業庁が管理する取水堰で、相模川高度利用事業により城山ダムで放流された水の取水設備として1971年(昭和46年)に完成しました。
ここで取水された水は寒川浄水場及び小雀浄水場を経て、横浜市、横須賀市及び神奈川県内広域水道企業団へと給水されています。
 
寒川取水堰からの給水系統図(神奈川県広域水道企業団HPより)
 
 
寒川取水堰のすぐ南に掛かる県道44号線神川橋から取水堰を見下ろすことができます。
左岸に4門のローラーゲート、中央に魚道があり右岸は全面越流式堰堤となっています。
 
左岸に浄水場への取水口があります。
 
バラエティに富んだ魚道。
 
取水堰に近接して見学しようと思いましたがフェンスに阻まれ叶わず。
 
ダムカードが配布されている水道博物館です。
寒川浄水場に隣接しており、旧送水ポンプ場の建物をそのまま博物館として利用しています。
 
3077 寒川取水堰(0228)
左岸 神奈川県高座郡寒川町宮山
右岸 神奈川県平塚市田村
相模川水系相模川
WI
MB
6メートル
270メートル
千㎥/千㎥
神奈川県企業庁
1971年

相模大堰

2016-02-12 07:00:00 | 神奈川県
2016年2月11日 相模大堰
 
相模大堰は相模川河口から12キロ地点の左岸海老名市社家、右岸厚木市岡田にある可動堰で、神奈川県内水道企業団が管理を行っています。
宮ヶ瀬ダムで貯留された水を上水道として取水するために2002年(平成14年)に完成、ここで取水された水は綾瀬浄水場及び相模原浄水場に送られ、神奈川県内水道企業団を構成する各事業体に給水されます。
 
相模大堰からの給水系統図(神奈川県内水道企業団HPより)
 
相模大堰は東名高速のすぐ南の相模川にあり、厚木市中心部から県道601号を南下、相模川河川敷のスポーツ広場の駐車場に車を止めて大堰まで歩きます。
堰本体は立入禁止なので河川敷から堰を見上げるだけです。
3種類のゲートが合計7門ありますが接近できないため、どのゲートがどれかは視認できません。
 
 
堰本体は立入禁止です。
 
右岸の魚道。
両岸に魚道があるようです。
 
左岸の海老名川にポンプ場があり沈砂池などがありましたが今回は見学を見送りました。
機会があればじっくり見てみたいと思います。
 
3252 相模大堰(0227)
左岸 神奈川県海老名市社家
右岸   同県厚木市岡田5丁目 
相模川水系相模川
MB
3.1メートル
293.8メートル
神奈川県内広域水道企業団
1998年

相模原沈でん池

2016-02-12 06:00:00 | 神奈川県
2016年2月11日 相模原沈でん池
 
相模原沈でん池は神奈川県相模原市南区にある横浜市が管理する上水用アースダムで1954年(昭和29年)に建設されました。
相模ダムで発電に使用された放流水は下流の沼本ダムで取水され相模原沈でん池に送られ沈殿処理され浄水場に送られます。
通常沈殿池は浄水場にあり、ダム湖自体が沈殿池として利用されるのは珍しいようです。
 
上流面。
飲料水向けの池なのでフェンスが張り巡らされ厳重に管理されています。
 
貯水池。
たぶん貯水池が建設された1954年(昭和29年)には周りは農地ばかりだったんでしょうが今や宅地の真っ只中です。
 
取水設備。
 
背後は丹沢の山々、左端が大山です。
 
天端と堤体
すぐ下には車道が通っています。
 
0698 相模原沈でん池(0226)
神奈川県相模原市南区下溝
相模川水系横浜市水道
19.5メートル
255メートル
883千㎥/700千㎥
横浜市水道局
1954年
 

