ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

五十里ダム

2018-04-26 15:39:00 | 栃木県
2015年10月03日 五十里ダム
2016年12月10日 
2018年 5月 6日
 
五十里ダムは栃木県日光市川治温泉川治の利根川水系鬼怒川左支流男鹿川にある多目的重力式コンクリートダムです。
利根川水系最大支流の鬼怒川は『鬼が怒る』という名が示すように有史以来多数の洪水被害をもたらし、とくに川治温泉で鬼怒川に合流する支流の男鹿川の治水こそが鬼怒川本流の治水のカギを握るとされてきました。
 
男鹿川では内務省直轄の河水統制事業として1941年(昭和16年)より湯西川との合流点にロックフィルダム建設が着手されますが戦争激化で中断。戦後事業を引き継いだ建設省はより地盤が強固な鬼怒川と男鹿川合流点直上への重力式コンクリートダム建設を進め1956年(昭和31年)に五十里ダムが完成しました。
堤高112メートルは当時としては日本最高を誇っていました。
その後1966年(昭和41年)に鬼怒川最上流部に川俣ダム、1983年(昭和58年)に男鹿川合流点直上に川治ダム、2012年(平成24年)に男鹿川右支流湯西川に湯西川ダムが完成し、鬼怒川の治水能力は大きく向上しました。
また堤高100メートル以上の巨大ダムが近接する日本屈指の巨大ダム密集地帯となっています。
五十里ダムは五十里ダムは特定多目的ダム法制定以前に竣工している兼用工作物多目的ダムで、他の3ダムとともに国交省関東地方整備局鬼怒川ダム統合管理事務所により一括管理され4ダム連携のもと鬼怒川の洪水調節を行うほか、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、栃木県企業局川治第1発電所での最大1万5300キロワットのダム水路式発電を目的としています。
 
五十里ダムでは2002年(平成14年)に上流の湯西川運用開始に備えて新たにコンジット放流ゲート2門が増設され、2005年(平成17年)には五十里ダム湖と川治ダム湖である八汐湖の間で連絡トンネルが開削され両ダム一体運用が可能となりました。
さらに2018年(平成30年)完成をめどに五十里ダム堰堤改良事業が行われており選択取水設備の新設と利水放流設備の整備、河川維持放流を利用した水力発電所の増設工事が進められています。
五十里ダムは1950年代を代表する巨大ダムとして日本ダム協会により『日本100ダム』に選定されています。
 
川治温泉から国道121号を北上、九十九折れを登り切ると五十里ダムが見えてきます。
国道121号線沿いの樹木が落葉し、樹間から五十里ダムを見ることができます(2016年12月10日)。
 
クレストの3門のローラーゲートをズームアップ(2016年12月10日)。
 
コンジットから放流されています
このコンジットゲートは日本最初のコンジットゲートといわれています(2016年12月10日)。
 
右岸展望台駐車場から(2016年12月10日)。
 
右岸から上流面。
手前に増設されたコンジットゲートの予備ゲートが2門(2016年12月10日)。
 
ダム湖(五十里湖)
9月の豪雨の影響でまだ水が濁っています。
 
天端(2016年12月10日)。
 
減勢工
右岸の二つの建屋は追加されたコンジットゲートの放流口です。
 
(2016年12月10日)。
 
天端はゲート部分だけクランクしています。
 
ローラーゲート 
 
五十里ダムでは2018年(平成30年)完成をめどに五十里ダム堰堤改良事業が行われています。
同事業では選択取水設備の新設と利水放流設備の整備、河川維持放流を利用した水力発電所の増設が行われます。
選択取水設備の増設工事。
(2018年5月6日)
 
(2018年5月6日)
 
追記
五十里ダムには最大3480万立米の洪水調節容量が設定されていますが、豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに1355万4000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0559 五十里ダム(0002)
栃木県日光市川治温泉川治
利根川水系男鹿川
FNP
112メートル
267メートル
55000㎥/46000㎥
国交省関東地方整備局
1956年
◎治水協定が締結されたダム

