経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

2023年度予算は前年度比-11.6兆円の縮小

2023年11月12日 | 経済
 補正予算が閣議決定され、前年度の補正後と比較すると-11.6兆円の縮小となった。別途、所得税・住民税の「減税」がなされる予定で、これを加えると-8兆円となる。徐々に緊縮を進めるのは、時宜にかなった正しい財政の在り方である。むろん、中身と言えば、どうしてこうなるのかなというものが並ぶ。何をしたいのかの戦略が散漫で、何が問題か分かっていないのであり、それは批判する側も似たようなものだ。

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 理屈はどうあれ、一気に財政を縮小してしまうと、需要を減らし、成長を停滞させることになる。デフレ時代の日本の経済運営の失敗は、景気回復時における無頓着な緊縮であり、岸田政権は、たまたまであるが、これに陥らずに済んでいる。したがって、財政を出さざるを得ないのだから、社会問題の解決につなげるものが望ましい。おカネはあっても、使い方が分からないというのでは情けない。

 『補正の概要』を見ると、「人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を起動・推進する」とあるが、地方のIT化ばかりで、少子化対策そのものは、「誰でも通園」の91億円だけだ。まるで、少子化を甘受するかのような内容である。児童手当の増額は1年後だし、育児休業給付の非正規への拡大のメドも立たうちに、保険料負担の議論が始まっている。これでは支持が上がるわけもない。こうなるのは、「補正で社会保障は措置しない」という下らない縛りがあるからだ。

 他方、産業政策は、補正になじむというので、いつもの大盤振る舞いである。設備投資にいくら補助金を出しても、マクロの総額は大きくならない。なぜなら、需要が見込まれる範囲内でしか、設備投資はなされないからで、企業の収益を高めるだけになる。いいかげん、その虚しさに気づくべきだろう。もっとも、国が直接に投資するのと変わらない半導体は別で、それなら需要に関係なく増えるのは自明だ。

 今回の経済対策では、補正に加え、税収増の「還元」が行われる。物価が上昇して、既にデフレではなくなっているので、自然増収をどう処理するかという古くて新しい課題に直面している。税収が上がっているのを尻目に、頑なに防衛や少子化で増税路線を敷いた無理が「還元」という形で突発するはめになった。変化に応じて、経済財政の戦略を立てていかなければならない。そういう発想は、批判する側にも乏しい。

(図)


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 「還元」は1年限りの暫定措置であり、やめれば3.5兆円の増税になり、2023年度もマクロ指標並みなら、3.5兆円の増収になる。恒久的にどう還元するかをまじめに考えるべきである。来年は、年金の財政検証の年でもあり、給付水準の維持には勤労者皆保険がカギで、それには低所得者への還元が必要だ。アジェンダを設定するだけで、議論は盛り上がり、改革の期待で支持率も高まるだろう。戦略を立てるとはそういうことである。


(今日までの日経)
 補正予算案13.1兆円。中国減速、世界の製造業9%減益。少子化財源 「支援金制度」具体化へ議論。NHKweb・独自補助で“年収の壁”を超える(11/8)。


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