大又沢ダム

2016-01-18 09:00:00 | 神奈川県
2016年1月16日 大又沢ダム
 
大又沢ダムは神奈川県足柄上郡山北町中川の酒匂川水系世附川左支流大又沢川上流部にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
落合発電所の取水堰兼調整池として1917年(大正6年)に竣工し、世附川上流本谷で取水された水がいったん大又沢ダムに貯留され、大又沢ダムで取水された水と合わせて落合発電所に送られ最大7000キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
ダムへ通じる大又沢林道は車両進入禁止のため、県道729号線の世附から片道6キロの林道を徒歩でダムへと向かいます。
左岸から
堤体はわずかにアーチ曲線を描いています。
1917年竣工の古いダムですが、堤体は改修されコンクリートになっています。
 
天端は立入禁止
天端を見るとアーチになっていることがよくわかります。
 
ダム湖は透明度が高くまるでルビーのようです。
奥は落合発電所へ導水路取水口です。
 
上流から
自由越流式ゲートが3門と縦長のローラーゲートが2門。
 
ゲートと取水口。
 
右岸には世附川本谷からの導水路吐口があります。
 
堤体直下に下りることができます。
 
堤体はコンクリートになっていますが、導水路の吐口や取水口に石積みが残っているのを見ると、建設当時は堤体も石積みだったと推察できます。
今回は早朝の訪問でダムの眺めはモノトーンでしたので、できれば新緑か紅葉シーズンの日の当たる時間に再訪したいと思います。 
 
0695 大又沢ダム(0190)
神奈川県足柄上郡山北町中川
酒匂川水系大又沢川
18.7メートル
90.4メートル
90千㎥/13千㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1917年

本沢ダム

2015-10-27 13:25:00 | 神奈川県
2015年10月12日 本沢ダム
 
本沢ダムは神奈川県相模原市緑区川尻の境川水系本沢にある神奈川県企業庁が管理する発電目的のロックフィルダムです。
1960年(昭和35年)に着手された『相模川総合開発共同事業』の発電施設として1965年(昭和40年)に竣工しました。
本沢ダムは日本初の大規模純揚水式発電所である神奈川県企業庁城山発電所の上部池として建設され、下部池の城山ダムとの間で最大25万キロワットの純揚水式発電を行っています。
城山発電所は現在日本で唯一地方自治体が運営する純揚水式発電所です。
なお上部池である本沢ダムのダム湖は城山湖、下部池の城山ダムのダム湖は津久井湖で、ダムとダム湖の名前が食い違いちょっと紛らわしい状況です。
 
本沢ダム下流面
芝が張られているため、一見アースに見えますがロックフィルダムです。
 
右岸高台にある城山湖コミュニティー広場から俯瞰。
本沢ダム周辺は南高尾登山コースの一端となっており、休日には多くのハイカーで賑わいます。
また渡り鳥の中継点になっていることからバードウォッチングのメッカとしても知られています。
 
左岸に『しろやま湖』の植栽。
 
天端は歩行者に開放されています。
人通りの途切れたタイミングで撮影しましたが、南高尾の登山・ハイキングコースの一部で、休日はかなりの人通りとなります。
 
貯水池の城山湖は総貯水容量392万7000立米
揚水式発電の運転状況により水位は最大20メートル上下します。
 
この下に揚水式発電取水設備があります。
 
左岸の余水吐。
 
余水吐導流部
自己集水域がほとんどないため、越流することはあまりなさそう。
 
上流面はロック材で護岸。
対岸高台が城山湖コミュニティ広場。
 
秋の午後ですが、発電所が稼働しているため水位は低めです。
 
湖畔では八王子・日野カワセミ会の皆さんが野鳥観察をされていました。
ここは神奈川有数の鳥の渡りの中継地で9月から10月にかけてハチクマやサシバを見ることができるそうです。
またダム湖の対岸ではハヤブサが営巣しているそうです。