川治ダム

2018-04-25 17:16:00 | 栃木県
2015年10月03日 川治ダム
2016年12月10日
2018年 5月 6日
 
川治ダムは栃木県日光市川治温泉川治の利根川水系鬼怒川上流部にある多目的アーチ式コンクリートダムです。
利根川水系最大支流の鬼怒川は『鬼が怒る』という名が示すように有史以来多数の洪水被害をもたらしその治水は古くからの重要課題となっていました。
鬼怒川流域では1956年(昭和31年)に男鹿川に五十里ダムが、1966年(昭和41年)に鬼怒川源流部に川俣ダムが建設され治水能力は大きく向上しました。
しかし、高度経済成長に伴う首都圏の水需要の急増や、流域の氾濫源だった地域での宅地化が進んだことでさらなる利水・治水治水対策が必要となってきました。
そこで建設省(現国交省)は男鹿川との合流点直上の鬼怒川に新たな多目的ダム建設を決め、1971年(昭和46年)より本体工事に取りかかり1983年(昭和58年)に竣工したのが川治ダムです。
川治ダムは特定多目的ダム法により建設され国交省が直轄管理する特定多目的ダムで、川俣ダム、五十里ダム、湯西川ダムとともに国交省関東地方整備局鬼怒川ダム統合管理事務所により一括管理され、鬼怒川の洪水調節を行うほか、安定した河川流量の維持と既得取水権への補給、農業用水、上水道、工業用水の供給を目的としています。
2005年(平成17年)には五十里ダム湖と川治ダム湖である八汐湖の間で連絡トンネルが開削され両ダム一体運用が可能となりました。
川治ダムは堤高140メートルの放物線アーチダムでアーチダムとしては国内第4位の高さを誇るほか、上部で大きくオーバーハングし国内最大の張り出し長を誇っており、日本を代表するアーチダムとして日本ダム協会による日本100ダムに選定されています。
 
下流からの見学ポイントはありませんが、天端を県道23号が走っており堤頂部の見学ポイントは豊富です。 
堤高140メートルのドーム型アーチで堤頂部の張り出しは最大16メートルにも及びます。
放流設備としては非常用洪水吐としてクレストローラーゲート6門、常用洪水吐としてコンジット高圧ローラーゲート2門とジェットフロートゲートを備えています。
 
2度目の訪問はコンジット試験放流に合わせました。(2016年12月10日)。
 
右岸から、右手は管理事務所(2016年12月10日)。
 
コンジット試験放流(2016年12月10日)。
 
 
 
減勢工
正面にジェットフロートゲート、その下から河川維持放流が行われています。


左岸から上流面
手前は選択取水設備。
 
ダム湖を挟んで上流から。
 
左岸のインクラインと艇庫。(2018年5月6日)
 
2度目の訪問は冬期コンジットゲート試験放流の見学となりました。
土日は天端からの見学のみでしたが、迫力ある放流を見ることができました。
 
追記
川治ダムには最大3600万立米の洪水調節容量が設定されていますが、豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに3376万3000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0571 川治ダム(0003)
栃木県日光市川治温泉川治
利根川水系鬼怒川
FNAWI
140メートル
320メートル
83000㎥/76000㎥
国交省関東地方整備局
1983年
◎治水協定が締結されたダム

川俣ダム

2018-04-24 09:48:00 | 栃木県
2015年10月04日 川俣ダム
2016年12月10日
2018年 5月 6日 
 
川治ダムは栃木県日光市川治温泉川治の利根川水系鬼怒川上流部にある多目的アーチ式コンクリートダムです。
利根川水系最大支流の鬼怒川は『鬼が怒る』という名が示すように有史以来多数の洪水被害をもたらしその治水は古くからの重要課題となっていました。
鬼怒川流域では1956年(昭和31年)に男鹿川に五十里ダムが完成、これに次いで1966年(昭和41年)に鬼怒川本流源流部に建設されたのが川俣ダムです。
さらにその後の利水需要増加を受けて鬼怒川下流に川治ダムが、男鹿川右支流湯西川に湯西川ダムが建設されました。
川俣ダムは特定多目的ダム法により建設され国交省が直轄管理する特定多目的ダムで、他の3ダムと国交省鬼怒川ダム統合管理事務所により総合的に管理され、鬼怒川の洪水調節を行うほか、安定した河川流量の維持と既得取水権への補給、東京電力川俣発電所での最大2万7000キロワットのダム水路式発電を目的としています。
川俣ダムは堤頂長131メートルに対して堤高117メートルと日本一縦長のアーチダムとなっています。
またダム直下には狭隘な渓谷である瀬戸合峡の絶景が続き、ダム直下の『瀬戸合峡谷渡らっしゃい吊橋』は人気の観光スポットとなっています。
また2016年(平成28年)には日本ダム協会により日本100ダムに選定されました。
 
