ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

川原子ダム

2023-12-27 17:00:22 | 宮城県
2016年 9月11日 川原子ダム
2023年11月 3日
 
川原子ダムは宮城県白石市福岡八宮の一級河川阿武隈川水系白石川左支流青沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
白石川左岸段丘に位置する旧福岡村では17世紀初頭に青沢の湧水を水源とした川原子堰用水路を開削し約400へクタールに及ぶ新田が開拓されました。
しかし水量が乏しく渇水による干ばつが頻発し安定した水源確保は福岡地区永年の悲願となっていました。
昭和初頭より貯水池築造機運が高まり、1944年(昭和19年)に当時の福岡村営事業としてダム建設が着手されますが、戦争激化により中断。
1951年(昭和26年)に県営事業により再着工されますが、基礎地盤が悪く漏水対策に時間を要し1969年(昭和44年)にようやく川原子ダムが竣工しました。
運用開始後は白石市が管理を受託し同市福岡地区約450ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
その後2001年(平成13年)に県のため池等整備事業で改修が行われ現在に至っています。

川原子ダム周辺は水源地の環境を守るため『不伐の森』(伐採をしない森)として保護され豊かな自然が残されています。
ダム湖をめぐる一周5.4キロの散策路が整備され春秋には多くのハイカーが訪れる憩いの場となっています。
川原子ダムには2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)11月に再訪しました。
掲載する写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
ダム湖周辺は散策路が整備されており、ダム入り口には駐車場と清潔な公衆トイレが設置されています。
ダムの入り口。
(2023年11月3日)

 
左岸の横越流式洪水吐。
(2023年11月3日)

 
初回訪問時は直前にまとまった雨があり越流していました。
(2016年9月11日)

 
洪水吐導流部。
(2023年11月3日)

事業説明版。
(2023年11月3日)

 
完成記念碑。
(2023年11月3日)

 
川原子ダムは宮城蔵王三十六景に選ばれています。
奥の山は南蔵王の主峰、不忘山。
(2023年11月3日)

 
堤体はススキに覆われています。
意図して草を刈らないのかも?
(2023年11月3日)

 
天端は舗装され車両通行できます。
ただし対岸から先はかなり荒れたダートの林道。
(2023年11月3日)

 
上流面はロック材で護岸。
(2023年11月3日)

 
左岸の斜樋
再訪時は灌漑期が終わったこともあり、斜樋の大半が顔を出しています。
(2023年11月3日)


初訪時は満水でした。
(2016年9月11日)

 
ススキに覆われていますが、ダム下に続く階段があります。
立ち入り禁止の表記はありませんでしたが、草が深く自重。
(2016年9月11日)

 
総貯水容量は233万3000立米。
本州の農業用アースフィルダムとしてはかなり大規模。
風がなければ湖面に蔵王が映るのですが・・・・。
(2023年11月3日)

揚水技術のない時代、大河の段丘上はどこも目の前の水を指をくわえて眺めるのみ。
そんな中、遥か高所に水源を求めた先人たちの意地ともいえる川原子ダムです。
 
(追記)
川原子ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0296 川原子ダム(0556)
宮城県白石市福岡八宮
阿武隈川水系白石川左支流青沢川
20メートル
121メートル
2333千㎥/2150千㎥
白石市
1969年
◎治水協定が締結されたダム

小田川水源地取水堰堤(参考掲載)

2017-05-30 10:30:00 | 宮城県
2017年5月28日 小田川水源地取水堰堤
 
小田川水源地取水堰堤は宮城県角田市小田の阿武隈川水系小田川にある角田市が管理するの上水道目的の表面石張玉石コンクリート堰堤です。
1934年(昭和9年)に当時の角田町によって建設され、竣工当時の堰堤がそのまま残っており、Cランクの近代土木遺産に選定されています。
堤高5.67メートルとダムの要件を満たしていませんが、戦前の貴重な土木遺産ということでダム便覧に参考掲載されています。
現在も現役で稼働しており下流にある浄水場を通じて角田市小田地区に上水道用水を供給しています。
 
