とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

『エノケソ一代記』(12月5日 世田谷パブリックシアター)

2016-12-06 09:00:52 | 演劇
 作・演出:三谷幸喜
 出演:市川猿之助、吉田羊、浅野和之、山中崇、水上京香、春海四方、三谷幸喜

 エノケンの大ファンであった男が「エノケソ(そ)一座」を結成し、地方でエノケンのふりをしながら公演を繰りかすという話。男はとにかくエノケンの真似をする。なんでもかんでも真似をするがために、してはいけない真似までしてしまい・・・というお話。

 「嘘から出たまこと」という言葉があるが、エノケソはエノケンだと偽る点では嘘つきであるが、エノケンが好きで好きでたまらず、エノケンになりたいという意味では正直者である。自分の心に正直に生きているだけである。実はこのエノケソだけでなく、私たち人間は嘘ばかりの世界の中で、つまり虚構の世界でわたしたちは生きていると言っていい。宇人の目から見れば、ばかばかしいほど「嘘つ」に見えるだろう。それでもけなげにまっすぐに生きている。

 エノケソを笑えば笑うほど、自分を笑うことになる。そしていつしかエノケソの正直さに心を寄せ、自分の情けないけなげさに気づく。

 むずかしい話ではない。しかし深い話だ。いい芝居だった。

 ただし、最後に足を切るというのは無理がある展開に思えた。浅野和之が演ずる蟇田一夫が無理やりすすめる形になるのだがその必然性が見えない。そこが見えてくればもっといい作品になると思う。

 猿之助と吉田羊はやっぱりすばらしい役者だ。
 浅野和之はしっかりと支えている。
 三谷幸喜は意外にきちんと芝居していて役者としても遜色ない。
コメント
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