川治ダムから県道23号を西進、瀬戸合峡の狭い道を抜けると右手に川俣ダムの標識が現れます。
ダムの手前に駐車場があり、瀬戸合峡遊歩道入口のゲートから遊歩道を約300メートルほど歩くとダムに到着します。
遊歩道を進むと左手にダムが見えてきます。
ゲート操作室は被覆されています。
 
右岸から(2018年5月6日)。
 
ハウエルバンガーバルブから放流され虹が見えます。
堤体直下は工事中です。
 
同じアングルで(2016年12月10日)。
 
 
 
時折雪が吹き付ける生憎の天気
『渡らっしゃい吊橋』は12月~4月まで立ち入りできません(2016年12月10日)。
 
左岸から(2018年5月6日)。
 
総貯水容量8760万立米の川俣湖(2018年5月6日)。
 
右岸の艇庫とインクライン(2018年5月6日)。
 
瀬戸合峡遊歩道を歩いて吊橋に向かいます。
吊り橋からはアーチダムと真正面で対峙できます。
非常用洪水吐としてクレストローラーゲート6門、常用洪水吐としてコンジット高圧ローラーゲート2門とハウエルハンガーバブル1条を装備。(2018年5月6日)
 
コンジットゲートとバルブをズームアップ。(2018年5月6日)
 
瀬戸合峡遊歩道は往復1キロにも満たないショートコースですが、谷底から100メートルの高さの吊橋は迫力満点。
なんといってもダム正面に対峙できるのがうれしいところです。
 
追記
川俣ダムには最大2450万立米の洪水調節容量が設定されていますが、豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに5139万2000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0563 川俣ダム(0005)
栃木県日光市川俣
利根川水系鬼怒川
FNP
117メートル
131メートル
87600㎥/73100㎥
国交省関東地方整備局
1966年
◎治水協定が締結されたダム

以布利川ダム

2018-04-23 02:03:40 | 高知県
2018年3月28日 以布利川ダム
 
以布利川ダム飯降川ダムは高知県土佐清水市加久見の以布利川上流部にある高知県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の小規模ダム事業である生活貯水池事業の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、以布利川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権としての灌漑用水および簡易水道への補給、土佐清水市への新規上水道用水の供給を目的として2005年(平成17年)に竣工しました。
 
自由越流式クレストゲート1門、自然調節式オリフィスゲート1門のシンプルな構造
ぱっと見、農業用コンクリートダムかと思える小さなダムです。
 
2005年(平成17年)竣工と比較的新しいダムですが、堤体はずいぶん汚れています。
 
右岸から。
 
上流面
ゲートはクレスト、オリフィスともに自然調節式
ゲート左手に取水設備があります。
 
減勢工
左手は放流および配水設備。
ちょうど県の職員が巡回に来ています。
 
総貯水容量は35万2000立米。
文字通りの生活貯水池サイズ。
 
天端。
 
対岸に管理事務所がありますが、職員の常駐はありません。
 
上流面。
 
追記
以布利川ダムには16万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合は事前放流によりさらに6万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
3050 以布利川ダム(1332)
高知県土佐清水市加久見
以布利川水系以布利川
FNW
30.5メートル
93メートル
352千㎥/333千㎥
高知県土木部
2005年
◎治水協定が締結されたダム

牛の池田ダム

2018-04-21 02:11:45 | 高知県
2018年3月28日 牛の池田ダム
 
牛の池田ダムは高知県幡多郡大月町弘見の泊浦川水系長沢川にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1965年(昭和40年)に高知県の事業により建設と記されていますが、竣工記念碑等がないためこれ以上の詳細は不明です。
管理は大月町が行っています。
 