角田市中心街から県道105号線を南下し、小田地区に入ります。浄水場をやり過ごしてさらに進むと左手に小田川水源地取水堰堤が現れます。
想像以上に小さな堰堤で左岸に取水用のハンドルが並びます。
 
関知石を布積みしています。
堤体下部に穴があり排砂口と思われます。
 
小さな堰堤で貯水池も池と呼ぶのさえおこがましいサイズですので、雨でも降ればすぐに越流するんでしょう。堤頂部は泥で汚れています。
 
取水口
ここで取水した水は下流の浄水場を経て小田地区に供給されます。
 
S013 小田川水源地取水堰堤(参考掲載)(1007)
宮城県角田市小田
阿武隈川水系小田川
5.67メートル
12.37メートル
角田市
1934年

釜房ダム

2017-05-29 20:00:00 | 宮城県
2016年4月  9日 釜房ダム
2017年5月27日
 
釜房ダムは宮城県柴田郡川崎町小野の一級河川名取川水系碁石川にある多目的重力式コンクリートダムです。
1940年(昭和15年)に仙塩工業地帯建設計画の一環として当地へのダム建設計画が立案されますが、戦争激化により事業はいったん中断します。
戦後、名取川の治水に加え東北の中枢として発展著しい仙台地区への都市用水水源確保が喫緊の課題となり、改めて釜房ダムが着目されます。
1964年(昭和39年)に建設省(現国交省)直轄事業によるダム建設が着手され、1970年(昭和45年)に釜房ダムが竣工しました。
釜房ダムは国交省東北地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、碁石川および名取川の洪水調節、流域既得灌漑用水への補給と安定した河川流量の維持、仙台市など3市1町への上水道用水の供給、仙台湾沿岸工業地帯への工業用水の供給、東北電力釜房発電所(最大1300キロワット)でのダム式発電を目的としています。
とりわけ仙台市の上水需要の3割超を釜房ダムで賄っており、文字通り『仙台の水ガメ』となっています。
一方完成当初よりダム湖の釜房湖湖岸の環境整備が進められ、1989年(平成元年)には国営みちのくの湖畔公園が開設されるなど宮城県を代表するレクリエーションエリアとなっており釜房湖はダム湖百選にも選ばれています。

左岸下流側から
堤高は45.5メートルとさほど高くありませんが、水を支えるという重厚感が伝わってきます。
 
同じアングルで5月の新緑時に撮ってみました。(2017年5月27日)
 
同じ場所から広角で。
減勢工が大きい。
(2017年5月27日)
 
ゲート操作室。
 
IHIのガントリークレーン。
 
天端は車道で北向き一方通行。
 
取水棟。
 
直下に発電所。
 
湖畔の桜は8分咲き。
 
下流は立入禁止のため国道から
桜は見ごろ
霞んでいなければ蔵王の山並みもはっきり見えたのですが・・・。
 
 
追記
釜房ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0297 釜房ダム(0302)
宮城県柴田郡川崎町小野
名取川水系碁石川
FNWIP
45.5メートル
177メートル
45300千㎥/39300千㎥
国交省東北地方整備局
1970年
◎治水協定が締結されたダム

七ヶ宿ダム

2016-09-12 16:45:15 | 宮城県
2016年9月5日 七ヶ宿ダム
 
阿武隈川水系は中流部の福島県中通地域と下流部の宮城県白石市・角田市でたびたび洪水被害を引き起こし、抜本的な洪水対策を求める声が高まりました。
一方東北の中心都市として発展著しい仙台周辺では人口増や産業発展に伴う水需要の増加が続き、新たな水源を確保する必要性がでてきました。
そこで建設省は阿武隈川を1級河川に指定するとともに多目的ダムによる河川総合開発事業に乗り出し、1991年(平成3年)に阿武隈川の主要支流である白石川に竣工したのが七ヶ宿ダムです。
七ヶ宿ダムは大滝根川の三春ダム、摺上川の摺上川ダムと連携して阿武隈川水系の洪水調節を行うほか、慣行水利権分の用水補給と安定した河川流量の維持、仙台平野への農業用水補給、宮城県内7市10町への上水道の供給、仙台湾沿岸工業地域への工業用水の供給を目的としています。
また利水放流を利用した七ヶ宿ダム管理用発電所で最大3700キロワットの小水力発電を行っています。
 