0701 本沢ダム(0016)
神奈川県相模原市緑区川尻
境川水系本沢
73ートル
234メートル
3927㎥/3835㎥
神奈川県企業庁
1965年

城山ダム

2015-10-27 10:59:00 | 神奈川県
2015年10月12日 城山ダム
 
城山ダムは神奈川県相模原市緑区城山の一級河川相模川本流中流部にある神奈川県企業庁が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
神奈川県は1938年(昭和13年)に『相模川河水統制事業』を採択し相模川の水資源開発事業に乗り出し、同事業の基幹施設として1947年(昭和22年)に相模ダム ・相模発電所が完成しました。 
しかし高度成長期に入り県内の都市用水や電力需要の増加は留まるところを知らず、加えて相模川中下流域氾濫原での宅地開発が進むに及び、相模川の抜本的治水や新たな利水用水源、発電能力の増強が喫緊の課題となってきました。
この状況に対処するために1960年(昭和35年)に神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀市は『相模川総合開発共同事業』に着手し、1964年(昭和39年)に竣工したのが城山ダムです。
同事業では城山ダムに加え、同ダムと揚水式発電を行う上部池として本沢ダム、新たな用水確保の為の取水堰として相模川下流に寒川取水堰が建設されました。
城山ダムは上記4自治体の共同事業で建設された兼用工作物で、相模川の洪水調節、神奈川県営水道・神奈川県内広域水道企業団および横浜市、川崎市、横須賀市への上水および工水の供給、同ダムを下部池、本沢ダム を上部池とした神奈川県企業庁城山発電所での最大25万キロワットの揚水式発電、神奈川県企業庁津久井発電所でのダム水路式発電を目的としています。 
城山発電所は日本で唯一地方自治体が運営する純揚水式発電所です。

一方2000年(平成12年)の宮ヶ瀬ダム完成に合わせて道志ダムから宮ヶ瀬ダム宮ヶ瀬ダムから城山ダムへの導水路が整備され相模、城山、宮ヶ瀬各ダムの連携による相模川水系の総合運用が可能となりました。 
相模川各ダム間の具体的運用については神奈川県水資開発等概要図をご覧ください。

さてダムの見学に移りましょう
残念ながらダムを下流から正対できるポイントはありません。
左岸の展望台から
ここから見るとクレストゲートは6門のように見えますが、中央2門はダミーでローラーゲートは4門。
 
ダムをまたぐパイプは、上流の横浜水道沈殿池からの横浜水道送水管。
 
天端を国道413号線が通っており、かなりの通行量です。
日本で最も天端交通量の多いダムと言えます。
 
左岸の津久井発電所向け取水ゲート。
 
上流面
ここから見るとゲートが4門だとわかります。
城山ダムは洪水期(6月1日~10月15日)と非洪水期(10月16日~5月31日)で容量配分が変わります。
上流面の白と黒の境界線が非洪水期の常時満水位になりますが、訪問した10月12日はまだ洪水期。10月16日以降はあと4メートル水位が上がります。
 
天端から
取水ゲートの隣に浮桟橋があり巡視艇が繋留されています。
平成27年9月関東・東北豪雨による流木やゴミがすごいことになっています。
 
ゲートと導流部。
 
右岸から。
 
右岸から上流面。
 
ダム湖の津久井湖は総貯水容量6230万立米。
上流の相模湖と並んでこちらもハイキング・登山など・釣りなど神奈川を代表するレジャースポットの一つです。
 
(追記)
城山ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備えて事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。 

0700 城山ダム(0015)
神奈川県相模原市緑区城山 
相模川水系相模川
FWIP
75メートル
260メートル
62300㎥/54700㎥
神奈川県企業庁
1964年
◎治水協定が締結されたダム