下流面は犬走りを挟んで三段構成。
早朝の訪問で、ちょうど堤体に朝日が当たり始めました。
 
下流面
秋に草刈りされたようですっきり。
 
池の直下はかつては水田だったようですが、放棄され草地となっています。
 
天端
左岸に斜樋が見えますが、天端に轍はありません。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
右岸の横越流式余水吐
銀色のパイプがあります。
 
総貯水容量は14万1000立米。
奥の山に風力発電機が並びます。
 
湖面に浮かぶ施設。
フローティング式の取水設備で、ここで取水された水が洪水吐のパイプに続きます。
 
 
左岸に斜樋が見えますが、天端に轍がないことからこの斜樋は使われていないのでしょう。
 
斜樋に代わりフローティング式の取水設備が設置された池としては、同じ大月町の宮ノ越ダムや山口県長門市の門前堤などがあります。
 
2295 牛の池田ダム(1330)
ため池コード 394240001 
高知県幡多郡大月町弘見
泊浦川水系長沢川
20.1メートル
105メートル
138.2千㎥/138.2千㎥
大月町
1965年

中筋川ダム

2018-04-19 15:19:29 | 高知県
2018年3月27日 中筋川ダム
 
中筋川ダムは高知県宿毛市平田町黒川の四万十川水系中筋川にある重力式コンクリートダムです。
国交省四国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、中筋川の洪水調節、既得取水権としての灌漑用水への補給と安定した河川流量の維持、四万十市・土佐清水市・大月町・三原村への灌漑用水の供給、宿毛市への上水道用水の供給、高知西南中核工業団地への工業用水の供給を目的として1998年(平成10年)に竣工しました。
その後2019年(平成31年)に支流の横瀬川に横瀬川ダムが竣工し、中筋川流域での治水、利水は格段に向上しました。
 
中筋川ダム建設に際しては景観設計が採用され、階段状の下流面、左右対称のデザイン、ポールのないスッキリとした天端など周辺環境にマッチしたデザインとなっています。
さらに開かれたダムとして、地元自治体と共同でダム周辺の公園整備が進められました。
 
ダム下から見上げると余所では見られない特徴なデザインに目が奪われます。
クレストには自由越流式洪水吐、その下にはオリフィスゲートが2門が並びます。
実はオリフィスは左右それぞれ越流高が異なりますが、それを感じさせない左右対称のデザインです。
 
ダム下の桜は満開、端正なダムに色を添えます。
 
越流面をズームアップ。
階段状のデザインは越流水を減勢させる効果もあります。
 
下流面
階段のステップは75センチ、最大85段に及びます。
土木屋さん泣かせの施工、まあバブル期に着手されたダムならではですね。
 
天端は車両の通行ができます。
照明は高覧照明を採用しポールのないすっきりとした天端になっています。
 
減勢工
左右のオリフィスゲートの越流高が異なることから、導流壁やフーチングの形状は微妙に異なります。
 
右岸から
どこから見ても端正でハンサムな姿。
 
左手はエレベーター棟、右手は水位計棟
天端下には洗浄用の放水ノズルがあり、洗浄放水時は階段状の堤体を水が美しく流下するそうです。
 
上流面。
 
右岸ダムサイトに管理事務所が、事務所裏手に艇庫とインクラインがあります。
 
毎年5月6月にはダム湖にホタルが舞い蛍湖祭りが実施されます。
祭りに合わせて洗浄放水が行われるそうです。
機会があればぜひ美しい放水を眺めてみたいものです。
 
追記
中筋川ダムには860万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに113万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2328 中筋川ダム(1329)
高知県宿毛市平田町黒川
四万十川水系中筋川
FNAWI
 
73.1メートル
217.5メートル
12600千㎥/12000千㎥
国交省四国地方整備局
1998年
◎治水協定が締結されたダム

山の神池

2018-04-19 12:35:30 | 愛媛県
2018年3月27日 山の神池
 
山の神池は愛媛県南宇和郡愛南町広見の惣川水系左支流(河川名未確認)源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1963年(昭和38年)に岡の駄馬水利組合により竣工と記されており、現在も同水利組合が管理を行っています。
リアス式海岸が続く南予地区では広範な水田が広がる場所は限られていますが、愛南町広見地区は盆地に水田が広がり大小20基近い溜池が密集しています。山の神池はその一つです。
 