白石市街から国道113号を西進し東材木岩トンネルを抜けると左に七ヶ宿ダム管理事務所への道が分かれます。
国道に沿って公園が設置され巨大なクワガタのモニュメントが現れます。
 
洪水吐。
クレストはラジアルゲート3門、オリフィスの予備ゲートが2門。
無塗装のラジアルゲートがメカニカルな印象を際立たせます。
 
ラジアルゲート下流側は赤い塗装。
 
洪水吐導流部と減勢工
堤体直下には公園があり材木岩から遊歩道が伸びていますが、震災以降立入禁止。
 
天端は歩行者のみ立ち入り可能。
堤体は緩やかに湾曲しています。
 
左奥の取水塔は上水道、工業用水の取水設備
管理事務所に隣接して左は灌漑用取水設備、右はインクライン。
 
右岸の壁面に七ヶ宿ダムの銘。
 
ダム湖(七ヶ宿湖)
右手に南蔵王の不忘岳と屏風岳が見えます。
 
下流面。
 
上流面。
 
堤体直下には公園がありますが、材木岩からの遊歩道は震災以降通行止め。
ダムの見学会に参加すれば下流からもダムを見ることができるようです。
平日なら予約なしでダム内部見学ができるのでぜひ平日に再訪したいと思います。
 
追記
七ヶ宿ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0304 七ヶ宿ダム(0555)
宮城県刈田郡七ヶ宿町
阿武隈川水系白石川
FNAWI
90メートル
565メートル
109000千㎥/99500千㎥
国交省東北地方整備局
1991年
◎治水協定が締結されたダム

嘉太神ダム

2016-09-12 13:26:15 | 宮城県
2016年9月10日 嘉太神ダム
 
嘉太神ダムは宮城県黒川郡大和町の鳴瀬川水系吉田川にある灌漑・防災目的のアースダムです。
ダム便覧によれば1937年(昭和12年)に大和町によって築造され、戦後の溜池改修事業で嘉太神ダムとなったようで、吉田川流域溜池大和町外2市4ヶ町村管理組合が管理を行っています。
 
嘉太神ダムへは4月に一度アプローチしましたがこのときはダムへの道が通行止めのため引き返してしまいました。
帰宅後ダムへは三つのルートがあり一番上流からのルートでダムに到達可能なことがわかり今回の再訪となりました。
大和町中心街から県道147号升沢吉岡線を西進、沢渡集落の先で左に分かれる道を二本やり過ごし、三本目の道を左折すると嘉太神ダムが見えてきます。
上流から遠望。
 
荒れ気味の道をさらに進むとダム左岸の洪水吐に飛び出します。
大きくカーブを描く洪水吐と堤体手前のダム湖の離れ小島が特徴です。
まだ夏の景色ですが、紅葉すると素晴らしい眺めになりそう。
 
広角レンズで。
 
どのアングルから撮っても絵になる洪水吐。
 
ダム湖の奥には泉ヶ岳から船形連峰が広がります。
 
 
堤体へは吊り橋が架かっています。
 
残念ながら立ち入り禁止。
 
下流面。
 
追記
嘉太神ダムには農地防災容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0288 嘉太神ダム (0554)
ため池コード
宮城県黒川郡大和町吉田
鳴瀬川水系吉田川
FA
27メートル
101メートル
854千㎥/719千㎥
吉田川流域溜池大和町外2市4ヶ町村組合
1937年
◎治水協定が締結されたダム