相模ダム

2015-10-27 10:21:00 | 神奈川県
2015年10月12日 相模ダム
 
相模ダムは神奈川県相模原市緑区与瀬の一級河川相模川本流にある神奈川県企業庁が管理する上水・工水・発電目的の重力式コンクリートダムです。
首都圏の人口増加や京浜工業地帯の発展を受け神奈川県は県内を縦断する相模川に着目、1938年(昭和13年)に『相模川河水統制事業』を採択し相模川の水資源開発事業に乗り出します。
そしてその中核施設として1947年(昭和22年)に完成したのが相模ダムで、当ダムの完成により県内への都市用水及び発電供給は大きく改善しました。
しかし朝鮮戦争特需を契機に日本は高度成長に突入、県内の用水・電力需要は急増を続けます。
相模ダムでは1954年(昭和29年)に2メートルの嵩上げが実施されるとともに、翌年には支流の道志川からの導水による貯水容量の拡大が図られました。
さらに1965年(昭和40年)には下流9キロ地点に当ダム貯水容量に匹敵する城山ダム、さらに2000年(平成12年)には国交省直轄事業により宮ケ瀬ダムが完成し、ここに相模、城山宮ヶ瀬各ダムの連携による相模川水系の総合運用が可能となりました。
現在の相模ダムは神奈川県・横浜市・川崎市・横須賀市への上水道用水の供給、川崎市への工業用水の供給、、神奈川県企業庁相模発電所(最大出力3万1000キロワット)でのダム式水力発電を目的としています。
相模川各ダム間の具体的運用については神奈川県水資開発等概要図をご覧ください。
また建設から70年以上経過した相模ダムでは各所に老朽化の弊害が顕在化しています。そこで県企業庁は2022年(令和元年)より相模ダムリニューアル事業に着手。
2042年(令和20年)竣工を目指し20年の歳月をかけて抜本的改修を実施します。
 
ダム湖の相模湖は合併前の町名やJRの駅名になるなど認知度が高く、湖面のみならず隣接する遊園地、周辺の登山基地として神奈川を代表するレクリエーションの拠点となっています。
神奈川県では宮ヶ瀬ダム湖と三保ダム貯水池の丹沢湖がダム湖百選に選ばれていますが、相模湖もダム湖百選に
 
国道20号線から。
下の白い屋根は神奈川県企業庁相模発電所で左上は開閉所。
 
クレストにローラーゲートを5門装備
ローラーゲートの向って左隣(右岸側)に細い排砂ゲートがあります。
 
扶壁前面にゲート操作建屋が乗る型式は同じく河水統制事業で建設された向道ダムとの共通点。
ただ相模ダムはピアに管理橋が渡されているので、見た目の印象は異なります。
向かって左手のインクラインはダム下の相模発電所への資材運搬用。
 
上流面。
 
天端は歩行者のみ開放されています。
相模湖周辺のハイキング、登山コースになっており、休日はかなりのハイカーたちが通行します。
 
天端から
右手は相模発電所。
 
導流面
向道ダムは減勢工がすり鉢になっていますが、ここは果たして?
 
ダム湖の相模湖は旧町名やJRの駅名、高速のインターなどにも採用され知名度は抜群。
総貯水容量は6320万立米。
上流の橋は国道412号線相模湖大橋。
 
相模湖大橋から
クレストローラーゲート6門、右手は発電用取水ゲート。
 
取水ゲートをズームアップ。
 
(追記)
相模ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0696 相模ダム(0014)
神奈川県相模原市緑区与瀬 
相模川水系相模川
WIP
58.4メートル
196メートル
63200㎥/48200㎥
神奈川県企業庁
1947年
◎治水協定が締結されたダム

沼本ダム

2015-10-27 09:40:00 | 神奈川県
2015年10月12日 沼本ダム
 
沼本ダムは神奈川県相模原市緑区三井の一級河川相模川本流中流部にある神奈川県企業庁が管理する上水・工水・発電目的の重力式コンクリートダムです。
首都圏の人口増加や京浜工業地帯の発展を受け神奈川県は県内を縦断する相模川に着目、1938年(昭和13年)に『相模川河水統制事業』を採択し相模川の水資源開発事業に着手します。
そして1943年(昭和18年)に同事業初のダムとして建設されたのが沼本ダムで、ここで取水された水は谷ヶ原浄水場と津久井発電所に送られます。
さらに沼本ダムに遅れること4年の1947年(昭和22年)に上流3キロ地点に河水統制事業の中核施設である相模ダム が建設され6320万立米の巨大貯水池が誕生しました。 
これにより沼本ダムは取水ダムに加えて相模ダムと同時に完成した相模発電所の逆調整池と言う役割も担うことになります。 
その後1965年(昭和40年)には当ダム下流5キロ地点に治水機能を持つ多目的ダムで城山ダムが建設されますが、そのダム湖である津久井湖は満水時には沼本ダム堤体直下まで湛水されることになり、沼本ダムは渇水時及び洪水期を除いて堤体の多くを津久井湖に沈めることになりました。
現在の沼本ダムは神奈川県・横浜市・川崎市・横須賀市への上水道用水の供給、川崎市への工業用水の供給、、神奈川県企業庁津久井発電所2号機でのダム水路式発電を目的としています。