 
堤体下から
堤高17.5メートルとなっていますが見た目は微妙・・・・。
 
天端は車道。
 
右岸の小さな洪水吐。
 
洪水吐導流部はトンネル式。
 
上流面。
 
総貯水容量は12万3000立米。
周りには同規模の溜池がいくつも並んでします。
 
池周辺の桜は満開。
 
右岸の取水設備。
 
こちらの取水設備も現役のようです。
 
山が海岸まで迫り広大な水田地帯はほとんど見かけない南予地区ですが、わずかな平たん地を開拓して水田を作った先人たちの苦労が偲ばれる溜池でした。
 
2255 山の神池(1327)
ため池コード
愛媛県南宇和郡愛南町広見
DamMaps
惣川水系惣川
17.5メートル
76メートル
123千㎥/123千㎥
岡の駄馬水利組合
1963年

大久保山ダム

2018-04-19 00:54:01 | 愛媛県
2018年3月27日 大久保山ダム
 
大久保山ダムは愛媛県南宇和郡愛南町緑甲の僧都川水系大久保川源流部にある灌漑・上水道用水目的のアースフィルダムです。
愛南町が位置する南予地区は瀬戸内沿岸に比べれば降水量は多いものの降雨は夏季に集中し、また大河がなくリアス式海岸が続くという地理的特性から沿岸部を中心に慢性的な水不足に悩まされてきました。
特に1967年(昭和42年)の大干ばつは7月上旬から90日も雨がないという苛烈なもので、一帯農家はもちろん上水道でも断水が続き甚大な被害をもたらしました。
この事態を受け、愛媛県は農水省の補助を受けたかんがい排水事業を採択し灌漑目的のダム建設を決定、さらにこの事業に当時の御荘町・一本松町・西海町によって設立された南宇和上水道企業団(現愛南町水道課)が事業参加し1979年(昭和54年)に竣工したのが大久保山ダムです。
大久保山ダムはかんがい排水事業に合わせて設立された大久保山土地改良区向けの灌漑用水、当時の御荘町・城辺町・一本松町・西海町によって設立された南宇和上水道企業団(現愛南町水道課)向けの上水道用水の水源となっています。
なお大久保山ダムの堤高55.8メートルはアースダムとしては熊本県の清願寺ダムに次いで全国第2位の高さを誇るとともに、洪水吐導流部は全長425メートルと全国のフィルダムの中でも屈指の長さとなっています。
 
愛南町中心部から県道64号を北上すると、梶郷上集落に大久保山ダムを示す小さな案内板があります。
これに従って右手の枝道に入り大久保川沿いの隘路を3キロほど進むと左手に大久保山ダムの大きな下流面が見えてきます。
堤高55.8メートルはアースダムとしては全国第2位の高さ。
 
左岸の洪水吐導流部
全長425メートルとこれまたビッグサイズ。
 
横越流式洪水吐。
 
 
上流面はロック材で護岸されています。
 
天端から下流面
谷間を埋める逆三角形で、途中に地山が残っています。
 
広い天端。
 
総貯水容量は75万立米。
正面に取水塔が見えます。
 
取水塔
管理橋はトラス。
 
上流から
貯水池周辺の桜が満開でした。
 
アースダムとしては日本第2位の高さを誇ります。
天端から見てもその高さは実感できましたが、できればダム下から見上げてみたいものです。
 
2270 大久保山ダム(1326)
愛媛県南宇和郡愛南町縁甲
僧都川水系大久保川
AW
55.8メートル
170メートル
750千㎥/700千㎥
大久保山土地改良区
1979年

坂本ダム

2018-04-18 17:19:57 | 高知県
2018年3月27日 坂本ダム
 
坂本ダムは高知県宿毛市橋上町坂本の松田川本流上流部にある高知県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、松田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、利水放流を利用した四国電力坂本発電所での最大1100キロワットのダム式水力発電を目的として2000年(平成12年)に竣工しました。
 
ダム下からダムが見えますが、両岸に阻まれ全体を見ることはできません。
 
ダム左岸の道路からダムの全容が望めます。
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲート11門、常用洪水吐として自然調節式オリフィスゲート2門のほか低水放流設備1条を備えています。
 