二ツ石ダム

2016-09-12 13:13:53 | 宮城県
2016年9月10日 二ツ石ダム
 
二ツ石ダムは宮城県加美郡加美町の鳴瀬川水系田川の支流二ツ石川にある農業用水供給を目的としたロックフィルダムです。
鳴瀬川や江合川下流域は大崎耕土と呼ばれる県内屈指の穀倉地帯ですが安定した灌漑用水源が乏しく、水路の堰上げによる反復利用や番水等により用水を確保していました。
そこで農水省の基幹かんがい排水事業により2009年(平成21年)に竣工したのが二ツ石ダムで、完成後は宮城県が管理を行っています。
 
二ツ石ダムへは4月に一度アプローチしましたがこのときはダムへの道が冬期通行止めのため到達することができませんでした。
加美町から県道262号最上小野田線を西進して、旭小学校で二ツ石ダムの標識に従って左折すると二ツ石ダムに到着します。
右岸展望台から、足元にロックフィルダムがジオラマのように広がります。
ダム湖は山美湖。
 
洪水吐をズームアップ。
 
竣工記念碑。
 
右岸の洪水吐、越流しています。
 
 
 
上流面。
 
左岸の取水設備。
 
管理事務所。
 
追記
二ツ石ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
3065 二ツ石ダム(0553)
宮城県加美郡加美町宮崎
鳴瀬川水系二ツ石川
70.5メートル
439メートル
10600千㎥/9700千㎥
宮城県土木部
2009年
◎治水協定が締結されたダム

岩堂沢ダム

2016-09-12 10:13:42 | 宮城県
2016年9月10日 岩堂沢ダム
 
岩堂沢ダムは宮城県大崎市の北上川水系江合川の右支流岩堂沢にある農業用水供給を目的とした重力式コンクリートダムです。
江合川下流域は大崎耕土と呼ばれる県内屈指の穀倉地帯ですが、灌漑用水の水源に乏しく安定した水源の確保が長年の課題となっていました。
そこで農水省の基幹かんがい排水事業により2009年(平成21年)に竣工したのが岩堂沢ダムで、完成後は宮城県が管理を行っています。
 
岩堂沢ダムへは4月に一度アプローチしましたがこのときはダムへの道が冬期通行止めのため到達することができませんでした。
古川インターから県道47号を西進、中山平温泉駅の先で岩堂沢ダムを示す標識に従って左折し、二ツ森トンネルを抜けるとダムサイトに到着します。
 
減勢工と利水放流設備。スノーシェルターのついた管理通路が特徴です。
 
下流面。
 
天端は立ち入り禁止。
 
竣工記念碑。
 
上流面。手前は取水設備。
よく見えませんがクレストは自由越流式のようです。
 
ダム湖(蛍泉湖)。
 
右岸のインクライン。
 
右岸上流から。
 
 
 
追記
岩堂沢ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2970 岩堂沢ダム(0551)
宮城県大崎市鳴子温泉
北上川水系岩堂沢
68メートル
200メートル
13480千㎥/13000千㎥
宮城県土木部
2009年
◎治水協定が締結されたダム

鳴子ダム

2016-05-09 23:00:00 | 宮城県
2016年4月2日 鳴子ダム
2016年5月4日
 
鳴子ダムは宮城県大崎市鳴子温泉の北上川水系江合川にある国交省東北地方整備局が管理する多目的アーチ式コンクリートダムです。。
戦後、建設省は北上川上流部で北上特定地域総合開発計画(KVA)に着手しますが、中流部でも主要支流の江合川で河川総合開発事業に着手しその中核施設として1958年(昭和33年)に竣工したのが鳴子ダムです。
建設省(現国交省)の直轄事業で建設された特定多目的ダムで江合川の洪水調節、江合川流域9000ヘクタールへの新規灌漑用水の供給、東北電力鳴子発電所での最大1万8700キロワットのダム水路式発電を目的としています。
鳴子ダムはアーチ式コンクリートダムとしては国内3例目のダムですが、日本人技術者のみで建設した初のアーチダムであり日本ダム協会により日本100ダムに選ばれているほか、2016年(平成28年)には土木学会選奨土木遺産にも選定されました。
 