相模川各ダム間の具体的運用については神奈川県水資開発等概要図をご覧ください。

津久井湖は洪水期および渇水期のみ下流の津久井湖畔から見ることができますが、通常は右岸高台から俯瞰するのみです。
神奈川県相模原市緑区寸沢嵐の国道413号線寸沢嵐交差点を北に折れ、そのまま突当たりまで進むと眼下に沼本ダムを見下ろすことができます。
訪問時は津久井湖の水位が下がっているせいか比較的しっかりと堤体が見えました。
 
上の写真をトリミングしてみましたがこれが精一杯です。
 
帰宅後調べたところ、沼本ダムは津久井湖畔から下流を見ることができるようで、特に渇水期には普段湖面に沈んでいる堤体の全貌が望めるようです。
機会があれば渇水期に再訪してみたいと思います。

0696 沼本ダム(0013)
神奈川県相模原市緑区三井 
相模川水系相模川
WIP
34.5メートル
126メートル
2330㎥/1534㎥
神奈川県企業庁
1943年

道志ダム

2015-10-27 09:33:00 | 神奈川県
2015年10月12日 道志ダム
 
道志ダムは神奈川県相模原市緑区牧野の一級河川相模川水系道志川中流部にある神奈川県企業庁が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
神奈川県は1938年(昭和13年)に内務省の補助を受けた『相模川河水統制事業』を採択し、相模川の水資源開発事業に着手、戦争による中断ののち1947年(昭和22年)に相模川本流に相模ダム・相模発電所が完成しました。
しかし戦後の復興による都市用水や電力需要の急増を受け、県は新たに相模川支流の道志川から相模湖への導水を図るとともにその落差を利用した発電所建設に着手します。
そして、1955年(昭和30年)に道志川の取水ダムとして建設されたのが道志ダムで、ここで取水された水は流域変更して相模湖へ送られるとともに、導水路途中の神奈川県企業庁道志第1発電所(最大出力1万500キロワット)および第2発電所(最大出力1050キロワット)で水力発電を行います。

一方2000年(平成12年)の宮ヶ瀬ダムのが完成に合わせ新たに当ダムから宮ヶ瀬ダムに至る 道志導水路が新設され、相模城山宮ヶ瀬各ダム連携による相模川水系の総合運用が可能となりました。 
相模川各ダム間の具体的運用については神奈川県水資開発等概要図をご覧ください。

津久井湖から国道413号線を西進し、相模原市緑区青根で県道76号線を進むと道志ダムに到着します。
道志ダムと言う名前から山梨県道志村にあると思われがちですが、所在地は相模原市緑区、『道志川にあるダム』という意です。
 
グリーンのローラーゲート3門を備え、大きなゲートピアはいかにも発電ダムと言った体。
 
ゲートをズームアップ。
扶壁の上に円形のバルコニーが張り出しています。
 
円形のバルコニー
戦前から戦中、昭和20年代のダムに多く見られる意匠。
 
右岸から。
 
 
天端は県道76号線。
 
貯水池は奥相模湖
総貯水容量は152万5000立米ですが、堆砂が進み有効貯水容量は61万6000立米。
奥の山は西丹沢の大室山。
 
洪水吐導流部。
 
維持放流設備
河川法の改正を受けて後付けされました。
 
追記
道志ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0699 道志ダム(0012)
神奈川県相模原市緑区牧野 
相模川水系道志川
32.8メートル
74ートル
1525㎥/616㎥
神奈川県企業庁
1955年
◎治水協定が締結されたダム