天端から
堤趾導流壁から続く背の高い導流壁とがっちりしたエンドシル。
左手は河川維持放流を利用した四国電力坂本発電所。
 
ダム湖はどんぐり湖。
総貯水容量1815万立米と県ダムの貯水池としてはかなりの規模です。
 
天端は車両通行可能
左手にロッジ風の管理事務所があります。
 
波返しのついたガッツリ系の堤趾導流壁。
 
左岸には建設工事で使われたケーブルクレーンの遺構が残っています。
 
クレストゲートの越流部は上流側にセットバック。
 
上流面
ダム中央にエレベータ棟、オリフィスゲート2門を挟んで取水設備。
 
上流から
管理事務所裏手から高ーーいインクラインが伸びています。
 
追記
坂本ダムには1437万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに173万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2325 坂本ダム(1325
高知県宿毛市橋上町坂本
松田川水系松田川
FNP
60.3メートル
193.5メートル
18150千㎥/16100千㎥
高知県土木部
2000年
◎治水協定が締結されたダム

山財ダム

2018-04-18 15:35:40 | 愛媛県
2018年3月27日 山財ダム
 
山財(さんざい)ダムは愛媛県宇和島市津島町山財の岩松川上流にある愛媛県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、岩松川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、旧津島町への灌漑用水と上水道用水の供給を目的として1980年(昭和55年)に竣工しました。
 
左岸を県道319号が通り、ダムサイトに管理事務所と駐車場があります。
これは左岸から
ダムを下流から見れる場所はありません。
 
クレストにはローラーゲートを2門装備。
ゲート越しにみた導流面と減勢工です。
岩松川下流に上水道の取水堰があるため、利水放流はかなり多め。
 
利水放流
ローラーゲートの導流部の右側に導流壁を挟んでもう一つ導流部があります。
これは自然調節式のオリフィスゲートの導流部です。
 
左岸の艇庫とインクライン。
 
天端。
 
右岸から
正面が管理事務所。
 
ダムカードを貰いに事務所に行きダムを下から見れる場所はありませんか?と伺うとなんとなんと監査廊とダム下に案内していただけました。
感謝、感謝!
 
ダム下に降りてわかりましたが、クレストのローラーゲートのほかに高圧ラジアルゲートのコンジットがあります。
目の前がコンジットゲート操作室。
 
下流面とフーチング。
 
上流から
ここから見るとゲート構造がよくわかります。
左から取水設備、ローラーゲート2門と間にコンジットゲートの予備ゲート、さらに右手にオリフィスゲートがあります。
 
ダム湖(鷺里湖)は総貯水容量650万立米。
湖畔の桜が満開。
 
今回は職員さんのご厚意で監査廊とダム下に立ち入ることができました。
昭和50年代施工ということでゲートと自然調節式ゲートが混在したコンクリートダムです。
 
追記
山財ダムには406万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに72万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2273 山財ダム(1324
愛媛県宇和島市津島町山財
岩松川水系御代の川
FNAW
64メートル
205メートル
6500千㎥/5900千㎥
愛媛県土木部
1980年
◎治水協定が締結されたダム

須賀川ダム

2018-04-18 14:24:12 | 愛媛県
2018年3月27日 須賀川ダム 
 
須賀川ダムは愛媛県宇和島市柿原の須賀川本流中流部にある愛媛県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、須賀川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への補給補給、宇和島市への上水道の供給を目的として1975年(昭和50年)に竣工しました。
 
宇和島市中心部から国道320号線を東に進むとすぐに須賀川ダムに到着します。
下流から
クレストにラジアルゲート2門、コンジットに高圧ラジアルゲート1門を装備したいかにも昭和40年代着工の県営ダムといった風です。
須賀川沿いの桜はちょうど満開を迎えていました。
 
ダム下への接近はここが限度。
 
ダム湖畔が公演のため天端は車両が通行できます。
 
下流面。
 
導流部と減勢工。
 
ダムは宇和島市街そばにあり、文字通り『宇和島の守り神』です。
 
ダム湖右岸は公園になっており湖畔の桜は満開。
 
ダム湖(若山湖)は総貯水容量305万立米。
周辺の山桜も満開です。
 
左岸を国道が通り、ダムサイトに管理事務所と艇庫、インクラインが並びます。
 
上流面
クレストゲートの間にコンジットの予備ゲートがあります。
 
追記
須賀川ダムには150万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに22万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2268 須賀川ダム(1323
愛媛県宇和島市柿原
須賀川水系須賀川
FNW
40.2メートル
159.5メートル
3050千㎥/2930千㎥
愛媛県土木部
1975年
◎治水協定が締結されたダム

