たかたかのトレッキング

駆け足登山は卒業、これからは一日で登れる山を二日かけ自然と語らいながら自由気ままに登りたい。

続・雲取山

2021年01月12日 | 心に残る思い出の山

続き

小屋主と私達の奇妙な時間

前記の前白岩山から勿体ないほど標高を下げて白岩小屋に着いた。中から一見、風采の上がらないと言った感じの小屋主が出て来た。そろそろ12時になるので休憩料一人300円を払って中に入れて頂いた。50年前に建ったと言うこの小屋は隙間だらけで内も外もそう変わらない寒さだ。手がむちゃくちゃ冷たくて思わず口にするとカマドの蓋を取って「ここで温まればいい」とボソボソッと言った。愛想も何も無くこちらの方が気を使ってしまう様な小屋主だったが意外と気持ちは優しい人なのかもしれない。

「何か飲みますか?」と聞くので雄さんが「お茶でも貰うか」と言うと、おもむろに窯の蓋を取り、たぎる湯を汲んで急須に入れ無言のまま私達の前に置いた。足の踏み場もない床の上には、それでもゴマメと数の子の入ったタッパーが置かれていて一応、正月の客を迎える準備はこの小屋なりに整えられていた。(正月の泊り客は3人だったとの事)

・・・略・・・

持参のお弁当を開け箸を付ける前にミカン2個、おにぎり、餅、ホウレンソウのお浸し、タクアン、ハムを差し出すと「ここに入れて下さい」と言う様に黙ったままフライパンを私の目の前に出した。フライパンには餅らしき物と糊状になった汁がこびり付いていて、とても中に入れる気になれず、おにぎりを包んていたラップにくるんで渡すとフライパンごとカマドの上に置いた。

雄さんがトイレに立つと急にソワソワし始め先ほど入れたはずのポットを持って来て窯の蓋を取り湯を注いだりカマドの蓋を開けたりと全く落ち着かない。女性が単独で宿泊したらどうなっちゃうのだろう。  雄さんが戻るとホッとしたのか腰を下ろし温まったミカンを二つペロリとたいらげた。

私達は礼を言って小屋を出るや「Kさんみたいな人だったね」「反応が無くて困ったよ」

再び黒木の中に続く道に入ると北斜面に張り付く様に有っただけの雪が山道を白く変え踏み出すたびにギュッギュッと小気味よく音を立てる。 白岩山は明るく開けたピークだった。展望は無いが静けさと森林の佇まいが気に入って10分ほど休憩。

芋の木ドッケを巻いて下り付いた所が大ダワ(芋の木とはコシアブラ。ドッケとはトッケと同じで武蔵地方の方言で尖った峰の事、大ダワは、たわんでいる場所の事を言う)  男坂は敬遠して進路を左にとった。視界は途絶えたままだが笹が切られた広い道は山腹を巻いているのでアップダウンも無く北風も遮られ全く寒さは感じられない。

もう、そろそろ10k近く歩いただろうか、登ったり下ったり気忙しいきついアップダウンも終わったと思った途端、太ももに軽い倦怠感を覚えた。

右上に無人の雲取ヒュッテを見ると遠くに見えていた雲取山荘も間近となり最後の階段を登って14時、小屋に山靴を脱いだ。テレビや山岳雑誌で馴染となった小屋主と6人程のスタッフが、これからの準備に追われていた。

受付を済ませ案内してくれた部屋の炬燵で先ずは無事の到着を祝ってワインを開ける。 隣の炬燵にポツンと坐っていた男性に薦めると「嬉しいな~」と言ってザックからコップを持ってきた。彼は宮城から来たそうで東北方面の山情報や「今年の夏、大朝日連峰の竜門小屋で小屋番をしていますので出かけて下さい」と涎が出て来そうな話を次から次へと話し始めた。営業で日本中を廻っていると言っていたが、呆れるほど如才ない人だった。

そして一人二人と集まり山談義も佳境に入った頃「甘酒が出来ました~、お変わり自由です~」とスタッフが呼びに来た。寒い中をやって来た者にとって何よりのご馳走だ。登山客全員、一斉に甘酒に群がる。

「鹿が居る!」と言う声に甘酒の入ったカップで手を温めながら外に出てみると山の斜面に6頭の日本鹿(丸の中)。双眼鏡で覗くと好奇心ある目をこちらに向けてジッと見つめていた。愛くるしい姿だった。

それにしても1月の雲取の冷え込みは、まるで冷蔵庫の中に入ってる様な寒さだ。甘酒をお代わりして再び炬燵に飛び込んだ。明朝、山頂で御来光を迎えようと言った言葉も萎えて小屋で迎えようと言う事になり宮城の男性に「遂に挫折」と冷やかされてしまった。

小屋の夕食

夕食を済ませ皆コタツの周りに布団を敷くと寒さからか疲れからか、、もう山談義をする事も無く布団を被ってしまった。既に寝息をたてている者もいる。そんな中、私達に席を代われと言った50代の男性と女性二人が歌を歌ったり大きな声で世間話をしたり、話が途切れると男性は「もっとお話ししましょうよ」と急き立て小屋のスタッフが電気を消しに来た後も其れは続くのだ。

私は一人で外に出た。夕方小屋の窓から皆と驚きの声を上げて見たとてつもない橙色をした大きな月(↑)はもう白く電灯も要らない程の明るさで頭上に輝いている。階段を少し降りて見た。黒木の森の上に東京の灯りが一塊となってチラチラ揺れているのが望見される。 その時、キーンと鹿の鋭い一声が静けさを破った。  「続きますのでコメント欄は  」

コメント (5)
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