鳴子ダムには2016年4月2日に処方しましたが、この時は天端が開放されておらず同年5月4日の「すだれ放流」イベントに合わせて再訪しました。 
古川インターから国道47号を西進、鳴子温泉で国道108号を右折すると鳴子ダムに到着します。
左岸にある管理事務所の展望所から
 
 
肉薄の堤体。
 
減勢工。
 
ダム湖(荒雄湖)
右奥に見えるのは東北電力鳴子発電所の取水口。
 
下流から。
 
 
残念ながら冬季閉鎖中のため堤体を歩くことはできません。
 
東北電力鳴子発電所
巨大な水圧鉄管が鳴子ダムから下りてきています。
 
2016年5月4日 すだれ放流
 
すだれ放流を見学するために鳴子ダムに再訪しました。
到着したころは強風が吹き荒ぶあいにくのお天気でしたが時間とともに急回復。
陽射しが差し込む中ですだれ放流を堪能することができました。
 
今年は雪が少なく、放流の水量も例年に比べて少ないということでしたが、前夜に降った雨のおかげでこの日は今年の放流期間中最大の放流量となりました。
 
日本初のトンネル式洪水吐ゲート
堤体が薄いため本体に常用洪水吐が設けられずトンネル式洪水吐が採用されました。
 
 
 
 
 
 
国道に戻って俯瞰。
 
管理事務所から。
 
追記
鳴子ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0290 鳴子ダム(0289)
宮城県大崎市鳴子温泉
北上川水系江合川
FAP
94.5メートル
215メートル
50000千㎥/35000千㎥
国交省東北地方整備局
1958年
◎治水協定が締結されたダム

花山ダム(再)

2016-05-09 20:00:00 | 宮城県
2016年4月2日 花山ダム(再)
2016年5月4日 
 
花山ダムは宮城県栗原市一迫川口小倉の北上川水系迫川にある宮城県土木が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
宮城県は建設省の北上特定地域総合開発計画(KVT)に合わせ迫川の治水・利水を目的とした迫川総合開発事業を採択、その中核施設として1957年(昭和32年)に竣工したのが花山ダム(元)です。
その後2004年(平成16年)にかけてダムの嵩上げおよびゲート・取水設備の更新大を伴う大規模なダム再開発が行われ、洪水調節能力が強化されるとともに新たに上水道用水容量が付加されました。
花山ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、迫川の洪水調節、安定した河川流量の字と既得取水権への用水補給、栗原・登米地区への上水道の供給、細倉金属工業川口第二発電所での最大1500キロワットのダム式発電を目的としています。
ダムは迫川の狭隘な渓谷部分を活用して建設されており、堤体積4万6000立米で有効貯水容量3200万立米を支え、貯水効率695倍の非常に効率的なダムとなっています。
 
国道398号線から花山ダムの標識に従って東に折れると花山ダム右岸ダムサイトに到着します。
右岸展望台から。
 
5月4日に再訪した際は放流していました(2016年5月4日)。
 
 
花山ダムの特徴である親子ゲート
親ゲートの上に小ゲートの窓が開いており、自由越流式と同じ効果を発揮します。
 
大きな親ゲートに加えて小さな子ゲートからも放流しています。(2016年5月4日)。
 
洪水吐と越流面。
 
同じアングルから(2016年5月4日)。
 
 
下流は牛渕渓谷となっています。
遊歩道がありかつては下流からダム下まで歩くことができましたが、宮城岩手内陸地震以降落石の恐れありということで立入禁止になっています。
眼下には細倉金属工業の川口第二発電所と余水路からの放流が見えます。
 
発電所への水路には朝顔型余水吐があります。
 
 
ダム湖(花山湖)。
 
牛渕渓谷から。 
 
追記
花山ダム(再)には洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0289 花山ダム(元)
宮城県栗原市一迫川口小倉
DamMaps
北上川水系迫川
FNP
47.8メートル
72メートル
36600千㎥/30000千㎥
宮城県土木部
1957年
-------------
3108 花山ダム(再)(0287)
宮城県栗原市一迫川口小倉
北上川水系迫川
FNWP
48.5メートル
72メートル
36600千㎥/32000千㎥
宮城県土木部
2004年
◎治水協定が締結されたダム

