四月に入ってから・・・、ということは札幌に来て以来、私は「沢木耕太郎」の最近刊の著書二冊を読了しました。
その二冊とは、日記風のエッセイ「246」と、映画エッセイの「『愛』という言葉を口にできなかった二人のために」という二冊で、いずれもこの四月に刊行されたものです。
私が沢木耕太郎の存在を意識したのは、私の記憶ではもう三十数年前のことですが、とある書店に入ったとき、平積みされた本の帯に「ニュージャーナリズムの旗手現わる!」というようなキャッチフレーズが書かれた「若き実力者たち 現代を疾走する12人」という本を手にしたときでした。
読み終えた私の中を鋭い衝撃と感動が走りました。
精緻を極める人物観察、独特の視点、そしてそれらを作者の言葉へと昇華していく中で見事な沢木ワールドが形成されていたのです。
私はこれまで出会ったことのない(大して読書経験があるわけではありませんが・・・)文章との出会いで、一気に沢木ワールドに魅了されてしまいました。
記録を調べると、「若き実力者たち 現代を疾走する12人」は1973年(昭和48年)刊行となっています、彼はその前の1970年に「防人のブルース」でデビューしたとなっています。この本ももちろん読んではいるのですが、おそらく私の中では順序が逆なんだと思います。
それ以来、私は沢木耕太郎が出版する新刊はほとんど全てを購入し、読んできました。
それというのも彼は寡作の人でしたので、(彼の代表作の一つ「深夜特急」の第三部は、第二部が出てから6年も経過してようやく出版されたくらいですから…)私のようなものでもそのほとんどをチェックできたということなのです。
とはいっても三十数年の時間は、私の本棚のかなりの部分を彼の作品が占めることとなり、私の本棚の一角は「沢木コーナー」となっています。
なぜそんなにも魅了されてしまったのか、もう少しそのあたりを振り返ってみたいと思います。