竜沢寺池

2018-04-18 13:03:28 | 愛媛県
2018年3月27日 竜沢寺池
 
竜沢寺池は愛媛県西予市城川町魚成の肱川水系魚成川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧にはダム事業者により1955年(昭和30年)に竣工と記されており、農林省(現農水省)・県の補助を受けた団体営事業で建設されたと思われます。
池の管理は城川町土地改良区が行っています。
竜沢寺は14世紀初頭に創基され禅宗の名刹で、3700坪の広大な敷地に桃山様式の伽藍を配しており池は寺の奥に位置しています。
池周辺はキャンプ場やバンガロー、バーベキューハウスなどを備えた竜沢寺緑地公園となっており、竜沢寺ともども南予の観光スポットの一つです。
 
庭園の先に竜沢寺池の堤体が見えます。
非常に美しい眺めなのですが、生憎の逆光。
 
堤体左岸から流下する洪水吐導流部。
 
天端は車両通行可能。
 
左岸の横越流式洪水吐。
 
 
上流面は谷積の石で護岸されています。
 
総貯水容量は10万立米。
 
天端から。
 
花が美しい竜沢寺山門。
 
枝垂れ桜も満開。
 
竜沢寺の庭園の桜も、緑地公園の桜もほぼ見ごろ
素晴らしい環境にある竜沢寺溜池でしたが、生憎の逆光でうまく撮影できなかったのが至極残念。
 
2249 竜沢寺池(1322)
ため池コード
愛媛県西予市城川町魚成
DamMaps
肘川水系魚成川
22.3メートル
99メートル
100千㎥/100千㎥
城川町魚成土地改良区
1955年

東蓮寺ダム(東蓮寺池)

2018-04-18 01:45:18 | 愛媛県
2018年3月27日 東蓮寺ダム(東蓮寺池)
 
東連寺ダムは愛媛県宇和島市吉田町沖村の立間川水系河内川上流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
農水省の南予用水農業水利事業で既存の東蓮寺池を再開発し1996年(平成8年)に竣工しました。
南予用水土地改良区連合が受託管理し、宇和島市の旧吉田町一帯の果樹園に灌漑及び防除用水を補給しています。
なおダム便覧では東蓮寺池となっていますが、管理者は東蓮寺ダムの名称を使用しているのでここでも東蓮寺ダムと記すことにします。
 
下流から、
愛媛らしくダム下もミカン農地です。
 
右岸高台から
堤体に芝が張られ、一見アースに見えますがロックフィルです。
ダム周辺の桜はちょうど満開。
 
ダム下も整備され桜が植えられています。
左奥の白い建物は揚水機場です。
 
貯水池を周回する道路があり、天端も車両通行可です。
 
上流面
こちらを見るとロックフィルダムとわかります。
左岸に洪水吐と管理事務所があります。
 
斜樋。
 
下流面
どう見てもアースフィルダム。
 
横越流式洪水吐。
 
 
国営事業で整備されて20年、非常にきれいに整備されており宇和島周辺のミカン農地にとっては貴重な水源であることが分かります。
桜も満開、いい時期に訪問できました。
 
2277 東蓮寺ダム(東蓮寺池)(1321
愛媛県宇和島市吉田町沖村
立間川水系高畑川
38.1メートル
170メートル
963千㎥/954千㎥
南予用水土地改良区連合
1996年 