村田ダム

2016-04-12 08:00:00 | 宮城県
2016年4月9日 村田ダム
 
村田ダムは宮城県柴田郡村田町の阿武隈川水系荒川にある灌漑用アースダムで1979年(昭和54年)に宮城県の事業により建設され、村田町が管理を行っています。
1966年(昭和41年)に阿武隈川水系松川上流の蔵王山中で温泉が湧出し、松川の水質が農業に適さない強酸性となってしまいました。これに対処し、代替水源として宮城県が建設したのが村田ダムです。
水質改善を目的とする灌漑ダムとしては、同じ蔵王の強酸性の水質を真水化する目的の山形県の生居川ダムやかん水対策として建設された千葉県の荒木根ダムや平沢ダムなど数例しかなく珍しい目的のダムの一つといえます。
 
村田町中心街から県道14号を北上し、ダムへの標識に従って町道を西に進むと村田ダムが見えてきます。
堤体に『村田』と書かれています。
 
天端も含めてダムへは立入禁止。
 
上流面はロックフィル。
 
洪水吐。
 
左岸から。
 
少しアングルを変えて。
 
右岸にある取水設備
日本で初めて傾斜式シリンダーゲートを採用した設備らしい。
 
追記
村田ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに13万3000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0300 村田ダム(0304)
宮城県柴田郡村田町足立
阿武隈水系荒川
36.7メートル
182メートル
1660千㎥/1507千㎥
村田町
1979年
◎治水協定が締結されたダム

樽水ダム

2016-04-12 07:00:00 | 宮城県
2016年4月9日 樽水ダム
 
樽水ダムは洪水被害を繰り返していた増田川の治水と、仙台に隣接し発展著しい名取市の上水道供給のために宮城県が建設した治水・利水目的のロックフィルダムです。
名取市街から県道118号を西に走ると正面に樽水ダムが見えてきます。
 
まずは下流からアプローチしますが私有地のため遠望するのみ。
 
右岸にある洪水吐は常用洪水吐のローラーゲートと、非常用の自由越流式の一体型。
 
天端や堤体は立入禁止。
 
洪水吐導流部
ダムのすぐ下に1軒の民家と産廃処理施設があります。
 
交換されたホロージェットバルブ。
 
左岸は小さな公園になっておりなぜかテニスコートが??
公園の桜は満開でシートを敷いて花見を楽しんでいる人も。
一方で立入禁止エリアで釣りをするアホが数名・・・
 
対岸の洪水吐と管理事務所。
 
追記
樽水ダムには200万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに220万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0298 樽水ダム(0303)
宮城県名取市高館川上
名取川水系増田川
FW
43メートル
256.5メートル
4700千㎥/4200千㎥
宮城県土木部
1976年
◎治水協定が締結されたダム

愛子溜池

2016-04-11 16:00:00 | 宮城県
2016年4月9日 愛子溜池
 
愛子と書いて『あやし』と読みます。愛子様ご生誕の折、愛子駅が注目されたという記憶があります。
戦後仙台市が名取川水系の水を上水用に利用する補償として建設されたアースダムで、地元では釣りのスポットとして知られ愛子溜池よりも『月山湖』の呼び名のほうが通りがいいようです。
 
国道48号愛子バイパスから県道132号でハートヒルズ錦ヶ丘方面へ曲がり、すぐに右手の側道に入ると愛子溜池に到着します。
溜池左岸に駐車場があります。
釣りやハイキングを楽しむ人の車が結構止まっています。
 
左岸から
手前に洪水吐があり導流部はトンネル式です。
 
堤体は綺麗に刈りわれています。
 
 
上流側はコンクリートで補強。
奥に斜樋があります。
 
洪水吐導流部の隧道出口。
 
同じ場所から下流を見ると・・・
これが減勢工になるのかな??
 
ダム湖の上流は豊かな自然が残り熊や猛禽類が生息しているとのことです。
一方でダムのすぐ北側はハートヒルズ錦ケ丘としてショッピングモールも備えた大規模な宅地が広がっており、何となくアンバランスな景色が隣り合せの溜池です。
このあとは釜房ダムへと向かいました。
 
追記
愛子溜池は洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たな洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0287 愛子溜池(0301)
ため池データベース
宮城県仙台市青葉区宮城町上愛子
名取川水系斉勝川
16.7メートル
114メートル
1200千㎥/1200千㎥
仙台市
1949年
◎治水協定が締結されたダム

青下量水堰

2016-04-11 15:00:00 | 宮城県
2016年4月9日 青下量水堰
 
青下第3ダムの上流、約500メートルにあるのが青下量水堰です。
その名の通り青下川の水量を計測する目的で作られました。
堤高は2メートルの為河川法でのダムではありませんが、下流の3ダム同様玉石コンクリート造玉石貼りで登録有形文化財に指定されています。
 
堰へは立ち入りできないので道路から。
 
手前の切欠きで川の水量を計測しています。
 
 
堰の説明碑。
 
青下量水堰
宮城県仙台市青葉区大倉
名取川水系青下川
2メートル
20メートル
仙台市水道局
1933年

青下第3ダム

2016-04-11 14:00:00 | 宮城県
2016年4月9日 青下第3ダム
 
青下川に架かる3連の玉石コンクリート造玉石貼りダムの最上流にあるのが第3ダムです。
もちろんこのダムも登録有形文化財に指定され近代土木遺産に選ばれています。
第1第2ダムと異なり仙台水道記念館の敷地外にあるため、車で上流に向かいダムを見学します。
 
ダムの手前にゲート。
立入禁止か?と思ったら害獣防護フェンスです。
開けたら閉めよう!!
 
第1ダムと異なり管理橋は右岸途中まで
副ダムや下流の河床も玉石貼りです。
 
 
水叩きも玉石がびっしりと並んでいます。
 
ダムに寄ってみます。
 
減勢工
 
越流部
 
3つのダムの中で一番しっかりと見学できるのが第3ダム。
ダム下の土手にはカタクリやキクザキイチゲが花を咲かせていました。
 
青下第3ダムがダム巡りを始めて通算300基目のマイルストーンとなりました。
これまで節目のダムはため池や見学スポットが限られるようなダムばかりだったのですが、今回は小ぶりなダムとはいえ石貼りのビンテージダムということで節目にふさわしいダムとなりました。
 
0285 青下第3ダム(0300)
宮城県仙台市青葉区大倉
名取川水系青下川
17.7メートル
60.4メートル
264千㎥/226千㎥
仙台市水道局
1933年

青下第2ダム

2016-04-11 13:00:00 | 宮城県
2016年4月9日 青下第2ダム
 
青下第2ダムは1933年(昭和8年)に建設された仙台市の上水用3連ダムの一つで、他の2ダム同様玉石コンクリート造玉石貼で国の登録有形文化財に指定され、近代土木遺産に選ばれています。
第2ダムは、ダムへの下り口が施錠され間近で見ることはできず、樹間からダムを垣間見るにとどまります。
 
水道記念館周辺は水源涵養林として整備されています。
 
樹間から第2ダムが垣間見えます。
 
これが限界。
落葉期なのでなんとか見えますが、葉が茂ると隠れてしまうでしょう。
 
第2ダムの案内板。
 
ここから立入禁止
 
 
水道記念館の方に、第2ダムの見学会等の予定があるか聞きましたがその手のイベントは特にないとのことでした。
第2ダムの見学については仙台市水道局に直接問い合わせてほしいとのことでした。
 
0284 青下第2ダム
宮城県仙台市青葉区大倉
名取川水系青下川
17.4メートル
39.2メートル
212千㎥/167千㎥
仙台市水道局
1933年