野村ダム

2018-04-17 16:28:31 | 愛媛県
2018年3月26日 野村ダム 
 
野村ダムは愛媛県西予市野村町野村の一級河川肱川水系肱川本流にある重力式コンクリートダムです。
大河のない愛媛県南予地方では古くから用水確保は困難をきたし少雨のたびに干ばつ被害や断水が発生しました。特に1967年(昭和42年)には7月上旬から90日も雨がないという異常事態となり安定した水源確保が強く迫られることになります。
肱川では1958年(昭和33年)に鹿野川ダムが建設されていましたが、利水容量を持たない治水ダムでした。そこで建設省は1971年(昭和46年)に肱川上流部への新たな多目的ダム建設事業に着手、これに農水省や南予水道企業団が事業参加してダム建設が進められ、1981年(昭和56年)に竣工したのが野村ダムです。
野村ダムは国交省四国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、下流の鹿野川ダムと連携した肘川の洪水調節、農水省の南予用水農業水利事業により整備された水路を通じて宇和島市、八幡浜市、西予市、伊方町の3市1町の約7200ヘクタールの樹園地への灌漑用水の供給、同用水を利用し南予水道企業団向けの上水道用水の供給を目的としています。
野村ダムは有効貯水容量1270万立米のうち、特定灌漑容量が1020万とその大半を占めており文字通り南予の水がめと言っても過言ではありません。
またダム完成にともなって出現したダム湖は『朝霧湖』と命名されダム湖100選に選ばれています。
 
その後鹿野川ダム再開発事業で同ダムの洪水調節容量が大幅に増強され、また防災ダムとして山鳥坂ダムの建設が進められています。
一方で2018年(平成30年)の平成30年7月豪雨においては野村ダム、鹿野川ダム双方で過去最大規模の流入量を記録し貯水容量が満水位に到達、これに対応した異常洪水時防災操作(緊急放流)により西予市野村地区及び大洲市で死者9名、浸水家屋3500戸という甚大な洪水被害が発生しました。
この件により緊急放流時の地域への告知方法の見直しが大きな議論になるとともに、緊急災害時において既存ダムの事前放流による洪水調節容量の確保、いわゆる『ダムの事前放流に関する治水協定』が全国各ダムで締結されるきっかけとなりました。
 
 
ダム直下へは立ち入りできず下流の写真はこれが限界。
クレストにラジアルゲート2門、コンジットに高圧ラジアルゲート1門を備えるほか、利水放流管1条があります。
 
左岸から。
 
天端は車両通行可能。
 
国交省直轄ダムらしく周辺は非常によく整備されています。
右岸に『のむらダム』の植栽、ダム周辺の桜は満開。
 
減勢工と放流管
河川維持放流が行われています。
 
ダム湖(朝霧湖)は総貯水容量1600万立米。
ダム湖百選に選ばれています。
 
左岸の艇庫とインクライン。
 
上流から
選択取水設備とゲート
クレストゲートの間にコンジットの予備ゲートがあります。
訪問時は満水状態でした。
 
右岸から俯瞰
ダム湖一帯が公園になっています。
湖面に浮かぶフロートは目的が分かりません。
 
 
追記
野村ダムには350万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに411万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2274 野村ダム(1320
愛媛県西予市野村町野村
肘川水系肘川
FAW
60メートル
300メートル
16000千㎥/12700千㎥
国交省四国地方整備局
1981年竣工
◎治水協定が締結されたダム

山鳥坂ダム

2018-04-17 14:37:48 | 愛媛県
2018年3月26日 山鳥坂ダム 
 
山鳥坂(やまとさか)ダムは愛媛県大洲市肱川町山鳥坂の肱川水系川辺川に国交省四国地方整備局が2026年(令和8年)竣工を目指して建設工事中の治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)により肱川水系3番目の多目的ダムとして1986年(昭和61年)に事業着手されますが、激しい反対運動に加えて経済状況の変化を受け水道事業者として事業参加していた松山市の離脱などがあり、2010年(平成22年)に国交省による検討対象ダムとなりました。
結局特定多目的ダム法にに基づく基本計画は破棄され、2013年(平成25年)に洪水調節と不特定利水を目的とする治水ダムとし事業が継続することになりました。
 
訪問時、本体工事は全くの手つかずで道路の付け替え工事が着手されたばかり。
県道55号線の付け替え工事。
 
 
 
1986年(昭和61年)の事業着手から32年、ようやく本格工事へ進み出した山鳥坂ダムですが、本体に手がかかるのはまだまだ先のようです。
 
2944 山鳥坂ダム(1319
愛媛県大洲市肱川町山鳥坂
肘川水系河辺川
FN
103メートル
282メートル
24900千㎥/23200千㎥
国交省四国地方整備局
2026年竣工予定